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第1章
第156話《はじめてのすずめのガチ怒りに顔面蒼白の総一郎》
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「あ、ありがとう…。綺麗なドレスだね…。でもなんでこれを俺に…?」
「だからさっきサプライズだと言っただろう?実はこれからの最終審査のダンスパートナーとしてすずめを誘おうかと思ってね。」
「は?」
総一郎の言葉に頭の血管がプチと切れた俺は思わず自分でも聞いた事の無いような低い声で、聞き返してしまった。
(こいつは一体何を言ってるんだ…?俺が喜ぶと言っていたサプライズが最終審査のパートナーになれる権利_?それで俺が『ありがとう!嬉しい!!』って喜ぶとでも思ってるのか??あんこ入り和菓子まではいかずとも、10円チョコの方がまだ嬉しいぞ?)
「…でも総一郎君は他のパートナーと組むんじゃなかったの?その人はどうするつもり?」
「ん?相手なんていないよ?今日はコンテスト優勝をすずめに贈るサプライズとして、最初から君を誘う予定だったからね。このドレスもすずめにために鷹崎家お抱えのブランドでオーダーメイドしておいたんだ。…世界に一つだけのドレスだから大事に来てくれると嬉しいな。」
「…はぁ…。」
いや、サプライズなら普通に昨日の第一審査でやれば良かっただろ。
丁度新郎新婦役で練習もいらないから、浮気を知る前の脳内お花畑の俺なら絶対喜んでたぞ?
それがよりにもよってダンスの相手役って…。全然合わせも練習もしていないぶっつけ本番のダンスでよくも俺を表舞台に立たせようと出来たな…。
(って、待てよ?それはそれでむしろチャンスじゃないか…?俺のド素人のダンスでこいつを散々引っ掻き回して徹底的に恥をかかせて負かしてやるのも一つの手かもしれないぞ。)
総一郎のこの俺が断るとは微塵も思っていない自信満々な表情を思い出すと、非情にムカつきはするが、この状況を逆手に取ってやるのも悪くない。
俺の名誉まで損なわれるのは痛手だが、それ以上にこいつの敗北が見たいという気持ちの方がギリギリ勝つ。
俺は心の中で悪巧みを考えつつ、総一郎の話に乗るかどうか悩んでいると、ふと巧斗さんが俺が持っているドレスに視線を向けながら首を傾げた。
「………。おや、おかしいですね?先ほど鷹崎さんはこのドレスをすずめのためのオーダーメイドだとおっしゃいましたが、こんなに体のラインが出るようなドレスをよく本人の採寸無しで作れましたね?」
「あ。」
言われてみれば…確かにそうだな。
派手な装飾に気を取られていたが、よく見ればこのドレス、巧斗さんの言う通り、上半身がかなりピッチリしたタイプのデザインだ。
巧斗さんが「少し拝見してもよろしいですか?」と、あのいつもの圧?のある綺麗な笑顔で俺からドレスを受け取ると、透明なビニール袋の梱包をさっと開けた。
「ふむ…やはりこの生地…ノンストレッチのようですね。伸縮性0の高級素材『ベルベッド』が使われているみたいです。」
「わ、ほんとだ、引っ張っても全然伸びないねコレ。」
「そうでしょう?ということは、このドレスは非常に丁寧に採寸しないと、ピッタリにはならないはずです。」
巧斗さんはそう言いながら、ドレスを広げて俺の前にかざす。
「…しかし、ふむ…、やはりすずめには少々丈が長いようですね。とてもでは無いですがダンスをするには不向きです。」
「あ、ほんとだ…。」
(裾が長すぎて、こんなのじゃつまずいて転びそうだ…俺が164cmだから、170cm前後の人ならちょうど良さそうだけど…。)
「う~ん、ひなちゃんあたりだったらピッタリかもだけど………ん??」
頭の中にこのドレスを着るひなの姿が浮かび上がり、ピンと、とある可能性が浮かんできた。
(………まさか…総一郎お前…)
屑だ屑だとは思っていたけど、こういう嘘までつくだなんて本当に救いようが無いし、俺を馬鹿にしているとしか思えない。
「…………ねぇ、総一郎君さぁ…これ、ひなちゃんのサイズに作られたドレスじゃないの??」
「なっ!?ち、違う…!!それはすずめのために作ったんだ!信じてくれ…!」
俺がチベットスナギツネのようにジッと冷たい視線を送ると、総一郎が顔面蒼白になりながら、必死に弁明する。
「本当にすずめのために選んだんだ!色もデザインも、全部僕が監修して…将来、すずめが成長したら社交界デビューの時に着せようと思って大きめのサイズに…!」
酷い言い訳をつらつらと述べる総一郎に一気に頭の中の何かが冷え切ったのを感じた。
社交界なんてひなは連れていっても、俺の事は一回も連れて行ってくれなかった癖に、言い訳まで白々しいし、絶対に嘘に決まっている。
(なんか…復讐のためなら相手役を引き受けてもいいかと思ったけど、このドレスを着る事で、色々と代償が大きすぎるような気がしてきたな…。)
「総一郎君…、俺…他の人の為に作られたドレスを着せてもらっても微塵も嬉しくないよ。…これはひなちゃんに着せてあげたら?その方がこのドレスも喜ぶと思うから。じゃ、最終審査頑張ってね。…いこ?巧斗さん。」
「ふふ、承知しました。」
なんだかんだ初めて総一郎に怒った気がするが、万が一これで別れになったとしてもこちらとしては全然構わない。
少々大変にはなるけれど、外側から復讐する方向に切り替えるだけだ。
(復讐するにしても最低限のプライドは守らないと意味がないからな。)
「ああ…鷹崎さん、この《愛野ひなさんの》ドレスはお返ししておきますね。ではご健闘を祈ります。」
俺がふんっと言いながら、呆然としている総一郎を横目に通り過ぎると、巧斗さんはまるで汚物でも扱うかのようにドレスを雑に紙袋に突っ込み、持ち手を人差し指と親指のみで摘まんで総一郎に返した。
「!!すずめ…!!待ってくれ!そいつの話に耳を貸すな!!!君は誑かされているんだ!!!」
総一郎が慌てて俺を肩を掴もうとするも、どこからか黒服でサングラスのガタイの良い男性達が総一郎の両脇に現れ、彼を引き留めていた。
(……??誰だ?あの人達…。SPのコスプレか何かかな?)
「だからさっきサプライズだと言っただろう?実はこれからの最終審査のダンスパートナーとしてすずめを誘おうかと思ってね。」
「は?」
総一郎の言葉に頭の血管がプチと切れた俺は思わず自分でも聞いた事の無いような低い声で、聞き返してしまった。
(こいつは一体何を言ってるんだ…?俺が喜ぶと言っていたサプライズが最終審査のパートナーになれる権利_?それで俺が『ありがとう!嬉しい!!』って喜ぶとでも思ってるのか??あんこ入り和菓子まではいかずとも、10円チョコの方がまだ嬉しいぞ?)
「…でも総一郎君は他のパートナーと組むんじゃなかったの?その人はどうするつもり?」
「ん?相手なんていないよ?今日はコンテスト優勝をすずめに贈るサプライズとして、最初から君を誘う予定だったからね。このドレスもすずめにために鷹崎家お抱えのブランドでオーダーメイドしておいたんだ。…世界に一つだけのドレスだから大事に来てくれると嬉しいな。」
「…はぁ…。」
いや、サプライズなら普通に昨日の第一審査でやれば良かっただろ。
丁度新郎新婦役で練習もいらないから、浮気を知る前の脳内お花畑の俺なら絶対喜んでたぞ?
それがよりにもよってダンスの相手役って…。全然合わせも練習もしていないぶっつけ本番のダンスでよくも俺を表舞台に立たせようと出来たな…。
(って、待てよ?それはそれでむしろチャンスじゃないか…?俺のド素人のダンスでこいつを散々引っ掻き回して徹底的に恥をかかせて負かしてやるのも一つの手かもしれないぞ。)
総一郎のこの俺が断るとは微塵も思っていない自信満々な表情を思い出すと、非情にムカつきはするが、この状況を逆手に取ってやるのも悪くない。
俺の名誉まで損なわれるのは痛手だが、それ以上にこいつの敗北が見たいという気持ちの方がギリギリ勝つ。
俺は心の中で悪巧みを考えつつ、総一郎の話に乗るかどうか悩んでいると、ふと巧斗さんが俺が持っているドレスに視線を向けながら首を傾げた。
「………。おや、おかしいですね?先ほど鷹崎さんはこのドレスをすずめのためのオーダーメイドだとおっしゃいましたが、こんなに体のラインが出るようなドレスをよく本人の採寸無しで作れましたね?」
「あ。」
言われてみれば…確かにそうだな。
派手な装飾に気を取られていたが、よく見ればこのドレス、巧斗さんの言う通り、上半身がかなりピッチリしたタイプのデザインだ。
巧斗さんが「少し拝見してもよろしいですか?」と、あのいつもの圧?のある綺麗な笑顔で俺からドレスを受け取ると、透明なビニール袋の梱包をさっと開けた。
「ふむ…やはりこの生地…ノンストレッチのようですね。伸縮性0の高級素材『ベルベッド』が使われているみたいです。」
「わ、ほんとだ、引っ張っても全然伸びないねコレ。」
「そうでしょう?ということは、このドレスは非常に丁寧に採寸しないと、ピッタリにはならないはずです。」
巧斗さんはそう言いながら、ドレスを広げて俺の前にかざす。
「…しかし、ふむ…、やはりすずめには少々丈が長いようですね。とてもでは無いですがダンスをするには不向きです。」
「あ、ほんとだ…。」
(裾が長すぎて、こんなのじゃつまずいて転びそうだ…俺が164cmだから、170cm前後の人ならちょうど良さそうだけど…。)
「う~ん、ひなちゃんあたりだったらピッタリかもだけど………ん??」
頭の中にこのドレスを着るひなの姿が浮かび上がり、ピンと、とある可能性が浮かんできた。
(………まさか…総一郎お前…)
屑だ屑だとは思っていたけど、こういう嘘までつくだなんて本当に救いようが無いし、俺を馬鹿にしているとしか思えない。
「…………ねぇ、総一郎君さぁ…これ、ひなちゃんのサイズに作られたドレスじゃないの??」
「なっ!?ち、違う…!!それはすずめのために作ったんだ!信じてくれ…!」
俺がチベットスナギツネのようにジッと冷たい視線を送ると、総一郎が顔面蒼白になりながら、必死に弁明する。
「本当にすずめのために選んだんだ!色もデザインも、全部僕が監修して…将来、すずめが成長したら社交界デビューの時に着せようと思って大きめのサイズに…!」
酷い言い訳をつらつらと述べる総一郎に一気に頭の中の何かが冷え切ったのを感じた。
社交界なんてひなは連れていっても、俺の事は一回も連れて行ってくれなかった癖に、言い訳まで白々しいし、絶対に嘘に決まっている。
(なんか…復讐のためなら相手役を引き受けてもいいかと思ったけど、このドレスを着る事で、色々と代償が大きすぎるような気がしてきたな…。)
「総一郎君…、俺…他の人の為に作られたドレスを着せてもらっても微塵も嬉しくないよ。…これはひなちゃんに着せてあげたら?その方がこのドレスも喜ぶと思うから。じゃ、最終審査頑張ってね。…いこ?巧斗さん。」
「ふふ、承知しました。」
なんだかんだ初めて総一郎に怒った気がするが、万が一これで別れになったとしてもこちらとしては全然構わない。
少々大変にはなるけれど、外側から復讐する方向に切り替えるだけだ。
(復讐するにしても最低限のプライドは守らないと意味がないからな。)
「ああ…鷹崎さん、この《愛野ひなさんの》ドレスはお返ししておきますね。ではご健闘を祈ります。」
俺がふんっと言いながら、呆然としている総一郎を横目に通り過ぎると、巧斗さんはまるで汚物でも扱うかのようにドレスを雑に紙袋に突っ込み、持ち手を人差し指と親指のみで摘まんで総一郎に返した。
「!!すずめ…!!待ってくれ!そいつの話に耳を貸すな!!!君は誑かされているんだ!!!」
総一郎が慌てて俺を肩を掴もうとするも、どこからか黒服でサングラスのガタイの良い男性達が総一郎の両脇に現れ、彼を引き留めていた。
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