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レッツサバイバル!【8】
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「後片付けも済ませたし、そろそろおいとましましょうかルーシー。もうホテルにチェックインも出来る時間でしょう?」
私はさっきから目をうるうるさせてまとわりついて来るアナとブレナンをガン無視して、にこやかにルーシーに声をかけた。
「左様でございますね。あまりサバイバル訓練のお邪魔をしてもいけませんし」
「母様母様、アナはもう少しここにいたいな♪」
「母様、僕ももっと父様やお兄さんたちの話をききたい」
きゅるるんっ、と効果音でも聞こえそうなほど猫かぶりモードが発動している2人だが、単にホテルに戻ったらお仕置きが発動するのが分かっているので、引き延ばし作戦に出ているだけである。
馬車でも飛ばして20分はかかったのだ。
子供たちの足なら何時間かかるか分からない。
「あら、空耳かしら。まさかあなたたち残るの?
馬車は一台しかないけれど、歩いて町まで来られるのかしらね?別にいいけれど。
ああ、そう言えばプルプル町を通る時に大きな商店街があったわねえルーシー。ケーキとか面白そうなオモチャとかあるかも知れないわね。クロエ、カイル、一緒に覗いて見る?」
「行きたいっ!!」
「そう、じゃ、残念だけどブレナンとアナには頑張って歩いてきてもら───」
私は火の始末を終えて立ち上がろうとして、肩をぐぐぐっ、と押さえられた。
「イヤですよ母様。なにも行かないとはいってないじゃありませんか。僕ももちろんお付き合いいたしますええ」
「アナは虫を入れるカゴがほしいの母様~」
「まあ、でもお話がしたいのでしょう?母様は邪魔したくないもの」
「話はいつでも聞けますが、プルプル町にはめったにこられませんから。なあアナ」
「そうなのです!アナも大きな町をよく見たいと思っていたのです」
プルプル町は我が家のあるマーブルマーブル町より結構大きい。感覚としてはローカル色の強い町と都会的な町といったところだろうか。
「そう。無理強いしたのでなければいいのよ。じゃ馬車に乗っててね」
「はーい!」
すっかり目の前のことに囚われて自分たちがお仕置きを受けることを忘れているブレナンとアナは、いそいそと馬車に乗り込んでいった。
本当に私の子だけあって単純思考である。
「ダーク、それじゃ私たちはプルプル町へ向かうわね」
私たちを見送りに来ていたダークが名残惜しそうにこちらを見た。
「ああ……仕方ないが寂しいな……。だが、食糧が確保できなくてサバイバル訓練も思うように行かないから、明日にでも戻ろうとヒューイとも話してたんだ」
「まあ、そうなの?…………じゃあ、諦めようかしら」
「何がだ?」
「いえね、ダークがあと数日は戻れないだろうと思って、1日ぐらい一緒に眠れたらいいなぁとホテルも奮発してスイートにしたんだけど、明日戻るなら必要な──」
「いや、夜までに馬で行く。絶対に」
「え、でも」
「こちらには朝早く戻ればいい。リーシャと一緒に寝る。絶対に寝る」
「おーい、俺をぼっちにするのか?冷たい奴だなぁ」
ヒューイさんが苦笑した。
「まあ美味いカレーも食わせてもらったし、文句は言えねーな。広々とテント使わせて貰うわ。だが訓練だけはしていけよ」
「勿論だ」
「あの、ヒューイさん本当にすみません、ワガママ言ってしまって」
私は赤面しながら頭を下げた。
というか私があんなこと言わなきゃ良かったと反省した。ダークは私に甘いから、もし可能ならと期待してたところがあったのも事実だし。
「気にしない気にしない。明日は帰れるし、一晩ぐらいは家族でゆっくりしてくればいい」
「すまないな。帰ったら1日有休取っていいから」
「おっ、やりぃ!」
「じゃ、リーシャあとでな」
「ええ、後で。しっかり仕事はしてきてね」
「分かってる」
ぎゅっ、と抱き締められる。
そのあと馬車まで一緒に来て、アレックに頼むぞ、と声をかけると子供たちにも、
「父様も後でホテルに行くから、夕食は一緒に食べような」
と手を振った。
「本当?待ってるね父様!」
「後でね!」
私たちは、大きく手を振るダークに見送られながらその場を後にした。
(嬉しいなぁ、ダークと一緒に眠れるわ~)
私は呑気だった。
まさかルーシーの不安が的中するなんて、この時は思いもしてなかったのだ。
私はさっきから目をうるうるさせてまとわりついて来るアナとブレナンをガン無視して、にこやかにルーシーに声をかけた。
「左様でございますね。あまりサバイバル訓練のお邪魔をしてもいけませんし」
「母様母様、アナはもう少しここにいたいな♪」
「母様、僕ももっと父様やお兄さんたちの話をききたい」
きゅるるんっ、と効果音でも聞こえそうなほど猫かぶりモードが発動している2人だが、単にホテルに戻ったらお仕置きが発動するのが分かっているので、引き延ばし作戦に出ているだけである。
馬車でも飛ばして20分はかかったのだ。
子供たちの足なら何時間かかるか分からない。
「あら、空耳かしら。まさかあなたたち残るの?
馬車は一台しかないけれど、歩いて町まで来られるのかしらね?別にいいけれど。
ああ、そう言えばプルプル町を通る時に大きな商店街があったわねえルーシー。ケーキとか面白そうなオモチャとかあるかも知れないわね。クロエ、カイル、一緒に覗いて見る?」
「行きたいっ!!」
「そう、じゃ、残念だけどブレナンとアナには頑張って歩いてきてもら───」
私は火の始末を終えて立ち上がろうとして、肩をぐぐぐっ、と押さえられた。
「イヤですよ母様。なにも行かないとはいってないじゃありませんか。僕ももちろんお付き合いいたしますええ」
「アナは虫を入れるカゴがほしいの母様~」
「まあ、でもお話がしたいのでしょう?母様は邪魔したくないもの」
「話はいつでも聞けますが、プルプル町にはめったにこられませんから。なあアナ」
「そうなのです!アナも大きな町をよく見たいと思っていたのです」
プルプル町は我が家のあるマーブルマーブル町より結構大きい。感覚としてはローカル色の強い町と都会的な町といったところだろうか。
「そう。無理強いしたのでなければいいのよ。じゃ馬車に乗っててね」
「はーい!」
すっかり目の前のことに囚われて自分たちがお仕置きを受けることを忘れているブレナンとアナは、いそいそと馬車に乗り込んでいった。
本当に私の子だけあって単純思考である。
「ダーク、それじゃ私たちはプルプル町へ向かうわね」
私たちを見送りに来ていたダークが名残惜しそうにこちらを見た。
「ああ……仕方ないが寂しいな……。だが、食糧が確保できなくてサバイバル訓練も思うように行かないから、明日にでも戻ろうとヒューイとも話してたんだ」
「まあ、そうなの?…………じゃあ、諦めようかしら」
「何がだ?」
「いえね、ダークがあと数日は戻れないだろうと思って、1日ぐらい一緒に眠れたらいいなぁとホテルも奮発してスイートにしたんだけど、明日戻るなら必要な──」
「いや、夜までに馬で行く。絶対に」
「え、でも」
「こちらには朝早く戻ればいい。リーシャと一緒に寝る。絶対に寝る」
「おーい、俺をぼっちにするのか?冷たい奴だなぁ」
ヒューイさんが苦笑した。
「まあ美味いカレーも食わせてもらったし、文句は言えねーな。広々とテント使わせて貰うわ。だが訓練だけはしていけよ」
「勿論だ」
「あの、ヒューイさん本当にすみません、ワガママ言ってしまって」
私は赤面しながら頭を下げた。
というか私があんなこと言わなきゃ良かったと反省した。ダークは私に甘いから、もし可能ならと期待してたところがあったのも事実だし。
「気にしない気にしない。明日は帰れるし、一晩ぐらいは家族でゆっくりしてくればいい」
「すまないな。帰ったら1日有休取っていいから」
「おっ、やりぃ!」
「じゃ、リーシャあとでな」
「ええ、後で。しっかり仕事はしてきてね」
「分かってる」
ぎゅっ、と抱き締められる。
そのあと馬車まで一緒に来て、アレックに頼むぞ、と声をかけると子供たちにも、
「父様も後でホテルに行くから、夕食は一緒に食べような」
と手を振った。
「本当?待ってるね父様!」
「後でね!」
私たちは、大きく手を振るダークに見送られながらその場を後にした。
(嬉しいなぁ、ダークと一緒に眠れるわ~)
私は呑気だった。
まさかルーシーの不安が的中するなんて、この時は思いもしてなかったのだ。
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