117 / 169
第1章
第117話《すれ違いざま注目を浴びるすずめ》
しおりを挟む
まぁその件に関しては巧斗さんの家に泊まらせてもらっている内に考えてみるか…。
◇◇◇
巧斗さんと共に駐車場を後にし、文化祭の会場に向かう道を歩いていると、その間にも何故かちらちらと通行人がこちらの方を横目で見てくるので首を傾げる。
(…?なんで今日はこんなにも通りすがりの人と目線が合うんだ…?)
こういう経験が全くなかったわけではないが、今日はすれ違うほとんどの人に二度見、三度見されているような気がする。
とはいえ、まだ文化祭前で人通りは数十人程度だが、すれ違うたびに「ヤバい」や「あのΩ、誰?」などの声が断片的に聞こえてくると、どうしても気になってしまう。
(やっぱりどこか変なところでもあるのかな…?)
思い当たるのは、この服装くらいだが、そんなに似合ってないだろうか?
つい先ほど、総一郎に「全然似合ってない」と言われたことが一瞬頭をよぎるが、あの巧斗さんが俺に似合うと思って選んでくれた服だと思うと勇気が湧いてくる。
(ま、巧斗さんが似合っているって言ってくれてるんだからそれでいいじゃないか。あまり他の人の目は考えないようにしよう。)
◇◇◇
それからようやっと会場の入り口に着くと、まだ文化祭二日目開催時間ではないにも関わらず、お客さんや学生達で賑わい、出店の方もすでに開店しているところが多かった。
「昨日も思いましたが、この大学の文化祭はやたら規模が大きいですよね?見どころが多くて何処に行こうか迷います。…すずめは何か食べたいものはありますか?」
「俺?俺はたこ焼きが一番好きなんだけど、相田君のお店もう開いてるかなぁ?」
「相田君…というと、今日のダンスの相手になる方ですよね?」
「うん!それでもって、俺の将来の義弟。…妹の彼氏なんだ。…もしかしたらうちの兄と妹もそこにいるかもしれないな。」
「!やはりそうでしたか。それは是非ともお会いして挨拶しておきたいです。」
「う、うん?そうだね?」
何故か相田君の話になるといきなり気合いを入れはじめた巧斗さんに疑問を感じつつも、ひとまず相田君の店へ向かおうと足を進める。
すると、その道中でとある意外な人物に話しかけられた。
「あ、あれ…霧下…?」
「!フクロー君?一昨日ぶりだね?」
声をかけてきたのは、文化祭前日、一緒に体育館の椅子運びのボランティアを行ったひなの元彼(※150万のブレスレット貢がされてポイ捨てされてたけど)の福田哲郎君だった。
彼は3人の友達を連れていて、その人達も何事かと興味津々な様子でこちらを伺っている。
フクロー君自身も少し驚いた表情をしていて、俺の姿を上から下までじっくりと見つめて目を丸くしていた。
「お、おう。…一瞬別人かと思った…。その服、に、似合ってるじゃん。」
「あはは、ありがとう。」
フクロー君が少し照れ臭そうに笑いながらお世辞を言うと、後ろに控えていた彼の友達がわらわらと出てきて声をあげる。
『ウェーイなんだよ福田!この子と知り合いかよ!?』
『あ!もしかしてこの子がひなって子か??』
『あー、こりゃ騙されるわ…。もし俺だったら全財産搾り取られるな…。』
(ええ…、騙されるって、俺そんな悪人面か…?どちらかというと騙される方の顔してると思ってたんだけど…。)
「バカ、ちげーから!一緒にすんなって。こいつは霧下《すずめ》な!」
一瞬とんでもなく失礼な事言われたのかと身構えたけど、フクロー君が人違いである事を慌てて訂正すると、
『マジか…!ごめん…!!』
『今のはナシ!!』
と、90度に頭を下げて謝ってくれたので、まぁそこまで悪い人達ではないみたいだ。
「霧下はその…俺の、友達…だからお前ら変に揶揄うなよ!…ところで、霧下さ。今日どっか時間空いてるか?も、もしよかったら一緒に出店でも回らねーかな…なんて。はは…。」
「え、今日?今日は…。」
フクロー君に友達と紹介されたことに嬉しく思いながらも、文化祭を一緒に見て回るお誘いに関してはどうしたものかと頭を悩ませる。
(うーん。今日はなるべく復讐の根回しに時間を使いたいんだよな。)
なるべく傷つけないように断ろうと口を開こうとすると、突如、巧斗さんが俺の腰に手を回し、腕時計を見ながら
「すずめ、コンテストの準備の方は大丈夫ですか?」
と優しく問いかけてきた。
◇◇◇
巧斗さんと共に駐車場を後にし、文化祭の会場に向かう道を歩いていると、その間にも何故かちらちらと通行人がこちらの方を横目で見てくるので首を傾げる。
(…?なんで今日はこんなにも通りすがりの人と目線が合うんだ…?)
こういう経験が全くなかったわけではないが、今日はすれ違うほとんどの人に二度見、三度見されているような気がする。
とはいえ、まだ文化祭前で人通りは数十人程度だが、すれ違うたびに「ヤバい」や「あのΩ、誰?」などの声が断片的に聞こえてくると、どうしても気になってしまう。
(やっぱりどこか変なところでもあるのかな…?)
思い当たるのは、この服装くらいだが、そんなに似合ってないだろうか?
つい先ほど、総一郎に「全然似合ってない」と言われたことが一瞬頭をよぎるが、あの巧斗さんが俺に似合うと思って選んでくれた服だと思うと勇気が湧いてくる。
(ま、巧斗さんが似合っているって言ってくれてるんだからそれでいいじゃないか。あまり他の人の目は考えないようにしよう。)
◇◇◇
それからようやっと会場の入り口に着くと、まだ文化祭二日目開催時間ではないにも関わらず、お客さんや学生達で賑わい、出店の方もすでに開店しているところが多かった。
「昨日も思いましたが、この大学の文化祭はやたら規模が大きいですよね?見どころが多くて何処に行こうか迷います。…すずめは何か食べたいものはありますか?」
「俺?俺はたこ焼きが一番好きなんだけど、相田君のお店もう開いてるかなぁ?」
「相田君…というと、今日のダンスの相手になる方ですよね?」
「うん!それでもって、俺の将来の義弟。…妹の彼氏なんだ。…もしかしたらうちの兄と妹もそこにいるかもしれないな。」
「!やはりそうでしたか。それは是非ともお会いして挨拶しておきたいです。」
「う、うん?そうだね?」
何故か相田君の話になるといきなり気合いを入れはじめた巧斗さんに疑問を感じつつも、ひとまず相田君の店へ向かおうと足を進める。
すると、その道中でとある意外な人物に話しかけられた。
「あ、あれ…霧下…?」
「!フクロー君?一昨日ぶりだね?」
声をかけてきたのは、文化祭前日、一緒に体育館の椅子運びのボランティアを行ったひなの元彼(※150万のブレスレット貢がされてポイ捨てされてたけど)の福田哲郎君だった。
彼は3人の友達を連れていて、その人達も何事かと興味津々な様子でこちらを伺っている。
フクロー君自身も少し驚いた表情をしていて、俺の姿を上から下までじっくりと見つめて目を丸くしていた。
「お、おう。…一瞬別人かと思った…。その服、に、似合ってるじゃん。」
「あはは、ありがとう。」
フクロー君が少し照れ臭そうに笑いながらお世辞を言うと、後ろに控えていた彼の友達がわらわらと出てきて声をあげる。
『ウェーイなんだよ福田!この子と知り合いかよ!?』
『あ!もしかしてこの子がひなって子か??』
『あー、こりゃ騙されるわ…。もし俺だったら全財産搾り取られるな…。』
(ええ…、騙されるって、俺そんな悪人面か…?どちらかというと騙される方の顔してると思ってたんだけど…。)
「バカ、ちげーから!一緒にすんなって。こいつは霧下《すずめ》な!」
一瞬とんでもなく失礼な事言われたのかと身構えたけど、フクロー君が人違いである事を慌てて訂正すると、
『マジか…!ごめん…!!』
『今のはナシ!!』
と、90度に頭を下げて謝ってくれたので、まぁそこまで悪い人達ではないみたいだ。
「霧下はその…俺の、友達…だからお前ら変に揶揄うなよ!…ところで、霧下さ。今日どっか時間空いてるか?も、もしよかったら一緒に出店でも回らねーかな…なんて。はは…。」
「え、今日?今日は…。」
フクロー君に友達と紹介されたことに嬉しく思いながらも、文化祭を一緒に見て回るお誘いに関してはどうしたものかと頭を悩ませる。
(うーん。今日はなるべく復讐の根回しに時間を使いたいんだよな。)
なるべく傷つけないように断ろうと口を開こうとすると、突如、巧斗さんが俺の腰に手を回し、腕時計を見ながら
「すずめ、コンテストの準備の方は大丈夫ですか?」
と優しく問いかけてきた。
2,204
お気に入りに追加
3,674
あなたにおすすめの小説

十二年付き合った彼氏を人気清純派アイドルに盗られて絶望してたら、幼馴染のポンコツ御曹司に溺愛されたので、奴らを見返してやりたいと思います
塔原 槇
BL
会社員、兎山俊太郎(とやま しゅんたろう)はある日、「やっぱり女の子が好きだわ」と言われ別れを切り出される。彼氏の売れないバンドマン、熊井雄介(くまい ゆうすけ)は人気上昇中の清純派アイドル、桃澤久留美(ももざわ くるみ)と付き合うのだと言う。ショックの中で俊太郎が出社すると、幼馴染の有栖川麗音(ありすがわ れおん)が中途採用で入社してきて……?
私が死んで満足ですか?
マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。
ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。
全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。
書籍化にともない本編を引き下げいたしました

国王の嫁って意外と面倒ですね。
榎本 ぬこ
BL
一国の王であり、最愛のリヴィウスと結婚したΩのレイ。
愛しい人のためなら例え側妃の方から疎まれようと頑張ると決めていたのですが、そろそろ我慢の限界です。
他に自分だけを愛してくれる人を見つけようと思います。


初心者オメガは執着アルファの腕のなか
深嶋
BL
自分がベータであることを信じて疑わずに生きてきた圭人は、見知らぬアルファに声をかけられたことがきっかけとなり、二次性の再検査をすることに。その結果、自身が本当はオメガであったと知り、愕然とする。
オメガだと判明したことで否応なく変化していく日常に圭人は戸惑い、悩み、葛藤する日々。そんな圭人の前に、「運命の番」を自称するアルファの男が再び現れて……。
オメガとして未成熟な大学生の圭人と、圭人を番にしたい社会人アルファの男が、ゆっくりと愛を深めていきます。
穏やかさに滲む執着愛。望まぬ幸運に恵まれた主人公が、悩みながらも運命の出会いに向き合っていくお話です。本編、攻め編ともに完結済。
博愛主義の成れの果て
135
BL
子宮持ちで子供が産める侯爵家嫡男の俺の婚約者は、博愛主義者だ。
俺と同じように子宮持ちの令息にだって優しくしてしまう男。
そんな婚約を白紙にしたところ、元婚約者がおかしくなりはじめた……。
愛されない皇妃~最強の母になります!~
椿蛍
ファンタジー
愛されない皇妃『ユリアナ』
やがて、皇帝に愛される寵妃『クリスティナ』にすべてを奪われる運命にある。
夫も子どもも――そして、皇妃の地位。
最後は嫉妬に狂いクリスティナを殺そうとした罪によって処刑されてしまう。
けれど、そこからが問題だ。
皇帝一家は人々を虐げ、『悪逆皇帝一家』と呼ばれるようになる。
そして、最後は大魔女に悪い皇帝一家が討伐されて終わるのだけど……
皇帝一家を倒した大魔女。
大魔女の私が、皇妃になるなんて、どういうこと!?
※表紙は作成者様からお借りしてます。
※他サイト様に掲載しております。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる