25 / 44
25
しおりを挟む
百合の部屋のチャイムを鳴らす。反応はなかった。物音がしないので、出かけているのかもしれない……と思った時、ドアが静かに開いた。
ぬっと顔を出した百合は、つむじのあたりの髪の毛がぴょんぴょんと飛び出していて、彼女の髪もセットしなければ乱れることがあるのだ……とあたりまえの事に気がついてしまう。
「こんにちは……」
昨日、レストランで話をした後に微妙に気まずい空気のまま別れたので、彼女はまだそのテンションを引きずっているようだ。日曜日の昼に不釣り合いな負のオーラが漂っている。
「さっきデパートでケーキを買ってきたの」
「ケーキ、ですか……」
この周辺は若者が溢れるおしゃれなスポット……とは言いがたい地域で、カフェや流行のスイーツなどとはどうしても縁が遠くなりがちだ。家族で何かを祝う習慣がない単身世帯ではなおさらだろう。
「すごいよ。イチゴショートと、マンゴータルト。どっちが好き?」
店のロゴがわかるように、紙袋をくるりと回して百合の鼻先まで持ってくる。もし彼女に動物の耳や尾があったなら、ぴん! と反応しただろう。
「え、もしかしてくれるんですか……」
「これで違ったら、めちゃくちゃヤバい人じゃない?」
百合の瞳に少し光が戻り、ドアが大きく開かれた。あたしを出迎えてくれた彼女は国民的ブランドのコラボTシャツに、中学のジャージらしきものを着ている。
「今、ちょうどサメ映画を見ようと思ってたんです。一緒にどうですか」
サメ映画。今時の女子高生はサメ映画を見るのか、とちょっと意外な展開であった。確かにしっとりした邦画などを見てもテンションは上がらないと思われるので、その判断は正しいのかもしれない。
「なら、お邪魔しようかな」
一旦部屋に戻り、バッグの代わりに電気ポットを持ち、今度はベランダから侵入する。
百合はこの前購入した梅昆布茶を飲んでいたようだ。塩気があるので、小腹が空いたときにはちょうどいいんです──としなくてもいい言い訳をしている。
「梅昆布茶、料理の隠し味に使うといいらしいね」
「はい、実はそうなんです。でもケーキには合わないですね」
百合は電子レンジ置き場になっているプラスチックの収納ケースの中から、黄色いパッケージの紅茶のパックを取りだした。どうやらあたしの持っている紅茶専門店の紙袋には気がついていない様子である。
「ちょい待ち。茶葉もいいやつがあるから」
「おお。大人ですね」
百合はしげしげと紅茶の缶を眺めた後、台所の戸棚からガラスのティーポットを取り出した。
セットのティーカップはないんですが、と彼女は言うものの、都内で自宅にティーセット一式をそろえている単身世帯は少ないだろう。
「せっかくなので、真面目に作りますね」
電気ポットで紅茶を煎れるためのお湯を作り、鍋にもお湯を満たし、ポットとマグカップをその中で温める。
「確か、ジャンピングでしたっけ。回転する方がいいんですよね」
彼女がそう言って指さした紅茶のパッケージには、三角形のティーバッグが茶葉のうまみをなんとやら……と示されている。
「なるほどね」
適当に計量もせず、何度かも定かではないお湯を注ぎ、茶葉を引き上げることもせず二回、三回……と出がらしを飲み続けているあたしにこだわりの紅茶の作り方なんて身についているわけもない。
「湿気ていない新鮮な茶葉。透明なガラスのポット、沸かし立てのお湯……」
百合は指折り必要なものを数えている。あたしはおとなしく体育座りで待つことにした。
茶葉の計量が終わり、いよいよ抽出……と言うところで、ふとある事に思い当たる。
「あれだよ、上から勢いよく注がなくちゃいけないんじゃない?」
フィクションに出てくる執事のように、高い位置からかっこよくお湯を注ぐ必要があるのではないか。そう考えたが、百合の調べではお湯の勢いで茶葉が動くのは『ジャンピング』ではないらしい。
透明な耐熱ガラスのポットの中で、茶葉が跳ねまわる。その様子を見た百合は「気持ちが落ち着く」とつぶやいた。なんでも、茶葉がふっと下に落ちていく様子にどこか「ほっこり」を感じるらしい。若い感性とは、かくも瑞瑞しいものなのね。
きっかり三分蒸らし、明るい琥珀色の紅茶が出来上がった。マグカップに注ぐ時のコポポ……と言う音に、小さくため息を漏らす。確かに、落ち着いて耳を澄ませてみると、ヒーリングミュージックとして販売されていてもおかしくない。
「どうぞ……」と差し出された、ずっしりとしたマグカップ。何度目かの「いただきます」を言葉にして、火傷しないようおそるおそる口に含む。
美味しくない紅茶は、刺激があると表現すればよいのか、どこか科学的な味がする。フレーバーがどうの、香り高いマスカットのフレーバーがどうの、というのは、あたしにはさっぱりわからないが、美味しい紅茶は、口当たりがよく、すっと体に馴染む感覚がある。好みとしては、それだけ一致していれば茶葉の産地や風味にはこだわりはない。
「お茶って、カフェインと水分のためって思っていましたが、こうしてちゃんと作ってみると嗜好品って事がよくわかりますね」
「そうだね」
嗜好品。味と香りを楽しむもの。イギリス人の知り合いはいないが、お茶の時間を大事にする国民性があるのも頷ける。そうしている間に、百合はこたつから体を伸ばし、映画の再生を始めた。
タイトルぐらいは見かけた事のある、有名なパニック・ムービーである。 公開されたのは随分前のはず、とタイトルを検索すると、なんと百合が産まれる前の作品であったので、改めて時の流れの残酷さに戦慄してしまう。
不安感を煽るようなBGMを尻目に、百合はうきうきした様子でケーキの箱に手をかけた。
ぬっと顔を出した百合は、つむじのあたりの髪の毛がぴょんぴょんと飛び出していて、彼女の髪もセットしなければ乱れることがあるのだ……とあたりまえの事に気がついてしまう。
「こんにちは……」
昨日、レストランで話をした後に微妙に気まずい空気のまま別れたので、彼女はまだそのテンションを引きずっているようだ。日曜日の昼に不釣り合いな負のオーラが漂っている。
「さっきデパートでケーキを買ってきたの」
「ケーキ、ですか……」
この周辺は若者が溢れるおしゃれなスポット……とは言いがたい地域で、カフェや流行のスイーツなどとはどうしても縁が遠くなりがちだ。家族で何かを祝う習慣がない単身世帯ではなおさらだろう。
「すごいよ。イチゴショートと、マンゴータルト。どっちが好き?」
店のロゴがわかるように、紙袋をくるりと回して百合の鼻先まで持ってくる。もし彼女に動物の耳や尾があったなら、ぴん! と反応しただろう。
「え、もしかしてくれるんですか……」
「これで違ったら、めちゃくちゃヤバい人じゃない?」
百合の瞳に少し光が戻り、ドアが大きく開かれた。あたしを出迎えてくれた彼女は国民的ブランドのコラボTシャツに、中学のジャージらしきものを着ている。
「今、ちょうどサメ映画を見ようと思ってたんです。一緒にどうですか」
サメ映画。今時の女子高生はサメ映画を見るのか、とちょっと意外な展開であった。確かにしっとりした邦画などを見てもテンションは上がらないと思われるので、その判断は正しいのかもしれない。
「なら、お邪魔しようかな」
一旦部屋に戻り、バッグの代わりに電気ポットを持ち、今度はベランダから侵入する。
百合はこの前購入した梅昆布茶を飲んでいたようだ。塩気があるので、小腹が空いたときにはちょうどいいんです──としなくてもいい言い訳をしている。
「梅昆布茶、料理の隠し味に使うといいらしいね」
「はい、実はそうなんです。でもケーキには合わないですね」
百合は電子レンジ置き場になっているプラスチックの収納ケースの中から、黄色いパッケージの紅茶のパックを取りだした。どうやらあたしの持っている紅茶専門店の紙袋には気がついていない様子である。
「ちょい待ち。茶葉もいいやつがあるから」
「おお。大人ですね」
百合はしげしげと紅茶の缶を眺めた後、台所の戸棚からガラスのティーポットを取り出した。
セットのティーカップはないんですが、と彼女は言うものの、都内で自宅にティーセット一式をそろえている単身世帯は少ないだろう。
「せっかくなので、真面目に作りますね」
電気ポットで紅茶を煎れるためのお湯を作り、鍋にもお湯を満たし、ポットとマグカップをその中で温める。
「確か、ジャンピングでしたっけ。回転する方がいいんですよね」
彼女がそう言って指さした紅茶のパッケージには、三角形のティーバッグが茶葉のうまみをなんとやら……と示されている。
「なるほどね」
適当に計量もせず、何度かも定かではないお湯を注ぎ、茶葉を引き上げることもせず二回、三回……と出がらしを飲み続けているあたしにこだわりの紅茶の作り方なんて身についているわけもない。
「湿気ていない新鮮な茶葉。透明なガラスのポット、沸かし立てのお湯……」
百合は指折り必要なものを数えている。あたしはおとなしく体育座りで待つことにした。
茶葉の計量が終わり、いよいよ抽出……と言うところで、ふとある事に思い当たる。
「あれだよ、上から勢いよく注がなくちゃいけないんじゃない?」
フィクションに出てくる執事のように、高い位置からかっこよくお湯を注ぐ必要があるのではないか。そう考えたが、百合の調べではお湯の勢いで茶葉が動くのは『ジャンピング』ではないらしい。
透明な耐熱ガラスのポットの中で、茶葉が跳ねまわる。その様子を見た百合は「気持ちが落ち着く」とつぶやいた。なんでも、茶葉がふっと下に落ちていく様子にどこか「ほっこり」を感じるらしい。若い感性とは、かくも瑞瑞しいものなのね。
きっかり三分蒸らし、明るい琥珀色の紅茶が出来上がった。マグカップに注ぐ時のコポポ……と言う音に、小さくため息を漏らす。確かに、落ち着いて耳を澄ませてみると、ヒーリングミュージックとして販売されていてもおかしくない。
「どうぞ……」と差し出された、ずっしりとしたマグカップ。何度目かの「いただきます」を言葉にして、火傷しないようおそるおそる口に含む。
美味しくない紅茶は、刺激があると表現すればよいのか、どこか科学的な味がする。フレーバーがどうの、香り高いマスカットのフレーバーがどうの、というのは、あたしにはさっぱりわからないが、美味しい紅茶は、口当たりがよく、すっと体に馴染む感覚がある。好みとしては、それだけ一致していれば茶葉の産地や風味にはこだわりはない。
「お茶って、カフェインと水分のためって思っていましたが、こうしてちゃんと作ってみると嗜好品って事がよくわかりますね」
「そうだね」
嗜好品。味と香りを楽しむもの。イギリス人の知り合いはいないが、お茶の時間を大事にする国民性があるのも頷ける。そうしている間に、百合はこたつから体を伸ばし、映画の再生を始めた。
タイトルぐらいは見かけた事のある、有名なパニック・ムービーである。 公開されたのは随分前のはず、とタイトルを検索すると、なんと百合が産まれる前の作品であったので、改めて時の流れの残酷さに戦慄してしまう。
不安感を煽るようなBGMを尻目に、百合はうきうきした様子でケーキの箱に手をかけた。
0
お気に入りに追加
172
あなたにおすすめの小説
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
実力を隠し「例え長男でも無能に家は継がせん。他家に養子に出す」と親父殿に言われたところまでは計算通りだったが、まさかハーレム生活になるとは
竹井ゴールド
ライト文芸
日本国内トップ5に入る異能力者の名家、東条院。
その宗家本流の嫡子に生まれた東条院青夜は子供の頃に実母に「16歳までに東条院の家を出ないと命を落とす事になる」と予言され、無能を演じ続け、父親や後妻、異母弟や異母妹、親族や許嫁に馬鹿にされながらも、念願適って中学卒業の春休みに東条院家から田中家に養子に出された。
青夜は4月が誕生日なのでギリギリ16歳までに家を出た訳だが。
その後がよろしくない。
青夜を引き取った田中家の義父、一狼は53歳ながら若い妻を持ち、4人の娘の父親でもあったからだ。
妻、21歳、一狼の8人目の妻、愛。
長女、25歳、皇宮警察の異能力部隊所属、弥生。
次女、22歳、田中流空手道場の師範代、葉月。
三女、19歳、離婚したフランス系アメリカ人の3人目の妻が産んだハーフ、アンジェリカ。
四女、17歳、死別した4人目の妻が産んだ中国系ハーフ、シャンリー。
この5人とも青夜は家族となり、
・・・何これ? 少し想定外なんだけど。
【2023/3/23、24hポイント26万4600pt突破】
【2023/7/11、累計ポイント550万pt突破】
【2023/6/5、お気に入り数2130突破】
【アルファポリスのみの投稿です】
【第6回ライト文芸大賞、22万7046pt、2位】
【2023/6/30、メールが来て出版申請、8/1、慰めメール】
【未完】
【書籍化確定、完結】私だけが知らない
綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
ファンタジー
書籍化確定です。詳細はしばらくお待ちください(o´-ω-)o)ペコッ
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2024/12/26……書籍化確定、公表
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる