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第1章
第90話《ふと感じた視線に困惑するすずめ》
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じっ…………
相田君達と話していると突然、どこかからふと、奇妙な視線を感じて辺りを見回した。
(?今誰かに見られていたような…。なんだろう…。気のせいか…?)
この周辺はコンテストが終わったばかりで人混みが割かし多く、しばらくキョロキョロと四方に注意を向けてみたが、視線を送った人は特定できなかった。
なんとなく気味が悪いと感じつつも、再び明日のミスターコンについての話に戻ろうとしたその時、いきなりザッザッザッザッと急激にこちらに近づいてくる足音が聞こえる。
「……っ!」
驚いてバッと後ろを振り返ると、お手洗いに行っていた兄が駆け足でこちらに戻ってきたところだった。
「いやぁ~悪い悪い!コンテストの名残か、思ったよりトイレに人がいて時間喰っちまった。待たせたか?」
「ああ、お兄ちゃんか……。いや、全然待ってないよ。」
一瞬総一郎かと思ってびびったが、兄で良かった。
「そーそー!うちら、明日のミスターコンの話に熱中してたから。…って、あ!そうだ!お兄ちゃんってダンスがプロ並みに上手い知り合いとかいない?」
「は!?ダンス!?なんでまたそんな話に…?」
妹のいきなりの質問にちんぷんかんぷんの様子の兄に、明日の最終審査の相田君の相手役が急遽来られなくなったことを説明すると、『そいつは運が悪かったなぁ…』と、顎に手を当てながら相田君に同情した。
「うし!そういう事なら兄ちゃんもなんとかサークル仲間とかをあたってみて、よさげな人がいねえか探してみるわ。」
「ありがとうございますっす!いやぁ、義兄さん方には何から何までお世話になって申し訳ないっす…!」
「ははは!いいって事よ!将来の義弟候補の頼みだからな。」
兄と相田君は、一緒に出店を回った事で更に仲が良くなったようで、急な協力を快く引き受けてくれた兄に、相田君も心底嬉しそうに感謝していた。
その様子を見て、俺も妹も胸が温かくなる。
「へへっ、お兄ちゃんとだちょ君が仲良くなってくれてよかった♪…じゃぁ、そろそろ暗くなってきたし、うちらも帰ろうか!すずめちゃんはどうするの?彼ピ…鷹崎さんのマンションに帰る?」
俺と総一郎とひなの関係について何かを察しているらしい妹が、気づかわしげにこちらの様子を伺ってきたので、一瞬どう答えようか迷った。
「うーん、どうしよう…。実はさっき彼とちょっとだけ言い合いになっちゃって、気まずいから友達の家に泊まろうと思ってるんだよね。仲直り出来たら総一郎君の所に泊まるかもなんだけど…。」
とりあえず、ここで変に嘘をつくのも、バレた時のリスクが高いので大部分の話をぼかして素直に答えた。
「ん~、鷹崎君なぁ…。彼にはちょっと、不可思議というか底知れない何かを感じるんだよなぁ…」
すると、ここで兄が腕を組みながら、総一郎に対して難色を示す。
「え、お兄ちゃん、総一郎君と何かあったの…?」
「いや、実はな……」
困惑したような微妙な表情を浮かべた兄が、少しだけ言い淀んだ後、先程で店を回っている時に起きた総一郎との出来事の一部始終を細かに話し始めた。
「~ってなことがあったんだよ…。それからも行く先行く先、何故かずっと総一郎君がいて、その度にこっちの事を射殺すような勢いで睨んでくるんだぜ?俺もう怖くt…じゃなくて驚いちまってよ~。」
「そ、それは大変だったね…。」
兄の行く先々に総一郎がいるというのは想定済みだったが、睨むというのはどういう心境なんだろう。
兄と総一郎は今日が初対面の筈なので、確執なんかもそこまで無かったはずだが…。
「…あれは多分、義兄さんではなくて、おそらくその背後にいた俺を睨んでそうっすけどねぇ。」
「え、相田君を?」
総一郎の行動が読めず、疑問に思っていると、相田君が苦笑いしながら言及する。
「いえね、あの人、午前中のリハーサルまでは普通だったんすけど、第一審査前…義兄さんが俺の花嫁役をやるって決まってから急に敵意を向けてきたんす。だから義兄さんが俺に取られると勘違いしているんじゃないかと踏んでるんすけど、どうすかね?」
「あ…!そっか…。ごめんね、不快な思いさせちゃって…。」
「いやいや!むしろあれくらい闘志を燃やしてくれないと、こちらとしても火がつかないっすから!!」
(そういえば、そんな事もあったな…。)
俺は、第一審査前の総一郎が、相田君の事をβごときがどうのこうの言って腐していたのを思い出した。
前向きな相田君の言葉には救われるが、このまま相田君と俺が親密な仲だと誤解されたままじゃ、この先迷惑をかけそうだよな…。
総一郎としては、例え家政婦だとしても自分のものを誰かに横取りされるのは我慢ならないのかもしれないし、そこだけは早いところ誤解を解いておかないと。
相田君達と話していると突然、どこかからふと、奇妙な視線を感じて辺りを見回した。
(?今誰かに見られていたような…。なんだろう…。気のせいか…?)
この周辺はコンテストが終わったばかりで人混みが割かし多く、しばらくキョロキョロと四方に注意を向けてみたが、視線を送った人は特定できなかった。
なんとなく気味が悪いと感じつつも、再び明日のミスターコンについての話に戻ろうとしたその時、いきなりザッザッザッザッと急激にこちらに近づいてくる足音が聞こえる。
「……っ!」
驚いてバッと後ろを振り返ると、お手洗いに行っていた兄が駆け足でこちらに戻ってきたところだった。
「いやぁ~悪い悪い!コンテストの名残か、思ったよりトイレに人がいて時間喰っちまった。待たせたか?」
「ああ、お兄ちゃんか……。いや、全然待ってないよ。」
一瞬総一郎かと思ってびびったが、兄で良かった。
「そーそー!うちら、明日のミスターコンの話に熱中してたから。…って、あ!そうだ!お兄ちゃんってダンスがプロ並みに上手い知り合いとかいない?」
「は!?ダンス!?なんでまたそんな話に…?」
妹のいきなりの質問にちんぷんかんぷんの様子の兄に、明日の最終審査の相田君の相手役が急遽来られなくなったことを説明すると、『そいつは運が悪かったなぁ…』と、顎に手を当てながら相田君に同情した。
「うし!そういう事なら兄ちゃんもなんとかサークル仲間とかをあたってみて、よさげな人がいねえか探してみるわ。」
「ありがとうございますっす!いやぁ、義兄さん方には何から何までお世話になって申し訳ないっす…!」
「ははは!いいって事よ!将来の義弟候補の頼みだからな。」
兄と相田君は、一緒に出店を回った事で更に仲が良くなったようで、急な協力を快く引き受けてくれた兄に、相田君も心底嬉しそうに感謝していた。
その様子を見て、俺も妹も胸が温かくなる。
「へへっ、お兄ちゃんとだちょ君が仲良くなってくれてよかった♪…じゃぁ、そろそろ暗くなってきたし、うちらも帰ろうか!すずめちゃんはどうするの?彼ピ…鷹崎さんのマンションに帰る?」
俺と総一郎とひなの関係について何かを察しているらしい妹が、気づかわしげにこちらの様子を伺ってきたので、一瞬どう答えようか迷った。
「うーん、どうしよう…。実はさっき彼とちょっとだけ言い合いになっちゃって、気まずいから友達の家に泊まろうと思ってるんだよね。仲直り出来たら総一郎君の所に泊まるかもなんだけど…。」
とりあえず、ここで変に嘘をつくのも、バレた時のリスクが高いので大部分の話をぼかして素直に答えた。
「ん~、鷹崎君なぁ…。彼にはちょっと、不可思議というか底知れない何かを感じるんだよなぁ…」
すると、ここで兄が腕を組みながら、総一郎に対して難色を示す。
「え、お兄ちゃん、総一郎君と何かあったの…?」
「いや、実はな……」
困惑したような微妙な表情を浮かべた兄が、少しだけ言い淀んだ後、先程で店を回っている時に起きた総一郎との出来事の一部始終を細かに話し始めた。
「~ってなことがあったんだよ…。それからも行く先行く先、何故かずっと総一郎君がいて、その度にこっちの事を射殺すような勢いで睨んでくるんだぜ?俺もう怖くt…じゃなくて驚いちまってよ~。」
「そ、それは大変だったね…。」
兄の行く先々に総一郎がいるというのは想定済みだったが、睨むというのはどういう心境なんだろう。
兄と総一郎は今日が初対面の筈なので、確執なんかもそこまで無かったはずだが…。
「…あれは多分、義兄さんではなくて、おそらくその背後にいた俺を睨んでそうっすけどねぇ。」
「え、相田君を?」
総一郎の行動が読めず、疑問に思っていると、相田君が苦笑いしながら言及する。
「いえね、あの人、午前中のリハーサルまでは普通だったんすけど、第一審査前…義兄さんが俺の花嫁役をやるって決まってから急に敵意を向けてきたんす。だから義兄さんが俺に取られると勘違いしているんじゃないかと踏んでるんすけど、どうすかね?」
「あ…!そっか…。ごめんね、不快な思いさせちゃって…。」
「いやいや!むしろあれくらい闘志を燃やしてくれないと、こちらとしても火がつかないっすから!!」
(そういえば、そんな事もあったな…。)
俺は、第一審査前の総一郎が、相田君の事をβごときがどうのこうの言って腐していたのを思い出した。
前向きな相田君の言葉には救われるが、このまま相田君と俺が親密な仲だと誤解されたままじゃ、この先迷惑をかけそうだよな…。
総一郎としては、例え家政婦だとしても自分のものを誰かに横取りされるのは我慢ならないのかもしれないし、そこだけは早いところ誤解を解いておかないと。
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