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双子ちゃん誕生。

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 私は呑気に構えすぎていた。

 ブレナンを出産した時も楽だったから、この子達も結構楽なんじゃないかなー、などと思ってしまった。

 いや、スタートは楽だったのだ。
 悪阻が夏バテだと思うレベルで過ぎてしまったし、お腹もそんな出なかったし。


 それが、7ヶ月になる頃には、かなり豪快なお腹になっていて、ウエストを締め付けないマタニティードレスでも結構キツい。それに腰に来る。横向きでしか眠れない。

 食欲もまあ貪るというのが適切じゃないかと言うほど食べる食べる。
 5キロは確実に肥えてる気がする。

 ただ、胃がお腹に圧迫されてるのか一度に大量は無理で、5回にも6回にも分けて食べる。

「順調ですな」

 とバートン先生は仰るが、脚はむくむし頭痛はするし、常時不調気味である。

 ルーシーが双子は大変だと母に聞きましたから、とライラには長期取材旅行という名目で一年間の産前産後休暇をもぎ取ってくれたから良かったものの、執筆する気力も体力も全然出ない。

 8ヶ月を過ぎると、身体は重いしダルいしで一日の半分以上はベッドの中である。
 これまで時間がなくて溜めこんでいた未読のマンガや小説も大分消化でき、おかげでストレスも発散出来たが、これが果たして胎教にいいかというと微妙なところだろう。

 まあ、母親がストレス溜めない事は大事だと言う事でよしとしよう。


 その頃には既に二人とも女の子であると判明しており、女の子用の産着などの準備や子供部屋の改装も終わり、後は産むだけなのだが、9ヶ月位は中に居てくれないと未熟児だったり虚弱体質や障害などのトラブルも高まるとかで、ダークや実家の家族、使用人に至るまで【絶対安静】を言い渡されている私は、ぶっちゃけ暇である。

 時々遊びに来てくれるフランや、パパンとママン、マークス兄様と弟のブライアン達とおしゃべりする位しか気晴らしがない。


※   ※   ※


「ママ、いもうとはもうすぐうまれるの?」

 カイルも3歳になり、ブレナンも2歳。
 自分達より下の妹が出来るのが嬉しいらしい。

「そうよー。もうあと1ヶ月ぐらいかなー。楽しみ?」

「うん!ブレみたくコロコロすればよろこんでくれる?」

「どうかなあ。女の子だからねえ。もっと優しく撫でてあげる方が喜ぶかもね」

「わかった!」

 ブレナンはちょっと特殊な方だと思うから参考にしちゃダメだぞカイル。

「ブレもなでる」

「ありがとうね。二人ともお兄ちゃんになるから、妹たちを守ってあげてね。あんまりケンカしないのよ?」

「「あい!」」

 まあうちの子たちは、使用人にも愛されてるし、割とおっとりした性格なので、変に妹に焼きもちを妬いたりする心配はないかも知れないが、赤ちゃんの間はきっとかかりっきりになるので、私もカイル達とはマメにコミュニケーションを取らなくては。



 それと、おめでたいことは重なるもので、ダークの親友のヒューイのところもミランダが初おめでたである。女の子のようだ。お祝いを贈らないと。
 時期的にも数ヵ月の差しかないので、うちの娘たちと友達になれるといいなと思っている。

 幼馴染みとかいい響きよね。

 この年で二人しか友達が居ない母のように、外の世界と縁遠いみたいな事がないよう願いたいものなのですよ。

 いや、別に友達二人でも幸せだけどね。

 出会いは多い方がいいと今さらながら思う訳ですよ。

 ミランダとも仲良くなりたい気持ちはあるのだけれど、彼女もイザベラ=ハンコックのファンであることが判明してからは、余り距離を縮めないようにしている。

 あの子結構カンが鋭いのよ。

 なるべくバレるような事態は避けないと。
 一応元伯爵令嬢で子爵夫人ですからね。
 貴族ってのは低い地位でも色々と気苦労があるのだ。



 そして、初の娘たちとの対面を心待ちにしているダーク。
 夜は私のお腹をさわさわしながら、

「娘だから、絶対にリーシャに似てくれないと困るな。ああでも余りに可愛すぎるとまた変な虫が沢山つくからそこそこで…………いやしかし俺に似てしまうと可哀想だし………」

 などと毎日やっている。

「大丈夫よ。この世界で不細工だろうが美人だろうが、どっちでも大切に可愛がるから私」

 女同士の会話も大人になってから出来そうだし、やっぱり息子と娘は違うよね。
 
「勿論俺もそうだが、苦労させたくないから」

「まあ、もし残念な顔で嫁に行けないほどなら、私もがんばって稼いでヒッキーになってもお金に困らないで大丈夫なようにようにしてあげるし。
 世の中ってのは概ねお金があれば大抵何とかなるものよ。なんならちょっと顔いじってもいいし」

「リーシャは儚げで俗世間の事なんか分かりませんみたいな現実離れした見た目の割に、言うことがざっくばらんで地に足がついてるよ」

「儚げ………」

「リーシャは自分を褒められる事にいつになったら慣れるんだ。鳥肌出てるぞ」

「そんなものに慣れたらおしまいだと思うのよ私。第一キャラにないのよね、そういうザ・ご令嬢!みたいな形容詞は」

「まあ俺も5年近い生活で割と分かってきたけどな」

「でしょ。………そういう女は嫌い?」

「いや、前以上に好きになった」

「………………ダーク………」

「ん?どうした」

「バートン先生呼んで。破水したみたいなの………」

 ダークはガバッと起き上がると、タオルを何枚も持ってきて私に渡すと、

「そこから動くな。待ってろすぐ呼びに行かせるから!」

 と寝室を飛び出していった。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 バートン先生がやって来て、私の体力が8時間ほど根こそぎ奪われた頃、ようやく我が家の愛娘アナスタシアとクロエが誕生した。

 ギリギリ9ヶ月に入ろうかという早産だったが、二人とも2000グラムを少し越えたそこそこの大きさに育ってくれていた。



「いやぁ、おきれいな嬢ちゃん達で将来が楽しみですな!」

 
 こんなにくっしゃくしゃなお猿さんのような顔でもすぐ分かる、おっそろしいほど私の小さい頃と瓜二つの子供達を見て、

(………大和民族恐るべし)

 と恐れおののきながらも、内心で

(とりあえずこの国なら嫁ぎ先も問題ないかしらね)

 と母としては胸を撫で下ろすのだった。





 ………………まあ、事態はそんな生易しいもんじゃなかったと後日分かるのだけれど。




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