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マーブルマーブル感謝祭【11】
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障害物競走は、私の身内は誰も出ていなかったが、くぐり抜ける網と靴紐を結んで抜け出にくくしたり、水溜まりがやけに深くて人がズボッと腰元まで沈んだり、飛び越える障害物の高さが微妙に変わっていたりと、ゆるいルールを逆手に取った、ギリギリ違反失格を取られないレベルの地味~な妨害を双方ともに繰り広げていた。
結果、現在は総合得点で赤チームが結構な差で勝っている状況だ。
「うーん………」
私は腕を組んだ。
「どーしたのかーさま?」
クロエが私を見上げて問いかけた。
「いえね、父様も伯父様たちも白チームじゃない?後の綱引きと借り物競争で挽回できるかしらねぇと思って」
「あ、確か綱引きはヒューイが出るぞ」
横に座っていたダークが思い出したように私を見た。
「さっきたまたま運営ブースで会って聞いたわよ。大体100メートル走も応援し忘れてたから、謝っておいたわ」
「そうか。奴も白チームだと聞いてる」
「かーさま、クロエはジークさまのおうえんをするのであかさんおうえんするの」
「ふーんだ、うらぎりものー」
「みらいのだんなさまとかぞくとのあいだでゆれるオトメゴコロでしたが、だんなさまをとりました。
でもこれはただしいでしょう?かーさまもとーさまおうえんするもの」
「………そうね。でもまだ旦那様じゃないでしょ?ずーっとずーっと先の話だし、確定じゃないのだから」
「つきひがすぎるのはあっというまなのよ、とひでんかさまがおしえてくれました。だからそんなにさきでもないの」
だからナスターシャ妃殿下はどうしてそうろくでもない事を吹き込むかなー。悪気がないからいいってもんでもないぞー。
私は溜め息をついた。
「少なくとも学校を卒業して18になるまでは結婚させないからな、クロエ?」
ダークがたしなめ顔で言うが、ニコニコ頷いて軽くあしらわれている。
やあねー、この子大きくなったら本当にジークライン王子のとこに嫁に行きそうだわ。まあ幸せならいいんだけども。
あの変態ギュンター王子がさっさと結婚して跡継ぎでも生まれればいいのよね。
上手くいけば降籍して結婚出来る可能性も出てくるし。
うん、そっち方向が一番理想的ね。
ジークライン王子に少し頑張って貰うよう頼んどこうかしら。
変態が増殖するのはアレだけど、まあ増えるのはウチの国じゃないし。
隣国の変態は隣国で解決してもらおう。
ダークがふと立ち上がり、国王陛下の背中にひっついて寝こけていたブレナンをぺりぺりっとはがし、王妃様の膝上ですぴすぴ寝ていたアナも引っ張りあげて、お詫びして連れ戻った。
戻ってくる時にはダークの背中にブレナンが、胸元にはアナが引っついていた。
君らコアラか。すぐにあちこち掴まっては眠りおって。
カイルはどこだと見ると、レイモンド王子と一緒に、騎士団のところで楽しそうに武勇伝を聞いている。
身内以外にもフレンドリー過ぎるウチの子たちの性格にも、王族ホイホイの要因は潜んでいるんじゃなかろうか。
まあ、でもまだ小さな子に対して、あのちょっと禿げ散らかしたオイチャンとペアのムチムチしたオバチャンは、この国で一番偉い人なのよー、といっても本当の意味での恐ろしさは分かるまい。
レイモンド王子でさえ「広い家と庭があるお金持ちの坊っちゃん」程度の認識なのだ。王子って呼んでるのに。
愛称じゃないってのよ。
カイルは学校に上がったせいか、辛うじて「偉い人」という概念をうっすら把握してるようだが、少し前に
「じゃ、ウチで一番偉い人はだーれ?」
と聞くと、手を上げて、
「かーさま!」
と即答するようなアホな子なので、本当に理解してるかは判断できない。
ダークにその話をして、家長としてもっとビシッと厳しく育てた方がいいかしらね、と相談したら、
「………え?でも、間違ってないぞ?」
と不思議そうに返されたのでわき腹にグーパンしておいた。
でも腹筋で弾かれて自分の手首を捻挫したので、被害は私の方が上だが。
「お前かーお前なのかぁー、ろくでもない知識を与えとんのはーーーおぉ~ぅ?!」
「リーシャ、落ち着け!チンピラさんが降臨してる。それと手首が赤くなってるぞ。薬箱はどこだ薬箱は」
慌てたようにダークが引き出しをガサガサ開けて探している。
「そらチンピラも舞い降りるっちゅうねん。なんでダークじゃなくヒッキーの私が一番偉い認定やねん、おかしいやろが。
大黒柱やろ普通のご家庭じゃ。父親が一番ちゅうもんやないか旦那さん、えぇ?」
ダークは私の手首に湿布をしてぐるぐると包帯を巻きながら、
「だが、ウチの使用人はリーシャの判断が最終決定だし、俺の稼ぎは領地の税収を足してもリーシャには及ばないし、大黒柱と言っても形だけのようなモノだから。
我が家はそれで上手く回っているんだから良いんじゃないだろうか」
手当てを終えると、
「リーシャはそれじゃダメなのか?」
と顔を覗き込まれた。
「………近い近い。眩しいからもう少し離れて。ダメって言うか、大黒柱はダークだからあくまでも」
「おう。じゃそれで。手首はキツくないか?………ところで俺の大黒柱が仕事をしたいとさっきから待機中なんだが」
「じゃそれで、じゃないわよ。さらっと流したわね。ええありがとう大丈夫よ。………ダークが下ネタを気軽に言うようになったのは、間違いなく私のせいね。
私の永遠の白馬の王子様がどんどん世俗にまみれていくわ………」
「安心しろ。俺を白馬の王子様とか言うのはリーシャ位だから。それに軽口叩ける相手がいるのは幸せじゃないか」
それもそうねぇとか言ってるうちにベッドに楽々連れ込まれてしまった。最近はダークが時々ルーシーみたいに思えてくるのは何でかしらねぇ。
ぼーーっ、とそんなことを思っている内に綱引きが始まっていた。
おっといけない、と白チームの応援をするため立ち上がった。
でも参加人数が多すぎてヒューイさんが見つけられない。
100メートルはありそうな細い紐を捩った綱を引き合う、実用的な筋肉の群れ。腐女子のご馳走である。
「ルーシーさぁんルーシーさぁん」
小声で呼び掛けた。
「はいはーいルーシーでーす」
「桃源郷はココにあり、と言い切るのは大袈裟でしょうかー?」
「いいえ、私も先程から神への感謝が止まりませんです~。あ、だから感謝祭なんですわね~」
「違うと思います~」
「私の人生でこんな一斉に男性の魅惑的な筋肉を観賞するのは初めてですわ~!年に1度と言わず半年とか3ヶ月に1度くらい開催して頂きたいものですわねえ~フランでした~」
「わっしょいわっしょい♪」
「あら、リーシャさぁんその掛け声はなんですの~?」
「腐女子の荒ぶるココロをより萌え上がらせる呪文で~す」
「………わっしょいわっしょい♪………あら不思議、何だかテンションが上がりますわね。
私も一緒に………わっしょいわっしょいっ♪」
「ルーシーでーす。
わたくしも失礼しまーす。
わっしょいわっしょい♪」
「「「わっしょいわっしょい♪」」」
筋肉観賞と実況中継につい夢中になりすぎて、気がつけば白チームが勝利していた。
………ヒューイさんには、すんごく応援したと力説しておこう。
後はダークやジークラインが出場する借り物競争でおしまいである。
結果、現在は総合得点で赤チームが結構な差で勝っている状況だ。
「うーん………」
私は腕を組んだ。
「どーしたのかーさま?」
クロエが私を見上げて問いかけた。
「いえね、父様も伯父様たちも白チームじゃない?後の綱引きと借り物競争で挽回できるかしらねぇと思って」
「あ、確か綱引きはヒューイが出るぞ」
横に座っていたダークが思い出したように私を見た。
「さっきたまたま運営ブースで会って聞いたわよ。大体100メートル走も応援し忘れてたから、謝っておいたわ」
「そうか。奴も白チームだと聞いてる」
「かーさま、クロエはジークさまのおうえんをするのであかさんおうえんするの」
「ふーんだ、うらぎりものー」
「みらいのだんなさまとかぞくとのあいだでゆれるオトメゴコロでしたが、だんなさまをとりました。
でもこれはただしいでしょう?かーさまもとーさまおうえんするもの」
「………そうね。でもまだ旦那様じゃないでしょ?ずーっとずーっと先の話だし、確定じゃないのだから」
「つきひがすぎるのはあっというまなのよ、とひでんかさまがおしえてくれました。だからそんなにさきでもないの」
だからナスターシャ妃殿下はどうしてそうろくでもない事を吹き込むかなー。悪気がないからいいってもんでもないぞー。
私は溜め息をついた。
「少なくとも学校を卒業して18になるまでは結婚させないからな、クロエ?」
ダークがたしなめ顔で言うが、ニコニコ頷いて軽くあしらわれている。
やあねー、この子大きくなったら本当にジークライン王子のとこに嫁に行きそうだわ。まあ幸せならいいんだけども。
あの変態ギュンター王子がさっさと結婚して跡継ぎでも生まれればいいのよね。
上手くいけば降籍して結婚出来る可能性も出てくるし。
うん、そっち方向が一番理想的ね。
ジークライン王子に少し頑張って貰うよう頼んどこうかしら。
変態が増殖するのはアレだけど、まあ増えるのはウチの国じゃないし。
隣国の変態は隣国で解決してもらおう。
ダークがふと立ち上がり、国王陛下の背中にひっついて寝こけていたブレナンをぺりぺりっとはがし、王妃様の膝上ですぴすぴ寝ていたアナも引っ張りあげて、お詫びして連れ戻った。
戻ってくる時にはダークの背中にブレナンが、胸元にはアナが引っついていた。
君らコアラか。すぐにあちこち掴まっては眠りおって。
カイルはどこだと見ると、レイモンド王子と一緒に、騎士団のところで楽しそうに武勇伝を聞いている。
身内以外にもフレンドリー過ぎるウチの子たちの性格にも、王族ホイホイの要因は潜んでいるんじゃなかろうか。
まあ、でもまだ小さな子に対して、あのちょっと禿げ散らかしたオイチャンとペアのムチムチしたオバチャンは、この国で一番偉い人なのよー、といっても本当の意味での恐ろしさは分かるまい。
レイモンド王子でさえ「広い家と庭があるお金持ちの坊っちゃん」程度の認識なのだ。王子って呼んでるのに。
愛称じゃないってのよ。
カイルは学校に上がったせいか、辛うじて「偉い人」という概念をうっすら把握してるようだが、少し前に
「じゃ、ウチで一番偉い人はだーれ?」
と聞くと、手を上げて、
「かーさま!」
と即答するようなアホな子なので、本当に理解してるかは判断できない。
ダークにその話をして、家長としてもっとビシッと厳しく育てた方がいいかしらね、と相談したら、
「………え?でも、間違ってないぞ?」
と不思議そうに返されたのでわき腹にグーパンしておいた。
でも腹筋で弾かれて自分の手首を捻挫したので、被害は私の方が上だが。
「お前かーお前なのかぁー、ろくでもない知識を与えとんのはーーーおぉ~ぅ?!」
「リーシャ、落ち着け!チンピラさんが降臨してる。それと手首が赤くなってるぞ。薬箱はどこだ薬箱は」
慌てたようにダークが引き出しをガサガサ開けて探している。
「そらチンピラも舞い降りるっちゅうねん。なんでダークじゃなくヒッキーの私が一番偉い認定やねん、おかしいやろが。
大黒柱やろ普通のご家庭じゃ。父親が一番ちゅうもんやないか旦那さん、えぇ?」
ダークは私の手首に湿布をしてぐるぐると包帯を巻きながら、
「だが、ウチの使用人はリーシャの判断が最終決定だし、俺の稼ぎは領地の税収を足してもリーシャには及ばないし、大黒柱と言っても形だけのようなモノだから。
我が家はそれで上手く回っているんだから良いんじゃないだろうか」
手当てを終えると、
「リーシャはそれじゃダメなのか?」
と顔を覗き込まれた。
「………近い近い。眩しいからもう少し離れて。ダメって言うか、大黒柱はダークだからあくまでも」
「おう。じゃそれで。手首はキツくないか?………ところで俺の大黒柱が仕事をしたいとさっきから待機中なんだが」
「じゃそれで、じゃないわよ。さらっと流したわね。ええありがとう大丈夫よ。………ダークが下ネタを気軽に言うようになったのは、間違いなく私のせいね。
私の永遠の白馬の王子様がどんどん世俗にまみれていくわ………」
「安心しろ。俺を白馬の王子様とか言うのはリーシャ位だから。それに軽口叩ける相手がいるのは幸せじゃないか」
それもそうねぇとか言ってるうちにベッドに楽々連れ込まれてしまった。最近はダークが時々ルーシーみたいに思えてくるのは何でかしらねぇ。
ぼーーっ、とそんなことを思っている内に綱引きが始まっていた。
おっといけない、と白チームの応援をするため立ち上がった。
でも参加人数が多すぎてヒューイさんが見つけられない。
100メートルはありそうな細い紐を捩った綱を引き合う、実用的な筋肉の群れ。腐女子のご馳走である。
「ルーシーさぁんルーシーさぁん」
小声で呼び掛けた。
「はいはーいルーシーでーす」
「桃源郷はココにあり、と言い切るのは大袈裟でしょうかー?」
「いいえ、私も先程から神への感謝が止まりませんです~。あ、だから感謝祭なんですわね~」
「違うと思います~」
「私の人生でこんな一斉に男性の魅惑的な筋肉を観賞するのは初めてですわ~!年に1度と言わず半年とか3ヶ月に1度くらい開催して頂きたいものですわねえ~フランでした~」
「わっしょいわっしょい♪」
「あら、リーシャさぁんその掛け声はなんですの~?」
「腐女子の荒ぶるココロをより萌え上がらせる呪文で~す」
「………わっしょいわっしょい♪………あら不思議、何だかテンションが上がりますわね。
私も一緒に………わっしょいわっしょいっ♪」
「ルーシーでーす。
わたくしも失礼しまーす。
わっしょいわっしょい♪」
「「「わっしょいわっしょい♪」」」
筋肉観賞と実況中継につい夢中になりすぎて、気がつけば白チームが勝利していた。
………ヒューイさんには、すんごく応援したと力説しておこう。
後はダークやジークラインが出場する借り物競争でおしまいである。
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