土偶と呼ばれた女は異世界でオッサンを愛でる。R18

来栖もよもよ&来栖もよりーぬ

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リーシャ、オイチャンになる。

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 幸いなことに、ヒューイのところでも、


「まー状況は想像つくわ。別に振りだけなら全然おっけーよ?娘はやらんけど」


 と仮婚約については快諾してもらえたとダークが教えてくれた。
 まあ親同士の密約みたいなもんだよね。
 なんかあったら名前を使わせて貰うという許可は取ったと言う事である。


 カイルとブレナンには、ある程度判断のつく年齢になるまで何も言わない事にした。
 まだ口が滑りやすい子供の事だ。何かポロリと悪気なく、

「こんやくしゃごっこしてるんだー」

 などとバラされたら一巻の終わりである。比喩ではなく本当に終わる。


 これで、当分は晴れて娘2人の行く末だけ考えておけばいい。


 そうよねぇ、考えたらまだアナとクロエは3歳だもの。
 クロエだってこの先は分からないし、アナだって、レイモンド王子を「ふつー」と言っていたじゃない。
 やあね私ってば疑心暗鬼になりすぎたかしら。


 人間、一つ懸案が片付くと、他の事にも光が射す気がするものである。

 間違いだったと気づくのも意外と早い。




「アズキ~♪ママはご機嫌なのよ~♪小説の締め切りだって3日も前に上げたのよ~♪………まあまだマンガは終ってないけど」

「みゃ」

「そお?あなたも喜んでくれる?
 んんー?お姉さん肉球おさわり無料サービス中かい?
 おー、オイチャン張り切ってこの店通っちゃおうかなー。ご指名もありかな?新人さんだろ?
 おいおい、チチも大事なトコも丸出しとは積極的だねぇ。参っちゃったなーそんな無防備だとオイチャンに襲われちゃうぞー?」

 腹を出して寝転んでるアズキの肉球を揉み揉みしつつ、私はルーシーが運んできたアイスティーを飲んだ。

「どこのスケベオヤジを憑依させてるんですかリーシャ様。
 美貌の有閑マダムと子猫の触れ合いというほのぼのとした絵画のような癒しの空間に見せかけといて、一瞬で淫らな欲望の渦巻く飲み屋街か娼館の待合室に早変わりではございませんか。わたくしの傷ついたピュアな心を返して下さい」

「首まで腐の沼に浸かってる人間にピュアなんてモノが存在してる方が驚くわね。
 良いこと?オヤジソウルというのはどんな女性にも存在するのよ。
 ………大体ねー、美貌の有閑マダムなんて何処にいるんだろうねえー?オイチャンはマンガでしか見たことないよ。
 ほらほら。まだまだ肉球無料サービス中だよ~」

「にゃ」

「………」

「こんなに柔らかくて揉み心地のいい肉球はそうそうないねぇ。
 同伴してくれたらオイチャンが魚をご馳走しちゃおうかなー、アズキちゃんはマスは好きかい?」

 私はアズキの首をコクコク動かす。

「にゃ」

「………くっ!リーシャ様、一人で触ってばかりはズルいではございませんか」

 そっとアズキの肉球を揉み出すルーシーに、

「なんかこう、私ったら爽やかな風が身体を通り抜けたみたいな、全て上手く行く!って感じでここ暫くでも一番気分がいい日なのよ。
 だから、少しぐらいは多目に見て貰えないかしらね?
 それに、
『やっぱり脱がすのは軍服、隊の礼服とかが一番萌えるわよ。でもブリーフとトランクス、どっち派の方が攻め側の下着としては読者に受けがいいかしらね?』
 とか言ってるのも、スケベなオイチャンになって肉球ニギニギしてるのも変わらないわよ」

「そう言われれば大した違いはございませんわね。屋敷の中なら結構ですが、外ではお気をつけ下さいませ。世間の皆様は夢見がちでございますから。
 話は変わりますが、3度目のジークライン王子のお手紙が届いております」

「………秒で私の軽やかな気分を地に落としたわね。恨むわよルーシー。
 しかしマメだわねぇあの王子。
 まぁまた彼の描いた絵とかでしょう?
 王族のくせに無駄に上手いのよね。クロエに渡してあげて。あの子楽しみにしてるから」

「絵もですが、今回はリーシャ様へのお手紙も入っております」

「………えー見たくないなー」

「………見ないとダメかなー」

「どうしてかなー」 

「隣国への招待状が列車のチケット付きで入ってるからかなー」

「………何ですって?何で隣国に招待されるのよ?」

「リーシャ様が訪問の打診を2度もちゃいしたからではございませんか。
 行けないなら来てもらおう、と言う当然の流れかと」

「そ、それは公式な招待なのかしらね?」

「非公式だとなんだかんだ理由つけて断られるんですから、公式に決まってるじゃありませんか?
 大体、公式だろうと非公式だろうと、王族の訪問をブッチするのはリーシャ様たち位ですわ」

「娘の未来の旦那様になろうかって人に、ロリコン(暫定)からロリコン(確定)へとステップアップさせないための親としての心配りじゃないの。やだわルーシーったら人を非常識みたいに」

「そうやって逃げてるから退路を断たれるんですよ。
 三回に一回位は応じておかないと、幾ら穏和なジークライン王子でも権力行使されますわよ?
 わたくしライラと打ち合わせして、取材旅行名目で休みを多めにもぎ取って参りますので、ジークライン様へのお返事を早めにお願い致します。
 良かったですわね、旅に出たいと仰っておられましたものね。
 国外旅行がタダで出来るなんて、これもリーシャ様の人徳といったところでございましょうか」

 ルーシーは名残惜しそうにアズキから手を離すと、早足で居間を出ていった。


 隣国(ちなみにアーデルハイドミレニアカリクバーン国という長くて覚えにくい名前なので、アーデル国とか隣国という略称になっている)へは、列車に5時間乗って、海から船で6時間ほどかかる。半日がかりの結構な遠出なのである。

 余談だが、うちの国はガーランド国と言う。
 ただ、王族絡み以外で使う事もない。


 ヒッキーの生息範囲は、屋敷の中と近くの町が9割、残りは釣りで行く川までであり、例外が家族同伴に限って少し距離が離れても大丈夫なため、海水浴にも行けたのだ。


 旅は確かにしたかった。

 嘘ではない。


 ただ、それは王族まみれの状況から抜き足差し足で逃げたかっただけで、地雷源にスキップやコサックダンスで突入する旅ではない。


「………アズキちゃん、オイチャン目から汗が止まらないよ…なんでかな……」


 私はぐしぐしと鼻をすすりながら、ダークの帰りを待つのだった。





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