土偶と呼ばれた女は異世界でオッサンを愛でる。R18

来栖もよもよ&来栖もよりーぬ

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ルーシー、結婚が決まる。

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 ……ルーシーがデートから戻って来てから3日。
 何だか機嫌がいい事は分かるのだが、私には特に何も言わない。
 
 そして、毎日のようにグエンが朝から鍛練をルーシーと行い、ウチで朝食を食べて仕事へ向かうのも変わらない。


「ねえ、私たち親友じゃないのルーシー」
 
 私は窓拭きをしているルーシーの側をちょろちょろしながら、情に訴えてみた。

「まあ、とんでもありませんわ。勿体なく有り難いお言葉ですが、わたくしはリーシャ様の影武者兼ブレーン兼マネージャー兼護衛兼財務担当兼子守り兼愛読者ですし、今の兼まみれでお腹いっぱいでございます」
 
「──そのココロは?」
 
「グエン様とのデートについては一切話すつもりはございません」
 
「……ちぇっ。ケチね」
 
「ああ、ケチと申せば思い出しました。最近町の肉屋がおまけをしてくれなくなりましたわね。リーシャ様また何かやらかしましたか?」
 
「またって何よ。何にもしてないわよ?」
 
「旦那様とイチャコラ歩いてるだけでも、よこしまな思いを抱いている者にとっては大事件でございます」
 
「いや、夫婦がイチャコラ歩いて何が悪いのよ?」
 
「わたくしは全く悪いと思いませんけれども、肉屋の息子さんはガッカリされたのでしょうね。いくら美貌の若妻といっても離婚する気配すらないと付け入るスキがございませんものね」
 
「いや待って、あの子19とかよ?あと若妻って単語やめて。なんかエロエロしいから」 
 
「結婚できる年齢ですわよ。つまりはオ、ト、ナ。
 まあこんな美貌の人妻がしょっちゅう買い物に来て笑顔振りまいてたら、とてもそこいらの女性に目を向けられませんものねえ。霞んでしまいますもの。
 分かりやすい方でございましたが、もう少々夢を見させてあげていれば、食費が大分浮きましたものを」
 
「本人のあずかり知らぬところでツツモタセみたいな事を画策してるんじゃないわよ。
 ……え?まさか買い物に付き添ってくれた時、何かダークが買い物中ずっと手を繋いでたのは──」
 
「小僧への牽制しかないじゃありませんか。リーシャ様、ポンコツにも程がございます」
 
「……やだわ、もっと早く教えてちょうだいよ」
 
「教えたら確実に挙動不審になるじゃありませんか。逆に【もしや自分に気があるのか】とアタックされたらどうするのですか?」
 
「──言われてみればそうだわね。結果オーライだわ」
 
「わたくしがリーシャ様の為にならない事などしたことは……ございませんわ」
 
「今の微妙な間で私の信頼度がグイグイ下がるのだけれどもそれは置いといて、ねえグエンさんとの進展はどんな感じなのよぅ。恋ばなしましょうよー。
 恋ばなしたい人~?」
 
 ソファーでダンゴムシのように丸まって惰眠を貪るアズキの前足を持ち上げ、ぴろぴろと振る。
 
「まあ大変。アズキも聞きたいんですって」
 
「アズキ様は人ではありません。あ、いけない洗濯物を取り込まないと」
 
 くい、と眼鏡を直すとそそくさと庭へ向かって歩いていってしまった。
 
「萌えが足りないわ……」
 
 私は溜め息をついた。
 
 
 
 だが、裏では何やらグエンとこそこそ動いていたようで、両家の実家への挨拶も済ませ、結婚式の日取りが決まりました、と2人が改めてダークと私のところに報告に来たのは、それから1ヶ月も経っていなかった。
 
 
「ルーシーは結婚しても家が隣になるだけで、仕事はこのまま継続して行きたいと言う考えですので、僕も応援するつもりです」
 
「本当に有り難い話よねえダーク。私ルーシーがいないと色々困ってしまうもの」
 
 特に執筆関係とかその他もろもろ。
 私は昔からダメ人間の称号を欲しいままにしているので、ルーシーというパーツがないと動けないヒッキーなのである。
 
「ああ。ルーシーが家にいてくれないと困る。もう家族みたいなものだからな。
 グエンが懐の広い人間で良かったよ」
 
 ダークも真面目な鍛練バカ(誉めている)であるグエンと馬が合うらしく、たまにグエンの屋敷で酒を飲んだりする事もあるので、今回の話は願ってもない良縁だと言っていた。
 
「それでですね、結婚式はシャインベック家の庭をお借りして、こぢんまりとパーティー形式で……と考えていたのですが、貸して頂けますでしょうか?」
 
「ええ勿論!そんなの断るわけないじゃない!」
 
「ありがとうございます。あとルーシーからそれに関してお願いがありまして」
 
「リーシャ様に、ウェディングケーキと料理をお願いしたいのです」
 
 ルーシーが頭を下げた。
 
「わたくし長年こちらでお世話になって参りましたので、リーシャ様の作る料理が一番好きなのです。せっかくの新しい門出でございますので、来て下さるグエン様のお身内の方にも是非食べて頂きたいのです」
 
「いえ、私の料理なんて素人よ?プロの方に頼んだ方が見た目も華やかで良いんじゃないかしら?」
 
「いえ、私はリーシャ様が良いのです」
 
 私は焦るが、ダークまでが、
 
「いいんじゃないか?俺もリーシャの料理が一番美味いと思ってるし」
 
 と口角を上げた。
 
 簡単に言うけど、結婚式の料理なんて良く分かんないわよ。
 考えるだけで頭が痛くなって来たが、他ならぬルーシーの為である。
 
「……何とか頑張ってみるわ」
 
 と答えるしかなかった。
 
 
「本当に一使用人に勿体ないお話です。まことにありがとうございます」
 
 ルーシーがまた流れるような土下座をするので慌てて頭を止めた。花嫁に土下座させるのは心臓に悪い。
 
「それと、式の翌日から1週間の結婚休暇を頂きたいのです」
 
 ダークに告げた言葉にルーシーが反応した。
 
「──あのグエン様、わたくしそんなにお休みは要らないのですが。
 それにリーシャ様(の仕事)のお手伝いなども必要でございますし」
 
「ダメだよルーシー。こう言う大切なイベントの時にはきちんとそれに合った休みが必要だ。僕たちももっと親しい関係になるんだしね」
 
 キラキラした目で爽やかに言い放つグエンだが、私は自分の経験上、童貞というのはエロい事を知るとサル化するのだと知っている。
 
 少なくとも40過ぎてもサル化しているモデルケースが隣に座っている。
 
「ですが……」
 
「いいのよルーシー。ちょいちょい、っと(仕事量を)調整するのは得意じゃない。
 普段休みもろくに取らないんだから、たまにはゆっくりするのもいいんじゃない?」
 
 いくら体を鍛えていようが、どうせ足腰立たなくなるのは目に見えているのだ。仕事どころではない。
 
 
 がんばれー。
 
 
 納得の行かなそうなルーシーに私はそっとエールを送っておいた。
 
 
 
 
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