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第1章
第123話《総一郎とひなの会話を聞くすずめ》
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それから、俺と巧斗さんは一旦東屋に腰を下ろし、先程買ったたこ焼きを開けて食べ始めた。
この東屋は屋台が立ち並ぶエリアから少し離れているおかげで、予想通りとてもリラックスできて、巧斗さんとの会話も楽しく盛り上がった。
とはいえ、この後には相田君との待ち合わせも控えているので、あまりのんびりはしていられない。
(あ、そうだ!相田君との電話の件、巧斗さんにも伝えておかなきゃだな。)
「そういえば、さっき相田君から電話があって、10時30分頃に一旦集合しようだって!」
「おや、そうでしたか。承知しました。ふふ、相田君に会うのも楽しみですね。何しろ将来の義弟ですから。」
「あはは、キャプテンと巧斗さんと相田君が義兄弟かぁ。案外気が合うかもね。」
さっきのキャプテンさんの義兄弟ネタが、どこかのツボにハマっているらしい巧斗さんが、ククと笑いながら相田君に会うのが楽しみだと言ってくる。
(ふふ、まぁ、あの大きい男達3人衆が集まったら、一体どんな会話をするのかと考えると確かに笑えて来るよな。)
それから、昨日の夜ごはんとは違って同じたこ焼きを食べているのにも関わらず、何故かまた「あーん」をして食べさせようとする巧斗さんに対して、だいぶ慣れてきた俺は大きく口を開けていると、
ふと視線の先に、第二体育館から出てくる総一郎とひなの姿が見えた。
(うわ、総一郎とひなだ…。最近は別行動してるってのに、よく出くわすよな…って、そういえばここって…コンテスト会場の近くでもあったんだっけ。)
確か俺は一昨日のコンテストの準備中に頭痛がして、丁度近くにあったこの東屋に座ったんだったよな。
(他の出場者達もぞろぞろと会場から出てきているし、丁度今リハーサルが終わった所なのかな。)
総一郎とは朝っぱらからトラブルになったばかりだが、一応あの後リハーサルには参加していたらしい。
この辺りはコンテスト参加者以外の人通りがほとんどないため、ここから結構な距離がありながらもひなと総一郎の会話が意外にもしっかり耳に入ってくる。
『総君、昨日は何で泊まりにきてくれなかったの?僕すごい悲しかった…。』
『…悪かったよ。でも昨日は父さんに呼び出されたんだからしょうがないだろ。』
『それはさっき聞いたけどぉ…。もう、ずる~い!それを持ち出されたら何も言えないじゃん~。将来の僕のお義父さんにもなるんだもんね。』
『…ああ…そうだな…。』
『じゃぁ、昨日の埋め合わせと言ったらなんだけど、来週あたりでラスベガス旅行に行きたいな♪確かミスターコンの優勝賞品だったよね?実は僕ちょっと前から旅行のしおり作ってるんだよね~。あ、勿論すずめちゃんは置いていこうね?』
あ!そういえば、今年の後夜祭の事だけど、僕のパパとおじいちゃまが大学に多額の寄付をしたおかげで、豪勢なパーティが出来るんだって!勿論総君も行くよね?ペアで行くと記念品がもらえるらしいよ?なんだろうね?』
『………。』
(なんだか、さっきからひなばかり話してるな。総一郎があんなに静かだと少し不気味だ。まぁうるさいよりはマシだけど。)
ここで俺は、さっきの総一郎の怒鳴り声を思い出して辟易とする。
普段の態度も、ひなに対してはどこかダウナーというか自然体のモテ男って感じで、俺としてはそっちの態度で来られた方が断然いい。
好きな人には執着されたいし甘やかされたいけど、そうでない人に束縛されたりするのは地獄でしかないからな。
『総君?ねぇ、どしたの?なんかさっきからぼーっとしてるけど寝不足?実は僕もちょっと寝不足なんだよねぇ。
昨晩すずめちゃんからちょームカつくメッセージが着てさぁ…。
ねぇ知ってる?すずめちゃんってすっごい性格悪いんだよ?僕にずっとマウント取って嫌味言ってくるの。昨日なんか、《総君は俺の彼氏だからごめんね~?》だって!ほんと、どこの性悪当て馬かって感じ!』
『…!!ひな、それほんとか?!!ちょっとスマホ見せてくれ!』
『ほんとだよ~!ほらコレ!ね?やっぱり総君も酷いって思うよね?総君もこんな奴とあまり関わらない方がいいよ。見た目も家柄も大したことないのに心まで汚いのが近くにいるだなんて鷹崎家の名が汚れちゃうだけだもん。』
ひなが俺の煽りメッセージを総一郎に告げ口し、証拠としてスマホを見せると、これまでローテンションだった総一郎が突然異常に反応してニヤつき始めた。
(うわ…一体どうしたんだ、あいつ…。自分の婚約者を煽る俺のメッセージを見て、こんなに急に機嫌が良くなるなんて…)
もしかしてあいつ、寝不足が原因でついにおかしくなったのか?
この東屋は屋台が立ち並ぶエリアから少し離れているおかげで、予想通りとてもリラックスできて、巧斗さんとの会話も楽しく盛り上がった。
とはいえ、この後には相田君との待ち合わせも控えているので、あまりのんびりはしていられない。
(あ、そうだ!相田君との電話の件、巧斗さんにも伝えておかなきゃだな。)
「そういえば、さっき相田君から電話があって、10時30分頃に一旦集合しようだって!」
「おや、そうでしたか。承知しました。ふふ、相田君に会うのも楽しみですね。何しろ将来の義弟ですから。」
「あはは、キャプテンと巧斗さんと相田君が義兄弟かぁ。案外気が合うかもね。」
さっきのキャプテンさんの義兄弟ネタが、どこかのツボにハマっているらしい巧斗さんが、ククと笑いながら相田君に会うのが楽しみだと言ってくる。
(ふふ、まぁ、あの大きい男達3人衆が集まったら、一体どんな会話をするのかと考えると確かに笑えて来るよな。)
それから、昨日の夜ごはんとは違って同じたこ焼きを食べているのにも関わらず、何故かまた「あーん」をして食べさせようとする巧斗さんに対して、だいぶ慣れてきた俺は大きく口を開けていると、
ふと視線の先に、第二体育館から出てくる総一郎とひなの姿が見えた。
(うわ、総一郎とひなだ…。最近は別行動してるってのに、よく出くわすよな…って、そういえばここって…コンテスト会場の近くでもあったんだっけ。)
確か俺は一昨日のコンテストの準備中に頭痛がして、丁度近くにあったこの東屋に座ったんだったよな。
(他の出場者達もぞろぞろと会場から出てきているし、丁度今リハーサルが終わった所なのかな。)
総一郎とは朝っぱらからトラブルになったばかりだが、一応あの後リハーサルには参加していたらしい。
この辺りはコンテスト参加者以外の人通りがほとんどないため、ここから結構な距離がありながらもひなと総一郎の会話が意外にもしっかり耳に入ってくる。
『総君、昨日は何で泊まりにきてくれなかったの?僕すごい悲しかった…。』
『…悪かったよ。でも昨日は父さんに呼び出されたんだからしょうがないだろ。』
『それはさっき聞いたけどぉ…。もう、ずる~い!それを持ち出されたら何も言えないじゃん~。将来の僕のお義父さんにもなるんだもんね。』
『…ああ…そうだな…。』
『じゃぁ、昨日の埋め合わせと言ったらなんだけど、来週あたりでラスベガス旅行に行きたいな♪確かミスターコンの優勝賞品だったよね?実は僕ちょっと前から旅行のしおり作ってるんだよね~。あ、勿論すずめちゃんは置いていこうね?』
あ!そういえば、今年の後夜祭の事だけど、僕のパパとおじいちゃまが大学に多額の寄付をしたおかげで、豪勢なパーティが出来るんだって!勿論総君も行くよね?ペアで行くと記念品がもらえるらしいよ?なんだろうね?』
『………。』
(なんだか、さっきからひなばかり話してるな。総一郎があんなに静かだと少し不気味だ。まぁうるさいよりはマシだけど。)
ここで俺は、さっきの総一郎の怒鳴り声を思い出して辟易とする。
普段の態度も、ひなに対してはどこかダウナーというか自然体のモテ男って感じで、俺としてはそっちの態度で来られた方が断然いい。
好きな人には執着されたいし甘やかされたいけど、そうでない人に束縛されたりするのは地獄でしかないからな。
『総君?ねぇ、どしたの?なんかさっきからぼーっとしてるけど寝不足?実は僕もちょっと寝不足なんだよねぇ。
昨晩すずめちゃんからちょームカつくメッセージが着てさぁ…。
ねぇ知ってる?すずめちゃんってすっごい性格悪いんだよ?僕にずっとマウント取って嫌味言ってくるの。昨日なんか、《総君は俺の彼氏だからごめんね~?》だって!ほんと、どこの性悪当て馬かって感じ!』
『…!!ひな、それほんとか?!!ちょっとスマホ見せてくれ!』
『ほんとだよ~!ほらコレ!ね?やっぱり総君も酷いって思うよね?総君もこんな奴とあまり関わらない方がいいよ。見た目も家柄も大したことないのに心まで汚いのが近くにいるだなんて鷹崎家の名が汚れちゃうだけだもん。』
ひなが俺の煽りメッセージを総一郎に告げ口し、証拠としてスマホを見せると、これまでローテンションだった総一郎が突然異常に反応してニヤつき始めた。
(うわ…一体どうしたんだ、あいつ…。自分の婚約者を煽る俺のメッセージを見て、こんなに急に機嫌が良くなるなんて…)
もしかしてあいつ、寝不足が原因でついにおかしくなったのか?
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