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第1章

第148話《シマちゃんとひなの因縁エピソード》

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「ひなちゃんにはそれはそれは沢山お礼をしてあげたいくらいお世話になったんだよ~。」

シマちゃんはオムライスをつつきながら、思い出すように眉をひそめた。
世話になったと言いながら、到底そう思っているとは言えないような面持ちだ。


「___あの子とは僕が去年まで入ってた演劇サークルの新人歓迎会で出会ったんだ。

僕は演劇とか芸能関係に興味なくて、ただ単にエンジョイ勢として入ったんだけど、ひなちゃんは好きなαのアイドルがいたみたいで、そのアイドルと繋がるためにΩタレントになるのを目指してたんだって。
確か…オリ…なんちゃらっていうαアイドルグループの一番人気のメンバーでピンクがイメージカラーの人。えーっと…名前は忘れたけど。」

「え、ひなちゃんがアイドルをおっかけてた?!オリ…?そんな話聞いた事なかったなぁ。」


というかそもそもひなが芸能人になりたいと思っていたことすら知らなかった。

思えば、ひなとはメッセージにて頻繁にやり取りはしていたが、大抵は街中でナンパされただの、超イケメンの俳優志望のαに告白されただのと自慢話ばかりで、好きな芸能人や入っているサークルなどの日常的なプライベートの話はほぼしてこなかったように思える。

全く過去の俺はよくこれでひなの事を友達だと思っていたものだ。


(しかし、ピンクがイメージカラーのαアイドルか…巧斗さんも元アイドルだし知ってる人だったりしないかな?)

気になって、ちら、と巧斗さんの方を伺うも、彼は未だに考え事(オムライスと格闘?)をしているようなので、そっとしておこうとシマちゃんの話に再度集中した。


「それでね?ここからが本題なんだけど、
当時、同じサークルにゴミかs…じゃなくて…えっと…鳩島駿とかいうαの先輩がいてね?

なんでも大病院の息子らしくて、ミスターコンも毎年エントリーしてて、他のサークルの女性やΩのメンバー達も皆きゃーきゃー騒ぐ位のイケメンだったの。

僕としては他メンバーと痴情のもつれで揉めるのが嫌だったから、その先輩の事はむしろ避けてたくらいなんだけど、何故かその先輩の方から話しかけられるようになってさ…。

まぁ僕も白百合みたいに超絶かわいかったから当然下心があったんだろうけど、ひなちゃんがそれを面白く思ってなかったみたいで、僕を急に敵対視するようになったんだよねぇ。」


シマちゃんの話を聞きながら、俺の頭の中で何度も頷いた。

(ああ、分かる。ひなの性格上、自分を差し置いて他の人がイケメンαにちやほやされてたら、なんらかの形で嫌がらせしてきそうだよな。)

思い返してみれば、ひなは昔から他人の注目を集めたがるタイプだったし、特に自分が中心にいないと無性に不機嫌になるお姫さまタイプの性格なのだ。


「僕もひなちゃんとは別に仲良くなりたくなかったから、そこはどうでも良かったんだけど、問題は僕の弱みや隠しておきたいことを探ってはそれを周りに吹聴し始めたことで、さすがに無視できなくなってきたんだ。

それでとうとう去年の夏、誰も来ていない活動前の部室で僕の実年齢まで調べ上げて、『年増』だの『嫁の行き遅れ』だの一方的に馬鹿にしてきて言い逃げしようとしたから、堪忍袋の緒がキレて言い返そうとしてあの子の腕を掴んだんだよね。

そしたら、急にあの子が大声で『助けて!!!』って叫びはじめて、丁度良すぎるタイミングで鳩島先輩と顧問の教員が部室に表れてさ。

『ひなが可愛いからってお局みたいにイビるなんて見損なったぞ!』だの、『暴力沙汰をおこすメンバーはこのサークルにいらない!』だの難癖つけられてサークルを謹慎になっちゃったの。

あまりにもムカついたから、『ひなちゃんは僕を年増だって馬鹿にするけど、そっちこそまだ成人前なのにそんなに厚化粧しててどこかのマダムみた~い。せいぜいそこの俳優のなり崩れの大病院のおぼっちゃまと仲良くして院長夫人でも目指せば?』って捲し立ててそのまま辞めてやったんだけど、いまだに腹の虫がおさまらないんだよねぇ。」


シマちゃんのひなとの因縁の話が一段落したところで、俺は思わず言葉を失った。

(これは…ひなって思った以上に酷いことやらかしてたんだな…。)


そして、さっきからシマちゃんがひなとの確執をニコニコとした笑顔で話しながら、指をぽきぽきと慣らしているのがとても怖い。
しかし、そうなる気持ちも痛い程分かるエピソードだ。

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