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レッツサバイバル!【1】

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【ダーク視点】

「………はぁぁぁ………」

「ダーク、溜め息つくと幸せが逃げるって言うだろ。それに俺も滅入るからやめれ」


 プルプル町の近くの山間に向かいながら、俺は馬の揺れに併せて知らず知らず溜め息がこぼれていた。

「これから1週間もリーシャに会えない………子供たちとも遊べない………」

 リーシャと結婚してからそんなに離れていたことなどないのだ。溜め息も出よう。

「仕方ねえだろうが仕事なんだから。俺だってミランダとシャーロッテを残して家を出るのがどれだけ辛かったか」

 俺とヒューイは顔を見合わせて、お互い溜め息をついた。

「………別に、サバイバル訓練が悪いとは言わんが、もっと近くで出来ると思わないか?1、2時間で行き来出来る距離に幾らでもあるだろう森なんて。何も移動に5時間もかかるところにしなくても………」

「いや、通いが出来る距離じゃサバイバル訓練にならんだろうが」

「それはそうなんだが………」


 朝出かける時に、リーシャがキスしてくれた頬を撫でながら、まだ数時間しか経ってないのに早く帰りたいと思う自分の女々しさに情けなくなる。

 俺は、こんなにも弱かっただろうか。


 昨夜はリーシャが、

「1週間って、長いわよね………やっぱりダークが側にいないと寂しいわ」

 などと余りにも可愛い事を言うので、ついつい俺のムスコが大活躍してしまったが、本当にウチの奥さんの可愛さは尋常ではない。

 出会った頃から全くトシを取っていないように思える。まあ昔から童顔だが。

 むしろ益々輝く美貌と天使のような微笑み、耳に心地好い声に漂う色気が倍増され、全てが前より惹き付けられてしまう。

 神が俺に与えてくれた最高の宝物である。

 子供たちも育つにつれ、それぞれ個性が豊かになってきた。俺とリーシャの子だが、有り難いことに女神の血が色濃く出てくれたので、みんなリーシャ似の、将来が楽しみな美男美女予備軍である。

 性格もリーシャ似で、大雑把………能天………おおらかさと他者への思いやりに溢れていて、友人も多い。

 まぁカイルはちょっと俺に似て融通の利かない真面目すぎるところがあったりするが、剣の鍛練を熱心にしており、いずれ騎士団に入りたいと言ってくれているのが嬉しい。

 息子に同じ仕事に就きたいと言われて喜ばない父親がいようか。

 あと10年位は現役でいられるよう、鍛練も怠れない。

 だが、俺も44である。

 リーシャには先日、

「ズルいわ………なんでいつまでも30代そこそこにしか見えないのよ!このイケメン年齢詐偽~!」

 とてしてし叩かれたが、自分が若く見えるなどと思った事もない。
 リーシャは優しいのできっと俺を持ち上げてくれたのだろう。

 だが今まで以上に鍛えていても体力、筋力ともに年齢による衰えは少しずつ出ている気はする。

 リーシャとの夜の生活も、明日は休みだと言う日の夜でも、一晩に3回も4回も致すのはなかなか難しくなってきた。

「私の月の障りがない時に毎晩必ず致すだけでもとても40代とは思えないから」

 と真顔で言われたが、毎晩妻を抱きたいと思うのは異常なのだろうか。


「………あのなヒューイ、お前も40になったと思うが」

「やかましい。40がどうした」

 ヒューイが眉間にシワを寄せて蹴りを入れる真似をする。

「その、夜の生活の頻度はどのぐらいだ?」

「んぁ?………うーん、週に2回ぐらいかなぁ?ま、40にしちゃ多いと思うが」

「週に2回で多いのかっ?!」

「いや、お前な、そらぁ20の時の馬車馬のような元気はないだろ………え?ダークお前まさか年上のクセにもっとしてんの?!週3?まさか週4はねぇよな?」

「………ほぼ毎晩………いや、でも障りがある時は流石にやらないぞ?」

 俺は弁解するように付け加えた。

「………はあああ~っ?!種馬かよ………よくリーシャちゃん嫌がらないなあ」

「いっ、嫌がるほどだろうか?」

「あのなぁ、専業主婦とはいえ育児や炊事洗濯までしてクタクタだろうに、夜のお務めも毎日頑張らせるとか意外とドSだな」

 いや、執筆業もしているが。
 だとすると、帰ってから子供と遊んだり食器洗いを手伝ったりするぐらいではリーシャの疲れなど取れはしないではないか。

「嫌われて、しまうだろうか………」

 リーシャは俺に甘いので、知らず知らずに無理強いをしているかも知れない。

「今は許してくれても、流石に体力がもたないとかいって寝室を別にされるかも知れんぞ。リーシャちゃんか弱いからなー」

 寝室を別に?

 リーシャを抱き締めて眠るのが1日の安らぎなのに?いや絶対に無理無理無理。

「………週5ぐらいにするべきか?」

「せめて週3にしたれ」

「………………」

「なに頑なにオモチャ売り場から動かない子供みたいなツラしてやがんだ。
 お前の希望はどうでもいいんだよ。リーシャちゃんを労りたいんだろ?」

「………ああ」

「じゃ、週3で。他の日は大人しく自分で抜いて寝ろ。
 お前のペースに合わせてたらリーシャちゃんが持たないぞ。倒れでもしたらどうすんだ」

「想像もしたくない」

「だったら少しは考えろ」

「………分かった」


 サバイバル訓練の目的地が見えてきた。
 第一から第四部隊の隊員たちも、ひとまずのゴールが見えてきた事で少し元気を取り戻したようだ。



「しかしよ~………」

「ん?」

「俺たち、ここに来るまで家族と夫婦生活の話しかしてねーな」

「そうだな」

「………それって、上に立つ人間としてどうなんだろうな?」

「だが、家族を大切に出来ない男に国は護れないと思うが」

「………そらそうだ。よし、とっとと鍛えてさっさと帰るか」

「おう」


 俺はリーシャの元へ帰る日を心待ちに、鬼指揮官モードに切り替えるのだった。
 


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