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第1章
第82話《第二次審査終了》
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シマちゃんのしたたかな策略に完全に乗せられ、会場中のシマちゃんを優勝させるための声援が熱を帯びていく。
「?よく分からないけど、じゃぁ俺もシマちゃんが優勝出来るように応援しないとだね!」
「ふふっ、そうだよー?…あっでも、優勝出来なかったとしても、僕としては…それはそれで……。……もしかしたら、このままの関係が良いって事もあるかもだし…。」
シマちゃんは俺の優勝を願う言葉に、悪戯っぽく笑いながら肯定した後、思い出したかのように優勝出来なくても構わないと大嘘を言い放つ。
最後辺りは、ちゃんとマイクに音は乗っていたものの、ボソっとわざと声を絞っていたので、この辺は聞こえなかったフリをしろという事だろう。
「ん?今何か言った?」
「ううん!何でもない!」
引き続き鈍感系主人公の王道のセリフを放つ俺に、シマちゃんが例の如くウインクをしてくる。
(ふう、シマちゃんの意図を汲むのも、ここまでくると、もう慣れたものだな。)
「あ、シマちゃんったらまた隠し事してる!」
「もう~ごめんってー!後で《にゃんにゃんお絵描きおむらいちゅ》作ったげるから許して?」
俺は、未だとぼけたフリを続けるシマちゃんに、頬を膨らませながら拗ねて見せると、
シマちゃんも、俺の膨れっ面を真似しながら冗談っぽく謝ってくる。
「…ふふふふっ」
「あはははは!」
そして、お互いに顔を向き合わせると、どちらともなく吹き出してしまう。…フリをする俺達に緊張していた会場が一気に和む気配を感じる。
『か、かわいいい!』
『天使が二人いる……!!』
『ここが《楽園》、か…。』
『あの子たちの背後に白いふわふわの百合の花が沢山咲いているのが見える…!!!』
そしてキリがいいので、ここで俺とシマちゃんは二人仲良く手をつないでステージを降りていった。
俺達の去り際に盛大な歓声と拍手が飛び交い、凄まじい応援の声が相次ぐ。
『シマちゃん、すずめちゃん、俺は君達の味方だからね~~!!!』
『悲恋になんかさせないさ!!俺達が二人を守るんだぁ!!!!!!』
『全身全霊をかけて応援するぞー!』
『絶対優勝だぁぁぁぁ!!!!』
そうして、舞台袖に降り立った俺達は確かな手ごたえに笑顔でハイタッチをして、第二次審査が無事、幕を下ろしたのだった。
(なんだか、観客の良心に付け込んだようで申し訳ない気もするが、それはそれだ。)
◇◇◇
「え~以上を持ちまして、江永シマ様の審査が終了となります…!いやぁ、まさかこの審査において番や彼氏ではなく御友人を呼ばれるとは、中々意表を突かれましたね。この後は恒例の採点タイムとなりますので、出場者の皆さんは、パートナーの方と一緒にステージにご登壇いただければと思います…!」
審査終了後、司会のアナウンスによって、オメコンの出場者達がこぞってステージに上がっていく。
出場者たちは皆、プロポーズや告白が成功したことで、どこか浮かれた様子で甘く幸せそうな雰囲気が漂っている。
しかし、その例に漏れるのが約1名__。
そう、つい先ほど、普段から見下している恋愛対象圏外の自分の取り巻きβとガチ告白を成功させてしまった俺の元幼馴染こと愛野ひなである。
ひなは、俺たちが審査を受けている間にトイレから戻ってきていたらしく、パートナーのテニサーの男が手を握ろうとしたのをパンっと叩いて、一人でズカズカとステージに上がってきた。
そして俺たちの前を通り過ぎる時、俺にしか聞こえないくらいの声で、「ちょっと後で話があるから。」とギロリと睨みながら言い放ち、自分のポジションにつく。
俺に話す事は一切無いから今のは聞かなかった事にするとして、ひなを見ていると結局最後までコンテストに来なかった総一郎の事がふと頭に浮かんできた。
(あの様子じゃ、ひなはまだ総一郎と連絡が取れていないらしいな。)
まさか未だに妹の無理難題のお土産を探している兄と鬼ごっこを繰り広げているまっ最中なのだろうか?
あわよくば、このまま鬼ごっこで体力を消耗し続けて、とっとと家に帰ってほしいものだ。
◇◇◇
「さぁさぁ観客の皆様!オメガコンテスト・第二次審査はいかがだったでしょうか?少々お時間の方が押してしまいましたが、その分素晴らしい名場面が詰まっていましたね!それでは例の如く、出場者達のアップをカメラスタッフがモニターに映していくので、どうか《公正》かつ《正当》に採点していただけたらと思います!」
出場者が全員登壇した後、司会が採点タイムの説明に入り、観客に対して採点を公正にするようにやたら丁寧にくぎを刺していた。
多分、《優勝したら続きが見られる》という形を取った俺達の事を皮肉を込めて言っているのだろうが、シマちゃんはさも自分達には一切関係がありませんと言った風に、キラキラとした笑顔でその場に悠然と佇んでいる。
(シマちゃんのこの罪悪感の無さはもはや才能だな…。俺もこれから復讐をしていく身としては、是非とも見習わなければ。)
「?よく分からないけど、じゃぁ俺もシマちゃんが優勝出来るように応援しないとだね!」
「ふふっ、そうだよー?…あっでも、優勝出来なかったとしても、僕としては…それはそれで……。……もしかしたら、このままの関係が良いって事もあるかもだし…。」
シマちゃんは俺の優勝を願う言葉に、悪戯っぽく笑いながら肯定した後、思い出したかのように優勝出来なくても構わないと大嘘を言い放つ。
最後辺りは、ちゃんとマイクに音は乗っていたものの、ボソっとわざと声を絞っていたので、この辺は聞こえなかったフリをしろという事だろう。
「ん?今何か言った?」
「ううん!何でもない!」
引き続き鈍感系主人公の王道のセリフを放つ俺に、シマちゃんが例の如くウインクをしてくる。
(ふう、シマちゃんの意図を汲むのも、ここまでくると、もう慣れたものだな。)
「あ、シマちゃんったらまた隠し事してる!」
「もう~ごめんってー!後で《にゃんにゃんお絵描きおむらいちゅ》作ったげるから許して?」
俺は、未だとぼけたフリを続けるシマちゃんに、頬を膨らませながら拗ねて見せると、
シマちゃんも、俺の膨れっ面を真似しながら冗談っぽく謝ってくる。
「…ふふふふっ」
「あはははは!」
そして、お互いに顔を向き合わせると、どちらともなく吹き出してしまう。…フリをする俺達に緊張していた会場が一気に和む気配を感じる。
『か、かわいいい!』
『天使が二人いる……!!』
『ここが《楽園》、か…。』
『あの子たちの背後に白いふわふわの百合の花が沢山咲いているのが見える…!!!』
そしてキリがいいので、ここで俺とシマちゃんは二人仲良く手をつないでステージを降りていった。
俺達の去り際に盛大な歓声と拍手が飛び交い、凄まじい応援の声が相次ぐ。
『シマちゃん、すずめちゃん、俺は君達の味方だからね~~!!!』
『悲恋になんかさせないさ!!俺達が二人を守るんだぁ!!!!!!』
『全身全霊をかけて応援するぞー!』
『絶対優勝だぁぁぁぁ!!!!』
そうして、舞台袖に降り立った俺達は確かな手ごたえに笑顔でハイタッチをして、第二次審査が無事、幕を下ろしたのだった。
(なんだか、観客の良心に付け込んだようで申し訳ない気もするが、それはそれだ。)
◇◇◇
「え~以上を持ちまして、江永シマ様の審査が終了となります…!いやぁ、まさかこの審査において番や彼氏ではなく御友人を呼ばれるとは、中々意表を突かれましたね。この後は恒例の採点タイムとなりますので、出場者の皆さんは、パートナーの方と一緒にステージにご登壇いただければと思います…!」
審査終了後、司会のアナウンスによって、オメコンの出場者達がこぞってステージに上がっていく。
出場者たちは皆、プロポーズや告白が成功したことで、どこか浮かれた様子で甘く幸せそうな雰囲気が漂っている。
しかし、その例に漏れるのが約1名__。
そう、つい先ほど、普段から見下している恋愛対象圏外の自分の取り巻きβとガチ告白を成功させてしまった俺の元幼馴染こと愛野ひなである。
ひなは、俺たちが審査を受けている間にトイレから戻ってきていたらしく、パートナーのテニサーの男が手を握ろうとしたのをパンっと叩いて、一人でズカズカとステージに上がってきた。
そして俺たちの前を通り過ぎる時、俺にしか聞こえないくらいの声で、「ちょっと後で話があるから。」とギロリと睨みながら言い放ち、自分のポジションにつく。
俺に話す事は一切無いから今のは聞かなかった事にするとして、ひなを見ていると結局最後までコンテストに来なかった総一郎の事がふと頭に浮かんできた。
(あの様子じゃ、ひなはまだ総一郎と連絡が取れていないらしいな。)
まさか未だに妹の無理難題のお土産を探している兄と鬼ごっこを繰り広げているまっ最中なのだろうか?
あわよくば、このまま鬼ごっこで体力を消耗し続けて、とっとと家に帰ってほしいものだ。
◇◇◇
「さぁさぁ観客の皆様!オメガコンテスト・第二次審査はいかがだったでしょうか?少々お時間の方が押してしまいましたが、その分素晴らしい名場面が詰まっていましたね!それでは例の如く、出場者達のアップをカメラスタッフがモニターに映していくので、どうか《公正》かつ《正当》に採点していただけたらと思います!」
出場者が全員登壇した後、司会が採点タイムの説明に入り、観客に対して採点を公正にするようにやたら丁寧にくぎを刺していた。
多分、《優勝したら続きが見られる》という形を取った俺達の事を皮肉を込めて言っているのだろうが、シマちゃんはさも自分達には一切関係がありませんと言った風に、キラキラとした笑顔でその場に悠然と佇んでいる。
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