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リーシャ、接待役を仰せつかる。
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「リーシャ、本当に申し訳ない!!」
「……前回の件で学びませんでしたかマークス兄様?
私は社交的でなく表に出るのが好きなタイプでもありませんから、2度とやりたくありませんと、いえやりませんと、あーれーほーどー、申しましたでしょう?」
案の定、ダークから話があった晩には、マークス兄様が屋敷に押し掛けて来て、来た早々にエントランスで土下座をしていた。
「わあ、マークス伯父様がまた土下座してる。母様ー、伯父様またやっちゃったの?」
お風呂から出て来たブレナンが、ありゃりゃ、という同情的な眼差しで久し振りにやって来たマークス兄様を見た。
「ほら兄様?子供たちにまで『いつも厄介な事を持ち込む伯父さん』として認識されてしまっているじゃありませんか」
「ブレナン~違うんだよぅ、厄介な事を押し付けるのは王族であってね、伯父さんのせいじゃないんだよぅ」
「う~ん、分かりますけど、でも結果的に母様を怒らせてますから同じことですよね?」
ルーシーが運んできたアイスティーを飲みながらソファーで足をぷらんぷらんさせているブレナンに、
「ひどい……ブレナン冷たいじゃないかぁ……」
目をうるうるさせているマークス兄様に若干同情しつつも、お風呂から出て来たアナが、
「……私からレイモンドに伝えとく?ウチの母様をいじめるなって」
と優しく声をかけたのに、
「止めてお願いそれだけは。伯父さん仕事なくなっちゃうから。ね?ね?」
と情けない事を言い出したので同情の気持ちは燃えないゴミに出す事にした。
「でもリーシャ、大丈夫だよ。今回は面倒なパーティーとかはなくてね、動物園と騎士団の訓練場を見たいだけだそうだから、サラッと案内するだけで終わるから!
人妻だし子供もいるから長時間の拘束は無理だって事も伝えてあるから。ね?ね?」
「……何で動物園と騎士団の訓練場なの?」
「いやほら、山を越えてるせいか、こちらの国とあちらの国では生息している動物が少し異なるみたいでね、是非とも参考までに見てみたいらしいんだ。
騎士団は、恐らく武器や防具を作っている国だから、利用する側の人間を観察したいとか、新たなインスピレーションを湧かせたいとかだと思うよ」
ほほー。なるほどねえ。
兄様の言うとおり、今回はそんなに面倒くさい事にはならないようだ。
「でも、それなら玉の輿狙いの貴族のご令嬢とかで良くないかしら?何も三十路の子持ちの人妻を働かせなくても……」
「だって、この国でリーシャレベルの美貌の娘はいないんだもん。ライリー殿下もナスターシャ妃殿下も国王陛下夫妻も、きっと他国に見せびらかしたいんじゃないかと俺は思ってる。リーシャしかいないわよねぇ……ってナスターシャ妃殿下が呟いてたし」
だもん、じゃねえぞ30代も半ばになろうってオッサンが。
しかしナスターシャ妃殿下もはた迷惑な事だ。
「ルーシー……私の扱いって見世物レベルよねえ?」
少し呆れてルーシーに呟くと、
「まあ見せびらかしたい気持ちはわたくしにも理解できますし、王族相手に申し上げる立場ではございませんが……」
「ヘイヘイ、ばっちこーい。本音ばっちこーい」
「ガチで大人げない上に本人の意向ガン無視でえげつないかと。さすが王族ですわね。全部己の意思を押し通す図々しさに溢れておりますわ」
「本当にねぇ……」
「止めてぇー止めてぇー、めっちゃ不敬な言葉が聞こえるようぅぅ」
この程度で耳を押さえて首を振るマークス兄様は、宮仕えの文官だから仕方がないとしても、
「ふけい♪ふけい♪ルーシーはふけい♪」
と意味も分からないのに 面白がってマークス兄様の周りで踊り出す子供たちもおバカである。
ウチの子たちをフリーダムに育てすぎただろうか。
まあ私の血も入ってるのでしょうがないのか。
もう少しダークの血が多ければ良かったのにと思わないでもない。
「ねぇダーク……」
ずっと無言で話を聞いていたダークに意見を求める。
「まあ義兄さんを責めても仕方ないだろう。
今回は短時間で解放されそうだし、義兄さんの肩を持つわけじゃないが個人的にはまだマシな気がする。
イヤだが。本当にイヤだが」
と渋々な感じで私に視線を向けた。
そうよね。どうせ王族のお願いって命令だものね。
動物園も久し振りだし、どうせ行くなら楽しんで来ますか。
「もういいわ兄様。接待役引き受けるしかないんでしょ。諦めたわ」
「リーシャぁぁぁ、済まないぃぃぃ~っ」
床に額をこすりつけるマークス兄様に、
(ああ、土下座家系は私の実家の血筋だったのねえ)
などと呑気な事を思い、私はカフェオレを飲むのだった。
「……前回の件で学びませんでしたかマークス兄様?
私は社交的でなく表に出るのが好きなタイプでもありませんから、2度とやりたくありませんと、いえやりませんと、あーれーほーどー、申しましたでしょう?」
案の定、ダークから話があった晩には、マークス兄様が屋敷に押し掛けて来て、来た早々にエントランスで土下座をしていた。
「わあ、マークス伯父様がまた土下座してる。母様ー、伯父様またやっちゃったの?」
お風呂から出て来たブレナンが、ありゃりゃ、という同情的な眼差しで久し振りにやって来たマークス兄様を見た。
「ほら兄様?子供たちにまで『いつも厄介な事を持ち込む伯父さん』として認識されてしまっているじゃありませんか」
「ブレナン~違うんだよぅ、厄介な事を押し付けるのは王族であってね、伯父さんのせいじゃないんだよぅ」
「う~ん、分かりますけど、でも結果的に母様を怒らせてますから同じことですよね?」
ルーシーが運んできたアイスティーを飲みながらソファーで足をぷらんぷらんさせているブレナンに、
「ひどい……ブレナン冷たいじゃないかぁ……」
目をうるうるさせているマークス兄様に若干同情しつつも、お風呂から出て来たアナが、
「……私からレイモンドに伝えとく?ウチの母様をいじめるなって」
と優しく声をかけたのに、
「止めてお願いそれだけは。伯父さん仕事なくなっちゃうから。ね?ね?」
と情けない事を言い出したので同情の気持ちは燃えないゴミに出す事にした。
「でもリーシャ、大丈夫だよ。今回は面倒なパーティーとかはなくてね、動物園と騎士団の訓練場を見たいだけだそうだから、サラッと案内するだけで終わるから!
人妻だし子供もいるから長時間の拘束は無理だって事も伝えてあるから。ね?ね?」
「……何で動物園と騎士団の訓練場なの?」
「いやほら、山を越えてるせいか、こちらの国とあちらの国では生息している動物が少し異なるみたいでね、是非とも参考までに見てみたいらしいんだ。
騎士団は、恐らく武器や防具を作っている国だから、利用する側の人間を観察したいとか、新たなインスピレーションを湧かせたいとかだと思うよ」
ほほー。なるほどねえ。
兄様の言うとおり、今回はそんなに面倒くさい事にはならないようだ。
「でも、それなら玉の輿狙いの貴族のご令嬢とかで良くないかしら?何も三十路の子持ちの人妻を働かせなくても……」
「だって、この国でリーシャレベルの美貌の娘はいないんだもん。ライリー殿下もナスターシャ妃殿下も国王陛下夫妻も、きっと他国に見せびらかしたいんじゃないかと俺は思ってる。リーシャしかいないわよねぇ……ってナスターシャ妃殿下が呟いてたし」
だもん、じゃねえぞ30代も半ばになろうってオッサンが。
しかしナスターシャ妃殿下もはた迷惑な事だ。
「ルーシー……私の扱いって見世物レベルよねえ?」
少し呆れてルーシーに呟くと、
「まあ見せびらかしたい気持ちはわたくしにも理解できますし、王族相手に申し上げる立場ではございませんが……」
「ヘイヘイ、ばっちこーい。本音ばっちこーい」
「ガチで大人げない上に本人の意向ガン無視でえげつないかと。さすが王族ですわね。全部己の意思を押し通す図々しさに溢れておりますわ」
「本当にねぇ……」
「止めてぇー止めてぇー、めっちゃ不敬な言葉が聞こえるようぅぅ」
この程度で耳を押さえて首を振るマークス兄様は、宮仕えの文官だから仕方がないとしても、
「ふけい♪ふけい♪ルーシーはふけい♪」
と意味も分からないのに 面白がってマークス兄様の周りで踊り出す子供たちもおバカである。
ウチの子たちをフリーダムに育てすぎただろうか。
まあ私の血も入ってるのでしょうがないのか。
もう少しダークの血が多ければ良かったのにと思わないでもない。
「ねぇダーク……」
ずっと無言で話を聞いていたダークに意見を求める。
「まあ義兄さんを責めても仕方ないだろう。
今回は短時間で解放されそうだし、義兄さんの肩を持つわけじゃないが個人的にはまだマシな気がする。
イヤだが。本当にイヤだが」
と渋々な感じで私に視線を向けた。
そうよね。どうせ王族のお願いって命令だものね。
動物園も久し振りだし、どうせ行くなら楽しんで来ますか。
「もういいわ兄様。接待役引き受けるしかないんでしょ。諦めたわ」
「リーシャぁぁぁ、済まないぃぃぃ~っ」
床に額をこすりつけるマークス兄様に、
(ああ、土下座家系は私の実家の血筋だったのねえ)
などと呑気な事を思い、私はカフェオレを飲むのだった。
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