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第1章
第106話《鷲田タクトのカミングアウト》
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「…はっ!?…俺、いつの間に寝て……?」
夢から覚めて、完全に目が覚めた俺はふかふかのソファから体をおこし、毛布をはぎ取る。
(なんか…バスローブ姿の鷲田タクトさんにひたすらウザ絡みして構ってもらう夢を見た気がする…。普段の俺なら絶対あんなにミーハーにならないのに、夢って怖いな…。まぁ現実じゃないだけマシだったけど…。)
…流石にリアルであの構ってちゃんムーヴをしてしまっていたら、恥ずかしすぎてしばらく誰にも顔を合わせられないからな。
(……って、そんなことより今何時だ!?!?)
唐突に巧斗さんの家にお世話になっていたことを思い出した俺は、慌ててリビングを見回して時計を探した。
そして、時計の針がちょうど0時を指しているのを見て、すっかり寝過ごしてしまったことに一気に青ざめる。
(うわ、またやっちゃった…。いくら巧斗さんの近くが落ち着くとはいえ、気を抜きすぎだろ…。)
晩御飯を一緒に作る約束をしていたのに、悪い事をしてしまったな。…とりあえず、巧斗さんに寝過ごしてしまったことを謝らなければ。
(巧斗さん…は、この部屋にはいないみたいだな。)
再度辺りを見渡して巧斗さんがいない事に気付いた俺は、リビングを出て広いマンションを探索していると、ふいに玄関のあたりから話し声が聞こえてきたので、その方向に向かった。
(!やっぱり玄関の扉付近にぼんやりと二人の人影が見えるな。話の邪魔をしても悪いから、一旦物陰に隠れて様子を見てみよう。)
『それじゃ、台本はちゃんと渡したわよ!それにしても本当にアンタはうちの事務所の宝よ~!ドラマの視聴率も絶好調な上に、ニューシングルの売り上げも月間一位だなんて、もう向かう所敵無しよねぇ。』
『…俺としては、これ以上仕事を増え続けるのも考え物ですけどね…。』
『あらやだ。これも幸せな悩みじゃないの~。愛しの番ちゃんに将来的にもっともぉっと良い思いをさせるためだと思って頑張んなさい♪アンタにとってはこれも副業程度の感覚なんでしょうけど、一円を馬鹿にするものは一円に泣くのよ!』
(あれ?この声って…鷲田さんと、そのマネージャーさんじゃないか?)
思わず、気になって二人の顔を見ようと更に近づくと、俺の足音に気が付いたのか、会話していた二人が揃ってこちらを振り返る。
すると、そこには案の定、何故か夢の中で見たまんまのバスローブ姿の鷲田タクトさんと、ミスターコンでお世話になった、鷲田さんのマネージャー兼メイクさんが目を見開いてこちらを見ていた。
(_____?????)
今度こそ完全に夢から覚めたと思ってたのに…、まさか、まだ覚めてない……??
とういう事は何か?俺は今夢の中で夢を見ていた夢を見ているという事か?
(うわー!…もう頭が混乱して何が何だか分からなくなってきた…!要するこれも夢ってことでいいよな?!)
夢なら、何故か鷲ノ宮巧斗さんの家に鷲田タクトさんがいる事も頷ける。
今思えば、二人とも声も紳士な振る舞いも似ているし、それが原因で余計こういう変な夢を見てしまうんだな…。
「!すずめ…!?騒がしくしてすみません。この人の話し声のせいで起こしてしまいましたよね?」
「ちょっと!それ、アタシの声がうるさいってこと?!」
「あ、いやそれは全然…。あのあなた方は…鷲田タクトさんと、そのマネージャーの…」
申し訳なさそうにする鷲田さんに返事をしようとしたその時、目を輝かせたマネージャーさんが一気にまくし立てて俺に話しかけてきた。
「早部三之介よ!っていうか、アナタ…!昼間のたこ焼きの花嫁ちゃんじゃないの~!!ちょっとタクト!アンタあれからどういう流れでこの子をここまで連れて来れたわけ!?ホント隅に置けないわね~♪」
(おお…相変わらずすごい勢いの人だな…って、たこ焼きの花嫁ちゃん…?なんだか色々と情報が混ざってるような_?)
おそらく彼の頭の中では、黒いTシャツを着てたこ焼きを売っている俺と、自分がメイクを施した花嫁姿の俺が思い浮かんでごっちゃになっているのだろう。
「あはは…いや、俺もよくわかってないんですけど、彼には色々と良くしてもらっていて、なんとお礼を言ったらいいか…。本当に出会えてよかった。」
「すずめ…!」
俺が鷲田さんの方をちら、と見ながらそう告げると、彼は綺麗な笑みを浮かべながら俺に近づいて頬に触れてくる。
(…まぁ、鷲田さんとはついさっき再会したばかりだけど、図々しくもサイン2枚とチェキをお願いする俺に神対応してくれたし、間違ってはいないよな…?)
「あら❤全く、アンタ達もイチャつくのはいいけど、アタシが帰ってからにしなさいよ!それじゃぁアタシも妻と息子達を車に待たせてる事だし、一旦ここで帰ってあげるわね。タクト、アンタしっかり番ちゃn…この子の事を大切にしてやりなさいよ!」
「はい。言われなくても一生。」
(一生??…夢の中とはいえ、一流俳優にそんなプロポーズみたいなファンサをされるなんて…後で猛烈につばめに羨ましがられそうだ。)
「うふふ、言うじゃない♪じゃあまた明後日からお仕事よろしくね?じゃあね~ん♬」
早部マネージャーがご機嫌そうに鼻歌を歌いながら、玄関の扉を閉めると鷲田さんと二人きりになってしまい、しばらく沈黙の時間が流れる。
そして、数十秒立った後、鷲田さんが嬉々とした表情で俺に向き直って話しかけてきた。
「すずめ…君が俺を受け入れてくれて本当に嬉しいです。実は、君がびっくりして逃げてしまうかもしれないと思って、中々自分が鷲田タクトだと打ち明ける勇気が出なかったんですよ。」
(?自分が鷲田タクトだと打ち明ける…?その言い方だと、まるで今までそれ以外の人物として俺に接していたみたいじゃないか?)
所詮夢だから、登場人物のセリフに深い意味は無いという事は分かっていても、つい気になってしまう。
「それがまさかこんなにも自然に受け入れてもらえるだなんて、驚き半分と嬉しさ半分で…。では、これから鷲ノ宮巧斗もとい、鷲田タクトとして、よろしくお願いしますね?」
ん?!今、この人自分の事を鷲ノ宮巧斗だって言った…?
鷲田さんが衝撃のカミングアウトをしだしたその時、頭の中で今までの二人の共通点が次々と浮かびあがって一つにまとまった。
巧斗さんが鷲田さん……
という事は、もしかして_________
さっきの夢も含めて、今の状況って現実だったりする……???
「あ、鷲ノ宮の方は本名で、鷲田が芸名です。…まぁ、どちらにせよ、すずめにはタクトと呼んで貰いますけどね?」
笑顔で追撃してくる巧斗さんの弾んだ声を背に、俺はこの後、毛布に包まってミノムシのように丸くなることが確定したのであった。
夢から覚めて、完全に目が覚めた俺はふかふかのソファから体をおこし、毛布をはぎ取る。
(なんか…バスローブ姿の鷲田タクトさんにひたすらウザ絡みして構ってもらう夢を見た気がする…。普段の俺なら絶対あんなにミーハーにならないのに、夢って怖いな…。まぁ現実じゃないだけマシだったけど…。)
…流石にリアルであの構ってちゃんムーヴをしてしまっていたら、恥ずかしすぎてしばらく誰にも顔を合わせられないからな。
(……って、そんなことより今何時だ!?!?)
唐突に巧斗さんの家にお世話になっていたことを思い出した俺は、慌ててリビングを見回して時計を探した。
そして、時計の針がちょうど0時を指しているのを見て、すっかり寝過ごしてしまったことに一気に青ざめる。
(うわ、またやっちゃった…。いくら巧斗さんの近くが落ち着くとはいえ、気を抜きすぎだろ…。)
晩御飯を一緒に作る約束をしていたのに、悪い事をしてしまったな。…とりあえず、巧斗さんに寝過ごしてしまったことを謝らなければ。
(巧斗さん…は、この部屋にはいないみたいだな。)
再度辺りを見渡して巧斗さんがいない事に気付いた俺は、リビングを出て広いマンションを探索していると、ふいに玄関のあたりから話し声が聞こえてきたので、その方向に向かった。
(!やっぱり玄関の扉付近にぼんやりと二人の人影が見えるな。話の邪魔をしても悪いから、一旦物陰に隠れて様子を見てみよう。)
『それじゃ、台本はちゃんと渡したわよ!それにしても本当にアンタはうちの事務所の宝よ~!ドラマの視聴率も絶好調な上に、ニューシングルの売り上げも月間一位だなんて、もう向かう所敵無しよねぇ。』
『…俺としては、これ以上仕事を増え続けるのも考え物ですけどね…。』
『あらやだ。これも幸せな悩みじゃないの~。愛しの番ちゃんに将来的にもっともぉっと良い思いをさせるためだと思って頑張んなさい♪アンタにとってはこれも副業程度の感覚なんでしょうけど、一円を馬鹿にするものは一円に泣くのよ!』
(あれ?この声って…鷲田さんと、そのマネージャーさんじゃないか?)
思わず、気になって二人の顔を見ようと更に近づくと、俺の足音に気が付いたのか、会話していた二人が揃ってこちらを振り返る。
すると、そこには案の定、何故か夢の中で見たまんまのバスローブ姿の鷲田タクトさんと、ミスターコンでお世話になった、鷲田さんのマネージャー兼メイクさんが目を見開いてこちらを見ていた。
(_____?????)
今度こそ完全に夢から覚めたと思ってたのに…、まさか、まだ覚めてない……??
とういう事は何か?俺は今夢の中で夢を見ていた夢を見ているという事か?
(うわー!…もう頭が混乱して何が何だか分からなくなってきた…!要するこれも夢ってことでいいよな?!)
夢なら、何故か鷲ノ宮巧斗さんの家に鷲田タクトさんがいる事も頷ける。
今思えば、二人とも声も紳士な振る舞いも似ているし、それが原因で余計こういう変な夢を見てしまうんだな…。
「!すずめ…!?騒がしくしてすみません。この人の話し声のせいで起こしてしまいましたよね?」
「ちょっと!それ、アタシの声がうるさいってこと?!」
「あ、いやそれは全然…。あのあなた方は…鷲田タクトさんと、そのマネージャーの…」
申し訳なさそうにする鷲田さんに返事をしようとしたその時、目を輝かせたマネージャーさんが一気にまくし立てて俺に話しかけてきた。
「早部三之介よ!っていうか、アナタ…!昼間のたこ焼きの花嫁ちゃんじゃないの~!!ちょっとタクト!アンタあれからどういう流れでこの子をここまで連れて来れたわけ!?ホント隅に置けないわね~♪」
(おお…相変わらずすごい勢いの人だな…って、たこ焼きの花嫁ちゃん…?なんだか色々と情報が混ざってるような_?)
おそらく彼の頭の中では、黒いTシャツを着てたこ焼きを売っている俺と、自分がメイクを施した花嫁姿の俺が思い浮かんでごっちゃになっているのだろう。
「あはは…いや、俺もよくわかってないんですけど、彼には色々と良くしてもらっていて、なんとお礼を言ったらいいか…。本当に出会えてよかった。」
「すずめ…!」
俺が鷲田さんの方をちら、と見ながらそう告げると、彼は綺麗な笑みを浮かべながら俺に近づいて頬に触れてくる。
(…まぁ、鷲田さんとはついさっき再会したばかりだけど、図々しくもサイン2枚とチェキをお願いする俺に神対応してくれたし、間違ってはいないよな…?)
「あら❤全く、アンタ達もイチャつくのはいいけど、アタシが帰ってからにしなさいよ!それじゃぁアタシも妻と息子達を車に待たせてる事だし、一旦ここで帰ってあげるわね。タクト、アンタしっかり番ちゃn…この子の事を大切にしてやりなさいよ!」
「はい。言われなくても一生。」
(一生??…夢の中とはいえ、一流俳優にそんなプロポーズみたいなファンサをされるなんて…後で猛烈につばめに羨ましがられそうだ。)
「うふふ、言うじゃない♪じゃあまた明後日からお仕事よろしくね?じゃあね~ん♬」
早部マネージャーがご機嫌そうに鼻歌を歌いながら、玄関の扉を閉めると鷲田さんと二人きりになってしまい、しばらく沈黙の時間が流れる。
そして、数十秒立った後、鷲田さんが嬉々とした表情で俺に向き直って話しかけてきた。
「すずめ…君が俺を受け入れてくれて本当に嬉しいです。実は、君がびっくりして逃げてしまうかもしれないと思って、中々自分が鷲田タクトだと打ち明ける勇気が出なかったんですよ。」
(?自分が鷲田タクトだと打ち明ける…?その言い方だと、まるで今までそれ以外の人物として俺に接していたみたいじゃないか?)
所詮夢だから、登場人物のセリフに深い意味は無いという事は分かっていても、つい気になってしまう。
「それがまさかこんなにも自然に受け入れてもらえるだなんて、驚き半分と嬉しさ半分で…。では、これから鷲ノ宮巧斗もとい、鷲田タクトとして、よろしくお願いしますね?」
ん?!今、この人自分の事を鷲ノ宮巧斗だって言った…?
鷲田さんが衝撃のカミングアウトをしだしたその時、頭の中で今までの二人の共通点が次々と浮かびあがって一つにまとまった。
巧斗さんが鷲田さん……
という事は、もしかして_________
さっきの夢も含めて、今の状況って現実だったりする……???
「あ、鷲ノ宮の方は本名で、鷲田が芸名です。…まぁ、どちらにせよ、すずめにはタクトと呼んで貰いますけどね?」
笑顔で追撃してくる巧斗さんの弾んだ声を背に、俺はこの後、毛布に包まってミノムシのように丸くなることが確定したのであった。
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