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第1章
第108話《鷲に餌付けされるすずめ》
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「ハンバーガーとフライドポテトは二つとも別々の味付けをさせていただいておりますので、是非両方のお味を楽しんでいただけたらと思います!」
銀の蓋を得意げに開けたオーナーさんが、謎のウインクを俺たちに向けて、それらが乗った皿を巧斗さんと俺に渡してくれた。
俺が貰った皿の上には、チーズがはみ出たハンバーガーと黒い粒が混ざった皮つきポテトが、乗っかっていて、巧斗さんが貰った皿の上には、緑のクリームみたいなやつが挟まったハンバーガーと黄色いパウダーが絡まったポテトが乗っかっている。
(巧斗さんはハンバーグとポテトとしか言っていなかったはずなのに、黒毛和牛を使ってきたり、何故かわざわざ別々の味付けにしたり…謎の気遣いをしてくるのは、この人の癖なのかな?)
ちら、と巧斗さんの反応が気になって、横目で見てみると、美しい顔をふっと綻ばせて喜んでいるのでおそらくこれが大正解だったのだろう。
「オーナー、お気遣いいただきありがとうございます。」
「いえいえ!またいつでもお声がけくださいませ!!!
巧斗さんのお礼に対し、オーナーさんがにこやかにお辞儀して去っていくと、巧斗さんが『さ、食べましょうか!』と言わんばかりに、ウインクをしながらちょんとリビングを指さしたので、彼についていく。
◇◇◇
ガラス張りのテーブルに置かれた豪華なハンバーガーとポテトに圧倒されつつ、再びソファに並んで腰をかけ、「いただきます」と言った後、食事を始める。
(…!美味しい!!こんなハンバーガー食べた事ない…!)
初めて食べる一流の食材と料理に、昼食と夕食を抜かしている状況も相まって、これまでの人生で食べた中で一番おいしく感じる。
俺が受け取ったハンバーガーはチーズ&トマト系の味付けで、ポテトはブラックペーパーみたいな黒い粒が絡まった美味しい奴だ。
頬が落ちるほどのおいしさに幸せを感じながらハンバーガーを頬張っていると、巧斗さんが
『こちらの味付けもシチリア産のレモンパウダーがさっぱり効いててとても美味しいですよ。』
と、ポテトを俺の口元に差し出してくる。
「!」
(こんな最高なフライドポテトにレモンパウダー?!これも絶対美味しい奴だ…!)
美味しそうなポテトを前にお腹が空いていた俺は迷わずぱくっと食らいついてしまったが、数拍置いてから急に恥ずかしくなった。
(!!これって所謂あーんという奴なのでは?)
確か、以前にも総一郎にしてあーんをやった事があるような気もするが、された事は無かったのでほんの少し意識してしまう。
「すずめ、このハンバーガーもアボカドが入っていて、一風変わったソースが楽しめますよ?」
「むぐ。」
そして、一回あーんを受け入れたが最後、巧斗さんは何が面白いのか次々と食べ物を俺の口に運んでくるので、美味しい食べ物に逆らえない俺はつい無意識にぱくぱくと、それらを受け入れてしまう。
(ううう、美味しい…。ってこのままじゃ俺、巧斗さんに貰ってばかりじゃないか?)
申し訳なく思う位なら食べなければいいだけの話なのだが、どうしてだか口が言う事を効かず、俄然無理な話だったので、今度は俺が食べていた残り(あと4分の1程度しかないけど…)のポテトやハンバーガーを巧斗さんにまるごと差し出した。
「あの、巧斗さん。これ…もしよかったら…」
「!いいんですか?ありがとうございます。…はい、どうぞ。」
「むぐ。」
(__??)
俺としては巧斗さんにあげたつもりだったのに、彼は何を思ったのか、それを何故か嬉々として受け取って、また俺の口まで運び始めたので、結局あーんさせるためだけに自分の食べ物を預けたみたいな形になってしまった。
(これじゃまるで、二人で食事というよりは、親鳥が子供に餌を与えているみたいだ。)
せっかくの黒毛和牛ハンバーガーだったのに、俺ばかり食べてしまって大丈夫だったのかな…と、彼の顔を伺うと、何故かとても満足気にしていたので、理由は分からないながらもほっと胸をなでおろしたのだった。
◇◇◇
「それで、すずめは明日の文化祭はどうするんですか?」
「え?文化祭?」
食事…もとい、給餌が終わって、二人揃ってのんびりテレビを見ていると、ふいに巧斗さんが明日の俺の予定について聞いてきた。
(俺の予定と言ったら、もちろん復讐への根回し一択だけど、それを正直に言うのもアレだしな…。)
総一郎やひなの裏切りや、浮気の事はバレていても、俺があいつらに復讐しようといている事はまだバレていないので、隠し通せるなら隠しておきたい。
「うーん…俺としてはミスターコンが見に行きたいかなぁ。」
「ミスターコン…?それはやはり…鷹崎さんが出てるから、ですか…?」
銀の蓋を得意げに開けたオーナーさんが、謎のウインクを俺たちに向けて、それらが乗った皿を巧斗さんと俺に渡してくれた。
俺が貰った皿の上には、チーズがはみ出たハンバーガーと黒い粒が混ざった皮つきポテトが、乗っかっていて、巧斗さんが貰った皿の上には、緑のクリームみたいなやつが挟まったハンバーガーと黄色いパウダーが絡まったポテトが乗っかっている。
(巧斗さんはハンバーグとポテトとしか言っていなかったはずなのに、黒毛和牛を使ってきたり、何故かわざわざ別々の味付けにしたり…謎の気遣いをしてくるのは、この人の癖なのかな?)
ちら、と巧斗さんの反応が気になって、横目で見てみると、美しい顔をふっと綻ばせて喜んでいるのでおそらくこれが大正解だったのだろう。
「オーナー、お気遣いいただきありがとうございます。」
「いえいえ!またいつでもお声がけくださいませ!!!
巧斗さんのお礼に対し、オーナーさんがにこやかにお辞儀して去っていくと、巧斗さんが『さ、食べましょうか!』と言わんばかりに、ウインクをしながらちょんとリビングを指さしたので、彼についていく。
◇◇◇
ガラス張りのテーブルに置かれた豪華なハンバーガーとポテトに圧倒されつつ、再びソファに並んで腰をかけ、「いただきます」と言った後、食事を始める。
(…!美味しい!!こんなハンバーガー食べた事ない…!)
初めて食べる一流の食材と料理に、昼食と夕食を抜かしている状況も相まって、これまでの人生で食べた中で一番おいしく感じる。
俺が受け取ったハンバーガーはチーズ&トマト系の味付けで、ポテトはブラックペーパーみたいな黒い粒が絡まった美味しい奴だ。
頬が落ちるほどのおいしさに幸せを感じながらハンバーガーを頬張っていると、巧斗さんが
『こちらの味付けもシチリア産のレモンパウダーがさっぱり効いててとても美味しいですよ。』
と、ポテトを俺の口元に差し出してくる。
「!」
(こんな最高なフライドポテトにレモンパウダー?!これも絶対美味しい奴だ…!)
美味しそうなポテトを前にお腹が空いていた俺は迷わずぱくっと食らいついてしまったが、数拍置いてから急に恥ずかしくなった。
(!!これって所謂あーんという奴なのでは?)
確か、以前にも総一郎にしてあーんをやった事があるような気もするが、された事は無かったのでほんの少し意識してしまう。
「すずめ、このハンバーガーもアボカドが入っていて、一風変わったソースが楽しめますよ?」
「むぐ。」
そして、一回あーんを受け入れたが最後、巧斗さんは何が面白いのか次々と食べ物を俺の口に運んでくるので、美味しい食べ物に逆らえない俺はつい無意識にぱくぱくと、それらを受け入れてしまう。
(ううう、美味しい…。ってこのままじゃ俺、巧斗さんに貰ってばかりじゃないか?)
申し訳なく思う位なら食べなければいいだけの話なのだが、どうしてだか口が言う事を効かず、俄然無理な話だったので、今度は俺が食べていた残り(あと4分の1程度しかないけど…)のポテトやハンバーガーを巧斗さんにまるごと差し出した。
「あの、巧斗さん。これ…もしよかったら…」
「!いいんですか?ありがとうございます。…はい、どうぞ。」
「むぐ。」
(__??)
俺としては巧斗さんにあげたつもりだったのに、彼は何を思ったのか、それを何故か嬉々として受け取って、また俺の口まで運び始めたので、結局あーんさせるためだけに自分の食べ物を預けたみたいな形になってしまった。
(これじゃまるで、二人で食事というよりは、親鳥が子供に餌を与えているみたいだ。)
せっかくの黒毛和牛ハンバーガーだったのに、俺ばかり食べてしまって大丈夫だったのかな…と、彼の顔を伺うと、何故かとても満足気にしていたので、理由は分からないながらもほっと胸をなでおろしたのだった。
◇◇◇
「それで、すずめは明日の文化祭はどうするんですか?」
「え?文化祭?」
食事…もとい、給餌が終わって、二人揃ってのんびりテレビを見ていると、ふいに巧斗さんが明日の俺の予定について聞いてきた。
(俺の予定と言ったら、もちろん復讐への根回し一択だけど、それを正直に言うのもアレだしな…。)
総一郎やひなの裏切りや、浮気の事はバレていても、俺があいつらに復讐しようといている事はまだバレていないので、隠し通せるなら隠しておきたい。
「うーん…俺としてはミスターコンが見に行きたいかなぁ。」
「ミスターコン…?それはやはり…鷹崎さんが出てるから、ですか…?」
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