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ルーシーは予測変換も出来る。
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【ダーク視点】
リーシャから、今回の芝居は何故か俺とリーシャに大変よく似たカップルの恋愛劇だと聞いた。
「折角だから私頑張るわね!」
とキラキラした目で言われ、愛しさに目が眩みそうである。
事前にルーシーから、
「黙っていろと言われましたが……」
と耳打ちされたが、どうやらどうせ断れないなら、愛する旦那様やヒューイ等の身内や友人の為に頑張る、全部の男の役者さんをダークだと思ってお芝居に打ち込む、恥をかかせたくないからいちゃつくシーンも頑張る、ダークは大人だから理解してくれるはず、と言っていたと聞いた。
ウチの奥さんが可愛くて可愛くて本当にどうしてくれようと思ったが、そう思われているとなると、単に個人的に嫌だとか、何とか急病とかで辞退出来ないかだなんて子供じみた事は言えなくなるではないか。
大人の男だからな。うん。大人の男。
夫としておおらかな気持ちで頑張る妻を応援するしかない。
他の男をリーシャに近寄らせるのは心底嫌だが、【俺のために】頑張るリーシャを些細な嫉妬で困らせる訳には行かない。
………しかし嫌なものは嫌だ。
ギリギリまで配役が変更になる祈りだけはしておこう。大人でもそのぐらいのお願いはしてもいい筈だ。
子供たちも芝居に出るため、クロエがジークライン王子に手紙を書いて欲しいと言うので、ルーシーが口述筆記をしていたが、クロエが最後に、
「ジークラインさまにほめてもらえるようにせいいっぱいがんばるので、ぜひみにきてください」
と言うのを聞いて、ルーシーにこそっと
「その最後だけ『遠くから応援して下さい』とかにするのはどうだろう」
と提案してみた。
基本、王族が絡むとろくな事がない。
ギュンター王子に比べるとジークライン王子の方が迷惑度は遥かに低いが、このままうっかりジークライン王子との親密度が上がるのを黙認していると、もれなく娘の嫁ぎ先が確定してしまう。
小さな反抗ぐらいは試みても良かろう。
「もしそれでジークライン様が来なかった時のクロエ様がどれだけ悲しむかと思うと、わたくしには手紙の捏造は出来かねます」
「………だよな………」
あの引っ込み思案でお芝居の苦手なクロエが、頑張るから観に来て欲しいと言うのだ。
俺も、大事な可愛い娘を悲しませるのは本意ではない。
ただ、まだ学校にも上がらないうちから、未来の夫候補として王族がチョロついてるのを味わう父親の気持ちだって考えて欲しいのである。
速便で出したようで、数日後にはジークライン王子からリーシャ宛に手紙が届いた。
「………何が言いたいのかさっぱり分からないわ」
手紙を開いたリーシャに許可を得て俺も手紙を見せてもらう。
「『ななっ、なっなっなっ!ぼぼぼっ、ぼっ、かわっ、かわかわかわ、くろっくろっくろっ、ぜっ、ぜぜぜぜっ!てだっ、てだだだ………ゆる………お手数かけますが、くれぐれもチケットお願いします』………なんだ?最後しか分からんな」
炙り出しで違う内容が綴られてるとかだろうか?
「ルーシー、分かるか?」
と手紙を渡すと、一礼して受け取ったルーシーはさっと目を通すと、
「えー、要約すると『何で僕の可愛いクロエが、よその男に触られるような芝居に出るんですか!絶対観に行きますからね!………ちょっかい出してくる男が居たら許さない』と言った意味合いでございましょうか。
恐らく動揺してペンがうまく使えなかったのではなかろうかと。文字に震えと滲みもございますし」
俺とリーシャはぽかーんとルーシーを見た。
「ルーシー、お前凄いな」
「………は?何が凄いのか分かりかねますが、ジークライン王子へのチケットの手配は旦那様よろしくお願い致します。
………あとお金は勿論払いますので、離れた席でわたくしの分も。坊っちゃまたちの芝居とリーシャ様の芝居の分を1枚ずつお願い致します」
ルーシーがすっと正座をすると、いつ見ても流れるように綺麗な土下座をした。
「おい土下座はやめてくれ。金は気にするな。チケットの手配位はするさ。いつも世話になってるからな」
俺はルーシーを立たせるとそう告げた。
「出演者が出演者でございますので、発売日初日で売り切れると思います。身内のチケット取り置きが出来るとも限りませんので、くれぐれもご注意を」
ルーシーから立ち上がる際に小声で耳打ちされた。
そうだ、有休取ったのにチケット取れませんでしたじゃ話にならない。
発売日当日はヒューイと夜明け早々に並ばなければ。
リーシャが台本を見ながら台詞をブツブツ小声で呟き、「えー、これどんな顔して言えばいいのよ」と頭を抱えたりしつつも真剣な眼差しで文字を追っている姿を眺めつつ、カレンダーに発売日を赤丸でぐりぐり囲むのだった。
リーシャから、今回の芝居は何故か俺とリーシャに大変よく似たカップルの恋愛劇だと聞いた。
「折角だから私頑張るわね!」
とキラキラした目で言われ、愛しさに目が眩みそうである。
事前にルーシーから、
「黙っていろと言われましたが……」
と耳打ちされたが、どうやらどうせ断れないなら、愛する旦那様やヒューイ等の身内や友人の為に頑張る、全部の男の役者さんをダークだと思ってお芝居に打ち込む、恥をかかせたくないからいちゃつくシーンも頑張る、ダークは大人だから理解してくれるはず、と言っていたと聞いた。
ウチの奥さんが可愛くて可愛くて本当にどうしてくれようと思ったが、そう思われているとなると、単に個人的に嫌だとか、何とか急病とかで辞退出来ないかだなんて子供じみた事は言えなくなるではないか。
大人の男だからな。うん。大人の男。
夫としておおらかな気持ちで頑張る妻を応援するしかない。
他の男をリーシャに近寄らせるのは心底嫌だが、【俺のために】頑張るリーシャを些細な嫉妬で困らせる訳には行かない。
………しかし嫌なものは嫌だ。
ギリギリまで配役が変更になる祈りだけはしておこう。大人でもそのぐらいのお願いはしてもいい筈だ。
子供たちも芝居に出るため、クロエがジークライン王子に手紙を書いて欲しいと言うので、ルーシーが口述筆記をしていたが、クロエが最後に、
「ジークラインさまにほめてもらえるようにせいいっぱいがんばるので、ぜひみにきてください」
と言うのを聞いて、ルーシーにこそっと
「その最後だけ『遠くから応援して下さい』とかにするのはどうだろう」
と提案してみた。
基本、王族が絡むとろくな事がない。
ギュンター王子に比べるとジークライン王子の方が迷惑度は遥かに低いが、このままうっかりジークライン王子との親密度が上がるのを黙認していると、もれなく娘の嫁ぎ先が確定してしまう。
小さな反抗ぐらいは試みても良かろう。
「もしそれでジークライン様が来なかった時のクロエ様がどれだけ悲しむかと思うと、わたくしには手紙の捏造は出来かねます」
「………だよな………」
あの引っ込み思案でお芝居の苦手なクロエが、頑張るから観に来て欲しいと言うのだ。
俺も、大事な可愛い娘を悲しませるのは本意ではない。
ただ、まだ学校にも上がらないうちから、未来の夫候補として王族がチョロついてるのを味わう父親の気持ちだって考えて欲しいのである。
速便で出したようで、数日後にはジークライン王子からリーシャ宛に手紙が届いた。
「………何が言いたいのかさっぱり分からないわ」
手紙を開いたリーシャに許可を得て俺も手紙を見せてもらう。
「『ななっ、なっなっなっ!ぼぼぼっ、ぼっ、かわっ、かわかわかわ、くろっくろっくろっ、ぜっ、ぜぜぜぜっ!てだっ、てだだだ………ゆる………お手数かけますが、くれぐれもチケットお願いします』………なんだ?最後しか分からんな」
炙り出しで違う内容が綴られてるとかだろうか?
「ルーシー、分かるか?」
と手紙を渡すと、一礼して受け取ったルーシーはさっと目を通すと、
「えー、要約すると『何で僕の可愛いクロエが、よその男に触られるような芝居に出るんですか!絶対観に行きますからね!………ちょっかい出してくる男が居たら許さない』と言った意味合いでございましょうか。
恐らく動揺してペンがうまく使えなかったのではなかろうかと。文字に震えと滲みもございますし」
俺とリーシャはぽかーんとルーシーを見た。
「ルーシー、お前凄いな」
「………は?何が凄いのか分かりかねますが、ジークライン王子へのチケットの手配は旦那様よろしくお願い致します。
………あとお金は勿論払いますので、離れた席でわたくしの分も。坊っちゃまたちの芝居とリーシャ様の芝居の分を1枚ずつお願い致します」
ルーシーがすっと正座をすると、いつ見ても流れるように綺麗な土下座をした。
「おい土下座はやめてくれ。金は気にするな。チケットの手配位はするさ。いつも世話になってるからな」
俺はルーシーを立たせるとそう告げた。
「出演者が出演者でございますので、発売日初日で売り切れると思います。身内のチケット取り置きが出来るとも限りませんので、くれぐれもご注意を」
ルーシーから立ち上がる際に小声で耳打ちされた。
そうだ、有休取ったのにチケット取れませんでしたじゃ話にならない。
発売日当日はヒューイと夜明け早々に並ばなければ。
リーシャが台本を見ながら台詞をブツブツ小声で呟き、「えー、これどんな顔して言えばいいのよ」と頭を抱えたりしつつも真剣な眼差しで文字を追っている姿を眺めつつ、カレンダーに発売日を赤丸でぐりぐり囲むのだった。
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