ハイパー営業マン恩田、異世界へ。

来栖もよもよ&来栖もよりーぬ

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捜索の手がかり

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 ナターリアにはモリーの家から電話で事情を説明し、少し戻るのが遅れると説明した。

「大丈夫ですわ! 在庫も倉庫にまだありますし、ウルミを見つける方が大事ですもの。エドヤのことは私に任せておいて下さい」

 と頼もしい返事が返ってきたので、一つ心配事は片付いた。
 モリーにもウルミが見つかるまで、うちをホテル代わりにして構わないわよ、という優しい言葉もいただいた。
 さああとはウルミを探すのみ、なのだが。

「なあダニー、ジロー、馬車の人の顔は見たか?」

 ✕。✕。
 慌てて俺に知らせにきたのだから、それどころじゃなかっただろう。

「それじゃ、ウルミの匂いを追えたり……はしないよなあ。歩いて消えたわけじゃないし」

 歩いていたら、地面のウルミの匂いは人より分かるだろうけど、そもそも犬でも猫でもないしなあ二人とも。
 ……〇。〇。
 質問するたびに、どんどん肩身が狭いような、居たたまれないような気配を漂わせ、隅っこの方に移動していく二人。

「こら二人とも。別に責めてるんじゃないぞ? 状況を把握しとかないと俺も動けないだろう?」
「そうよダニー、ジロー。ウルミがいなくなったときの様子をちゃんと教えられるだけでも、とってもえらいんだから! あらいけない、私ったらお手柄の二人にご褒美もあげてないじゃないの」

 モリーはテーブルの上のカゴからバナナを取り出した。

「まだあなたたちにも頑張ってもらわなくちゃいけないんだから、腹ごしらえしないと。バナナ食べるでしょう?」

 〇。〇。
 食べ物をもらうときは返事が早いのはご愛敬だ。
 だけど、お皿に載せられたバナナを目の前に置かれても、食欲旺盛という感じではなく、少し食べては俺を見つめる、といった感じ。
 彼らもウルミのことが気になっているのだろう。

(しかし、そうなると手掛かりがサッパリか……幌に穴の開いた馬車を探そうにも、けっこうあるんだよな、幌にあちこち穴が開いてる馬車)

 木の枝などに引っかかる場合もあるが、野鳥などが食べ物を狙って突っ込んできたりすることも多いらしい。くちばしもだが、鳥の爪はとても鋭い。
 俺がいつも借りているレンタル馬車の人も、最初のうちはマメに補修していたらしいが、一回されたらもう襲われないわけじゃないのだ。

「キリがないんだ。仕方ないから、被害がたまってから丸ごと張り替えた方が安くつくんだよ」

 とこぼしていた。
 実際に同様の被害はどこの馬車でもあるようで、馬車自体は綺麗なのに幌が傷だらけというか、適当に補修している感じのものをよく見かけるのだ。
 最近ではそういう布の破損が分かりにくいように、柄模様の幌も増えたと聞く。
 柄物? ……そうか柄物か。

「なあダニー、いやジローでもいい。お前たち、色は分かるか?」

 俺は二人を見て尋ねた。
 首を捻るダニーに、そっか、色って意味がよく分からないか、と質問を変える。

「例えばこのバナナの皮だけど、これは黄色っていうんだ。ウルミの毛と同じ色なんだけど、分かる? 他にも、ジローが持っているスカーフも、赤とかオレンジとか色々違うだろう?」

 ようやく質問の内容が分かったのか、二人とも〇ボタンを踏んだ。
 犬や猫の視界はモノクロっぽいらしいけど、鳥は人間のように色を認識できると何かで読んだことがある。
 しかも基本の三原色だけじゃなく、紫外線の色まで見えるとか。
 犬や猫がモノクロで、鳥が紫外線まで見えるとか、研究者の人が会話ができない相手からどうやって判断したのか分からないけど。専門家なんだからきっとそうなんだろう。
 一応ジローは鳥の仲間だし、スカーフも好みがあるらしいので分かるかもと思っていたが、カワウソの仲間であろうダニーも理解できるなら話が早い。
 俺は床をコンコンと叩く。

「これは木の色。茶色とかこげ茶色だな。馬車でお前たちがいつも乗っているから分かるだろう?」
『キュ!』
『ポゥ!』
「いい子だな。で、屋根の部分が違っている馬車は見たことがあるだろう? 花の柄が入っていたり、草の柄が入ってたり。な?」

 〇。〇。

「ウルミが落ちた馬車の幌……屋根になっていた部分の布の色、覚えてるか? ほら、色だけじゃなくて、模様が入ってたとかいないとか」

 どんな情報でも大事だ。
 もしかしたら、それが重要なヒントになるかもしれない。
 ものすごく珍しい柄だったりすれば、知っている人がいるかもだし。
 〇。〇。

「おおすごいぞ!」

 俺はダニーとジローの頭を撫でる。
 モリーもジェイミーも少し興奮したように顔が紅潮した。
 ジェイミーが部屋の中を指差し、

「ねえ二人とも。この部屋の中のものなんでもいいから、その馬車の屋根の色と同じものか、似た色はあるか探してみてくれるかい?」

 と尋ねた。
 元気よく返事をした二人は、居間やキッチンをウロウロと歩き出した。



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