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第1章
第138話《メッセージのやり取りが早速巧斗さんにバレたすずめ》
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おそらく総一郎が兄の側にいるのだろう、即伝言を伝えた旨の返信がきた。
《OK!そのまま鷹崎君に伝えといたぜ。なんだか、昨日までの鷹崎君とちょっと様子が違うっつーか、変に切羽詰まってるっつーか…。多分すずめと喧嘩?的な事態になってるのが、余程堪えてて、反省してるみたいだから、すずめからもメッセージくらいは返信してやれよな!》
兄の能天気な言葉に内心ギクっとする。
(この様子だと総一郎の浮気と裏切りについてはまだバレていないらしいからそこは良かったけど、これだとなんだか俺が一方的に総一郎に意地悪しているみたいじゃないか?)
おそらく、総一郎も外面だけは取り繕えるから自分の事を都合の良いように言った上で、俺とプチ喧嘩してるとだけ伝えたのだろう。兄は意外と誰とでも仲良くなれる分、チョロいところがあるから大体の想像がつく。
まぁだからといって、返信してやる気なんて更々無いけど、一応分かったとだけ言っておこう。
《そうなんだ。時間が空いた時に返信しておくよ。伝言ありがとね!》
《おう!気まずかったらいつでも兄ちゃんが仲介してやるからな!!》
兄(というよりほぼ総一郎)とのやり取りを終えて、ドッと疲れが襲ってきた。
なんだかもう、スマホをバッグにしまうのすら億劫だ。
しかし、そうこうしている間にも、巧斗さんと相田君はダンスを完璧に仕上げたらしく、スマホの曲を止めて、俺が座っていた東屋まで歩いてきて巧斗さんが俺の隣に、相田君が正面に座った。
「ふう~!案外早くダンスが仕上がってびっくりっすよ~!!さっきまで内心、流石に間に合わないかもって思っていたのが嘘みたいっす!!!」
「ふふ、意外と時間が余ってしまいましたね。これからコンテストの時間までどこかで……すずめ?どうしました?」
「え?ああ、大した事じゃないよ?ちょっとお兄ちゃんからメッセージが来てたから返信してただけ。」
突然名前を呼ばれてビクっとした後、俺はサッとスマホの電源を切ってバッグにしまってから後ずさる。
いや、別に総一郎の事は隠し事をするまでもないのだが、ただでさえコンテストの事で忙しい巧斗さんにあんな奴とのやり取りを逐一報告して迷惑かけたくないからな…。
それに、ただでさえ巧斗さんと出会ってから、相当な割合でなんでもかんでも頼ってしまっているので、最低限自分一人で出来る事はちゃんと自分で対処しなければいけない。
___そう思っていたのだが、巧斗さんはまるで俺の心の中を読んだみたいに的確に図星をさしてきた。
「もしかして、お義兄さんを介して例の彼から何かモーションがありましたか?」
「えっ?なんで分かるの?!」
「…さっきのアレですからね。大体は察しがつきますよ。大方、君に再度の待ち合わせの時刻と場所を伝えてきた…と言ったところでしょう?」
「…!う、うん…まぁそんなとこかな…。あはは…。」
名探偵並みの推理で俺に起こった出来事を全て当ててくる巧斗さんが鋭すぎて、全然隠し事が出来ない事に今更ながら気づいて、全て素直に認める。
「全く諦めの悪い…。それでなんと断ったのですか?」
「え!えーと、断ったっていうか、お兄ちゃんに変に勘繰られるのも嫌だから、行けたら行くかもって出来るだけ言葉を濁して送った、かも…。」
まさか断った前提で質問されるとは思っておらず、咄嗟に正直にメッセージ内容をバラしてしまった俺に巧斗さんは、にっこりと綺麗な笑みを無言で返してきた。
(うっ、これは…、あまり良い意味での笑顔ではないような…。もしかしたら、今度からはこういうのもちゃんと相談した方がいいのか?)
もしかしたら巧斗さんは俺が思っているより、頼られるのが好きな人なのかもしれない。
人それぞれ考え方は違うよな…、等と反省していると、目の前で話を聞いていた相田君がハッとしたような声で話しかけてきた。
「な、なんと!!義兄さん、彼氏さんとデートの約束があったんすか?!!こちらのコンテストの準備は丁度完璧に終わったんで、遠慮なく行ってもらっても大丈夫っすよ!!」
ニカッとこれまた無邪気に笑いながら親指を立てて気を遣ってくれる相田君に、行くつもりは無いと言って否定するのも変に疑われそうなので、
「あはは、そうだね。気遣ってくれてありがとう…。」
とだけ、にこやかかつ適当に合わせながら返すと、巧斗さんも引き続き綺麗な笑みを浮かべながら頷く。
「………。…そうですね。ここは一旦コンテスト開始20分前まで解散にしましょうか。…今日は文化祭最終日ですし、折角なので長介君もこれからつばめさんをデートに誘っては?」
「お、そうっすね!よくよく考えたら、コンテスト終了後からは店番があるっすから、ここでつばめとガッツリデートしておきたいっす!!…よし!!そうと決まれば、善は急げっす!!んじゃ、お先に失礼するっす~!!!」
「ふふ、良い文化祭を。」
巧斗さんにつばめとのデートを提案され、ウキウキになりながら荷物をまとめて恐るべき速さでこの場から退散した相田君を見て、巧斗さんもダンスで若干乱れた身だしなみをサッと整えて俺に手を差しのべた。
「さて、俺達も色々と出店を見て回りましょうか。…ちなみに彼との待ち合わせ場所はどこですか?」
「あ、うん!総一郎君との待ち合わせは、確か第一校舎って言ってたかな。」
巧斗さんはバッグからこの校舎のマップが乗っている文化祭のパンフレットを取り出し、指でマップ部分をなぞる。
「第一校舎は……この辺りか。……では、暫くはこの第二体育館周辺を見て回りましょうか?他所のエリアと比べて人通りもまばらですから、ゆっくりできそうですよ。」
「それ賛成!確かこの辺はスイーツ系のお店が多いよね?実はお昼ご飯は巧斗さんと一緒に行きたいお店があるから、丁度よかった!」
「!俺を連れていきたいお店ですか?それは是非行ってみたいですね。なにより、すずめがそんな事を言ってくれるなんてとても嬉しいです。」
先程までの巧斗さんのどこか圧を感じるような綺麗な笑顔が、ぱぁっと晴れやかに明るくなり俺も嬉しくなる。
(俺がお昼に選んだお店をそんなに楽しみにしてくれるなんて、誘ってよかった。…シマちゃんのメイド喫茶、俺も楽しみだなぁ。)
《OK!そのまま鷹崎君に伝えといたぜ。なんだか、昨日までの鷹崎君とちょっと様子が違うっつーか、変に切羽詰まってるっつーか…。多分すずめと喧嘩?的な事態になってるのが、余程堪えてて、反省してるみたいだから、すずめからもメッセージくらいは返信してやれよな!》
兄の能天気な言葉に内心ギクっとする。
(この様子だと総一郎の浮気と裏切りについてはまだバレていないらしいからそこは良かったけど、これだとなんだか俺が一方的に総一郎に意地悪しているみたいじゃないか?)
おそらく、総一郎も外面だけは取り繕えるから自分の事を都合の良いように言った上で、俺とプチ喧嘩してるとだけ伝えたのだろう。兄は意外と誰とでも仲良くなれる分、チョロいところがあるから大体の想像がつく。
まぁだからといって、返信してやる気なんて更々無いけど、一応分かったとだけ言っておこう。
《そうなんだ。時間が空いた時に返信しておくよ。伝言ありがとね!》
《おう!気まずかったらいつでも兄ちゃんが仲介してやるからな!!》
兄(というよりほぼ総一郎)とのやり取りを終えて、ドッと疲れが襲ってきた。
なんだかもう、スマホをバッグにしまうのすら億劫だ。
しかし、そうこうしている間にも、巧斗さんと相田君はダンスを完璧に仕上げたらしく、スマホの曲を止めて、俺が座っていた東屋まで歩いてきて巧斗さんが俺の隣に、相田君が正面に座った。
「ふう~!案外早くダンスが仕上がってびっくりっすよ~!!さっきまで内心、流石に間に合わないかもって思っていたのが嘘みたいっす!!!」
「ふふ、意外と時間が余ってしまいましたね。これからコンテストの時間までどこかで……すずめ?どうしました?」
「え?ああ、大した事じゃないよ?ちょっとお兄ちゃんからメッセージが来てたから返信してただけ。」
突然名前を呼ばれてビクっとした後、俺はサッとスマホの電源を切ってバッグにしまってから後ずさる。
いや、別に総一郎の事は隠し事をするまでもないのだが、ただでさえコンテストの事で忙しい巧斗さんにあんな奴とのやり取りを逐一報告して迷惑かけたくないからな…。
それに、ただでさえ巧斗さんと出会ってから、相当な割合でなんでもかんでも頼ってしまっているので、最低限自分一人で出来る事はちゃんと自分で対処しなければいけない。
___そう思っていたのだが、巧斗さんはまるで俺の心の中を読んだみたいに的確に図星をさしてきた。
「もしかして、お義兄さんを介して例の彼から何かモーションがありましたか?」
「えっ?なんで分かるの?!」
「…さっきのアレですからね。大体は察しがつきますよ。大方、君に再度の待ち合わせの時刻と場所を伝えてきた…と言ったところでしょう?」
「…!う、うん…まぁそんなとこかな…。あはは…。」
名探偵並みの推理で俺に起こった出来事を全て当ててくる巧斗さんが鋭すぎて、全然隠し事が出来ない事に今更ながら気づいて、全て素直に認める。
「全く諦めの悪い…。それでなんと断ったのですか?」
「え!えーと、断ったっていうか、お兄ちゃんに変に勘繰られるのも嫌だから、行けたら行くかもって出来るだけ言葉を濁して送った、かも…。」
まさか断った前提で質問されるとは思っておらず、咄嗟に正直にメッセージ内容をバラしてしまった俺に巧斗さんは、にっこりと綺麗な笑みを無言で返してきた。
(うっ、これは…、あまり良い意味での笑顔ではないような…。もしかしたら、今度からはこういうのもちゃんと相談した方がいいのか?)
もしかしたら巧斗さんは俺が思っているより、頼られるのが好きな人なのかもしれない。
人それぞれ考え方は違うよな…、等と反省していると、目の前で話を聞いていた相田君がハッとしたような声で話しかけてきた。
「な、なんと!!義兄さん、彼氏さんとデートの約束があったんすか?!!こちらのコンテストの準備は丁度完璧に終わったんで、遠慮なく行ってもらっても大丈夫っすよ!!」
ニカッとこれまた無邪気に笑いながら親指を立てて気を遣ってくれる相田君に、行くつもりは無いと言って否定するのも変に疑われそうなので、
「あはは、そうだね。気遣ってくれてありがとう…。」
とだけ、にこやかかつ適当に合わせながら返すと、巧斗さんも引き続き綺麗な笑みを浮かべながら頷く。
「………。…そうですね。ここは一旦コンテスト開始20分前まで解散にしましょうか。…今日は文化祭最終日ですし、折角なので長介君もこれからつばめさんをデートに誘っては?」
「お、そうっすね!よくよく考えたら、コンテスト終了後からは店番があるっすから、ここでつばめとガッツリデートしておきたいっす!!…よし!!そうと決まれば、善は急げっす!!んじゃ、お先に失礼するっす~!!!」
「ふふ、良い文化祭を。」
巧斗さんにつばめとのデートを提案され、ウキウキになりながら荷物をまとめて恐るべき速さでこの場から退散した相田君を見て、巧斗さんもダンスで若干乱れた身だしなみをサッと整えて俺に手を差しのべた。
「さて、俺達も色々と出店を見て回りましょうか。…ちなみに彼との待ち合わせ場所はどこですか?」
「あ、うん!総一郎君との待ち合わせは、確か第一校舎って言ってたかな。」
巧斗さんはバッグからこの校舎のマップが乗っている文化祭のパンフレットを取り出し、指でマップ部分をなぞる。
「第一校舎は……この辺りか。……では、暫くはこの第二体育館周辺を見て回りましょうか?他所のエリアと比べて人通りもまばらですから、ゆっくりできそうですよ。」
「それ賛成!確かこの辺はスイーツ系のお店が多いよね?実はお昼ご飯は巧斗さんと一緒に行きたいお店があるから、丁度よかった!」
「!俺を連れていきたいお店ですか?それは是非行ってみたいですね。なにより、すずめがそんな事を言ってくれるなんてとても嬉しいです。」
先程までの巧斗さんのどこか圧を感じるような綺麗な笑顔が、ぱぁっと晴れやかに明るくなり俺も嬉しくなる。
(俺がお昼に選んだお店をそんなに楽しみにしてくれるなんて、誘ってよかった。…シマちゃんのメイド喫茶、俺も楽しみだなぁ。)
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