浮気αと絶許Ω~裏切りに激怒したオメガの復讐~

飴雨あめ

文字の大きさ
上 下
145 / 169
第1章

第145話《すずめのお絵描きオムライスに固まる巧斗さん》

しおりを挟む
俺はシマちゃんから渡されたケチャップを握りしめ、巧斗さんのオムライスをじっと見つめた。

(これ、本当に俺が描いていいのか…?やっぱりこういうのは絵心のある人がやるべきなんじゃ…。)

巧斗さんは、きっと今まで一流のシェフが作る美しい料理ばかりを目にしてきたはずだ。そんな人にめちゃくちゃなお絵描きオムライスを出してしまったらと思うと、想像するだけでなんだか緊張する。

一応総一郎にはオムライスを作ったことが何度かあるけど、その時は毎回デミグラスソースやホワイトソースで飾りつけをごまかしてきたので、実質ケチャップでお絵描きするのは今回が初めてだ。


「うう…俺、シマちゃんみたいに上手に描けるかな…。」
「大丈夫だよ♪心を込めるのが一番大事なんだから!ハートを描くときに、『おいしくなあれ♡』って魔法の言葉を唱えたら、なんでもおいしくなるんだよ!」


(おお。魔法の言葉…!そうだよな。相手はあの優しい巧斗さんだし、心さえこもってればいいよな。)
俺はシマちゃんの助言を信じて、勢いよくケチャップを構えた。

「よ、よし…!おいしくなあれ♡」


そう声を上げながら、思いっきり意気込んでハートを描こうとした瞬間――力加減を間違えてケチャップが思った以上に勢いよくドバッと出てしまい、描くはずだったハートが一気に崩れた。

「…あっ!どうしよう…!やっ、ああっ違っ…。んっ。んん…。~~っ。」

慌てて修正しようとしたけれど、焦れば焦るほどケチャップが余計に広がってしまう。最初はただの歪んだハートだったのが、手直しを試みるたびにさらに形が崩れ、ついには何が何だかわからないぐちゃぐちゃのアメーバみたいな形になってしまった。

「あっ…。あう…。」


(あぁ…これはもうダメだ、もうどうしようもないな…。)


「……ご、ごめんね、巧斗さん…。ケチャップ…いっぱい出ちゃった…。」


俺は手を止め、結果的にアメーバみたいになったお絵描きオムライスに絶望した後、申し訳ない気持ちでいっぱいになりながら顔を上げ、巧斗さんの反応を伺った。

(まぁでも、巧斗さんの事だからどんな出来上がりでも喜んでくれるよな…!)等と、無責任な期待をしながら
彼の顔色を見つめると――

彼はどうしてか、真顔で俺を凝視して完全に固まっていた。


「………………。」
「あ、あの、巧斗さん?…もしもし?」

「………はっ。すみません、俺としたことが…。…オムライス、大変艶やかで愛らしかったです。」


彼の前でブンブンと手を振ったところでやっと、俺の声かけに気付いたらしく、苦笑いしながらオムライスを褒めてくれた。


(…!あの巧斗さんが反応に困ってる…?オムライスに艶やかで愛らしかったって…何故か過去形だし、褒め方も変だし…。さすがに出来あがりが酷すぎてNGだったのかな…。やっぱり俺のと取り換えたほうがいいか?)

思いがけない状況にあわあわしていると、俺の横でシマちゃんが、『くっくっ鷲ノ宮さん、心の声がごちゃ混ぜになっちゃってるねぇ♬』と、笑いを押し殺すような声で呟いていた。


「?何の事??」
「なんでもない♬いやぁ、それにしても、すずめちゃんのハート、UMAみたいでかわいいな~♡どれどれ鷲ノ宮さんがいらないなら僕がもらっちゃお♪♬」

お絵描きに失敗した俺を気を遣ってくれたのか、シマちゃんがそう言いながら、巧斗さんの皿に手を差し出すと、巧斗さんはスッと皿を自分の所に寄せて、俺が総一郎のデートの誘いに勝手に返信した時のような綺麗な笑顔をシマちゃんに向けた。


「…江永さん??」
「きゃー怖っ!もー。冗談じゃーん!!」
しおりを挟む
感想 504

あなたにおすすめの小説

十二年付き合った彼氏を人気清純派アイドルに盗られて絶望してたら、幼馴染のポンコツ御曹司に溺愛されたので、奴らを見返してやりたいと思います

塔原 槇
BL
会社員、兎山俊太郎(とやま しゅんたろう)はある日、「やっぱり女の子が好きだわ」と言われ別れを切り出される。彼氏の売れないバンドマン、熊井雄介(くまい ゆうすけ)は人気上昇中の清純派アイドル、桃澤久留美(ももざわ くるみ)と付き合うのだと言う。ショックの中で俊太郎が出社すると、幼馴染の有栖川麗音(ありすがわ れおん)が中途採用で入社してきて……?

私が死んで満足ですか?

マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。 ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。 全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。 書籍化にともない本編を引き下げいたしました

どうも。チートαの運命の番、やらせてもらってます。

Q.➽
BL
アラフォーおっさんΩの一人語りで話が進みます。 典型的、屑には天誅話。 突発的な手慰みショートショート。

国王の嫁って意外と面倒ですね。

榎本 ぬこ
BL
 一国の王であり、最愛のリヴィウスと結婚したΩのレイ。  愛しい人のためなら例え側妃の方から疎まれようと頑張ると決めていたのですが、そろそろ我慢の限界です。  他に自分だけを愛してくれる人を見つけようと思います。

初心者オメガは執着アルファの腕のなか

深嶋
BL
自分がベータであることを信じて疑わずに生きてきた圭人は、見知らぬアルファに声をかけられたことがきっかけとなり、二次性の再検査をすることに。その結果、自身が本当はオメガであったと知り、愕然とする。 オメガだと判明したことで否応なく変化していく日常に圭人は戸惑い、悩み、葛藤する日々。そんな圭人の前に、「運命の番」を自称するアルファの男が再び現れて……。 オメガとして未成熟な大学生の圭人と、圭人を番にしたい社会人アルファの男が、ゆっくりと愛を深めていきます。 穏やかさに滲む執着愛。望まぬ幸運に恵まれた主人公が、悩みながらも運命の出会いに向き合っていくお話です。本編、攻め編ともに完結済。

愛されない皇妃~最強の母になります!~

椿蛍
ファンタジー
愛されない皇妃『ユリアナ』 やがて、皇帝に愛される寵妃『クリスティナ』にすべてを奪われる運命にある。 夫も子どもも――そして、皇妃の地位。 最後は嫉妬に狂いクリスティナを殺そうとした罪によって処刑されてしまう。 けれど、そこからが問題だ。 皇帝一家は人々を虐げ、『悪逆皇帝一家』と呼ばれるようになる。 そして、最後は大魔女に悪い皇帝一家が討伐されて終わるのだけど…… 皇帝一家を倒した大魔女。 大魔女の私が、皇妃になるなんて、どういうこと!? ※表紙は作成者様からお借りしてます。 ※他サイト様に掲載しております。

博愛主義の成れの果て

135
BL
子宮持ちで子供が産める侯爵家嫡男の俺の婚約者は、博愛主義者だ。 俺と同じように子宮持ちの令息にだって優しくしてしまう男。 そんな婚約を白紙にしたところ、元婚約者がおかしくなりはじめた……。

俺の彼氏は俺の親友の事が好きらしい

15
BL
「だから、もういいよ」 俺とお前の約束。

処理中です...