155 / 169
第1章
第155話《またもや一触即発の鷲と鷹》
しおりを挟む
「そ、総一郎君…?こんなところに突っ立ってどうしたの?コンテストの準備は?」
「準備はまだ時間があるから大丈夫だよ。ここでずっと待っていれば、コンテストを見に来るすずめと鉢会えると思ったんだけどbingoだったな。さ、早くこっちにおいで?」
総一郎の存在に戸惑う俺に対して、まるで仲違いなんて無かったかのように、平然と手をこちらに差し伸べる総一郎に身の毛がよだつ。
(怖っっ!こいつがやってる事って一歩間違えたらストーカーじゃないか!この流れで誰が行くか!!)
総一郎の考えている事が分からず、巧斗さんの腕にしがみついていた手が思わず強くなると、巧斗さんが一歩前に出て、一見穏やかな声で総一郎を窘めた。
「鷹崎さん、すずめはこれからしばらくの間、大事な予定があって貴方にお時間を割くのが難しいんです。もし何かご用があるのなら、また《年月》を改めてご隠居でもなさってからお話しされた方がゆっくり時間も取れて良いのではありませんか?」
「は?年月、だと…?貴様…あまり調子に乗るなよ…。貴様がそうやって必死こいて俺からすずめを遠ざけようと画策しているのは分かってるんだぞ…!!…いやまぁいい。貴様の事は後々潰すとして、今はすずめに用があるんだ。」
被服室の時の応酬のようにヒートアップしそうになった総一郎だが何とか怒りの感情を抑え、巧斗さんの後ろに隠れている俺を覗き込んで、ふっと微笑む。
「すずめ?どうして隠れてるんだ?__ああ、もしかしてこのα男とのやり取りでまた怖がらせてしまったかな?
…でもこのクズαは僕たちの仲違いを利用して君を僕から無理やり引き離して、外堀を埋めて自分の番にして囲おうとしている凶悪犯なんだ。それに対して僕が怒るのは正当な事なんだよ?」
「ええっ!いや、巧斗さんに限ってそれは流石に無いよ…。」
総一郎が突然あまりに突拍子もない事をつらつらと言い出したので、俺は慌てて否定した。
どうやら総一郎の頭の中では、巧斗さんが俺をあの手この手で手に入れようとする独占欲の強いαだと決めつけられているらしい。
確かに世の中のαにはそういう習性を持つ人が多いらしいけど、巧斗さんは紳士だし、そもそも(地位的にも物理的にも)雲の上の存在だからお相手なんて選び放題だし、俺の事はただ弟みたいな存在として守ってくれようとしているだけなのに…。
「おや、凶悪犯呼ばわりに《関しては》心外ですね。すずめ、彼の戯言に騙されてはいけませんよ?彼は少々嘘つきな所がありますから…。」
「う、うんそうだよね…。ごめんね巧斗さん。総一郎君、今頭に血が上って混乱しているみたいで滅茶苦茶な事を…。」
総一郎の勝手な妄想に対し、やんわりと否定する巧斗さんに、俺も申し訳なくなって代わりに謝った。
すると、巧斗さんは俺の頬を撫でながら、
「大丈夫。すずめさえ分かっていてくれればそれでいいのですよ。」
と、優しく微笑んでくれたので、ほっと胸を撫でおろす。
「っ!!鷲ノ宮…!!このたぬき野郎が…!!!ぶっ×してやる…!!!!」
と、ここで、俺が総一郎の代わりに巧斗さんに謝ったことが余程気にくわなかったのか、総一郎が巧斗さんに殺意を向けて殴りかかった。
そして、巧斗さんもそれに対して威嚇のフェロモンを出して応戦しようとしたので、さすがに俺も焦る。
(やばい…また大変な事になった…!なんでこの二人、会う度にこんなに喧嘩するんだ…?!)
「わわ…えっと…そ、そういえば総一郎君!!サプライズがあるって言ってたよね?!待ち遠しいから早く俺に教えて欲しいな??」
一触即発の雰囲気になったところで、とりあえず巧斗さんにこれ以上迷惑を掛けたくなかった俺は、一刻も早く総一郎の用事をすまそうと強引に話を進めた。
すると、総一郎は一旦怒りを鎮め、「!!全く、すずめはせっかちだなぁ。そんなに気になるなら今から見せてあげようね?」と、急にご機嫌になる。
(うるさいな…。お前からのプレゼントなんて気になる訳ないだろ。もう今更何貰っても嬉しくないぞ。…まぁ食べ物系だったらそれ自体に罪は無いし貰ってあげなくもないけど…。)
総一郎がゴソゴソと大きな持ち運びのケースを開けて高級そうな紙袋を取り出して俺に渡してくる。
巧斗さんはそれを止めようとしたが、俺としては一刻も早く総一郎の話を終わらせたかったので、手を伸ばしてそれを受け取った。
(はあ…どうせならあんこ入り和菓子とかであってくれ!)
ここまで振り回されたんだから、少しでも自分のメリットになるような贈り物が入っている事を願いながら袋に手を突っ込むと、何やら布状のものに手が触れる。
(…………。どう考えてもお菓子…じゃないな…。…なんだこれ。ドレス……???…なんで?)
そのままスッと袋から中のものを取り出すと、それは社交ダンス等で海外セレブが着るような煌びやか装飾が施されたスリットの入ったドレスだった。
「………???あっ、えっと…。これつばめへのプレゼント、だよね?」
暗にまさかこれを俺に着ろと言ってるんじゃないよな?という目を総一郎に向けると、奴は得意げに微笑んで「いや、すずめへのプレゼントだよ?」と否定してきた。
「準備はまだ時間があるから大丈夫だよ。ここでずっと待っていれば、コンテストを見に来るすずめと鉢会えると思ったんだけどbingoだったな。さ、早くこっちにおいで?」
総一郎の存在に戸惑う俺に対して、まるで仲違いなんて無かったかのように、平然と手をこちらに差し伸べる総一郎に身の毛がよだつ。
(怖っっ!こいつがやってる事って一歩間違えたらストーカーじゃないか!この流れで誰が行くか!!)
総一郎の考えている事が分からず、巧斗さんの腕にしがみついていた手が思わず強くなると、巧斗さんが一歩前に出て、一見穏やかな声で総一郎を窘めた。
「鷹崎さん、すずめはこれからしばらくの間、大事な予定があって貴方にお時間を割くのが難しいんです。もし何かご用があるのなら、また《年月》を改めてご隠居でもなさってからお話しされた方がゆっくり時間も取れて良いのではありませんか?」
「は?年月、だと…?貴様…あまり調子に乗るなよ…。貴様がそうやって必死こいて俺からすずめを遠ざけようと画策しているのは分かってるんだぞ…!!…いやまぁいい。貴様の事は後々潰すとして、今はすずめに用があるんだ。」
被服室の時の応酬のようにヒートアップしそうになった総一郎だが何とか怒りの感情を抑え、巧斗さんの後ろに隠れている俺を覗き込んで、ふっと微笑む。
「すずめ?どうして隠れてるんだ?__ああ、もしかしてこのα男とのやり取りでまた怖がらせてしまったかな?
…でもこのクズαは僕たちの仲違いを利用して君を僕から無理やり引き離して、外堀を埋めて自分の番にして囲おうとしている凶悪犯なんだ。それに対して僕が怒るのは正当な事なんだよ?」
「ええっ!いや、巧斗さんに限ってそれは流石に無いよ…。」
総一郎が突然あまりに突拍子もない事をつらつらと言い出したので、俺は慌てて否定した。
どうやら総一郎の頭の中では、巧斗さんが俺をあの手この手で手に入れようとする独占欲の強いαだと決めつけられているらしい。
確かに世の中のαにはそういう習性を持つ人が多いらしいけど、巧斗さんは紳士だし、そもそも(地位的にも物理的にも)雲の上の存在だからお相手なんて選び放題だし、俺の事はただ弟みたいな存在として守ってくれようとしているだけなのに…。
「おや、凶悪犯呼ばわりに《関しては》心外ですね。すずめ、彼の戯言に騙されてはいけませんよ?彼は少々嘘つきな所がありますから…。」
「う、うんそうだよね…。ごめんね巧斗さん。総一郎君、今頭に血が上って混乱しているみたいで滅茶苦茶な事を…。」
総一郎の勝手な妄想に対し、やんわりと否定する巧斗さんに、俺も申し訳なくなって代わりに謝った。
すると、巧斗さんは俺の頬を撫でながら、
「大丈夫。すずめさえ分かっていてくれればそれでいいのですよ。」
と、優しく微笑んでくれたので、ほっと胸を撫でおろす。
「っ!!鷲ノ宮…!!このたぬき野郎が…!!!ぶっ×してやる…!!!!」
と、ここで、俺が総一郎の代わりに巧斗さんに謝ったことが余程気にくわなかったのか、総一郎が巧斗さんに殺意を向けて殴りかかった。
そして、巧斗さんもそれに対して威嚇のフェロモンを出して応戦しようとしたので、さすがに俺も焦る。
(やばい…また大変な事になった…!なんでこの二人、会う度にこんなに喧嘩するんだ…?!)
「わわ…えっと…そ、そういえば総一郎君!!サプライズがあるって言ってたよね?!待ち遠しいから早く俺に教えて欲しいな??」
一触即発の雰囲気になったところで、とりあえず巧斗さんにこれ以上迷惑を掛けたくなかった俺は、一刻も早く総一郎の用事をすまそうと強引に話を進めた。
すると、総一郎は一旦怒りを鎮め、「!!全く、すずめはせっかちだなぁ。そんなに気になるなら今から見せてあげようね?」と、急にご機嫌になる。
(うるさいな…。お前からのプレゼントなんて気になる訳ないだろ。もう今更何貰っても嬉しくないぞ。…まぁ食べ物系だったらそれ自体に罪は無いし貰ってあげなくもないけど…。)
総一郎がゴソゴソと大きな持ち運びのケースを開けて高級そうな紙袋を取り出して俺に渡してくる。
巧斗さんはそれを止めようとしたが、俺としては一刻も早く総一郎の話を終わらせたかったので、手を伸ばしてそれを受け取った。
(はあ…どうせならあんこ入り和菓子とかであってくれ!)
ここまで振り回されたんだから、少しでも自分のメリットになるような贈り物が入っている事を願いながら袋に手を突っ込むと、何やら布状のものに手が触れる。
(…………。どう考えてもお菓子…じゃないな…。…なんだこれ。ドレス……???…なんで?)
そのままスッと袋から中のものを取り出すと、それは社交ダンス等で海外セレブが着るような煌びやか装飾が施されたスリットの入ったドレスだった。
「………???あっ、えっと…。これつばめへのプレゼント、だよね?」
暗にまさかこれを俺に着ろと言ってるんじゃないよな?という目を総一郎に向けると、奴は得意げに微笑んで「いや、すずめへのプレゼントだよ?」と否定してきた。
1,810
お気に入りに追加
3,674
あなたにおすすめの小説

十二年付き合った彼氏を人気清純派アイドルに盗られて絶望してたら、幼馴染のポンコツ御曹司に溺愛されたので、奴らを見返してやりたいと思います
塔原 槇
BL
会社員、兎山俊太郎(とやま しゅんたろう)はある日、「やっぱり女の子が好きだわ」と言われ別れを切り出される。彼氏の売れないバンドマン、熊井雄介(くまい ゆうすけ)は人気上昇中の清純派アイドル、桃澤久留美(ももざわ くるみ)と付き合うのだと言う。ショックの中で俊太郎が出社すると、幼馴染の有栖川麗音(ありすがわ れおん)が中途採用で入社してきて……?
私が死んで満足ですか?
マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。
ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。
全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。
書籍化にともない本編を引き下げいたしました

国王の嫁って意外と面倒ですね。
榎本 ぬこ
BL
一国の王であり、最愛のリヴィウスと結婚したΩのレイ。
愛しい人のためなら例え側妃の方から疎まれようと頑張ると決めていたのですが、そろそろ我慢の限界です。
他に自分だけを愛してくれる人を見つけようと思います。

初心者オメガは執着アルファの腕のなか
深嶋
BL
自分がベータであることを信じて疑わずに生きてきた圭人は、見知らぬアルファに声をかけられたことがきっかけとなり、二次性の再検査をすることに。その結果、自身が本当はオメガであったと知り、愕然とする。
オメガだと判明したことで否応なく変化していく日常に圭人は戸惑い、悩み、葛藤する日々。そんな圭人の前に、「運命の番」を自称するアルファの男が再び現れて……。
オメガとして未成熟な大学生の圭人と、圭人を番にしたい社会人アルファの男が、ゆっくりと愛を深めていきます。
穏やかさに滲む執着愛。望まぬ幸運に恵まれた主人公が、悩みながらも運命の出会いに向き合っていくお話です。本編、攻め編ともに完結済。
愛されない皇妃~最強の母になります!~
椿蛍
ファンタジー
愛されない皇妃『ユリアナ』
やがて、皇帝に愛される寵妃『クリスティナ』にすべてを奪われる運命にある。
夫も子どもも――そして、皇妃の地位。
最後は嫉妬に狂いクリスティナを殺そうとした罪によって処刑されてしまう。
けれど、そこからが問題だ。
皇帝一家は人々を虐げ、『悪逆皇帝一家』と呼ばれるようになる。
そして、最後は大魔女に悪い皇帝一家が討伐されて終わるのだけど……
皇帝一家を倒した大魔女。
大魔女の私が、皇妃になるなんて、どういうこと!?
※表紙は作成者様からお借りしてます。
※他サイト様に掲載しております。

王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
博愛主義の成れの果て
135
BL
子宮持ちで子供が産める侯爵家嫡男の俺の婚約者は、博愛主義者だ。
俺と同じように子宮持ちの令息にだって優しくしてしまう男。
そんな婚約を白紙にしたところ、元婚約者がおかしくなりはじめた……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる