土偶と呼ばれた女は異世界でオッサンを愛でる。R18

来栖もよもよ&来栖もよりーぬ

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やっぱり妻は可愛い。

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【ダーク視点】

 俺の愛する奥さんは最近頑張ってレイモンド王子の興味をウチの子たちから離そうと画策しているが、正直無駄な気がしなくもない。

 ウチの子たちは、俺の子には勿体ないほど顔も素晴らしく良いし、頭も性格もいい。
 頭の良さが若干違う方向に使われる事が多いのだが、それもいい個性である。
 レイモンド王子が他に友人や婚約者候補の女性を探そうとしても、見た目も中身もイチオシな子供たちの上を行く子がそうそう現れるとは思えないのだ。
 親バカであるが事実だと思う。


 大体、

「何でウチの子は変わった子ばかりなのかしら」

 とリーシャは悩んでいるが、そもそもリーシャ自身がかなり変わっているのだ。そのリーシャが育てているのだから当然とも言える。まあきっと本人は気がついてないと思うが。



 先日アーネストから報告を受けた。
 ジュリアが、最近導入した厨房のガス台の火が付かないのだと言い出して町から修理工を呼んだのだが、管に詰まってるものがあるとかで、修理には何時間か掛かると言われたそうだ。

 丁度昼食時だったので、奥様や坊っちゃま達の食事をどうすると言う事でジュリアが修理工をせかしていると、リーシャがやって来て状況を聞き、

「しょうがないでしょう。急かすよりしっかり直して貰わないと困るじゃないの。
 いいわよジュリア。子供たちのご飯は気にしなくて。私がやるわ」

 と笑いかけると、冷蔵庫の中身をチェックして、よし、と頷くと、釣りへ行く時のような少年ぽい格好に着替えて子供たちを呼び、

「みなさーん、現在我が家のキッチンはご機嫌が悪いのです。少し休みが欲しいと言うので庭でサバイバルをしたいと思います」

 と宣言した。

「かーさま、サバイバルとはなんですか?」

 カイルが首を傾げると、

「もし山や森で迷子になってもしぶとく生き残るテクニックのことを言います。
 みんなー、しぶとくなりたいかー」

「「「おー」」」

「外で美味しいご飯を食べたいかー」

「「「おー」」」

「うむ。では特別に隊長が直々に教えてあげよう。ついてこーい」

「「「おー!」」」

 などと言いながらマカランやアレックにも手伝わせて庭に太い枝をバッテンにしたものを2つ作り、地面に埋めるとそこに引っかけるように棒を渡して鍋をぶら下げた。

「シチューを作るためには火が必要だ。カイル隊員、アレックと燃えそうな木を探して来なさい」

「りょーかいですたいちょー!」

「そしてブレナン隊員は木を燃えやすいように適度にすき間が出来るように鍋の下に並べて火をおこしたまえ。ちょっと大変だからアレックやマカランに助けてもらってもいいのだ」

「はいたいちょー」

「アナ隊員とクロエ隊員は、鍋に水を運ぶのだ。隊長は肉と野菜を切ってくる」

「「あいったいちょー」」

 と子供たちとワイワイしながらシチューを作り、焼いたパンに火で炙ったチーズをトロトロと垂らして、

「これは隊長が夢にまで見たアルプスという遠い国のステキな食べ方なのだよ!滅多に出来る機会がないので大事に食べるように」

 と言いながら、ヨダレを垂らす子供たちの口に冷ましては放り込んで行く。

「おいしー!」

 口々に言う子供たちを笑顔で見渡し、

「そうでしょそうでしょ。でもあまり上品な食べ方ではないので、これは我が家だけの秘密よ。他で言わないように」

「「「「りょーかいですたいちょー」」」」

 ルーシーやジュリア達もみんな呼んで、シチューとチーズを垂らしたパンを頬張ると、ちゃんと火の始末や後片づけまで手伝わせたらしい。

「やりっ放しはいけないのだ隊員たち。片づけもしないと次が楽しめないのだ。自宅でオモチャを出しっぱなしにするのがダメなのもそのためなのです」

「あい」「はい」「はーい」「あい」

「そして、今回はもしよその貴族様に見られてもバレないようにするためのモノでもあるのです。これを証拠隠滅と言います。覚えておくように」

「「「「しょーこいんめつ」」」」

「エクセレント!
 外では国のお仕事をしている父様に恥をかかせたらいけないから、いい子にしてないとダメよ。
 その代わり家ではあまりうるさくは言わないから。………まあ母様があんまり堅苦しいのは苦手だからね。危ない事や悪いことしなければオッケーだから」

「そんなかーさまがだいすき」

 ブレナンがリーシャに抱き着くと、カイルやアナ、クロエも

「かーさまだいすき!」

 と飛び付いてくる。

「ぐほっ!ちょ、母様食べたものが出るってば。最近あなたたち力強いのよっ」

 と言いながらも嬉しそうにしていたそうだ。

 


 まあ日々、こんな感じである。


 正直、元伯爵令嬢としても現子爵夫人としてもかなりぶっ飛んでいると思うが、うちの使用人は何故か誰も注意をしない。
 当然ながら俺もしない。
 楽しくて見ていて飽きないからである。


 アーネストも、

「本当に奥様は貴族とは思えない無茶ばかりされますねえ………」

 と言うが、その顔は微笑ましいものを見ているような眼差しである。


 そう。うちの奥さんは本当に常時女神のように美しくて可愛い。朝から晩までエンドレスでクソ可愛い。なんでこんな可愛い生き物がいるのだ。どうしてくれようか。


 未だにこんな面白味もない不細工な男とよくぞ結婚してくれたと感謝しかない。

 子供たちも可愛すぎる。


 今は毎日が楽しく、幸せと喜びに溢れている俺なのだが、1つだけ悩んでいる事がある。


 この間仕事を終えて帰宅した時に、リーシャが子供たちと騎士団ごっこをしていて、『ほふく前進』を教えていた。

「敵陣に潜り込むために目立たないようひっそりと進むのよー。父様もお国の為に訓練してるのよー絶対上手いんだから………あら、結構しんどいわねこれ」

 などとぜーぜーしながら立てた厚紙に描いた敵に攻め入っていたが、俺は剣の鍛練と擬似戦闘、捕縛訓練が主で、実はほふく前進をしたことがないのだ。


 正直に言いたいのだが、ほふく前進をしてるリーシャが可愛いわ真面目にほふく前進をしてる子供たちも可愛いわで、どうしても言い出せないでいる。


 
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