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ダーク、走る。
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【ダーク視点】
「え?リーシャちゃんへの贈り物だぁ?」
ヒューイが呆れたような顔で俺を見た。
相変わらず俺の淹れた美味いコーヒーを飲みに、という名目でサボりにやってくる。
まあ普段は俺と同じで仕事に手は抜かないのでいいんだが。
「何故そんなに呆れるんだ。
お前の方が経験値が高いと思って、恥を忍んで聞いているのに酷いだろう」
「いやー経験値が高かろうが低かろうがさ、お前らもう結婚して10年位経つだろうが。
俺のたらしだった時の意見聞くより、側にいるお前の方がよっぽどリーシャちゃんの事分かってると思うぞ?」
「まだ7年だ。そうは言うが、リーシャはいつもおねだりもろくにしないし、たまに言えば文具ぐらいだ。
貴金属に興味ないし、ドレスも動きにくいし畏まった席にも余り出ないから、と欲しがらないんだ。
まあ普段着の簡素なワンピース姿でもリーシャはとても可愛いんだが」
「無表情でノロケか。帰れ帰れ」
「ここは俺の執務室だ」
「あ、そうだったな。コーヒーお代わり貰うぞ」
「ああ」
ヒューイは自分のマグカップに並々とコーヒーを注ぐと、テーブルのチョコチップクッキーをつまみとった。
「………あまり食うなよ。リーシャの手作りだ」
「ばーか、お前の手作りだったら食わねえよ。
んー、相変わらずダークの嫁なのがもったいないほど飯系もお菓子も上手だなー。うまうま」
「うまうま、じゃない。
しかし本当に俺が言うのもなんだが、料理上手で綺麗で可愛くて心も優しくて可愛くて、俺なんかを大好きと言ってはばからないところがまた素晴らしく可愛い自慢の妻な訳なんだが。なんであんなに24時間可愛いんだろうか」
「知るか。さむ………うま………」
「だから食うか身体こするかどっちかにしろ」
「………いや~相変わらずベタぼれなのな。
うちも結構らぶらぶだと思うけど、お前んとこには負けるわ」
「多分リーシャが嫁なら誰もがこうなると思うぞ?だってあんなに綺麗で可愛くてーー」
「すまん、腹一杯だからもう黙れ。
でもよ、そう言う物欲があまりない人間に贈り物するのは大変なんだよ。
もう花とかで良くねえか?」
「やってる」
「有名店のお菓子とか」
「やってる」
「子供の面倒を率先して見ーーー」
「仕事終わってからになるがかなり見てる。休みの日は一日中。リーシャが疲れるからもういいって止める位」
「………いやもうさ、わざわざプレゼントとかする必要なくね?」
「俺の気が済まない」
ヒューイとあーだこーだ言ってるところで、部下からルーシーさんがいらっしゃいました、と報告が入った。
珍しい事もあるものである。
執務室に案内されてやってきたルーシーに、
「どうした?俺は何か忘れ物でもしたか?」
と声をかけると、
「町に出たついででございますが耳寄りな情報を」
「そうか。だが今ヒューイと大事な話があってだな、手短に頼めるか?」
「左様でございますか。
リーシャ様が現在『一番欲しいモノ』と『一番やりたいこと』と言うのは、旦那様にとって取るに足らぬ情報でございましたか。それでは特にお話しする事もーー」
「ルーシー、コーヒーでもどうだ?ヒューイ、どけ。俺の椅子使え」
ソファーにだらんと座っていたヒューイをどかしてルーシーに勧める。
「気が変わったリーシャ様が止めに入る前に飛び出しましたので、丁度喉が渇いておりました。ありがとうございます」
ルーシーがソファーに腰かけて少しぬるくなったコーヒーをゆったり飲むのをジリジリしながら眺める。
「それで?」
「旦那様には早急にワール堂へ行って頂きたいのです」
「おい、なんだまた文具か」
俺はちょっとがっかりした。
先日カラーペンを贈ったばかりではないか。ルーシーにしては意外性のないチョイスをしてきたな。まあペン以外に欲しいモノがあるのならそれでもいいんだが。
「ご冗談を。まず旦那様に買って頂きたいのはレターセットでございます。
最近ワール堂で香りがついた綺麗なレターセットが沢山出ております。
リーシャ様はグリーン系かフルーツ系の香りを好まれます」
「だから、レターセットをリーシャにと言うことだろう?」
「違いますわ。使うのは旦那様でございます」
「………………は?」
「リーシャ様が望んで止まないもの。欲しくて欲しくて仕方がないもの。
それは旦那様からのラブレターでございます」
「………………俺の、か?」
「うわー、今さらか?」
ヒューイが突っ込みを入れてくるが、余りにも意外な話で俺は言葉も出なかった。
「伺ったところによりますと、今まで一度もラブレターを貰ったことがないそうで。
せめて一度ぐらいは欲しかったけど、結婚して7年も過ぎると流石に言えないわ、と仰っておりまして」
「………そう言えば書いた記憶がない………」
「え?ひどー。付き合ってる女にラブレターの1つも書かなかったの?それもリーシャちゃんに?おい最低だなダーク」
ヒューイがここぞとばかりに責めてくる。
「いや、だがルイ・ボーゲンとの婚約を阻止する流れであれよあれよと結婚が決まってだな」
「引く手あまただったリーシャ様に手紙の1つも寄越さず嫁にしたとか、聞いたときには呆れてモノも言えませんでしたわ」
「だよなー?」
ヒューイとルーシーが意気投合してダブルで責める。
「だが………だが俺には文才がない」
喋るのも最初はぎこちないぐらいだったのに。大体言葉を自在に操る作家にどんなラブレターを書けと言うのだ。
「リーシャ様は別に旦那様に文才を求めておられませんわよ。素直にリーシャ様への想いを綴るだけで宜しいのです」
「好きだ可愛い愛してるを繰り返せば大概なんとかなる」
「ヒューイ様は文才がないというより、誰彼構わず同じ文言を使い回しておられた気配がございますわね。言葉が安っぽいですわ」
ルーシーが冷ややかな眼差しでヒューイを見た。
「うぐっっ。酷いがあながち間違ってもない。だけど大昔の話だってば」
「ミランダ様が聞いたら泣きますわね」
「止めてお願い土下座でも何でもするから内密に」
「まあヒューイ様の事は正直どうでもよろしいのです。旦那様、頑張って下さいませ。
リーシャ様は、もし貰えたら一生の宝にすると。
でも嫌がるのを無理強いはするなと念押しされておりますので、無理にとは言いませんが………悲しむでしょうねえリーシャ様………」
わざとらしく目元をハンカチで押さえるルーシーに、俺も泣きたかった。
ラブレターなんぞ生まれてこのかた一度も書いた事がないのだ。
「2人っきりでデートもしたい、それが今一番やりたいことだとも………」
リーシャが本当に恐ろしいほど可愛い。
ウチの奥さんはどうして俺の愛情メーターをすぐ底上げしてくるんだろうか。
俺がプレゼントを貰ってるようなものではないか。
「………書く。何としても書く。デートも絶対する」
「それはようございました。出来ましたらなる早でお願いいたします。デートも有休でも取ってご存分に。ああ、釣りもしたいと仰っておいででした。アズキのご飯も兼ねてとか」
「分かった。ルーシー、ありがとう。いつも頼りにしてるぞ」
「お子様の面倒はお任せください。わたくしはただリーシャ様にいつも笑顔でいて欲しいのです」
ルーシーは立ち上がり深々と頭を下げると、買い物が途中なので、と退出していった。
「………いや、ほんとバカップルだなお前ら。むしろ呆れたを一周して尊敬すらしてしまいそうだ」
ヒューイが俺を見ながら呟いた。
「おう。ウチの奥さん可愛いだろ?な?」
俺は世界中に大声でリーシャの愛らしさと健気さを叫びたかった。
本当に俺には勿体ないほどいい妻である。
「ああ可愛い可愛い。だが有休申請は早めにしろよ?俺に仕事がどーんと被ってくるのは嫌だかんな」
「分かった。あとワール堂へ行くから今日は早退させてくれ。急病で」
「おい!」
ヒューイが呼び掛けるのを無視して、俺は帰り支度をしワール堂へと早足で向かうのだった。
「え?リーシャちゃんへの贈り物だぁ?」
ヒューイが呆れたような顔で俺を見た。
相変わらず俺の淹れた美味いコーヒーを飲みに、という名目でサボりにやってくる。
まあ普段は俺と同じで仕事に手は抜かないのでいいんだが。
「何故そんなに呆れるんだ。
お前の方が経験値が高いと思って、恥を忍んで聞いているのに酷いだろう」
「いやー経験値が高かろうが低かろうがさ、お前らもう結婚して10年位経つだろうが。
俺のたらしだった時の意見聞くより、側にいるお前の方がよっぽどリーシャちゃんの事分かってると思うぞ?」
「まだ7年だ。そうは言うが、リーシャはいつもおねだりもろくにしないし、たまに言えば文具ぐらいだ。
貴金属に興味ないし、ドレスも動きにくいし畏まった席にも余り出ないから、と欲しがらないんだ。
まあ普段着の簡素なワンピース姿でもリーシャはとても可愛いんだが」
「無表情でノロケか。帰れ帰れ」
「ここは俺の執務室だ」
「あ、そうだったな。コーヒーお代わり貰うぞ」
「ああ」
ヒューイは自分のマグカップに並々とコーヒーを注ぐと、テーブルのチョコチップクッキーをつまみとった。
「………あまり食うなよ。リーシャの手作りだ」
「ばーか、お前の手作りだったら食わねえよ。
んー、相変わらずダークの嫁なのがもったいないほど飯系もお菓子も上手だなー。うまうま」
「うまうま、じゃない。
しかし本当に俺が言うのもなんだが、料理上手で綺麗で可愛くて心も優しくて可愛くて、俺なんかを大好きと言ってはばからないところがまた素晴らしく可愛い自慢の妻な訳なんだが。なんであんなに24時間可愛いんだろうか」
「知るか。さむ………うま………」
「だから食うか身体こするかどっちかにしろ」
「………いや~相変わらずベタぼれなのな。
うちも結構らぶらぶだと思うけど、お前んとこには負けるわ」
「多分リーシャが嫁なら誰もがこうなると思うぞ?だってあんなに綺麗で可愛くてーー」
「すまん、腹一杯だからもう黙れ。
でもよ、そう言う物欲があまりない人間に贈り物するのは大変なんだよ。
もう花とかで良くねえか?」
「やってる」
「有名店のお菓子とか」
「やってる」
「子供の面倒を率先して見ーーー」
「仕事終わってからになるがかなり見てる。休みの日は一日中。リーシャが疲れるからもういいって止める位」
「………いやもうさ、わざわざプレゼントとかする必要なくね?」
「俺の気が済まない」
ヒューイとあーだこーだ言ってるところで、部下からルーシーさんがいらっしゃいました、と報告が入った。
珍しい事もあるものである。
執務室に案内されてやってきたルーシーに、
「どうした?俺は何か忘れ物でもしたか?」
と声をかけると、
「町に出たついででございますが耳寄りな情報を」
「そうか。だが今ヒューイと大事な話があってだな、手短に頼めるか?」
「左様でございますか。
リーシャ様が現在『一番欲しいモノ』と『一番やりたいこと』と言うのは、旦那様にとって取るに足らぬ情報でございましたか。それでは特にお話しする事もーー」
「ルーシー、コーヒーでもどうだ?ヒューイ、どけ。俺の椅子使え」
ソファーにだらんと座っていたヒューイをどかしてルーシーに勧める。
「気が変わったリーシャ様が止めに入る前に飛び出しましたので、丁度喉が渇いておりました。ありがとうございます」
ルーシーがソファーに腰かけて少しぬるくなったコーヒーをゆったり飲むのをジリジリしながら眺める。
「それで?」
「旦那様には早急にワール堂へ行って頂きたいのです」
「おい、なんだまた文具か」
俺はちょっとがっかりした。
先日カラーペンを贈ったばかりではないか。ルーシーにしては意外性のないチョイスをしてきたな。まあペン以外に欲しいモノがあるのならそれでもいいんだが。
「ご冗談を。まず旦那様に買って頂きたいのはレターセットでございます。
最近ワール堂で香りがついた綺麗なレターセットが沢山出ております。
リーシャ様はグリーン系かフルーツ系の香りを好まれます」
「だから、レターセットをリーシャにと言うことだろう?」
「違いますわ。使うのは旦那様でございます」
「………………は?」
「リーシャ様が望んで止まないもの。欲しくて欲しくて仕方がないもの。
それは旦那様からのラブレターでございます」
「………………俺の、か?」
「うわー、今さらか?」
ヒューイが突っ込みを入れてくるが、余りにも意外な話で俺は言葉も出なかった。
「伺ったところによりますと、今まで一度もラブレターを貰ったことがないそうで。
せめて一度ぐらいは欲しかったけど、結婚して7年も過ぎると流石に言えないわ、と仰っておりまして」
「………そう言えば書いた記憶がない………」
「え?ひどー。付き合ってる女にラブレターの1つも書かなかったの?それもリーシャちゃんに?おい最低だなダーク」
ヒューイがここぞとばかりに責めてくる。
「いや、だがルイ・ボーゲンとの婚約を阻止する流れであれよあれよと結婚が決まってだな」
「引く手あまただったリーシャ様に手紙の1つも寄越さず嫁にしたとか、聞いたときには呆れてモノも言えませんでしたわ」
「だよなー?」
ヒューイとルーシーが意気投合してダブルで責める。
「だが………だが俺には文才がない」
喋るのも最初はぎこちないぐらいだったのに。大体言葉を自在に操る作家にどんなラブレターを書けと言うのだ。
「リーシャ様は別に旦那様に文才を求めておられませんわよ。素直にリーシャ様への想いを綴るだけで宜しいのです」
「好きだ可愛い愛してるを繰り返せば大概なんとかなる」
「ヒューイ様は文才がないというより、誰彼構わず同じ文言を使い回しておられた気配がございますわね。言葉が安っぽいですわ」
ルーシーが冷ややかな眼差しでヒューイを見た。
「うぐっっ。酷いがあながち間違ってもない。だけど大昔の話だってば」
「ミランダ様が聞いたら泣きますわね」
「止めてお願い土下座でも何でもするから内密に」
「まあヒューイ様の事は正直どうでもよろしいのです。旦那様、頑張って下さいませ。
リーシャ様は、もし貰えたら一生の宝にすると。
でも嫌がるのを無理強いはするなと念押しされておりますので、無理にとは言いませんが………悲しむでしょうねえリーシャ様………」
わざとらしく目元をハンカチで押さえるルーシーに、俺も泣きたかった。
ラブレターなんぞ生まれてこのかた一度も書いた事がないのだ。
「2人っきりでデートもしたい、それが今一番やりたいことだとも………」
リーシャが本当に恐ろしいほど可愛い。
ウチの奥さんはどうして俺の愛情メーターをすぐ底上げしてくるんだろうか。
俺がプレゼントを貰ってるようなものではないか。
「………書く。何としても書く。デートも絶対する」
「それはようございました。出来ましたらなる早でお願いいたします。デートも有休でも取ってご存分に。ああ、釣りもしたいと仰っておいででした。アズキのご飯も兼ねてとか」
「分かった。ルーシー、ありがとう。いつも頼りにしてるぞ」
「お子様の面倒はお任せください。わたくしはただリーシャ様にいつも笑顔でいて欲しいのです」
ルーシーは立ち上がり深々と頭を下げると、買い物が途中なので、と退出していった。
「………いや、ほんとバカップルだなお前ら。むしろ呆れたを一周して尊敬すらしてしまいそうだ」
ヒューイが俺を見ながら呟いた。
「おう。ウチの奥さん可愛いだろ?な?」
俺は世界中に大声でリーシャの愛らしさと健気さを叫びたかった。
本当に俺には勿体ないほどいい妻である。
「ああ可愛い可愛い。だが有休申請は早めにしろよ?俺に仕事がどーんと被ってくるのは嫌だかんな」
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