140 / 256
いざ釣りバトルへ。
しおりを挟む
「ただいまーっと。あら起きてたのね2人とも」
私とダークが買い物から戻ると、カイルとブレナンがテーブルの周りをめそめそしながらふんばば踊りでぐるぐる回っていた。
ちゃんとテーブルの上に「買い物にいってくるから大人しくしてなさい」と書いておいたから不安になる筈はないのだけど。
「かーさま!おかえりなさーい」
ガシッとジャンプでアタックをかけてきたブレナンに「ぐぉっ」っと淑女らしからぬ声が出た。
「よかったよかった。かーさまもとーさまもかえってきた」
胸にスリスリして甘えてくるブレナンというのは珍しく、頭を撫でながら、
「買い物に行くって手紙置いといたでしょ?どうしたのよブレナン」
とぎゅうっと抱き締めた。
「1にち1かいはかーさまにだきつくルール」
「いつ決まったの?」
「きょう」
「なんで?」
「かーさまにおこられないいいこになるように」
「ほうほう。いい心掛けねえ」
ゲンコツやられて反省したのだろう。
「それと、かーさまのむねとおなかがぷにぷにしてきもちいいから」
「………………」
胸はいいが腹のことは言うでない息子よ。ちょっとだけ母様ハートブレイクだ。
ダークがブレナンのお喋りを聞いていたのか、ペリペリとブレナンを私から引き剥がし、
「残念だが、母様の胸とお腹はもう父様のモノだから、許可を得てから触るように」
と、ていっとソファーに放り投げた。
「えー、ずるいとーさま」
「ずるくない。暫くはお前たち専用だったのを我慢してたんだぞ?今は父様専用だ」
「とーさまおとなげない………」
後ろからカイルが呟いた。
「大人げなくないぞ。もうお前たちは大きいんだからオッパイは必要ないだろ」
「でも、とーさまはもっとおおきいでしょ?」
カイルが首を傾げる。
恐ろしいほどの正論である。
「大人は大人の必要性があってだなーー」
「ダーク!子供の前でなんてこと言ってるのよっ!この子たちにまだそんな教育は早いわよもうっ」
私は怒ってダークを睨んだ。
この人は本当に大人げないったら。
こらしょんぼりしない。
荷物出しながら上目遣いでこっち見ない。
私に罪悪感持たせないでちょうだい。
「リーシャ………済まない」
自分でもはしゃぎすぎたと反省したのだろう。そそそ、と近寄ってきて、めっちゃ小声で許しを乞うてきた。
まあ父親の威厳ってものもあるものね。
「………もういいから。早くカイルたちの釣りセット出してあげて」
「っ!………分かった」
私の怒りが解けた途端にご機嫌が戻り、いそいそと竿や魚籠、小さなバケツなどを取り出している。
一回り以上歳上だと、普通は旦那が若い妻の手綱を握るもんじゃないのかしらね。
なんで我が家の旦那様は妻の尻に敷かれて喜んでるのかしら。
というか、我が家の決め事は執事のアーネストも私に許可を得てからダークへ告げる。
ジュリアもサリーもまずは私に聞いてくる。
ダークは私が許可していれば反対したことがないからだ。
いったいヒッキーに何をさせたいのだろうか。
信用しないで欲しいわヒッキーによる世間一般的な判断能力なんて。はじまりの町の勇者みたいなレベルなんだから期待されても困るのよ。
熟練者が考えて決定した方が建設的だと思うのだけど。まあルーシーだけを連れて潔く嫁入りしてきた若奥様を、決して逃がすまいという熱意の表れだろうか。
別に出ていくつもりはないんだけどな。
ダークを見ると、カイルたちに竿の使い方や餌の付け方などを説明しており、子供たちは熱心に説明を聞いている。
ルアーは動かし方にコツがいるので、今回は生き餌を付けることにしたらしい。
「うっわー………」
「にょろにょろきもちわるい………」
初っぱなからミミズはハードルが高かったようだ。
「まずはとーさまとかーさまがみほんをみせてほしいの」
ブレナンが今思いつきましたと言ったていで頷いた。ミミズを掴むのはしたくないらしい。
「あら、やりたいんじゃなかったの?」
「ぼくもうまいひとのテクニックをみてからのほうがいいとおもうんだ」
カイルが言いながら私たちを見た。
「とーさまとかーさま、どっちがじょうずなの?」
「さあ、どっちかしらねぇ?」
「おいおい、母様を困らせたらダメだろう」
「………まあ、それじゃまるで私が下手くそみたいじゃないダーク?」
「下手なんじゃなくて俺の方がより上手いと思うんだ。歴も長いし」
なんでこの人は釣りになると強気になるのかしら。
「下手の横好き………あら、一般的な話としてだけれど、歴が長いからって上手いとも言い切れない世界よね釣りって」
私たちが唯一バトルになるのが釣りなのである。
「………分かった。俺はカイルを側につけるから、リーシャはブレナンをつけろ。
公平に釣った数で勝負だ」
「分かったわ。ブレナン、母様の釣った魚の数は幾つまで数えられる?」
「にじゅう」
「あらあら、間に合うかしらねえ。
まあいいわ。それなら早く着替えて出掛けましょうか?」
「………おう」
2対2のチームに分かれた私たちは、鼻息荒く支度をして桟橋へと向かうのだった。
私とダークが買い物から戻ると、カイルとブレナンがテーブルの周りをめそめそしながらふんばば踊りでぐるぐる回っていた。
ちゃんとテーブルの上に「買い物にいってくるから大人しくしてなさい」と書いておいたから不安になる筈はないのだけど。
「かーさま!おかえりなさーい」
ガシッとジャンプでアタックをかけてきたブレナンに「ぐぉっ」っと淑女らしからぬ声が出た。
「よかったよかった。かーさまもとーさまもかえってきた」
胸にスリスリして甘えてくるブレナンというのは珍しく、頭を撫でながら、
「買い物に行くって手紙置いといたでしょ?どうしたのよブレナン」
とぎゅうっと抱き締めた。
「1にち1かいはかーさまにだきつくルール」
「いつ決まったの?」
「きょう」
「なんで?」
「かーさまにおこられないいいこになるように」
「ほうほう。いい心掛けねえ」
ゲンコツやられて反省したのだろう。
「それと、かーさまのむねとおなかがぷにぷにしてきもちいいから」
「………………」
胸はいいが腹のことは言うでない息子よ。ちょっとだけ母様ハートブレイクだ。
ダークがブレナンのお喋りを聞いていたのか、ペリペリとブレナンを私から引き剥がし、
「残念だが、母様の胸とお腹はもう父様のモノだから、許可を得てから触るように」
と、ていっとソファーに放り投げた。
「えー、ずるいとーさま」
「ずるくない。暫くはお前たち専用だったのを我慢してたんだぞ?今は父様専用だ」
「とーさまおとなげない………」
後ろからカイルが呟いた。
「大人げなくないぞ。もうお前たちは大きいんだからオッパイは必要ないだろ」
「でも、とーさまはもっとおおきいでしょ?」
カイルが首を傾げる。
恐ろしいほどの正論である。
「大人は大人の必要性があってだなーー」
「ダーク!子供の前でなんてこと言ってるのよっ!この子たちにまだそんな教育は早いわよもうっ」
私は怒ってダークを睨んだ。
この人は本当に大人げないったら。
こらしょんぼりしない。
荷物出しながら上目遣いでこっち見ない。
私に罪悪感持たせないでちょうだい。
「リーシャ………済まない」
自分でもはしゃぎすぎたと反省したのだろう。そそそ、と近寄ってきて、めっちゃ小声で許しを乞うてきた。
まあ父親の威厳ってものもあるものね。
「………もういいから。早くカイルたちの釣りセット出してあげて」
「っ!………分かった」
私の怒りが解けた途端にご機嫌が戻り、いそいそと竿や魚籠、小さなバケツなどを取り出している。
一回り以上歳上だと、普通は旦那が若い妻の手綱を握るもんじゃないのかしらね。
なんで我が家の旦那様は妻の尻に敷かれて喜んでるのかしら。
というか、我が家の決め事は執事のアーネストも私に許可を得てからダークへ告げる。
ジュリアもサリーもまずは私に聞いてくる。
ダークは私が許可していれば反対したことがないからだ。
いったいヒッキーに何をさせたいのだろうか。
信用しないで欲しいわヒッキーによる世間一般的な判断能力なんて。はじまりの町の勇者みたいなレベルなんだから期待されても困るのよ。
熟練者が考えて決定した方が建設的だと思うのだけど。まあルーシーだけを連れて潔く嫁入りしてきた若奥様を、決して逃がすまいという熱意の表れだろうか。
別に出ていくつもりはないんだけどな。
ダークを見ると、カイルたちに竿の使い方や餌の付け方などを説明しており、子供たちは熱心に説明を聞いている。
ルアーは動かし方にコツがいるので、今回は生き餌を付けることにしたらしい。
「うっわー………」
「にょろにょろきもちわるい………」
初っぱなからミミズはハードルが高かったようだ。
「まずはとーさまとかーさまがみほんをみせてほしいの」
ブレナンが今思いつきましたと言ったていで頷いた。ミミズを掴むのはしたくないらしい。
「あら、やりたいんじゃなかったの?」
「ぼくもうまいひとのテクニックをみてからのほうがいいとおもうんだ」
カイルが言いながら私たちを見た。
「とーさまとかーさま、どっちがじょうずなの?」
「さあ、どっちかしらねぇ?」
「おいおい、母様を困らせたらダメだろう」
「………まあ、それじゃまるで私が下手くそみたいじゃないダーク?」
「下手なんじゃなくて俺の方がより上手いと思うんだ。歴も長いし」
なんでこの人は釣りになると強気になるのかしら。
「下手の横好き………あら、一般的な話としてだけれど、歴が長いからって上手いとも言い切れない世界よね釣りって」
私たちが唯一バトルになるのが釣りなのである。
「………分かった。俺はカイルを側につけるから、リーシャはブレナンをつけろ。
公平に釣った数で勝負だ」
「分かったわ。ブレナン、母様の釣った魚の数は幾つまで数えられる?」
「にじゅう」
「あらあら、間に合うかしらねえ。
まあいいわ。それなら早く着替えて出掛けましょうか?」
「………おう」
2対2のチームに分かれた私たちは、鼻息荒く支度をして桟橋へと向かうのだった。
13
お気に入りに追加
1,421
あなたにおすすめの小説
何を言われようとこの方々と結婚致します!
おいも
恋愛
私は、ヴォルク帝国のハッシュベルト侯爵家の娘、フィオーレ・ハッシュベルトです。
ハッシュベルト侯爵家はヴォルク帝国でも大きな権力を持っていて、その現当主であるお父様にはとても可愛がられています。
そんな私にはある秘密があります。
それは、他人がかっこいいと言う男性がとても不細工に見え、醜いと言われる男性がとてもかっこよく見えるということです。
まあ、それもそのはず、私には日本という国で暮らしていた前世の記憶を持っています。
前世の美的感覚は、男性に限定して、現世とはまるで逆!
もちろん、私には前世での美的感覚が受け継がれました……。
そんな私は、特に問題もなく16年生きてきたのですが、ある問題が発生しました。
16歳の誕生日会で、おばあさまから、「そろそろ結婚相手を見つけなさい。エアリアル様なんてどう?今度、お茶会を開催するときエアリアル様をお呼びするから、あなたも参加しなさい。」
え?おばあさま?エアリアル様ってこの帝国の第二王子ですよね。
そして、帝国一美しいと言われている男性ですよね?
……うん!お断りします!
でもこのまんまじゃ、エアリアル様と結婚させられてしまいそうだし……よし!
自分で結婚相手を見つけることにしましょう!
異世界の美醜と私の認識について
佐藤 ちな
恋愛
ある日気づくと、美玲は異世界に落ちた。
そこまでならラノベなら良くある話だが、更にその世界は女性が少ない上に、美醜感覚が美玲とは激しく異なるという不思議な世界だった。
そんな世界で稀人として特別扱いされる醜女(この世界では超美人)の美玲と、咎人として忌み嫌われる醜男(美玲がいた世界では超美青年)のルークが出会う。
不遇の扱いを受けるルークを、幸せにしてあげたい!そして出来ることなら、私も幸せに!
美醜逆転・一妻多夫の異世界で、美玲の迷走が始まる。
* 話の展開に伴い、あらすじを変更させて頂きました。
【R18】世界一醜い男の奴隷として生きていく
鈴元 香奈
恋愛
憧れていた幼馴染の容赦のない言葉を聞いてしまい逃げ出した杏は、トラックとぶつかると思った途端に気を失ってしまった。
そして、目が覚めた時には見知らぬ森に立っていた。
その森は禁戒の森と呼ばれ、侵入者は死罪となる決まりがあった。
杏は世界一醜い男の性奴隷となるか、死罪となるかの選択を迫られた。
性的表現が含まれています。十八歳未満の方は閲覧をお控えください。
ムーンライトノベルスさんにも投稿しています。
私が美女??美醜逆転世界に転移した私
鍋
恋愛
私の名前は如月美夕。
27才入浴剤のメーカーの商品開発室に勤める会社員。
私は都内で独り暮らし。
風邪を拗らせ自宅で寝ていたら異世界転移したらしい。
転移した世界は美醜逆転??
こんな地味な丸顔が絶世の美女。
私の好みど真ん中のイケメンが、醜男らしい。
このお話は転生した女性が優秀な宰相補佐官(醜男/イケメン)に囲い込まれるお話です。
※ゆるゆるな設定です
※ご都合主義
※感想欄はほとんど公開してます。
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
王宮の片隅で、醜い王子と引きこもりライフ始めました(私にとってはイケメン)。
花野はる
恋愛
平凡で地味な暮らしをしている介護福祉士の鈴木美紅(20歳)は休日外出先で西洋風異世界へ転移した。
フィッティングルームから転移してしまったため、裸足だった美紅は、街中で親切そうなおばあさんに助けられる。しかしおばあさんの家でおじいさんに襲われそうになり、おばあさんに騙され王宮に売られてしまった。
王宮では乱暴な感じの宰相とゲスな王様にドン引き。
王妃様も優しそうなことを言っているが信用できない。
そんな中、奴隷同様な扱いで、誰もやりたがらない醜い第1王子の世話係をさせられる羽目に。
そして王宮の離れに連れて来られた。
そこにはコテージのような可愛らしい建物と専用の庭があり、美しい王子様がいた。
私はその専用スペースから出てはいけないと言われたが、元々仕事以外は引きこもりだったので、ゲスな人たちばかりの外よりここが断然良い!
そうして醜い王子と異世界からきた乙女の楽しい引きこもりライフが始まった。
ふたりのタイプが違う引きこもりが、一緒に暮らして傷を癒し、外に出て行く話にするつもりです。
[完結済み]男女比1対99の貞操観念が逆転した世界での日常が狂いまくっている件
森 拓也
キャラ文芸
俺、緒方 悟(おがた さとる)は意識を取り戻したら男女比1対99の貞操観念が逆転した世界にいた。そこでは男が稀少であり、何よりも尊重されていて、俺も例外ではなかった。
学校の中も、男子生徒が数人しかいないからまるで雰囲気が違う。廊下を歩いてても、女子たちの声だけが聞こえてくる。まるで別の世界みたいに。
そんな中でも俺の周りには優しいな女子たちがたくさんいる。特に、幼馴染の美羽はずっと俺のことを気にかけてくれているみたいで……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる