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第1章
第143話《待ち合わせをすっぽかした結果、発狂して噂になる総一郎》
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「ご、ごめんね、シマちゃん…。ヤバ…じゃなかった総一郎君がそこまでするなんて…。本当に怖い思いをさせちゃったね…。」
俺は深く謝罪しながら、抱き着いてくるシマちゃんの背中に手を置いた。
するとシマちゃんは、すぐに顔を上げて謝られるのは心外だという様子でわたわたと手をぶんぶんさせる。
「ええっ!そんな、すずめちゃんが謝ることじゃないよ!ただひたすらにヤバ崎くんが悪いだけなんだから気にしないで?…でも、僕男を見る目だけはあるんだけど、すずめちゃんも付き合うなた絶対もっといい人がいると思うんだよね…。例えば鷲ノ宮さんとか!」
(巧斗さんと?ま、またその話に戻るの…?!)
なんだかその話をされると、妙に心臓がバクバクするというか、ぎゅっと締め付けられるような気がする…。
俺だって出来る事なら、あんな浮気性悪傲慢男よりも、紳士で優しい巧斗さんの方が断然いいけど、彼は国民的俳優なので、恋をしたところで叶うはずがないのだ。
「もう、シマちゃんってば、どうしてそこまで俺と巧斗さんをくっつけようとしてるの?」
『…だって、絶対ヤバ崎君じゃすずめちゃんに僕と遊ぶ時間くれなさそうなんだもん…』
シマちゃんが小声ボソっと何かをつぶやいたように思えるが、
メイド喫茶の賑わいの声で聞こえなかったので聞き直した。
「?シマちゃん今何か言った??」
「え?いや、えへへ。ただ単にすずめちゃんと鷲ノ宮さんって二人とも穏やかというか落ち着いてるから相性が良さそうだなって思っただけ♬別に他意は無いよぉ?」
俺に抱き着いていたシマちゃんが手をほどき、ぽすんと俺の肩に頭を預けてくる。
「僕ちょっと休憩ね~♬あ、折角だからお絵描きオムライス頼もうよ~。僕が絵を描いてあげる♡」
シマちゃんは何かを取り繕うようにそう言うと、メイド喫茶のスタッフさんを呼んでオムライスを3つ注文する。
それから、しばらく雑談で一息入れた俺達は、シマちゃんお勧めのオムライスが来るのを待った。
その間、隣のテーブルの客から何やら物騒な話が聞こえてきたので、俺は注意深く耳を立てる。
『おいおい、聞いたかよ?ミスターコン2位の鷹崎ってやつ、ついさっき第一校舎の玄関のガラス扉割ったらしいぜwww』
『ファ?!な、なんで?!』
『いや、噂によると、例の美人で有名なΩの恋人にデートの待ち合わせすっぽかされてぶちギレてドアを思いっきり殴ったらしい。あいつの実家が権力者だから一応事故って事で処理されて、大学の用務員さんに軽く注意されてたんだと。』
『ひえ~、こっわ。そりゃ恋人も裸足で逃げ出すわな。』
美人で有名なΩの恋人って、尾ひれがついてひなの事と噂がごちゃ混ぜになってはいるけど、デートの約束をすっぽかしたと言われるあたり、確実に俺の事だ。
待ち合わせに行かないことで、ある程度総一郎がキレる事は想定していたけど、ガラスを割るほど怒りだすとは思わず、少し身震いする。
(へ…?ガラスを割った…?!ひえ…。俺、《行けたら行くよ》としか言ってないのに…。)
どうやら総一郎には『体の良い断り文句』という難解な日本語は通じないらしい。
大抵の人はこれを言われたら、待ち合わせに行けなくても『あ、やっぱり忙しかったのかな?』くらいの認識で済むのに、何とも心が狭いやつだ。
…これは次会った時は怒鳴られる覚悟もしておかないとだな。
『いやさぁ、なんでも《鷲ノ宮がすずめを足止めしてるせいだ…!!!!》とか発狂して怒鳴ってたっぽいんけど、そんなやつこの大学にいたっけ?』
『さぁ…?鷲ノ宮っつったら、鷲ノ宮巧蔵しか浮かんでこねーわ。』
『ちょwwお前それどっかの石油王の爺さんの名前じゃねーかwww』
『そうそうw孫は孫でなんか独自で事業成功してるらしいし、すげぇよマジで。オレも石油王の一族に生まれたらハイスペになれたんかなぁ。』
途中から何故か石油王の話になったので、聞き耳を立てるのをやめたが、総一郎の怒りの矛先が俺では無く、巧斗さんに向かっている事を知って急激に申し訳なくなった。
(この件に関しては巧斗さんは関係無いのに、変に巻き込んで迷惑かけちゃったな。)
どう謝ればいいのか分からず、おずおずと巧斗さんの方に目を向けると、彼はニコっと微笑んで何故かご機嫌そうに俺の頭を撫でてくる。
「ふふ、もう彼との待ち合わせの約束の時間、過ぎちゃったみたいですね?…彼が怒っているとの事ですが、すずめが気にする事はありませんよ。何があっても守ってみせますから。」
俺は深く謝罪しながら、抱き着いてくるシマちゃんの背中に手を置いた。
するとシマちゃんは、すぐに顔を上げて謝られるのは心外だという様子でわたわたと手をぶんぶんさせる。
「ええっ!そんな、すずめちゃんが謝ることじゃないよ!ただひたすらにヤバ崎くんが悪いだけなんだから気にしないで?…でも、僕男を見る目だけはあるんだけど、すずめちゃんも付き合うなた絶対もっといい人がいると思うんだよね…。例えば鷲ノ宮さんとか!」
(巧斗さんと?ま、またその話に戻るの…?!)
なんだかその話をされると、妙に心臓がバクバクするというか、ぎゅっと締め付けられるような気がする…。
俺だって出来る事なら、あんな浮気性悪傲慢男よりも、紳士で優しい巧斗さんの方が断然いいけど、彼は国民的俳優なので、恋をしたところで叶うはずがないのだ。
「もう、シマちゃんってば、どうしてそこまで俺と巧斗さんをくっつけようとしてるの?」
『…だって、絶対ヤバ崎君じゃすずめちゃんに僕と遊ぶ時間くれなさそうなんだもん…』
シマちゃんが小声ボソっと何かをつぶやいたように思えるが、
メイド喫茶の賑わいの声で聞こえなかったので聞き直した。
「?シマちゃん今何か言った??」
「え?いや、えへへ。ただ単にすずめちゃんと鷲ノ宮さんって二人とも穏やかというか落ち着いてるから相性が良さそうだなって思っただけ♬別に他意は無いよぉ?」
俺に抱き着いていたシマちゃんが手をほどき、ぽすんと俺の肩に頭を預けてくる。
「僕ちょっと休憩ね~♬あ、折角だからお絵描きオムライス頼もうよ~。僕が絵を描いてあげる♡」
シマちゃんは何かを取り繕うようにそう言うと、メイド喫茶のスタッフさんを呼んでオムライスを3つ注文する。
それから、しばらく雑談で一息入れた俺達は、シマちゃんお勧めのオムライスが来るのを待った。
その間、隣のテーブルの客から何やら物騒な話が聞こえてきたので、俺は注意深く耳を立てる。
『おいおい、聞いたかよ?ミスターコン2位の鷹崎ってやつ、ついさっき第一校舎の玄関のガラス扉割ったらしいぜwww』
『ファ?!な、なんで?!』
『いや、噂によると、例の美人で有名なΩの恋人にデートの待ち合わせすっぽかされてぶちギレてドアを思いっきり殴ったらしい。あいつの実家が権力者だから一応事故って事で処理されて、大学の用務員さんに軽く注意されてたんだと。』
『ひえ~、こっわ。そりゃ恋人も裸足で逃げ出すわな。』
美人で有名なΩの恋人って、尾ひれがついてひなの事と噂がごちゃ混ぜになってはいるけど、デートの約束をすっぽかしたと言われるあたり、確実に俺の事だ。
待ち合わせに行かないことで、ある程度総一郎がキレる事は想定していたけど、ガラスを割るほど怒りだすとは思わず、少し身震いする。
(へ…?ガラスを割った…?!ひえ…。俺、《行けたら行くよ》としか言ってないのに…。)
どうやら総一郎には『体の良い断り文句』という難解な日本語は通じないらしい。
大抵の人はこれを言われたら、待ち合わせに行けなくても『あ、やっぱり忙しかったのかな?』くらいの認識で済むのに、何とも心が狭いやつだ。
…これは次会った時は怒鳴られる覚悟もしておかないとだな。
『いやさぁ、なんでも《鷲ノ宮がすずめを足止めしてるせいだ…!!!!》とか発狂して怒鳴ってたっぽいんけど、そんなやつこの大学にいたっけ?』
『さぁ…?鷲ノ宮っつったら、鷲ノ宮巧蔵しか浮かんでこねーわ。』
『ちょwwお前それどっかの石油王の爺さんの名前じゃねーかwww』
『そうそうw孫は孫でなんか独自で事業成功してるらしいし、すげぇよマジで。オレも石油王の一族に生まれたらハイスペになれたんかなぁ。』
途中から何故か石油王の話になったので、聞き耳を立てるのをやめたが、総一郎の怒りの矛先が俺では無く、巧斗さんに向かっている事を知って急激に申し訳なくなった。
(この件に関しては巧斗さんは関係無いのに、変に巻き込んで迷惑かけちゃったな。)
どう謝ればいいのか分からず、おずおずと巧斗さんの方に目を向けると、彼はニコっと微笑んで何故かご機嫌そうに俺の頭を撫でてくる。
「ふふ、もう彼との待ち合わせの約束の時間、過ぎちゃったみたいですね?…彼が怒っているとの事ですが、すずめが気にする事はありませんよ。何があっても守ってみせますから。」
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