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さあ我が家へ。

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 カイルが意外に釣りと相性が良かった事が判明したり、ブレナンがいつかかるか分からない魚を待つより、ダークや私の周囲でひらひらと舞ってる方が多かったり、ダークが必要以上に師匠呼びして私に怒られてたり、毎晩豪華な刺身や唐揚げ、煮付けや焼き魚を堪能したり。


 まあ結局デート旅行と言うにはいささかロマンチック成分が少なかったような気はするけれど、とても楽しかったと思う。




 しかし、カイルもブレナンも帰りの特急列車に乗る辺りから、どんどん元気が無くなっていった。

 これはきっと帰宅後のルーシーの怒りを想像しているのだろう。

 アーネストたち他の使用人は子供たちに甘いので、心から謝れば許してくれるだろうという期待が持てるのだが、ルーシーだけは別である。

 イタズラが過ぎた時には、

「謝って済むなら騎士団は要らないのでございますよ」

 と言いながら、細く切ったタオルで手足を縛られた状態のまま、羽根ペンの先でコショコショ身体中をくすぐられ続けるという、痛くもないのに涙がこぼれるまで笑わされる、それは恐ろしい目に遭うのである。


 しかしこの子たちのおバカなところは、ヤンチャをしてからそれを思い出す事である。

 そして毎回逃げ回ってはルーシーに捕獲されて痛い目を見ている。

 私の血のせいなのだろう。
 頭の中の学習機能がほぼリカバリーモードにすりかわっているようだ。
 まあ自業自得なので同情はしない。

 私もルーシーに頭が上がらないので、似た者親子とも言える。


「かーさまかーさま。ルーシーはおこってるとおもう?」

 カイルが一等客室のフワフワのソファーに座って不安そうな目を向ける。

「黙ってプチ家出したんだもの。そりゃ怒ってるでしょうよ」

「やっぱりそうだよね………」

「にーさま。ここはひとつルーシーへごめんなさいのまいをいっしょにおどるべき」

「え?そんなまいがあったのか」

「きのうかんがえた。さいこうけっさく」

「ほんとか!おしえてくれブレナン」

 ダークと2人で眺めていると、アングラ劇団のような謎の踊りをやりだしたのでとりあえず放置する。


「………結局、アナとクロエだけお留守番させる事になってしまったな」

 ダークが私の入れたコーヒーを飲みながら呟いた。

「だって、まさかカイルとブレナンが追いかけてくるとは思わなかったものねえ」

「楽しい夫婦の時間が、楽しい家族の時間に変わってしまったのが心残りだ」
 
「あら。結局楽しかったんだからいいじゃないの。それに、これからいつだって時間はあるわよ。まさかもうデートしてくれないのかしら?」

「そんな訳ないだろう。俺はリーシャしかデートしたい相手もいないのに。
 ただな、もっとイチャイチャと………いや、こんな言い方をするとただのスケベなおっさんみたいだが違うんだ!
 恋人っぽい、こうラブラブした雰囲気で過ごしたかった気持ちもあってだな」

 私はひょいっとダークの膝の上に乗っかった。

「こんな感じ?」

「そう、そんな感じ」

 嬉しそうに私の腰へ手を回すダークがまた無駄に眩しい訳だが、ふと視線を感じて振り向くと、アングラ劇団もとい息子たちが動きを止めて私たちをガン見していた。

 私と目が合うと、またひょろーり、ひょろーりと踊りの続きが始まった。


「………子供たちにはあまり見せたくないわね、やっぱり」

 するりとダークの隣に座り直す。

「バカップルとかヒューイに教えられたみたいだしな」

「それを言うならバカ夫婦よねぇ」

「突っ込むところはそこじゃないと思うがまあいい。またちゃんと2人の時間を作ろう」

「そうね」


 私とダークはまたカイルとブレナンの謎の踊りを見ながら、こそこそと

「あれで許して貰えたらいいけどね」

「いや無理だろうな。謝罪の舞というより睡魔の舞だ」

「あら、なんかさっきからやたら眠いと思ってたのはあの踊り子たちのせいだったのね」

 と話をしながら、いつの間にか夢の世界に運ばれてしまうのだった。




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