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レッスン4『差し入れをする』
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デートは、ダーク様が膝枕から飛び起きて暫く石化してから、何事もなかったかのように馬車で自宅まで送り届けてもらったところで終了となった。
ダーク様は焦点の合わない目でずうっと遠くの方を見ていたせいか、馬車に戻るとき段差に蹴躓いていたが、大丈夫だっただろうか、と私は心配だった。
ルーシーは、ダーク様の様子から、また私が何かをやらかした気配を察知したようで、私の部屋に戻ると余罪含めて白状させられた。
「………リーシャお嬢様」
「何かしら」
「わたくし、お嬢様の事をそれはそれは大切に、蝶よ花よと可憐で繊細なご令嬢になるべくお育てしたつもりでおりました。
それが何故アユよマスよとガサツで大雑把な釣りバカ煩悩小説家の腐女子になってしまわれたのでしょうか」
「それは難しい問題ね。
そこに川があったから。
そこに萌えがあったから。
つまりは必然だったと言う事かしらね。
まあベースにないものを求められても困るのよ」
「そうするとベースに殿方の唇をいきなり奪うという性的嗜好も含まれておられる訳ですか」
「それはついかっとなってやってしまったのよ。今では反省しているわよ。
………でもダーク様が小声でやれるもんならやってみろみたいな事を言うから、よしきたと思って」
「よしきたじゃありません。
そんな犯罪者の模範的言い訳を聞きたい訳ではございません。小声なら聞こえなかった振りをしとけば宜しいではありませんか」
「聞き逃すには惜しいと私の中の腐女子センサーがゴーサインを出したのよ。でもちゃんとミッションクリアしたのだから良いじゃない」
「………まあ、もう済んだ事をどうこう言っても仕方がありません。次からは『自制心』と言う言葉を胸に行動をお願いいたします」
「まあ残念だったわね。
私の自制心は、ダーク様に会ってから冬の雪山で遭難したっきり雪解けの今になっても骨すら見つからないわ。きっともう………」
「骨もないならまだどっかで生きてるかも知れないじゃないですか。諦めたら試合終了でございます。次のデートまでに絶対発見しておいて下さい。
ところで、『コーヒーと店長と俺』が限定版で発売されることになりました。初回特典では小説の中のカフェ【ローズガーデン】の店名を入れたコースターとコーヒースプーンがついて来るそうです。二回目特典では同じく店名の入ったマグカップだそうで、既に2回ともほぼ同じお客様が予約されていて書店でもホクホクのようでございます。
店長に横恋慕する執着系独占欲全開のヤンデレイケメン店員との無理矢理から始まるラブロマンスは、薄い本業界で新たな扉を開いた画期的な作品と評判ですから、こういうグッズが求められるのも致し方ありませんね」
「あの出版元、いつからそんなこすい商売をするようになったのかしら。特典以外は同じなんて、私の良心が痛まない訳ないじゃないの」
「ダーク様のプライドにトラウマレベルの傷をつけたお嬢様が良心を語りますか。わたくしの腹筋への攻撃も忘れないとは流石リーシャお嬢様は抜け目がありませんね。
まあそれにこすかろうがお客様が自分で好きで買うと言うのだから良いのです。勿論わたくしも予約しておりますし」
「ルーシー。一度貴女とはじっくり腰を据えて話し合いをしなくてはならない時が来たようね」
「そんなことよりお嬢様、ダーク様の次のデートの件なんですが、デートの前に、やはり王道路線で攻めるのは基本ではないかと」
「話し合いは逃げないわね。また今度にしましょう。
それで王道路線と言うのはどんな感じなのかしら?」
「職場への差し入れでございます。上手く行けば隊員の方々との訓練も見られる上に、見た目だけは妖精のように美しいリーシャお嬢様が手作りのお弁当とお菓子を届けに来るんですよ?部下からの嫉妬と羨望で男としてのプライドがくすぐられるではありませんか。トラウマも少しは回復するのではないかと。
クッキーも欲しいとねだられたのでしょう?ちょうどいいじゃございませんか」
「イチイチ小骨が引っ掛かるけど、まあそんなことはともかく、ダーク様のご迷惑にならないかしら」
「既に散々ご迷惑をおかけしてると思いますので大した問題ではないと思われます。
一個二個沢山と言うではありませんか。三つ以上の迷惑なんて皆おんなじです。
ついでにお嬢様が『次のデートが待ちきれなくて来てしまいました』とか上目遣いで恥ずかしそうに言っとけば、デレることはあってもツンになることはございませんよ」
「この頃貴女のエアーナイフが私の心の柔らかいところによく刺さるわよ。血まみれよ貴女の主人。
だけど、なかなかいい方法よねそれ」
「翌日までには完治しているお嬢様の回復力と記憶の抹消の早さにはわたくしも心で血の涙を流しておりますので、行って来いでチャラでございます。
早速ですが、執筆に入られる前に話を詰めた方がよろしいかと」
「そうね。それでないと私も落ち着かないわ。で、どんな感じの流れで行くのがいいかしら?」
私の部屋は、また深夜までひそひそ話が続くのであった。
ダーク様は焦点の合わない目でずうっと遠くの方を見ていたせいか、馬車に戻るとき段差に蹴躓いていたが、大丈夫だっただろうか、と私は心配だった。
ルーシーは、ダーク様の様子から、また私が何かをやらかした気配を察知したようで、私の部屋に戻ると余罪含めて白状させられた。
「………リーシャお嬢様」
「何かしら」
「わたくし、お嬢様の事をそれはそれは大切に、蝶よ花よと可憐で繊細なご令嬢になるべくお育てしたつもりでおりました。
それが何故アユよマスよとガサツで大雑把な釣りバカ煩悩小説家の腐女子になってしまわれたのでしょうか」
「それは難しい問題ね。
そこに川があったから。
そこに萌えがあったから。
つまりは必然だったと言う事かしらね。
まあベースにないものを求められても困るのよ」
「そうするとベースに殿方の唇をいきなり奪うという性的嗜好も含まれておられる訳ですか」
「それはついかっとなってやってしまったのよ。今では反省しているわよ。
………でもダーク様が小声でやれるもんならやってみろみたいな事を言うから、よしきたと思って」
「よしきたじゃありません。
そんな犯罪者の模範的言い訳を聞きたい訳ではございません。小声なら聞こえなかった振りをしとけば宜しいではありませんか」
「聞き逃すには惜しいと私の中の腐女子センサーがゴーサインを出したのよ。でもちゃんとミッションクリアしたのだから良いじゃない」
「………まあ、もう済んだ事をどうこう言っても仕方がありません。次からは『自制心』と言う言葉を胸に行動をお願いいたします」
「まあ残念だったわね。
私の自制心は、ダーク様に会ってから冬の雪山で遭難したっきり雪解けの今になっても骨すら見つからないわ。きっともう………」
「骨もないならまだどっかで生きてるかも知れないじゃないですか。諦めたら試合終了でございます。次のデートまでに絶対発見しておいて下さい。
ところで、『コーヒーと店長と俺』が限定版で発売されることになりました。初回特典では小説の中のカフェ【ローズガーデン】の店名を入れたコースターとコーヒースプーンがついて来るそうです。二回目特典では同じく店名の入ったマグカップだそうで、既に2回ともほぼ同じお客様が予約されていて書店でもホクホクのようでございます。
店長に横恋慕する執着系独占欲全開のヤンデレイケメン店員との無理矢理から始まるラブロマンスは、薄い本業界で新たな扉を開いた画期的な作品と評判ですから、こういうグッズが求められるのも致し方ありませんね」
「あの出版元、いつからそんなこすい商売をするようになったのかしら。特典以外は同じなんて、私の良心が痛まない訳ないじゃないの」
「ダーク様のプライドにトラウマレベルの傷をつけたお嬢様が良心を語りますか。わたくしの腹筋への攻撃も忘れないとは流石リーシャお嬢様は抜け目がありませんね。
まあそれにこすかろうがお客様が自分で好きで買うと言うのだから良いのです。勿論わたくしも予約しておりますし」
「ルーシー。一度貴女とはじっくり腰を据えて話し合いをしなくてはならない時が来たようね」
「そんなことよりお嬢様、ダーク様の次のデートの件なんですが、デートの前に、やはり王道路線で攻めるのは基本ではないかと」
「話し合いは逃げないわね。また今度にしましょう。
それで王道路線と言うのはどんな感じなのかしら?」
「職場への差し入れでございます。上手く行けば隊員の方々との訓練も見られる上に、見た目だけは妖精のように美しいリーシャお嬢様が手作りのお弁当とお菓子を届けに来るんですよ?部下からの嫉妬と羨望で男としてのプライドがくすぐられるではありませんか。トラウマも少しは回復するのではないかと。
クッキーも欲しいとねだられたのでしょう?ちょうどいいじゃございませんか」
「イチイチ小骨が引っ掛かるけど、まあそんなことはともかく、ダーク様のご迷惑にならないかしら」
「既に散々ご迷惑をおかけしてると思いますので大した問題ではないと思われます。
一個二個沢山と言うではありませんか。三つ以上の迷惑なんて皆おんなじです。
ついでにお嬢様が『次のデートが待ちきれなくて来てしまいました』とか上目遣いで恥ずかしそうに言っとけば、デレることはあってもツンになることはございませんよ」
「この頃貴女のエアーナイフが私の心の柔らかいところによく刺さるわよ。血まみれよ貴女の主人。
だけど、なかなかいい方法よねそれ」
「翌日までには完治しているお嬢様の回復力と記憶の抹消の早さにはわたくしも心で血の涙を流しておりますので、行って来いでチャラでございます。
早速ですが、執筆に入られる前に話を詰めた方がよろしいかと」
「そうね。それでないと私も落ち着かないわ。で、どんな感じの流れで行くのがいいかしら?」
私の部屋は、また深夜までひそひそ話が続くのであった。
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