111 / 169
第1章
第111話《寝起きのハプニング》
しおりを挟む
巧斗さんは深呼吸を一つしてからそう言い残し、部屋の照明を落として、サッと薄暗い間接照明に切り替える。
少し気まずいような、照れくさいような空気が流れる中で、二人でベッドに入ると、心地よい布団の感触が全身を包み込む。そしてさらに、隣から感じる巧斗さんの温かな気配が重なり、自然と眠気が訪れてきた。
(なんだか、巧斗さんが隣にいると、いつもよりぐっすり眠れそうだな…。やっぱり、運命の相手だからなのかな?)
にしても、俺とあの鷲田タクトさんが運命の相手だなんて、本当に不思議な話だ。
運命の相手については、いろんなメディアや出版社が取り上げているけど、基本的にはスペックや性格が似ている者同士が結ばれることが多いらしい。
実際、有名な資産家や大企業の社長には、非常に美しい運命の相手がいることが多いし、芸能人でもモデル同士や俳優同士が運命の相手だと公表するケースが多いから、俺もその噂には納得していた。
(でも…目の前にいる俺の運命の相手を考えると、どうにも信じがたい気もしてくるな。今思えば、あれも都市伝説みたいなものだったのかな?)
そんなことを悶々と考えているうちに、一足先に寝入ったらしい巧斗さんの静かな寝息が聞こえてきた。
そのリズムに耳を傾けていると、頭の中で渦巻いていた疑問も少しずつ消えていき、俺の意識も深い眠りへと引き込まれていった…。
◇◇◇
そして翌日___。
「ふあ…。もう朝か。」
柔らかな朝陽が差し込んで、俺はふと目を覚ました。
昨日もぐっすり眠れてはいたけど、今日はそれ以上に深い眠りだった。これが本当の快眠ってやつなのか、疲れがすっかり取れている。
ベッドや枕もふかふかだし、今俺がぎゅっと抱きしめているこの抱き枕も、まるで森林浴をしているようなリラックス効果があって、抱き心地も抜群だ。
(さすが巧斗さん、抱き枕のセンスも完璧だな…。って、ん?抱かれ心地…?抱き枕ってそんな機能あったっけ…?)
そもそも、昨日寝室に案内されたとき、広いベッドの上には、ホテルみたいにきっちり整えられた布団と枕だけだったはずだ…。
なんとなく不安になって、恐る恐る抱きしめているものを見上げると、そこには誰かの首筋が見えて、その先にはこの上無く美しい巧斗さんの寝顔があった。
「~~~~~~!」
(やばい…!俺としたことが、勝手に巧斗さんの事を抱き枕にしてた…!寝相は良い方だと思ってたのに!!)
しかもまるで、恋人に甘えるかのようにバスローブがはだけた巧斗さんの首筋に腕を絡めて寝ているのもタチが悪い。
(~!!ごめん…!巧斗さん!!)
自分の醜態に動揺して身じろぎをすると、その刺激で目を覚ましたらしい巧斗さんが目を開いて、こちらに視線を向けてくる。
「ん…。すずめ…?おはようございま…。」
「お、おはよう…!………って、巧斗さん?!大丈夫…??」
朝の挨拶の途中でまた目を閉じて微動だにしなくなった巧斗さんに、焦って声を掛ける。
「い、いえ、起きていますよ…。…少し顔を洗ってきます。」
寝起きのせいか、またフラフラと歩きながらお手洗いの方に向かう巧斗さんの背中を見ていると、薄っすらと聞こえるか聞こえないかくらいの小声で『神様、ありがとう…』と、聞こえてきた。
(?一体、何がありがとうなんだろう。まぁとりあえず、怒ってはいないみたいで良かったけど…。)
◇◇◇
巧斗さんが洗面台を使っている間、俺も文化祭に出かけるための準備をしておこうかと思い、重大な事に今更気が付く。
(あ!!そういや俺、今着替えが一着も無い!)
下着と寝巻は、巧斗さんが昨日お風呂に用意してくれていたものを使っているけど、今日着ていく服はどうしよう…。
流石に二日連続で同じものを着るのもひなに馬鹿にされそうだし、かといって今総一郎のマンションに着替えを取りに行くのも絶対に嫌だ。
どうしたものかと頭を悩ませていると、いつの間にかお手洗いから顔を洗って帰ってきていたらしい巧斗さんが、まるで俺の心の声を読んだかのようなタイミングで、着替えの服の件について言及してくる。
「ああ、そうだ。すずめが昨晩入浴している間に、君の私服にと見繕った服をそこのクローゼットにかけておいたので、よければ着てくださいね?」
「え…!!本当に!?ありがとう…!…わぁ、こんなにたくさんのお洒落な服…、………???」
相変わらず気の回し方が天才的な巧斗さんに心から感謝して、早速クローゼットを開けさせてもらうと、すでに十着ほどの服がかけられていたのだが、どうにも様子がおかしい。
巧斗さんが見繕ったという服はどれも有名なブランドものの服ばかりで、背中が大胆に開いて、そこにコルセットのような組紐が施されたデザインや、ラビットファーでできたお洒落で暖かそうな上着など、どれも綺麗なモデルさんや美人なΩが着るようなものばかりだ。
間違っても、普段無地のパーカーやトレーナーを着ている俺が手を出していい系統の服ではない。
(__??巧斗さん、さっき《俺の》私服として見繕ったって言ってたよな…?)
少し気まずいような、照れくさいような空気が流れる中で、二人でベッドに入ると、心地よい布団の感触が全身を包み込む。そしてさらに、隣から感じる巧斗さんの温かな気配が重なり、自然と眠気が訪れてきた。
(なんだか、巧斗さんが隣にいると、いつもよりぐっすり眠れそうだな…。やっぱり、運命の相手だからなのかな?)
にしても、俺とあの鷲田タクトさんが運命の相手だなんて、本当に不思議な話だ。
運命の相手については、いろんなメディアや出版社が取り上げているけど、基本的にはスペックや性格が似ている者同士が結ばれることが多いらしい。
実際、有名な資産家や大企業の社長には、非常に美しい運命の相手がいることが多いし、芸能人でもモデル同士や俳優同士が運命の相手だと公表するケースが多いから、俺もその噂には納得していた。
(でも…目の前にいる俺の運命の相手を考えると、どうにも信じがたい気もしてくるな。今思えば、あれも都市伝説みたいなものだったのかな?)
そんなことを悶々と考えているうちに、一足先に寝入ったらしい巧斗さんの静かな寝息が聞こえてきた。
そのリズムに耳を傾けていると、頭の中で渦巻いていた疑問も少しずつ消えていき、俺の意識も深い眠りへと引き込まれていった…。
◇◇◇
そして翌日___。
「ふあ…。もう朝か。」
柔らかな朝陽が差し込んで、俺はふと目を覚ました。
昨日もぐっすり眠れてはいたけど、今日はそれ以上に深い眠りだった。これが本当の快眠ってやつなのか、疲れがすっかり取れている。
ベッドや枕もふかふかだし、今俺がぎゅっと抱きしめているこの抱き枕も、まるで森林浴をしているようなリラックス効果があって、抱き心地も抜群だ。
(さすが巧斗さん、抱き枕のセンスも完璧だな…。って、ん?抱かれ心地…?抱き枕ってそんな機能あったっけ…?)
そもそも、昨日寝室に案内されたとき、広いベッドの上には、ホテルみたいにきっちり整えられた布団と枕だけだったはずだ…。
なんとなく不安になって、恐る恐る抱きしめているものを見上げると、そこには誰かの首筋が見えて、その先にはこの上無く美しい巧斗さんの寝顔があった。
「~~~~~~!」
(やばい…!俺としたことが、勝手に巧斗さんの事を抱き枕にしてた…!寝相は良い方だと思ってたのに!!)
しかもまるで、恋人に甘えるかのようにバスローブがはだけた巧斗さんの首筋に腕を絡めて寝ているのもタチが悪い。
(~!!ごめん…!巧斗さん!!)
自分の醜態に動揺して身じろぎをすると、その刺激で目を覚ましたらしい巧斗さんが目を開いて、こちらに視線を向けてくる。
「ん…。すずめ…?おはようございま…。」
「お、おはよう…!………って、巧斗さん?!大丈夫…??」
朝の挨拶の途中でまた目を閉じて微動だにしなくなった巧斗さんに、焦って声を掛ける。
「い、いえ、起きていますよ…。…少し顔を洗ってきます。」
寝起きのせいか、またフラフラと歩きながらお手洗いの方に向かう巧斗さんの背中を見ていると、薄っすらと聞こえるか聞こえないかくらいの小声で『神様、ありがとう…』と、聞こえてきた。
(?一体、何がありがとうなんだろう。まぁとりあえず、怒ってはいないみたいで良かったけど…。)
◇◇◇
巧斗さんが洗面台を使っている間、俺も文化祭に出かけるための準備をしておこうかと思い、重大な事に今更気が付く。
(あ!!そういや俺、今着替えが一着も無い!)
下着と寝巻は、巧斗さんが昨日お風呂に用意してくれていたものを使っているけど、今日着ていく服はどうしよう…。
流石に二日連続で同じものを着るのもひなに馬鹿にされそうだし、かといって今総一郎のマンションに着替えを取りに行くのも絶対に嫌だ。
どうしたものかと頭を悩ませていると、いつの間にかお手洗いから顔を洗って帰ってきていたらしい巧斗さんが、まるで俺の心の声を読んだかのようなタイミングで、着替えの服の件について言及してくる。
「ああ、そうだ。すずめが昨晩入浴している間に、君の私服にと見繕った服をそこのクローゼットにかけておいたので、よければ着てくださいね?」
「え…!!本当に!?ありがとう…!…わぁ、こんなにたくさんのお洒落な服…、………???」
相変わらず気の回し方が天才的な巧斗さんに心から感謝して、早速クローゼットを開けさせてもらうと、すでに十着ほどの服がかけられていたのだが、どうにも様子がおかしい。
巧斗さんが見繕ったという服はどれも有名なブランドものの服ばかりで、背中が大胆に開いて、そこにコルセットのような組紐が施されたデザインや、ラビットファーでできたお洒落で暖かそうな上着など、どれも綺麗なモデルさんや美人なΩが着るようなものばかりだ。
間違っても、普段無地のパーカーやトレーナーを着ている俺が手を出していい系統の服ではない。
(__??巧斗さん、さっき《俺の》私服として見繕ったって言ってたよな…?)
2,069
お気に入りに追加
3,660
あなたにおすすめの小説
十二年付き合った彼氏を人気清純派アイドルに盗られて絶望してたら、幼馴染のポンコツ御曹司に溺愛されたので、奴らを見返してやりたいと思います
塔原 槇
BL
会社員、兎山俊太郎(とやま しゅんたろう)はある日、「やっぱり女の子が好きだわ」と言われ別れを切り出される。彼氏の売れないバンドマン、熊井雄介(くまい ゆうすけ)は人気上昇中の清純派アイドル、桃澤久留美(ももざわ くるみ)と付き合うのだと言う。ショックの中で俊太郎が出社すると、幼馴染の有栖川麗音(ありすがわ れおん)が中途採用で入社してきて……?
悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!
梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!?
【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】
▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。
▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。
▼毎日18時投稿予定
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
【完結】別れ……ますよね?
325号室の住人
BL
☆全3話、完結済
僕の恋人は、テレビドラマに数多く出演する俳優を生業としている。
ある朝、テレビから流れてきたニュースに、僕は恋人との別れを決意した。
もう人気者とは付き合っていられません
花果唯
BL
僕の恋人は頭も良くて、顔も良くておまけに優しい。
モテるのは当然だ。でも――。
『たまには二人だけで過ごしたい』
そう願うのは、贅沢なのだろうか。
いや、そんな人を好きになった僕の方が間違っていたのだ。
「好きなのは君だ」なんて言葉に縋って耐えてきたけど、それが間違いだったってことに、ようやく気がついた。さようなら。
ちょうど生徒会の補佐をしないかと誘われたし、そっちの方に専念します。
生徒会長が格好いいから見ていて癒やされるし、一石二鳥です。
※ライトBL学園モノ ※2024再公開・改稿中
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
国王の嫁って意外と面倒ですね。
榎本 ぬこ
BL
一国の王であり、最愛のリヴィウスと結婚したΩのレイ。
愛しい人のためなら例え側妃の方から疎まれようと頑張ると決めていたのですが、そろそろ我慢の限界です。
他に自分だけを愛してくれる人を見つけようと思います。
私のドレスを奪った異母妹に、もう大事なものは奪わせない
文野多咲
恋愛
優月(ゆづき)が自宅屋敷に帰ると、異母妹が優月のウェディングドレスを試着していた。その日縫い上がったばかりで、優月もまだ袖を通していなかった。
使用人たちが「まるで、異母妹のためにあつらえたドレスのよう」と褒め称えており、優月の婚約者まで「異母妹の方が似合う」と褒めている。
優月が異母妹に「どうして勝手に着たの?」と訊けば「ちょっと着てみただけよ」と言う。
婚約者は「異母妹なんだから、ちょっとくらいいじゃないか」と言う。
「ちょっとじゃないわ。私はドレスを盗られたも同じよ!」と言えば、父の後妻は「悪気があったわけじゃないのに、心が狭い」と優月の頬をぶった。
優月は父親に婚約解消を願い出た。婚約者は父親が決めた相手で、優月にはもう彼を信頼できない。
父親に事情を説明すると、「大げさだなあ」と取り合わず、「優月は異母妹に嫉妬しているだけだ、婚約者には異母妹を褒めないように言っておく」と言われる。
嫉妬じゃないのに、どうしてわかってくれないの?
優月は父親をも信頼できなくなる。
婚約者は優月を手に入れるために、優月を襲おうとした。絶体絶命の優月の前に現れたのは、叔父だった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる