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第1章
第118話《たこ焼き屋に到着するすずめと巧斗さん》
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「あっそうだった!ごめん!実は俺の身内がミスターコンに出てて、今日はそれの手伝いがあって…。」
巧斗さんの思わぬ助け舟に、ありがたく乗っからせてもらいながら申し訳なさそうに断りを入れると、フクロー君は気にしないでくれと言わんばかりに頭をかく。
「そ、そっか!…いや、いいんだ!そりゃしょうがないっつうか、身内がミスターコン出場者とかすげーじゃん!俺も時間があったら見に行くよ。」
「ほんと?ありがとうフクロー君!じゃぁまた時間があるときにゆっくり話そうね。」
「おう…!楽しみにしてるぜ!」
フクロー君が仲間たちと共に去っていくのを見送りながら、俺と巧斗さんも踵を返した。
後ろの方からは、『福田!次行こうぜ次!』『ドンマイ!』『なんか美味いものでも奢ってやるよ!』等と、フクロー君の友達が一際明るく声をかけ、それに対してフクロー君が「うるせーな!でも、ありがとな!」と返しているのが微かに聞こえてくる。
(やっぱりあれだけ友達がいると賑やかでいいな。俺も総一郎さえいなければ今頃ああやって友達に囲まれていたのかも…。)
あんな最低浮気野郎のために花のキャンパスライフを2年弱も奪われた事に心底げんなりする。
お祭りらしくわいわい騒ぐフクロー君一行の声を羨ましく思いつつ耳を傾けながら、ふと巧斗さんの顔を見上げると、俺に優しく微笑み返してくれた。
(…まぁ、でもおかげで巧斗さんにも出会う事が出来たと考えれば少しは救われるよな。)
◇◇◇
「巧斗さん、さっきは待たせちゃってごめんね。それじゃ、たこ焼き屋に行こう?」
「ふふ、はい。楽しみですね。昨日、すずめが作ったたこ焼きが本当に美味しかったので。」
「!でしょ?お店のレシピ通りに作ったから、きっと同じ味が食べられるよ!他にもベビーカステラ風のたこ焼きがあってねっ…」
たこ焼きを褒められて嬉しい気持ちになった俺が、たこ焼きに関するうんちくを延々と語っていると、あっという間に相田君達のたこやき屋の看板が見えてくる。
更に人混みをかき分けてそこへ近づくと、出店内ではラグビー部のキャプテンさんが物凄い勢いでたこ焼きを焼いている姿が目に入ったので声を掛けてみた。
「おはようございます!キャプテンさん!もうお店開いてるんですか?」
「おう!我が義弟よ、おはよーさん!!勿論開いとるよ!出店は9時からOKやけんね。丁度出来立てのたこ焼きがあるけん、そこの彼氏くんも食べて行かんね?身内のよしみでトッピング沢山のっけちゃるばい!!」
「か!?い、いやこの人はっ…!」
「ありがとうございます。とても美味しそうですね?」
巧斗さんの事をあろうことか俺の彼氏扱いしてくるキャプテンさんに、俺が慌てふためいて訂正しようとすると、巧斗さんが何故か満面の笑みで即答する。
(巧斗さん!?ここで訂正しておかないと、ずっと俺の彼氏扱いされそうだけどいいのかな…?)
「…ところで、すずめの事を義弟と呼んでいましたが、お二人はどういったご関係で?」
「ああ、いずれその子の兄ば嫁に迎えるつもりやけん、俺は未来の義兄にあたるとよ。君もその子の彼氏なら将来の義弟になるんやけん、俺ん事は義兄さんって呼ばんね!」
義弟という言葉が引っかかったのか、巧斗さんが俺とキャプテンの関係にについて首を傾げながら質問すると、キャプテンが嬉々として説明を始めた。
「!そうなんですね。…では義兄さん、たこ焼きのかつおポン酢味とベビーカステラ風を一つください。すずめはどうしますか?」
「えっ、俺?じゃ、じゃぁおれも同じやつで…」
「おお、彼氏くんノリが良かね!気に入ったばい!!かつおポン酢とベビーカステラ2個な!ちょっと待っとれよ!」
自分の事を義兄さんと呼んだ巧斗さんに、キャプテンさんはすこぶるご機嫌になり、すでにたこ焼きが8個入ったパックに、更にぎゅうぎゅうに追加のたこ焼きを詰めはじめる。
(ああ…キャプテンさん、あんなに機嫌よくなっちゃって…。もうお兄ちゃんがお嫁にいっちゃうのは確定なんだな…。というか巧斗さんも気を遣ってか、何気にキャプテンさんに話を合わせてくれてるし、この人本当に空気を読むの美味いよなぁ。)
将来の義兄(キャプテンさんが勝手に言ってるだけ)と、将来の義弟(キャプテンさんが勝手に言ってるだけ)の義兄弟?二人が、和やかに談笑しながら速攻で打ち解けているのを見て、呆気に取られてしまった。
巧斗さんの思わぬ助け舟に、ありがたく乗っからせてもらいながら申し訳なさそうに断りを入れると、フクロー君は気にしないでくれと言わんばかりに頭をかく。
「そ、そっか!…いや、いいんだ!そりゃしょうがないっつうか、身内がミスターコン出場者とかすげーじゃん!俺も時間があったら見に行くよ。」
「ほんと?ありがとうフクロー君!じゃぁまた時間があるときにゆっくり話そうね。」
「おう…!楽しみにしてるぜ!」
フクロー君が仲間たちと共に去っていくのを見送りながら、俺と巧斗さんも踵を返した。
後ろの方からは、『福田!次行こうぜ次!』『ドンマイ!』『なんか美味いものでも奢ってやるよ!』等と、フクロー君の友達が一際明るく声をかけ、それに対してフクロー君が「うるせーな!でも、ありがとな!」と返しているのが微かに聞こえてくる。
(やっぱりあれだけ友達がいると賑やかでいいな。俺も総一郎さえいなければ今頃ああやって友達に囲まれていたのかも…。)
あんな最低浮気野郎のために花のキャンパスライフを2年弱も奪われた事に心底げんなりする。
お祭りらしくわいわい騒ぐフクロー君一行の声を羨ましく思いつつ耳を傾けながら、ふと巧斗さんの顔を見上げると、俺に優しく微笑み返してくれた。
(…まぁ、でもおかげで巧斗さんにも出会う事が出来たと考えれば少しは救われるよな。)
◇◇◇
「巧斗さん、さっきは待たせちゃってごめんね。それじゃ、たこ焼き屋に行こう?」
「ふふ、はい。楽しみですね。昨日、すずめが作ったたこ焼きが本当に美味しかったので。」
「!でしょ?お店のレシピ通りに作ったから、きっと同じ味が食べられるよ!他にもベビーカステラ風のたこ焼きがあってねっ…」
たこ焼きを褒められて嬉しい気持ちになった俺が、たこ焼きに関するうんちくを延々と語っていると、あっという間に相田君達のたこやき屋の看板が見えてくる。
更に人混みをかき分けてそこへ近づくと、出店内ではラグビー部のキャプテンさんが物凄い勢いでたこ焼きを焼いている姿が目に入ったので声を掛けてみた。
「おはようございます!キャプテンさん!もうお店開いてるんですか?」
「おう!我が義弟よ、おはよーさん!!勿論開いとるよ!出店は9時からOKやけんね。丁度出来立てのたこ焼きがあるけん、そこの彼氏くんも食べて行かんね?身内のよしみでトッピング沢山のっけちゃるばい!!」
「か!?い、いやこの人はっ…!」
「ありがとうございます。とても美味しそうですね?」
巧斗さんの事をあろうことか俺の彼氏扱いしてくるキャプテンさんに、俺が慌てふためいて訂正しようとすると、巧斗さんが何故か満面の笑みで即答する。
(巧斗さん!?ここで訂正しておかないと、ずっと俺の彼氏扱いされそうだけどいいのかな…?)
「…ところで、すずめの事を義弟と呼んでいましたが、お二人はどういったご関係で?」
「ああ、いずれその子の兄ば嫁に迎えるつもりやけん、俺は未来の義兄にあたるとよ。君もその子の彼氏なら将来の義弟になるんやけん、俺ん事は義兄さんって呼ばんね!」
義弟という言葉が引っかかったのか、巧斗さんが俺とキャプテンの関係にについて首を傾げながら質問すると、キャプテンが嬉々として説明を始めた。
「!そうなんですね。…では義兄さん、たこ焼きのかつおポン酢味とベビーカステラ風を一つください。すずめはどうしますか?」
「えっ、俺?じゃ、じゃぁおれも同じやつで…」
「おお、彼氏くんノリが良かね!気に入ったばい!!かつおポン酢とベビーカステラ2個な!ちょっと待っとれよ!」
自分の事を義兄さんと呼んだ巧斗さんに、キャプテンさんはすこぶるご機嫌になり、すでにたこ焼きが8個入ったパックに、更にぎゅうぎゅうに追加のたこ焼きを詰めはじめる。
(ああ…キャプテンさん、あんなに機嫌よくなっちゃって…。もうお兄ちゃんがお嫁にいっちゃうのは確定なんだな…。というか巧斗さんも気を遣ってか、何気にキャプテンさんに話を合わせてくれてるし、この人本当に空気を読むの美味いよなぁ。)
将来の義兄(キャプテンさんが勝手に言ってるだけ)と、将来の義弟(キャプテンさんが勝手に言ってるだけ)の義兄弟?二人が、和やかに談笑しながら速攻で打ち解けているのを見て、呆気に取られてしまった。
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