69 / 256
授与式【3】
しおりを挟む
馬車で王宮に向かう。
過剰な装飾のないスモーキングブルーの落ち着いた色合いのドレスは大人の女みたいで気に入ってるし、メイクもシンプルにパウダーとアイライナーとサーモンピンクの口紅のみ。
土偶武装モードとしてはボスレベルのアーマーであると言える。
ただこの、寄せて上げる感じのブラを着けた辺りの、結構攻めてる開き具合が私を不安にする。
チチ3割は見えてるぞおい。
いや、最近の人気は首からデコルテ辺りの女性らしいラインと胸元の谷間を強調して見せる事で、慈愛と色気と包容力を演出するんです、とかよく分からない事をルーシーが言ってたけれど、これ本当に大丈夫なんでしょうね。そもそも慈愛と色気と包容力って同時に演出できない気がするんだけれど。
「今しかないボリューミーな胸を強調しないでいつするんですか?
またお子様が出来るか旦那様に揉んで頂いて、『辛うじてC』から『看板通りのC』カップになるまで保留ですか?次は一体何年後でございますか。
未だにロリコンとか無垢な女神をだまくらかしただの、ひそひそ陰口叩かれてる旦那様のためにも、セクシーな大人の女性ですよっ、てところを公式の場でアピールするのも妻の務めですわ」
とか言われて、怒りと勢いでその気にはなったのだけど。恥ずかしいものは恥ずかしい。
悶々としているうちに王宮へ着いたが、思ったより早かったようで受付にはまだ誰もいなかった。
しっかし無駄に広いわよねー。
庭園だけでうちの屋敷いくつ入るのやら。
一度だけ子供の頃に父様に連れられて来たことがあるけど、久しぶり過ぎてどこがどこやらさっぱりである。
少し庭園を散歩して時間を潰そうかしらね。
天気も良いし人も少ないし、とブラブラ池の方まで歩いて行くと、しゃがみこんで池の中を覗き込んだ。
(うーん、ここもメダカばっかりだわ。金魚っていないのかしらねこの国。
……そういや最近釣りに行けてないわね。でもカイルもブレナンも小さいしなー。ま、もう少し経ってからでもいっか)
ボーッとベンチに座り、穏やかな気分で考え事をしていると、視線を感じた。
辺りを見回すと、隣のベンチに座っている美少年がこちらを見ていた。が、記憶にない顔である。
多分二十歳までは行ってない。
17、8歳位かしら。成人はしてそうだ。
黒に近いような焦げ茶色の癖のない柔らかそうな髪に、ダークとはまた系統の違う中性的な優しげな顔のイケメンで、グリーンの瞳がとても綺麗だ。
騎士団なら第三、第四部隊でもトップクラスの美形、と言うことはまあかなりの不細工という事ですねぇ。
もしかしたら、周りに見られたくなくて人の少ないところに来てたのかも知れない。
悪いことをしてしまった。
何しろ社交界には必要最小限しか出入りしてなかったもので、貴族の名前は大体分かるんだけど、顔と名前が一致しないのよね。うーん、公爵か侯爵だった?伯爵家は多いしなー。蘇れ私の記憶力よー。
………ダメだわ。すっかり腐女子マインドになってるものねぇこの頃は。
しかしぼんやり見つめあっててもしょうがないので、立ち上がり淑女の礼をしつつ確認した。
「大変失礼いたしました。
私は人の顔をなかなか覚えられないもので不躾を、………あの、以前お会いした事がございましたでしょうか?」
「っ、こちらこそ失礼しました!あんまり綺麗な女性だったので驚いてしまってっ」
サッと顔を赤らめモジモジする美少年。
眼福ではあるが、やはりはみチチドレスでは目のやり場に困るのだろう。
「まぁ、ふふっ。そんなお若いうちからお世辞など覚えなくても宜しいのですよ。
………でも左様でございますか?間違いなく日光補整だと思いますが、ありがとうございます。
貴方様もエメラルドのような綺麗な瞳でおられますね。羨ましいですわ」
「え?あっ、ありがとうございます!
………ですが、いくら瞳が綺麗と仰って頂いても、彩る顔がこれでは台無しですね」
自嘲気味に頬を押さえる美少年に、思わず手を伸ばした。
全く、本当にこの国はイケメンに冷た過ぎるのよ。
「いいえ。見る人によって顔立ちなど好みは異なるのです。御自身で貶めてどうするのです。
顔がどうだろうと、最終的に一番大切なのは中身の美しさだと私は思います」
「………ですが………」
「私が1つ、気持ちが楽になる言葉をお教え致しましょうか?」
「………?」
「美人だろうが美男子だろうが、ブスだろうが不細工だろうが、歳を食ったらみーんな同じジジババになるのです。
これは何があろうが不変です。
美貌なんか年月で確実に衰えますが、知性やお人柄は年月では衰えませんのよ?
だったら無い物ねだりをするよりも、変わらない方を研鑽する方がよほど建設的じゃありませんか」
「………ジジババ………」
「あら、少々言葉に品がなかったですわね。時々メイドにも怒られますのよ、ふふふっ。もしお気を悪くされたなら申し訳ありません。
………いけない、そろそろ行かないと。
では、失礼致します」
受付に人の姿が見え出したので、私は慌ててお辞儀をする。
ちょっとのんびりしすぎたわ。
受付に向かって歩き出した私に、美少年が呼び掛けた。
「私は、ジークライン・フェルーシーと申しますがお名前をっ!」
「リーシャ・シャインベックですわ。名前も名乗らず偉そうな事を言ってましたのね私。大変失礼致しました」
振り返り再度頭を下げると、受付に向かいながら再度考えた。
フェルーシー?………やっぱり知らないわー。死んでるわ私の脳。後でダークに聞いとかないと………などと思いながらも、つい好き放題言ってしまっていた自分に反省し、せめてそんなに高い爵位のボンボンじゃありませんように、と心で祈りを捧げるのだった。
過剰な装飾のないスモーキングブルーの落ち着いた色合いのドレスは大人の女みたいで気に入ってるし、メイクもシンプルにパウダーとアイライナーとサーモンピンクの口紅のみ。
土偶武装モードとしてはボスレベルのアーマーであると言える。
ただこの、寄せて上げる感じのブラを着けた辺りの、結構攻めてる開き具合が私を不安にする。
チチ3割は見えてるぞおい。
いや、最近の人気は首からデコルテ辺りの女性らしいラインと胸元の谷間を強調して見せる事で、慈愛と色気と包容力を演出するんです、とかよく分からない事をルーシーが言ってたけれど、これ本当に大丈夫なんでしょうね。そもそも慈愛と色気と包容力って同時に演出できない気がするんだけれど。
「今しかないボリューミーな胸を強調しないでいつするんですか?
またお子様が出来るか旦那様に揉んで頂いて、『辛うじてC』から『看板通りのC』カップになるまで保留ですか?次は一体何年後でございますか。
未だにロリコンとか無垢な女神をだまくらかしただの、ひそひそ陰口叩かれてる旦那様のためにも、セクシーな大人の女性ですよっ、てところを公式の場でアピールするのも妻の務めですわ」
とか言われて、怒りと勢いでその気にはなったのだけど。恥ずかしいものは恥ずかしい。
悶々としているうちに王宮へ着いたが、思ったより早かったようで受付にはまだ誰もいなかった。
しっかし無駄に広いわよねー。
庭園だけでうちの屋敷いくつ入るのやら。
一度だけ子供の頃に父様に連れられて来たことがあるけど、久しぶり過ぎてどこがどこやらさっぱりである。
少し庭園を散歩して時間を潰そうかしらね。
天気も良いし人も少ないし、とブラブラ池の方まで歩いて行くと、しゃがみこんで池の中を覗き込んだ。
(うーん、ここもメダカばっかりだわ。金魚っていないのかしらねこの国。
……そういや最近釣りに行けてないわね。でもカイルもブレナンも小さいしなー。ま、もう少し経ってからでもいっか)
ボーッとベンチに座り、穏やかな気分で考え事をしていると、視線を感じた。
辺りを見回すと、隣のベンチに座っている美少年がこちらを見ていた。が、記憶にない顔である。
多分二十歳までは行ってない。
17、8歳位かしら。成人はしてそうだ。
黒に近いような焦げ茶色の癖のない柔らかそうな髪に、ダークとはまた系統の違う中性的な優しげな顔のイケメンで、グリーンの瞳がとても綺麗だ。
騎士団なら第三、第四部隊でもトップクラスの美形、と言うことはまあかなりの不細工という事ですねぇ。
もしかしたら、周りに見られたくなくて人の少ないところに来てたのかも知れない。
悪いことをしてしまった。
何しろ社交界には必要最小限しか出入りしてなかったもので、貴族の名前は大体分かるんだけど、顔と名前が一致しないのよね。うーん、公爵か侯爵だった?伯爵家は多いしなー。蘇れ私の記憶力よー。
………ダメだわ。すっかり腐女子マインドになってるものねぇこの頃は。
しかしぼんやり見つめあっててもしょうがないので、立ち上がり淑女の礼をしつつ確認した。
「大変失礼いたしました。
私は人の顔をなかなか覚えられないもので不躾を、………あの、以前お会いした事がございましたでしょうか?」
「っ、こちらこそ失礼しました!あんまり綺麗な女性だったので驚いてしまってっ」
サッと顔を赤らめモジモジする美少年。
眼福ではあるが、やはりはみチチドレスでは目のやり場に困るのだろう。
「まぁ、ふふっ。そんなお若いうちからお世辞など覚えなくても宜しいのですよ。
………でも左様でございますか?間違いなく日光補整だと思いますが、ありがとうございます。
貴方様もエメラルドのような綺麗な瞳でおられますね。羨ましいですわ」
「え?あっ、ありがとうございます!
………ですが、いくら瞳が綺麗と仰って頂いても、彩る顔がこれでは台無しですね」
自嘲気味に頬を押さえる美少年に、思わず手を伸ばした。
全く、本当にこの国はイケメンに冷た過ぎるのよ。
「いいえ。見る人によって顔立ちなど好みは異なるのです。御自身で貶めてどうするのです。
顔がどうだろうと、最終的に一番大切なのは中身の美しさだと私は思います」
「………ですが………」
「私が1つ、気持ちが楽になる言葉をお教え致しましょうか?」
「………?」
「美人だろうが美男子だろうが、ブスだろうが不細工だろうが、歳を食ったらみーんな同じジジババになるのです。
これは何があろうが不変です。
美貌なんか年月で確実に衰えますが、知性やお人柄は年月では衰えませんのよ?
だったら無い物ねだりをするよりも、変わらない方を研鑽する方がよほど建設的じゃありませんか」
「………ジジババ………」
「あら、少々言葉に品がなかったですわね。時々メイドにも怒られますのよ、ふふふっ。もしお気を悪くされたなら申し訳ありません。
………いけない、そろそろ行かないと。
では、失礼致します」
受付に人の姿が見え出したので、私は慌ててお辞儀をする。
ちょっとのんびりしすぎたわ。
受付に向かって歩き出した私に、美少年が呼び掛けた。
「私は、ジークライン・フェルーシーと申しますがお名前をっ!」
「リーシャ・シャインベックですわ。名前も名乗らず偉そうな事を言ってましたのね私。大変失礼致しました」
振り返り再度頭を下げると、受付に向かいながら再度考えた。
フェルーシー?………やっぱり知らないわー。死んでるわ私の脳。後でダークに聞いとかないと………などと思いながらも、つい好き放題言ってしまっていた自分に反省し、せめてそんなに高い爵位のボンボンじゃありませんように、と心で祈りを捧げるのだった。
16
お気に入りに追加
1,421
あなたにおすすめの小説
異世界の美醜と私の認識について
佐藤 ちな
恋愛
ある日気づくと、美玲は異世界に落ちた。
そこまでならラノベなら良くある話だが、更にその世界は女性が少ない上に、美醜感覚が美玲とは激しく異なるという不思議な世界だった。
そんな世界で稀人として特別扱いされる醜女(この世界では超美人)の美玲と、咎人として忌み嫌われる醜男(美玲がいた世界では超美青年)のルークが出会う。
不遇の扱いを受けるルークを、幸せにしてあげたい!そして出来ることなら、私も幸せに!
美醜逆転・一妻多夫の異世界で、美玲の迷走が始まる。
* 話の展開に伴い、あらすじを変更させて頂きました。
何を言われようとこの方々と結婚致します!
おいも
恋愛
私は、ヴォルク帝国のハッシュベルト侯爵家の娘、フィオーレ・ハッシュベルトです。
ハッシュベルト侯爵家はヴォルク帝国でも大きな権力を持っていて、その現当主であるお父様にはとても可愛がられています。
そんな私にはある秘密があります。
それは、他人がかっこいいと言う男性がとても不細工に見え、醜いと言われる男性がとてもかっこよく見えるということです。
まあ、それもそのはず、私には日本という国で暮らしていた前世の記憶を持っています。
前世の美的感覚は、男性に限定して、現世とはまるで逆!
もちろん、私には前世での美的感覚が受け継がれました……。
そんな私は、特に問題もなく16年生きてきたのですが、ある問題が発生しました。
16歳の誕生日会で、おばあさまから、「そろそろ結婚相手を見つけなさい。エアリアル様なんてどう?今度、お茶会を開催するときエアリアル様をお呼びするから、あなたも参加しなさい。」
え?おばあさま?エアリアル様ってこの帝国の第二王子ですよね。
そして、帝国一美しいと言われている男性ですよね?
……うん!お断りします!
でもこのまんまじゃ、エアリアル様と結婚させられてしまいそうだし……よし!
自分で結婚相手を見つけることにしましょう!
私が美女??美醜逆転世界に転移した私
鍋
恋愛
私の名前は如月美夕。
27才入浴剤のメーカーの商品開発室に勤める会社員。
私は都内で独り暮らし。
風邪を拗らせ自宅で寝ていたら異世界転移したらしい。
転移した世界は美醜逆転??
こんな地味な丸顔が絶世の美女。
私の好みど真ん中のイケメンが、醜男らしい。
このお話は転生した女性が優秀な宰相補佐官(醜男/イケメン)に囲い込まれるお話です。
※ゆるゆるな設定です
※ご都合主義
※感想欄はほとんど公開してます。
【R18】世界一醜い男の奴隷として生きていく
鈴元 香奈
恋愛
憧れていた幼馴染の容赦のない言葉を聞いてしまい逃げ出した杏は、トラックとぶつかると思った途端に気を失ってしまった。
そして、目が覚めた時には見知らぬ森に立っていた。
その森は禁戒の森と呼ばれ、侵入者は死罪となる決まりがあった。
杏は世界一醜い男の性奴隷となるか、死罪となるかの選択を迫られた。
性的表現が含まれています。十八歳未満の方は閲覧をお控えください。
ムーンライトノベルスさんにも投稿しています。
気付いたら異世界の娼館に売られていたけど、なんだかんだ美男子に救われる話。
sorato
恋愛
20歳女、東京出身。親も彼氏もおらずブラック企業で働く日和は、ある日突然異世界へと転移していた。それも、気を失っている内に。
気付いたときには既に娼館に売られた後。娼館の店主にお薦め客候補の姿絵を見せられるが、どの客も生理的に受け付けない男ばかり。そんな中、日和が目をつけたのは絶世の美男子であるヨルクという男で――……。
※男は太っていて脂ぎっている方がより素晴らしいとされ、女は細く印象の薄い方がより美しいとされる美醜逆転的な概念の異世界でのお話です。
!直接的な行為の描写はありませんが、そういうことを匂わす言葉はたくさん出てきますのでR15指定しています。苦手な方はバックしてください。
※小説家になろうさんでも投稿しています。
王宮の片隅で、醜い王子と引きこもりライフ始めました(私にとってはイケメン)。
花野はる
恋愛
平凡で地味な暮らしをしている介護福祉士の鈴木美紅(20歳)は休日外出先で西洋風異世界へ転移した。
フィッティングルームから転移してしまったため、裸足だった美紅は、街中で親切そうなおばあさんに助けられる。しかしおばあさんの家でおじいさんに襲われそうになり、おばあさんに騙され王宮に売られてしまった。
王宮では乱暴な感じの宰相とゲスな王様にドン引き。
王妃様も優しそうなことを言っているが信用できない。
そんな中、奴隷同様な扱いで、誰もやりたがらない醜い第1王子の世話係をさせられる羽目に。
そして王宮の離れに連れて来られた。
そこにはコテージのような可愛らしい建物と専用の庭があり、美しい王子様がいた。
私はその専用スペースから出てはいけないと言われたが、元々仕事以外は引きこもりだったので、ゲスな人たちばかりの外よりここが断然良い!
そうして醜い王子と異世界からきた乙女の楽しい引きこもりライフが始まった。
ふたりのタイプが違う引きこもりが、一緒に暮らして傷を癒し、外に出て行く話にするつもりです。
[完結済み]男女比1対99の貞操観念が逆転した世界での日常が狂いまくっている件
森 拓也
キャラ文芸
俺、緒方 悟(おがた さとる)は意識を取り戻したら男女比1対99の貞操観念が逆転した世界にいた。そこでは男が稀少であり、何よりも尊重されていて、俺も例外ではなかった。
学校の中も、男子生徒が数人しかいないからまるで雰囲気が違う。廊下を歩いてても、女子たちの声だけが聞こえてくる。まるで別の世界みたいに。
そんな中でも俺の周りには優しいな女子たちがたくさんいる。特に、幼馴染の美羽はずっと俺のことを気にかけてくれているみたいで……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる