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マーブルマーブル感謝祭【4】
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「やあシャインベック夫人!先に寛いでて済まないね」
「リーシャ、こっちよこっち」
ライリー殿下とマットの隣をぽふぽふ叩くナスターシャ妃殿下の呼び掛けに、お前ら親戚かと突っ込みたくなる気持ちを抑えつつ、
「すみません遅くなりまして………運営の準備が………」
などとモゴモゴ言い訳しながらナスターシャ妃殿下の隣に腰を下ろす。
まだ背後にダークやフランがいるから耐えられるが、何故か心強い安定剤になるはずのアーネストやアレック、ジュリアたちの姿が見えない。
「ダーク、みんなはどうしたの?」
小声でダークを振り向き尋ねると、
「使用人が大勢いると狭くて邪魔だろうから、斜め後方に予備のラグマットを敷いてそちらで観戦するそうだ」
と指をさして教えてくれた。
………主人たちを置いて早々に逃げたわね。
キッ、とそちらを見ると、アーネストやアレック、マカランはそっと目を逸らし、ジュリアたち女性陣はコースに入ってくる参加者に必要以上に拍手や声援を送り、こちらには気づかない振りをしている。
「あ、そう言えばリーシャ様、例の件をジュリアたちにも早めに伝えておかないといけませんわね」
ルーシーがクッキーとパウンドケーキ作成の件を持ち出した。
「ああ、そうよね」
「わたくし早速あちらに伝えて参ります」
深くお辞儀をして流れるように消えていった。一瞬間を置いて、ルーシーにも上手いこと逃げられたと気づいたが後の祭りである。
「あら、ルーシーだけじゃ責められて可哀想だから私もフォローに………」
などと言って立ち上がろうとしたフランの腕をガシッと掴み、ぐぐぐっと再度座らせる。
「ナスターシャ妃殿下、私の大親友のフランシーヌ・パームス公爵夫人でございます。
今回ナスターシャ妃殿下がいらっしゃるとの事で、是非とも美しさの秘訣を伺いたいからランチをご一緒したいと」
と笑顔で紹介した。
旦那様は爵位が低いため婿入りをしているので、公爵位はそのままである。
私たち夫婦よりも全然上の立場なので、上流階級のあしらい方を参考にさせて頂こうと思う。
別の表現で直訳すると『何があっても逃がさない』である。
「まあ、イヤだわ。貴女の方がよほど美しくてよ。フランシーヌと呼んでも宜しくて?」
「………こ、光栄でございますわ、ナスターシャ妃殿下」
「私は少々夫と話があるので、フラン、良かったらこちらに座ってちょうだい。
美容の話は女性にとっては大問題だものねぇ。リアーナは私が見てるから安心して」
と、ナスターシャ妃殿下の隣をサッと空ける。
「あ、あり、ありがとうリーシャ。妃殿下、お話を少し伺えますか?」
「うふふ。幾らでも聞いて頂戴な」
逃げられなかった上にナスターシャ妃殿下の隣になって泣きそうなフランだが、流石に公爵夫人である。
すかさず話を流れるように紡ぎ出せるのは、私のようなヒッキーには魔法使いのようだ。
死に水は取るわ、と心で十字を切り、リアーナの頭を撫でながら、
「お母様の話が終わるまでリーシャおば様と一緒にいてね」
と笑いかけた。
「リーシャ………良かった来てくれて」
ダークが横に座り直して心からホッとしたように呟いた。
「『ねえ私もう帰ってもいい?』とか言って屋敷に戻ったんじゃないかと気が気じゃなかった」
………やだわー。
ルーシーだけでなくダークにまで私の言動パターンが正確に読まれ出している。
「もう。ダークや子供たちを置いて帰る訳ないでしょう?」
小声で話しながらてしてしダークの手を叩いた。
嘘ですごめんなさい。本当はヒッキーの小心ゆえに丸投げして逃げたかったです。
「………おう」
嬉しそうに笑うダークは、40になっても私には相変わらず30そこそこにしか見えない人外の美青年である。
(ウチの旦那様はどうしてこんなに素敵なのかしらね………)
思いながら軽くふぅ、と溜め息をつくと、後ろで微動だにせず立っていた王宮詰めの騎士たちが若干動揺したような動きを見せた。
周囲の一般客もちろちろ視線を寄越してくるのは、ダークの横で子供たちが入場するところを見ていた私には気づかなかった。
「あのなリーシャ、物憂げな感じは、その、色気が出過ぎるから、止めなさい」
ダークに慌てたように言われて、
「………物憂げ?どこに色気が?」
と自分の姿を見下ろしたが、あー確か傾国の美女(他称)だったわね、とまた別の溜め息が出そうになる。
自分ではそうと思えない事について褒め称えられても、まるで他人事の話を聞いてる気分だ。
カイルが私たちに気づいて手をぶんぶん振っているので、同じように手を振り返した。
大体30×4リレーの参加者は18組。
6レーン使って3回となるが、下はちょこちょこ歩き始めたような2歳ぐらいから6歳までの小さな子供たちばかりである。
ハチマキ姿が可愛らしい。
この辺りまでは男女の差はさほどないので混合チームが多い。
カイルたちは最終組。
クロエは次が玉入れ競技のため、選手控え室にいる、という名目でジークラインと楽しくプチ逢瀬中だそうだ。
まあ仲良き事は美しきかな、ということで。せっかく遠くから来た事だし許してあげよう。
玉入れが終わるとランチタイム、その後障害物競争と組みダンスで終了だ。
「ところでウチの子供たちは走るのは早いのか?
ダンスの練習しかしてなかったと思うんだが。レイモンド王子も」
最初の組が走り出し、観客や親の声援がやたらとヒートアップしているのに驚きながら、ダークが疑問を投げた。
「うーん、私も実は知らなくて」
余りにハードなダンスにし過ぎたきらいがあるので、体力はついたと思うのだが。
私と違って運動神経は悪くない筈だし。
「やったー!ウチの子供たちが1位だーっ!!」
「フルーツタルトとチーズケーキは絶対よジェシーーー分かってるわねーー!!」
2つほど隣のマットに座っていた夫婦が立ち上がりガッツポーズで歓声を上げた。
周囲の親が羨ましそうに見ていた。
確かにリレーは1位の組には4人それぞれ希望者には金一封かケーキが配られるが、本当にケーキは人気があるらしい。あの家は兄弟2人が参加していたのだろう。
「この町の人たち、本当に甘いもの好きなのねえ。明日の参加者が300人ほど増えたから、帰ったらまたクッキーとパウンドケーキを作らないといけないのよ」
とダークにこぼしたら、
「………甘いもの好きと言うか、だな。
うん、まあ一番の理由はリーシャが作ったモノだからだと思う」
と返された。
「まさか私がケーキ屋の修業でもしてると思われてるのかしら?
趣味レベルの腕前なのに申し訳ないわ」
「誰もそんなことは思ってない」
ダークと話をしながらレースを見ていると、最終レースになりアナの姿が見えた。
アナ→ブレナン→レイモンド王子→カイルの順番らしい。
第一走者はみんな男の子である。
みんな、顔を赤らめたりボーッと見惚れるようにアナを見詰めていた。
そして、女の子もいたが、ブレナンやカイルを見て頬を染めている。
私は思い出した。
………あー。何か花の名前………えーと、そうそう、フォアローゼズだったわウチの子供たち。
案の定、スタートしても男の子たちは、本来なら簡単に追い抜ける筈のぽてぽて走るアナの後ろを追い越さないようにゆっくり走る。
1位でブレナンにバトンを渡して、息を切らしながら「とーさまー!かーさまー!アナがんばったよー」と手を振るアナに、ナスターシャ妃殿下は、
「もう!なんて可愛らしいのかしら!!」
と身悶えしているし、ライリー殿下も
「あそこだけ纏う空気が違うように思えるね」
とニコニコしてるし、周囲の親たちも、
「ありゃあ仕方ないよ。ウチの子面食いだもの」
「初めて見たけど、あんな小さい頃から綺麗すぎるだろ。流石リーシャ様、傾国の血統だなぁ」
「坊っちゃんたちも尋常じゃないイケメンじゃないか。ありゃ将来女の子泣かせまくりだよねぇ」
などと言う会話があちこちから聞こえてきて居たたまれない。
傾国の血統ってなんだ。
サラブレッドか。
大和民族のしぶとい血筋なのよ。
子供たちが合法ドーピングみたいなアレで本当にすみません。
ウチの子供たちがお楽しみの賞品のケーキをぶん取るような真似して本当に本当にすみません。
大差をつけて1位でカイルがゴールテープを切った辺りで申し訳なくなって俯く。
「リーシャ、ほら」
ダークが私を引き寄せ、大きな手で耳を覆って、余り聴こえないようにしてくれた。
私の居たたまれなさにすぐ気づいてくれるところがウチの旦那様である。
「………ダーク、本当にめっちゃ愛してるわ」
「おう。俺もめっちゃ愛してる。
だからクロエの玉入れの後のランチと組みダンスまで一緒に頑張ろう。な?」
「うん………」
ダークに慰めて貰っている間に、1位になったカイルたちが、「ボクたちはいつでも食べられるから」と2位のチームにケーキの権利を譲っていて、更に王子やフォアローゼズの評判がだだ上がりしていたのを知り、全私が心で泣いた。
続く玉入れでも、クロエが玉を投げ込む際に籠が若干入れやすく下がる、転びそうになったところを敵陣の男の子がサッと手を出して助けるなど、反則スレスレの行為が頻発していたが、特に申し立てをするような参加者も観客も居なかった。
機嫌が悪くなったのはジークライン王子だけである。
「クロエが転んで怪我するのはイヤだけど、僕以外の男に触られるのはもっとイヤだし………」
などとブツブツ呟いていたが、赤チームの勝利でクロエがどうだ!という満面の笑みで戻って来た途端に、
「すごいね!クロエすごく活躍してた!ビックリしたよ」
と笑顔で頭を撫で撫でしていた。
もう嫁扱いか、とダークまで眉間にシワを寄せ始めたたので、きゅいきゅい広げて、
「ほらほらダークの嫁は私だけでしょ?
わざわざ長時間かけて来てるんだしいいじゃない。クロエも喜んでるのよ?
しかめっ面を止めないと、嫁が少し嫌いになるわよダーク?いい?」
と言うと、「やだ。分かった」と素直に表情を和らげた。子供か。
まあ扱いやすい旦那様で良かった。
そして、私の作ったランチをライリー殿下とナスターシャ妃殿下にも振る舞い、子供たちも運動してお腹が空いていたのかガツガツお握りを頬張っている。
フランとリアーナも美味しそうに食べているが、体力がレッドゲージになったのか、フランがいつもとは段違いの食欲を見せていた。なむなむ。
使用人の分は、別途入れ物を分けて作っていたので、あの裏切り者たちはそのまま席で穏やかそうにお弁当をつついていた。
後で思いっきり働いて貰うわよ。
「リーシャおばさまのつくるごはん、おいしいですよねとーさま、かーさま?」
鳥の唐揚げを楊枝で刺して食べながらレイモンド王子が勝手に宣伝をしているので、本気で背後からグーで殴ってやろうかと思った。
「本当に美味しいわねぇ。あのケーキも見たけれど、見映えもよくて美味しそうだったわぁ。今度王宮に来る時に持ってきてくれると嬉しいわリーシャ」
「………私のケーキなどで宜しければ喜んで」
また行きたくもない王宮に行く用事を増やしたレイモンド王子には、暫く唐揚げを作らない刑に処すと決めた。
※ ※ ※
午後、障害物競争も無事に終わり(というか、1位を取るぞー、というハングリー精神がそこら中に溢れて熱気が凄かった)、とうとう最終種目の組みダンスである。
出場チームはカイルたちのチームを入れて7組。中学生ぐらいの子供たちのグループもいるので、上位を狙うのは厳しいかも知れないなー、と私とダークはのんびり話していた。
アレックがサポートいう事で小太鼓を持ち向かう時に、私たちを見て
「楽しみにしてて下さいね!」
と笑顔でサムズアップした時点で、若干イヤな予感がしたが、気のせいだと不安は心に押し込めた。
「リーシャ、こっちよこっち」
ライリー殿下とマットの隣をぽふぽふ叩くナスターシャ妃殿下の呼び掛けに、お前ら親戚かと突っ込みたくなる気持ちを抑えつつ、
「すみません遅くなりまして………運営の準備が………」
などとモゴモゴ言い訳しながらナスターシャ妃殿下の隣に腰を下ろす。
まだ背後にダークやフランがいるから耐えられるが、何故か心強い安定剤になるはずのアーネストやアレック、ジュリアたちの姿が見えない。
「ダーク、みんなはどうしたの?」
小声でダークを振り向き尋ねると、
「使用人が大勢いると狭くて邪魔だろうから、斜め後方に予備のラグマットを敷いてそちらで観戦するそうだ」
と指をさして教えてくれた。
………主人たちを置いて早々に逃げたわね。
キッ、とそちらを見ると、アーネストやアレック、マカランはそっと目を逸らし、ジュリアたち女性陣はコースに入ってくる参加者に必要以上に拍手や声援を送り、こちらには気づかない振りをしている。
「あ、そう言えばリーシャ様、例の件をジュリアたちにも早めに伝えておかないといけませんわね」
ルーシーがクッキーとパウンドケーキ作成の件を持ち出した。
「ああ、そうよね」
「わたくし早速あちらに伝えて参ります」
深くお辞儀をして流れるように消えていった。一瞬間を置いて、ルーシーにも上手いこと逃げられたと気づいたが後の祭りである。
「あら、ルーシーだけじゃ責められて可哀想だから私もフォローに………」
などと言って立ち上がろうとしたフランの腕をガシッと掴み、ぐぐぐっと再度座らせる。
「ナスターシャ妃殿下、私の大親友のフランシーヌ・パームス公爵夫人でございます。
今回ナスターシャ妃殿下がいらっしゃるとの事で、是非とも美しさの秘訣を伺いたいからランチをご一緒したいと」
と笑顔で紹介した。
旦那様は爵位が低いため婿入りをしているので、公爵位はそのままである。
私たち夫婦よりも全然上の立場なので、上流階級のあしらい方を参考にさせて頂こうと思う。
別の表現で直訳すると『何があっても逃がさない』である。
「まあ、イヤだわ。貴女の方がよほど美しくてよ。フランシーヌと呼んでも宜しくて?」
「………こ、光栄でございますわ、ナスターシャ妃殿下」
「私は少々夫と話があるので、フラン、良かったらこちらに座ってちょうだい。
美容の話は女性にとっては大問題だものねぇ。リアーナは私が見てるから安心して」
と、ナスターシャ妃殿下の隣をサッと空ける。
「あ、あり、ありがとうリーシャ。妃殿下、お話を少し伺えますか?」
「うふふ。幾らでも聞いて頂戴な」
逃げられなかった上にナスターシャ妃殿下の隣になって泣きそうなフランだが、流石に公爵夫人である。
すかさず話を流れるように紡ぎ出せるのは、私のようなヒッキーには魔法使いのようだ。
死に水は取るわ、と心で十字を切り、リアーナの頭を撫でながら、
「お母様の話が終わるまでリーシャおば様と一緒にいてね」
と笑いかけた。
「リーシャ………良かった来てくれて」
ダークが横に座り直して心からホッとしたように呟いた。
「『ねえ私もう帰ってもいい?』とか言って屋敷に戻ったんじゃないかと気が気じゃなかった」
………やだわー。
ルーシーだけでなくダークにまで私の言動パターンが正確に読まれ出している。
「もう。ダークや子供たちを置いて帰る訳ないでしょう?」
小声で話しながらてしてしダークの手を叩いた。
嘘ですごめんなさい。本当はヒッキーの小心ゆえに丸投げして逃げたかったです。
「………おう」
嬉しそうに笑うダークは、40になっても私には相変わらず30そこそこにしか見えない人外の美青年である。
(ウチの旦那様はどうしてこんなに素敵なのかしらね………)
思いながら軽くふぅ、と溜め息をつくと、後ろで微動だにせず立っていた王宮詰めの騎士たちが若干動揺したような動きを見せた。
周囲の一般客もちろちろ視線を寄越してくるのは、ダークの横で子供たちが入場するところを見ていた私には気づかなかった。
「あのなリーシャ、物憂げな感じは、その、色気が出過ぎるから、止めなさい」
ダークに慌てたように言われて、
「………物憂げ?どこに色気が?」
と自分の姿を見下ろしたが、あー確か傾国の美女(他称)だったわね、とまた別の溜め息が出そうになる。
自分ではそうと思えない事について褒め称えられても、まるで他人事の話を聞いてる気分だ。
カイルが私たちに気づいて手をぶんぶん振っているので、同じように手を振り返した。
大体30×4リレーの参加者は18組。
6レーン使って3回となるが、下はちょこちょこ歩き始めたような2歳ぐらいから6歳までの小さな子供たちばかりである。
ハチマキ姿が可愛らしい。
この辺りまでは男女の差はさほどないので混合チームが多い。
カイルたちは最終組。
クロエは次が玉入れ競技のため、選手控え室にいる、という名目でジークラインと楽しくプチ逢瀬中だそうだ。
まあ仲良き事は美しきかな、ということで。せっかく遠くから来た事だし許してあげよう。
玉入れが終わるとランチタイム、その後障害物競争と組みダンスで終了だ。
「ところでウチの子供たちは走るのは早いのか?
ダンスの練習しかしてなかったと思うんだが。レイモンド王子も」
最初の組が走り出し、観客や親の声援がやたらとヒートアップしているのに驚きながら、ダークが疑問を投げた。
「うーん、私も実は知らなくて」
余りにハードなダンスにし過ぎたきらいがあるので、体力はついたと思うのだが。
私と違って運動神経は悪くない筈だし。
「やったー!ウチの子供たちが1位だーっ!!」
「フルーツタルトとチーズケーキは絶対よジェシーーー分かってるわねーー!!」
2つほど隣のマットに座っていた夫婦が立ち上がりガッツポーズで歓声を上げた。
周囲の親が羨ましそうに見ていた。
確かにリレーは1位の組には4人それぞれ希望者には金一封かケーキが配られるが、本当にケーキは人気があるらしい。あの家は兄弟2人が参加していたのだろう。
「この町の人たち、本当に甘いもの好きなのねえ。明日の参加者が300人ほど増えたから、帰ったらまたクッキーとパウンドケーキを作らないといけないのよ」
とダークにこぼしたら、
「………甘いもの好きと言うか、だな。
うん、まあ一番の理由はリーシャが作ったモノだからだと思う」
と返された。
「まさか私がケーキ屋の修業でもしてると思われてるのかしら?
趣味レベルの腕前なのに申し訳ないわ」
「誰もそんなことは思ってない」
ダークと話をしながらレースを見ていると、最終レースになりアナの姿が見えた。
アナ→ブレナン→レイモンド王子→カイルの順番らしい。
第一走者はみんな男の子である。
みんな、顔を赤らめたりボーッと見惚れるようにアナを見詰めていた。
そして、女の子もいたが、ブレナンやカイルを見て頬を染めている。
私は思い出した。
………あー。何か花の名前………えーと、そうそう、フォアローゼズだったわウチの子供たち。
案の定、スタートしても男の子たちは、本来なら簡単に追い抜ける筈のぽてぽて走るアナの後ろを追い越さないようにゆっくり走る。
1位でブレナンにバトンを渡して、息を切らしながら「とーさまー!かーさまー!アナがんばったよー」と手を振るアナに、ナスターシャ妃殿下は、
「もう!なんて可愛らしいのかしら!!」
と身悶えしているし、ライリー殿下も
「あそこだけ纏う空気が違うように思えるね」
とニコニコしてるし、周囲の親たちも、
「ありゃあ仕方ないよ。ウチの子面食いだもの」
「初めて見たけど、あんな小さい頃から綺麗すぎるだろ。流石リーシャ様、傾国の血統だなぁ」
「坊っちゃんたちも尋常じゃないイケメンじゃないか。ありゃ将来女の子泣かせまくりだよねぇ」
などと言う会話があちこちから聞こえてきて居たたまれない。
傾国の血統ってなんだ。
サラブレッドか。
大和民族のしぶとい血筋なのよ。
子供たちが合法ドーピングみたいなアレで本当にすみません。
ウチの子供たちがお楽しみの賞品のケーキをぶん取るような真似して本当に本当にすみません。
大差をつけて1位でカイルがゴールテープを切った辺りで申し訳なくなって俯く。
「リーシャ、ほら」
ダークが私を引き寄せ、大きな手で耳を覆って、余り聴こえないようにしてくれた。
私の居たたまれなさにすぐ気づいてくれるところがウチの旦那様である。
「………ダーク、本当にめっちゃ愛してるわ」
「おう。俺もめっちゃ愛してる。
だからクロエの玉入れの後のランチと組みダンスまで一緒に頑張ろう。な?」
「うん………」
ダークに慰めて貰っている間に、1位になったカイルたちが、「ボクたちはいつでも食べられるから」と2位のチームにケーキの権利を譲っていて、更に王子やフォアローゼズの評判がだだ上がりしていたのを知り、全私が心で泣いた。
続く玉入れでも、クロエが玉を投げ込む際に籠が若干入れやすく下がる、転びそうになったところを敵陣の男の子がサッと手を出して助けるなど、反則スレスレの行為が頻発していたが、特に申し立てをするような参加者も観客も居なかった。
機嫌が悪くなったのはジークライン王子だけである。
「クロエが転んで怪我するのはイヤだけど、僕以外の男に触られるのはもっとイヤだし………」
などとブツブツ呟いていたが、赤チームの勝利でクロエがどうだ!という満面の笑みで戻って来た途端に、
「すごいね!クロエすごく活躍してた!ビックリしたよ」
と笑顔で頭を撫で撫でしていた。
もう嫁扱いか、とダークまで眉間にシワを寄せ始めたたので、きゅいきゅい広げて、
「ほらほらダークの嫁は私だけでしょ?
わざわざ長時間かけて来てるんだしいいじゃない。クロエも喜んでるのよ?
しかめっ面を止めないと、嫁が少し嫌いになるわよダーク?いい?」
と言うと、「やだ。分かった」と素直に表情を和らげた。子供か。
まあ扱いやすい旦那様で良かった。
そして、私の作ったランチをライリー殿下とナスターシャ妃殿下にも振る舞い、子供たちも運動してお腹が空いていたのかガツガツお握りを頬張っている。
フランとリアーナも美味しそうに食べているが、体力がレッドゲージになったのか、フランがいつもとは段違いの食欲を見せていた。なむなむ。
使用人の分は、別途入れ物を分けて作っていたので、あの裏切り者たちはそのまま席で穏やかそうにお弁当をつついていた。
後で思いっきり働いて貰うわよ。
「リーシャおばさまのつくるごはん、おいしいですよねとーさま、かーさま?」
鳥の唐揚げを楊枝で刺して食べながらレイモンド王子が勝手に宣伝をしているので、本気で背後からグーで殴ってやろうかと思った。
「本当に美味しいわねぇ。あのケーキも見たけれど、見映えもよくて美味しそうだったわぁ。今度王宮に来る時に持ってきてくれると嬉しいわリーシャ」
「………私のケーキなどで宜しければ喜んで」
また行きたくもない王宮に行く用事を増やしたレイモンド王子には、暫く唐揚げを作らない刑に処すと決めた。
※ ※ ※
午後、障害物競争も無事に終わり(というか、1位を取るぞー、というハングリー精神がそこら中に溢れて熱気が凄かった)、とうとう最終種目の組みダンスである。
出場チームはカイルたちのチームを入れて7組。中学生ぐらいの子供たちのグループもいるので、上位を狙うのは厳しいかも知れないなー、と私とダークはのんびり話していた。
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