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第1章
第84話《ひなが語る総一郎との関係》
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(うわ、また会ってしまった…。)
さっき「後で話がある」と険悪な眼差しで一方的に告げられたばかりだったので、面倒に巻き込まれないためにも無視を決め込むつもりだったのだが、なんとも運が悪い。
「あれあれ?すずめちゃんじゃん。江永先輩との第二次審査お疲れ様~。」
「あ、うん。ひなちゃんこそお疲れ様。」
ひなは、薄笑いを浮かながら俺を見やると、馬鹿にしたようにフンっと鼻で笑う。
(しかも相変わらず腹立つ態度をかましてくるし…。というか今、さらっと江永先輩って言ったけど、年上だったんだ…。)
まぁかわいいながらも謎の貫禄があるから、年下だとは思ってなかったけども。
「……それで、さっき言ってた話って何?俺、今はちょっと忙しいから、手短に話してくれる?」
「あれー?すずめちゃん、今日はなんだかこわいよぉ?wすっごく余裕が無くて焦ってる顔してる…。なんでだろ~??」
俺がひなに返事を急かすと、ひなはわざとらしくおどけてみせる。
ひなからしてみれば、俺が総一郎をひなに取られるのを危惧して焦っているように見えるんだろうが、俺はただ一刻も早く投票用紙をスタッフに提出したいだけなのだ。
「えへ。まぁいいや。なんとなく原因分かっちゃうしwwてか、ちょっと聞きたい事があってね~?総君の事なんだけどさ、もしかしてすずめちゃんと喧嘩…とかしちゃったぁ?」
「……どうして?」
「いやね?さっき総君が急に僕の家に泊まりたいっていうから、心配になっちゃって~。何かすずめちゃんと嫌な事があったのかなぁって…。」
ひなが心配そうな顔を作っては、ちらちらと上目遣いでこちらを見ているが、口元はどことなくにやけている。
(あ、もしかして、俺に話があるって言うのは、この件に関してマウントを取りたかっただけなのかな?)
ついさっき、その総一郎に約束をすっぽかされたばかりだというのによくマウントする気になるよなぁ。
いや待て、逆か?本命が来てくれなくて取り巻きの一人に告白するはめになって屈辱を味わった分、俺にマウントを取って精神を落ち着かせようとしているのかもしれない。
「ふふ、それについては心配いらないよ?総一郎君と俺はすっごくラブラブだから。現にさっきひなちゃんが総一郎君に告白しようとした時にステージにすら上がってこなかったでしょ?きっと俺だけの事を大切に思ってくれている証拠だよね。」
どうせひなとはもう完全に敵対してしまった訳だし、一方的に言われるがままなのも癪なので、ひなに倣ってマウントっぽい皮肉をさりげなく言い返してみると、ひなはさも《全然、効いてませんよ》といった風の余裕の美しい笑顔を浮かべた。
……ように見えるが、よく見ると口元がピクピクとひきつっているな…。
人は目でものをいうってよく言うけど、ひなは黙っていても口でものをいうタイプらしい。
「あははっ…、まさかそれ本気で言ってるわけじゃないよねぇ?言っとくけど、総君の本命は僕だけだから。すずめちゃんはただの性処理をしてくれる家政婦さんであって、僕はもう総君のご両親も紹介してもらって、なんなら今年番になって来年籍を入れるって所まで話が進んでるの。ほら、僕の家ってお金持ちだからさ、総君のご両親にもすぐに気に入ってもらえたんだよね。一方貧乏くさいすずめちゃんはまだ総君の親の顔すら知らないでしょ?あ、でもでも、大企業の社長さんだからネットやテレビとかで見た事位はあるかもね?」
「お、おお…。」
俺の言葉が相当逆鱗に触れたのか、ノンブレスで一気にマウントや嫌味をまくし立ててくるひなに思わずたじろぐ。
色々ツッコミどころはあるが、長すぎるので要約すると、
『総君の本命は僕で、お前は家政婦なんだから調子に乗るな。』
って事で合っていると思う。
しかしまぁ、ここまでの総一郎と濃密な関係を一発で示せる情報を、マウント大好きなひなが今の今まで言ってこなかっただなんて不思議な事もあるもんだ。
まぁ大方、総一郎に口止めされていたのだろうが、俺に初めてマウントを取られたのがあまりに悔しくてぶちまけてしまったんだろうな。
一瞬でも驚いた様子を見せた俺に、ひなは一旦満足げな表情を浮かべると、
「すずめちゃんは、正妻である僕と総君がコンテストでダブル優勝するのを遠くから見ててね♪ 総君が獲得した優勝賞品のラスベガス行きのペアチケットでハネムーンに行ってくるから♡」
などと捨て台詞を残し、控室に戻って行った。
……正直、先程の情報に関しては、俺も少しは思う所はあるものの、とりあえずは気持ちを切り替えて、客席に戻ることにした。
コンテストの結果発表の時間が刻一刻と迫っていたからだ。
さっき「後で話がある」と険悪な眼差しで一方的に告げられたばかりだったので、面倒に巻き込まれないためにも無視を決め込むつもりだったのだが、なんとも運が悪い。
「あれあれ?すずめちゃんじゃん。江永先輩との第二次審査お疲れ様~。」
「あ、うん。ひなちゃんこそお疲れ様。」
ひなは、薄笑いを浮かながら俺を見やると、馬鹿にしたようにフンっと鼻で笑う。
(しかも相変わらず腹立つ態度をかましてくるし…。というか今、さらっと江永先輩って言ったけど、年上だったんだ…。)
まぁかわいいながらも謎の貫禄があるから、年下だとは思ってなかったけども。
「……それで、さっき言ってた話って何?俺、今はちょっと忙しいから、手短に話してくれる?」
「あれー?すずめちゃん、今日はなんだかこわいよぉ?wすっごく余裕が無くて焦ってる顔してる…。なんでだろ~??」
俺がひなに返事を急かすと、ひなはわざとらしくおどけてみせる。
ひなからしてみれば、俺が総一郎をひなに取られるのを危惧して焦っているように見えるんだろうが、俺はただ一刻も早く投票用紙をスタッフに提出したいだけなのだ。
「えへ。まぁいいや。なんとなく原因分かっちゃうしwwてか、ちょっと聞きたい事があってね~?総君の事なんだけどさ、もしかしてすずめちゃんと喧嘩…とかしちゃったぁ?」
「……どうして?」
「いやね?さっき総君が急に僕の家に泊まりたいっていうから、心配になっちゃって~。何かすずめちゃんと嫌な事があったのかなぁって…。」
ひなが心配そうな顔を作っては、ちらちらと上目遣いでこちらを見ているが、口元はどことなくにやけている。
(あ、もしかして、俺に話があるって言うのは、この件に関してマウントを取りたかっただけなのかな?)
ついさっき、その総一郎に約束をすっぽかされたばかりだというのによくマウントする気になるよなぁ。
いや待て、逆か?本命が来てくれなくて取り巻きの一人に告白するはめになって屈辱を味わった分、俺にマウントを取って精神を落ち着かせようとしているのかもしれない。
「ふふ、それについては心配いらないよ?総一郎君と俺はすっごくラブラブだから。現にさっきひなちゃんが総一郎君に告白しようとした時にステージにすら上がってこなかったでしょ?きっと俺だけの事を大切に思ってくれている証拠だよね。」
どうせひなとはもう完全に敵対してしまった訳だし、一方的に言われるがままなのも癪なので、ひなに倣ってマウントっぽい皮肉をさりげなく言い返してみると、ひなはさも《全然、効いてませんよ》といった風の余裕の美しい笑顔を浮かべた。
……ように見えるが、よく見ると口元がピクピクとひきつっているな…。
人は目でものをいうってよく言うけど、ひなは黙っていても口でものをいうタイプらしい。
「あははっ…、まさかそれ本気で言ってるわけじゃないよねぇ?言っとくけど、総君の本命は僕だけだから。すずめちゃんはただの性処理をしてくれる家政婦さんであって、僕はもう総君のご両親も紹介してもらって、なんなら今年番になって来年籍を入れるって所まで話が進んでるの。ほら、僕の家ってお金持ちだからさ、総君のご両親にもすぐに気に入ってもらえたんだよね。一方貧乏くさいすずめちゃんはまだ総君の親の顔すら知らないでしょ?あ、でもでも、大企業の社長さんだからネットやテレビとかで見た事位はあるかもね?」
「お、おお…。」
俺の言葉が相当逆鱗に触れたのか、ノンブレスで一気にマウントや嫌味をまくし立ててくるひなに思わずたじろぐ。
色々ツッコミどころはあるが、長すぎるので要約すると、
『総君の本命は僕で、お前は家政婦なんだから調子に乗るな。』
って事で合っていると思う。
しかしまぁ、ここまでの総一郎と濃密な関係を一発で示せる情報を、マウント大好きなひなが今の今まで言ってこなかっただなんて不思議な事もあるもんだ。
まぁ大方、総一郎に口止めされていたのだろうが、俺に初めてマウントを取られたのがあまりに悔しくてぶちまけてしまったんだろうな。
一瞬でも驚いた様子を見せた俺に、ひなは一旦満足げな表情を浮かべると、
「すずめちゃんは、正妻である僕と総君がコンテストでダブル優勝するのを遠くから見ててね♪ 総君が獲得した優勝賞品のラスベガス行きのペアチケットでハネムーンに行ってくるから♡」
などと捨て台詞を残し、控室に戻って行った。
……正直、先程の情報に関しては、俺も少しは思う所はあるものの、とりあえずは気持ちを切り替えて、客席に戻ることにした。
コンテストの結果発表の時間が刻一刻と迫っていたからだ。
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