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第1章
第157話《会場控室にてひなと遭遇するすずめ一行》
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「さ、行きましょうすずめ。こちらも衣装に着替えなければいけませんからね。」
「あっうん!」
巧斗さんは突然現れた黒服の男達を気にする様子もなく、軽く頭だけ下げて会場の入り口を閉めた。
幸いまだ観客達が出入りするような時間ではなかったので、さっきまでのやり取りを人に見られずに済んだみたいだ。
◇◇◇
会場の脇を通ってステージ横にあるドアを通ってコンテスト控室に向かうと、既に相田君がコンテストの衣装に着替えて手前のパイプ椅子に座って待ち構えていた。
「あ!お疲れ様っす~!!ちょっとさっきはつばめとの息抜きデートの提案をしてくださってとても感謝っす!!!おかげ様でその…、色々楽しかったっす…!!!」
「お疲れ、相田君!楽しそうで良かった。」
衣装選びもダンスの打ち合わせも終わっているので、もう少しゆっくりしていても良かったと思うのだが、多分コンテスト本番の時間が近づくに連れて、段々いてもたってもいられなくなって、つばめにドンと背中を押されて早めにきたんだろう。
あくまで想像でしかないが、頭の中に鮮明にその光景がありありと浮かび上がった。
「長介君、お疲れ様です。まさかもう着替えが済んでいるとは準備がいいですね。…俺もそこの着替えベースで衣装に着替えてきますので、すずめと一緒に待っていてもらえますか?」
「あっ巧斗兄!勿論っすよ!!いやぁ、あの衣装に着替えてメイクもした巧斗兄を見るのが楽しみっす!!」
巧斗さんが自分の手荷物の中からドレスの入った紙袋を持って、控室の最奥にある、カーテンに覆われている着替えベースに入っていくと、相田君と二人になったので雑談(つばめのデートの事とか、コンテストの事など)を交わしながらあたりを見回す。
すると、もう既にちらほらとミスターコンの出場者や、その相手役の人達が準備をしていて、その中には当然の如くしれっと、愛野ひながいた。
(!!!うわ、こいつもいたんだ…珍しく一人だから気づかなかった…。って、やっぱりひなも総一郎の相手役として来てたんじゃないか!)
ひなは化粧をするための鏡台(※楽屋みたいになっている)の真ん中付近の席に座って、
左手の指で台に置いた自分のメイクポーチを苛立たし気にトントンとしながら、スマホをイジっていた。
「総君、一体今どこにいるの…?今日はやたら単独行動多いし、何かおかしい…絶対あのアバズレが足止めしてるんだ…!!絶対に許さない…パパやおじいちゃまに言って潰してやる…。」
(………もしかしてアバズレって俺の事か…?全く、総一郎といい、ひなといい、何で相手が自分の所に来ないと誰かが足止めした事にしたがるんだろう…。)
ブツブツ不穏な愚痴を言いながらフリックを打っているひなの後ろ姿を見て、関わると碌なことにならないと思った俺はそっとその場を離れようとすると、鏡越しに俺の存在を認識したのか、ひながこちらに気付いてバッと振り返った。
「は???アンタ…なんでここにいんの??…って、あ~!もしかしてその相田とかいう不っ細工な醜いデカブツβのお相手役だったり?wwwあははっ!お疲れ様~♬」
「なっ…!!!」
(ひなめ…、本人を前にしてなんて失礼な事を…!!!)
俺への悪口は良いとしても、相田君への悪口なんて到底許せるものではない。
ここで言い返さなかったら兄としてつばめに合わす顔が無いと思い、ひなに食って掛かろうと前に出ると、相田君がスッとそれを止めてニカっと笑った。
「ちょっ!義兄さん、落ち着いてくださいっす!!俺こういうの気にしないっすから大丈夫っす!!」
「でも…!」
「そりゃ、つばめやすずめ義兄さんみたいな美人に醜いって言われたらグサッとも来るっすけど、別にそうでもない人だったら全然傷つかないっすよ!!」
「なっ…!!?はぁ????今のどういう意味…?」
親指を立てながらあっけらかんとした笑顔で、さりげなくひなを落とす相田君に、俺は胸がスカッとした。
(…!相田君中々やるな…!つばめは世界一可愛いにしても、暗にこの冴えない俺より下のルックスだと言われたら、プライド激高のひなは大層ムカついた事だろう。)
現にひなは殺気のこもった般若みたいな目を相田君に向けていて、今にも引っ叩いてきそうな面持ちだ。
「~~っ!!覚えてな…。いつかアンタら二人まとめて…まぁ今はいいや。…せいぜい《どブス同士》頑張れば~?超絶お似合いだから♬僕は超美形な総君と、カースト最上位同士でダンスを組むから♡《今日》みたいに総君をむやみに引き留めたりして邪魔しないでよね~?正式な《婚約者》は僕なんだから♬」
__いや、その総君はついさっきひなを裏切って俺と組もうとしてたし、今日は俺の方からは一度たりとも総一郎を引き留めてないけどな?
まぁ…、総一郎のストッパーがいなくなったら困るから別に言わないけど。
(あっそうだ。なんなら逆に総一郎とひなの二人が早くくっつくようにお手伝いしてやってもいいな。その方が二人まとめて一気に復讐しやすいし、その分ダメージも大きそうだ。)
まだ総一郎と正式に別れてはいないけど、多分あいつにあそこまでハッキリ怒ったらフラれるのも時間の問題だろうし、どうせなら効率よく復讐をしたいからな。
「あ、そういえば、総一郎くん、誰かへのサプライズプレゼントがあるらしいよ?オーダーメイドで作った社交ダンスの高級ドレスみたいだったけど…、もしかして俺に贈ってくれたりするのかな…。採寸はしてないけど、楽しみだな~。」
期待に胸を膨らませるような演技をして、ひなの出方を伺うと、案の定ひなは目の色をぎらつかせて話に乗ってきた。
「あっうん!」
巧斗さんは突然現れた黒服の男達を気にする様子もなく、軽く頭だけ下げて会場の入り口を閉めた。
幸いまだ観客達が出入りするような時間ではなかったので、さっきまでのやり取りを人に見られずに済んだみたいだ。
◇◇◇
会場の脇を通ってステージ横にあるドアを通ってコンテスト控室に向かうと、既に相田君がコンテストの衣装に着替えて手前のパイプ椅子に座って待ち構えていた。
「あ!お疲れ様っす~!!ちょっとさっきはつばめとの息抜きデートの提案をしてくださってとても感謝っす!!!おかげ様でその…、色々楽しかったっす…!!!」
「お疲れ、相田君!楽しそうで良かった。」
衣装選びもダンスの打ち合わせも終わっているので、もう少しゆっくりしていても良かったと思うのだが、多分コンテスト本番の時間が近づくに連れて、段々いてもたってもいられなくなって、つばめにドンと背中を押されて早めにきたんだろう。
あくまで想像でしかないが、頭の中に鮮明にその光景がありありと浮かび上がった。
「長介君、お疲れ様です。まさかもう着替えが済んでいるとは準備がいいですね。…俺もそこの着替えベースで衣装に着替えてきますので、すずめと一緒に待っていてもらえますか?」
「あっ巧斗兄!勿論っすよ!!いやぁ、あの衣装に着替えてメイクもした巧斗兄を見るのが楽しみっす!!」
巧斗さんが自分の手荷物の中からドレスの入った紙袋を持って、控室の最奥にある、カーテンに覆われている着替えベースに入っていくと、相田君と二人になったので雑談(つばめのデートの事とか、コンテストの事など)を交わしながらあたりを見回す。
すると、もう既にちらほらとミスターコンの出場者や、その相手役の人達が準備をしていて、その中には当然の如くしれっと、愛野ひながいた。
(!!!うわ、こいつもいたんだ…珍しく一人だから気づかなかった…。って、やっぱりひなも総一郎の相手役として来てたんじゃないか!)
ひなは化粧をするための鏡台(※楽屋みたいになっている)の真ん中付近の席に座って、
左手の指で台に置いた自分のメイクポーチを苛立たし気にトントンとしながら、スマホをイジっていた。
「総君、一体今どこにいるの…?今日はやたら単独行動多いし、何かおかしい…絶対あのアバズレが足止めしてるんだ…!!絶対に許さない…パパやおじいちゃまに言って潰してやる…。」
(………もしかしてアバズレって俺の事か…?全く、総一郎といい、ひなといい、何で相手が自分の所に来ないと誰かが足止めした事にしたがるんだろう…。)
ブツブツ不穏な愚痴を言いながらフリックを打っているひなの後ろ姿を見て、関わると碌なことにならないと思った俺はそっとその場を離れようとすると、鏡越しに俺の存在を認識したのか、ひながこちらに気付いてバッと振り返った。
「は???アンタ…なんでここにいんの??…って、あ~!もしかしてその相田とかいう不っ細工な醜いデカブツβのお相手役だったり?wwwあははっ!お疲れ様~♬」
「なっ…!!!」
(ひなめ…、本人を前にしてなんて失礼な事を…!!!)
俺への悪口は良いとしても、相田君への悪口なんて到底許せるものではない。
ここで言い返さなかったら兄としてつばめに合わす顔が無いと思い、ひなに食って掛かろうと前に出ると、相田君がスッとそれを止めてニカっと笑った。
「ちょっ!義兄さん、落ち着いてくださいっす!!俺こういうの気にしないっすから大丈夫っす!!」
「でも…!」
「そりゃ、つばめやすずめ義兄さんみたいな美人に醜いって言われたらグサッとも来るっすけど、別にそうでもない人だったら全然傷つかないっすよ!!」
「なっ…!!?はぁ????今のどういう意味…?」
親指を立てながらあっけらかんとした笑顔で、さりげなくひなを落とす相田君に、俺は胸がスカッとした。
(…!相田君中々やるな…!つばめは世界一可愛いにしても、暗にこの冴えない俺より下のルックスだと言われたら、プライド激高のひなは大層ムカついた事だろう。)
現にひなは殺気のこもった般若みたいな目を相田君に向けていて、今にも引っ叩いてきそうな面持ちだ。
「~~っ!!覚えてな…。いつかアンタら二人まとめて…まぁ今はいいや。…せいぜい《どブス同士》頑張れば~?超絶お似合いだから♬僕は超美形な総君と、カースト最上位同士でダンスを組むから♡《今日》みたいに総君をむやみに引き留めたりして邪魔しないでよね~?正式な《婚約者》は僕なんだから♬」
__いや、その総君はついさっきひなを裏切って俺と組もうとしてたし、今日は俺の方からは一度たりとも総一郎を引き留めてないけどな?
まぁ…、総一郎のストッパーがいなくなったら困るから別に言わないけど。
(あっそうだ。なんなら逆に総一郎とひなの二人が早くくっつくようにお手伝いしてやってもいいな。その方が二人まとめて一気に復讐しやすいし、その分ダメージも大きそうだ。)
まだ総一郎と正式に別れてはいないけど、多分あいつにあそこまでハッキリ怒ったらフラれるのも時間の問題だろうし、どうせなら効率よく復讐をしたいからな。
「あ、そういえば、総一郎くん、誰かへのサプライズプレゼントがあるらしいよ?オーダーメイドで作った社交ダンスの高級ドレスみたいだったけど…、もしかして俺に贈ってくれたりするのかな…。採寸はしてないけど、楽しみだな~。」
期待に胸を膨らませるような演技をして、ひなの出方を伺うと、案の定ひなは目の色をぎらつかせて話に乗ってきた。
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