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第1章
第75話《ひなのプロポーズ開始…?》
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「という訳で、皆様、大変お待たせいたしました…!これからエントリーナンバー7番、愛野ひな様によるプロポーズの開始です!GO!」
司会が審査開始の掛け声をあげると、テニサー男がやっとひなから離れ、ひなの方もようやく観念したのか、審査に挑むためにテニサー男の方へと渋々向き直った。
「ひなっ!今日は何か俺に言いたい事があるんだよな?」
「…うん。」
「何でも言ってくれよ…!話聞くからな!」
「うん。」
「きょ、今日は良い天気だな~…!」
「うん。」
「絶好のプロポーズ日和だと思わないか?」
「うん。」
しかし、審査がはじまっても、どこか心ここにあらずで、『うん』しか言わないひなに、また会場がざわつき、司会がオロオロとしながら、祈るようにして見守っている。
(流石にひなもすぐには切り替えられないか。乗り気すぎる相手の男とそっけないひなの対比が凄まじいな。)
『おいおい、なんだあれ…?そういうコントか?www』
『まさしく本命以外の男に対するカースト上位女子って感じで草』
『冴えない暑苦しいβ男と高値の花のツンツンΩのラブコメって感じでちょっとロマンがあるよなww一体どんな告白になるんだ…?』
『やべぇ、俺ここからひなちゃんとあいつがキスする所なんて想像つかねえよwww』
『てか、相手鷹崎君じゃないけどいいのかな…。コンテスト的に。』
『普通に駄目だと思うけど、あの司会だしな…。』
『そんなんだったらもう何でもアリじゃん。チーターかよって感じ。』
観客達の中には、この状況はこの状況でそれなりに楽しんでいる層もいれば、不正行為に憤っている人もいて賛否両論と言った感じだ。
テニサー男は、引き続き一生懸命ひなを振り向かせようとほぼ一方的に話かける。
「なぁ、ひな。俺さ、前に総一郎とお前の事を応援してるって言ったよな?」
「うん。」
「でも実は俺もお前の事が…。いやこれ以上は言わない。これは審査だからな。」
「うん。」
「………ひな、そろそろ俺に言いたい事があるんじゃないか??ん?」
「うん。」
「分かった。じゃぁ今から俺が言う事をそのまま一音ずつ復唱してくれ。」
「うん。」
「じゃあ行くぞ!『好(す)』!」
「うん。」
なんとかプロポーズの流れに持っていこうとするテニサー男の努力もむなしく、ひなは未だ総一郎の事を諦めていなかったようで、あろうことかまたポケットからスマホを取り出して画面と睨めっこし始めた。
(まさか、このまま総一郎が来るまで粘り続けるつもりなのか…?)
『なぁ、このまま待ってたら日が暮れるぜ。』
『最初はツンデレムーヴもおもろかったけど、流石にだれるって。』
『あの子、うんしか言えないの?』
『つかスマホいじってんじゃん。未だに王子様を待つつもりかねぇ。』
『やっぱβじゃあかんのか…。』
『つーか流石に飽きたわ。あと5分経っても進展しなかったら会場出よ。まだ回りたい所あるんだよねぇ。』
『あ、さんせーい。』
ひなのあまりの遅延行為にしびれを切らし、とうとう荷物をまとめだす観客も出始める始末に焦燥感が生まれる。
(!これはちょっとヤバいか…?)
おそらくひなは、このまま審査の時間を引き延ばしに引き延ばして、総一郎が戻ってくるまでずっと待ち続ける作戦に出たのかもしれない。
ひなの行為に、観客の好感度が順調に下がり続けているのはよしとしても、このままだとシマちゃんの出番が来る前に観客達が帰ってしまう。
それに、先程からずっと遅延続きで時間を押しているせいで、あと数分でオメコンが終わる時間帯になるので、今頃総一郎を攪乱していると思われる兄達もGPSもろとも帰ってきそうだ。
(くっ…せめて兄達の方だけでもなんとか出来ないかな…。)
どうしたものかと唸りながらふと、隣にいる妹に目を向けると、つばめもひなの遅延行為に飽きたらしくスマホをいじっていた。
なんとはなしに画面に目が行くと、妹は丁度兄とメッセージのやり取りをしていて、思わずそのまま凝視してしまう。
兄のメッセージをよく見てみると、
『つばめよ…。お前たちの頼んでいたお土産の映える飴なんだが、全然見つかる気配がしねぇよ~。もうコンテストも終わるころだろうし、いっそリンゴ飴でよくね?うまいぞぉ。知らんけど。』
と、既に購入したらしいりんご飴の写真つきのメッセージが送ってあった。
(まずい…!!!)
この様子じゃもしかしなくても、兄達が今にもここに帰ってきてしまう…。
なんとか『まだ帰ってこないで欲しい!』と言い返したい所だが、それを妹に返信してくれと頼むのも憚られて、ごくりと生唾を飲み込みながら、妹の返信を見守る。
すると妹が俺の視線に気づき、ちらりとこちらを一瞥したかと思うと、またフリックして兄に返信しはじめた。
『えー。やだやだぁ(≧◇≦)!もっと映えて可愛くて美味しそうな大きい飴がいい~!』
司会が審査開始の掛け声をあげると、テニサー男がやっとひなから離れ、ひなの方もようやく観念したのか、審査に挑むためにテニサー男の方へと渋々向き直った。
「ひなっ!今日は何か俺に言いたい事があるんだよな?」
「…うん。」
「何でも言ってくれよ…!話聞くからな!」
「うん。」
「きょ、今日は良い天気だな~…!」
「うん。」
「絶好のプロポーズ日和だと思わないか?」
「うん。」
しかし、審査がはじまっても、どこか心ここにあらずで、『うん』しか言わないひなに、また会場がざわつき、司会がオロオロとしながら、祈るようにして見守っている。
(流石にひなもすぐには切り替えられないか。乗り気すぎる相手の男とそっけないひなの対比が凄まじいな。)
『おいおい、なんだあれ…?そういうコントか?www』
『まさしく本命以外の男に対するカースト上位女子って感じで草』
『冴えない暑苦しいβ男と高値の花のツンツンΩのラブコメって感じでちょっとロマンがあるよなww一体どんな告白になるんだ…?』
『やべぇ、俺ここからひなちゃんとあいつがキスする所なんて想像つかねえよwww』
『てか、相手鷹崎君じゃないけどいいのかな…。コンテスト的に。』
『普通に駄目だと思うけど、あの司会だしな…。』
『そんなんだったらもう何でもアリじゃん。チーターかよって感じ。』
観客達の中には、この状況はこの状況でそれなりに楽しんでいる層もいれば、不正行為に憤っている人もいて賛否両論と言った感じだ。
テニサー男は、引き続き一生懸命ひなを振り向かせようとほぼ一方的に話かける。
「なぁ、ひな。俺さ、前に総一郎とお前の事を応援してるって言ったよな?」
「うん。」
「でも実は俺もお前の事が…。いやこれ以上は言わない。これは審査だからな。」
「うん。」
「………ひな、そろそろ俺に言いたい事があるんじゃないか??ん?」
「うん。」
「分かった。じゃぁ今から俺が言う事をそのまま一音ずつ復唱してくれ。」
「うん。」
「じゃあ行くぞ!『好(す)』!」
「うん。」
なんとかプロポーズの流れに持っていこうとするテニサー男の努力もむなしく、ひなは未だ総一郎の事を諦めていなかったようで、あろうことかまたポケットからスマホを取り出して画面と睨めっこし始めた。
(まさか、このまま総一郎が来るまで粘り続けるつもりなのか…?)
『なぁ、このまま待ってたら日が暮れるぜ。』
『最初はツンデレムーヴもおもろかったけど、流石にだれるって。』
『あの子、うんしか言えないの?』
『つかスマホいじってんじゃん。未だに王子様を待つつもりかねぇ。』
『やっぱβじゃあかんのか…。』
『つーか流石に飽きたわ。あと5分経っても進展しなかったら会場出よ。まだ回りたい所あるんだよねぇ。』
『あ、さんせーい。』
ひなのあまりの遅延行為にしびれを切らし、とうとう荷物をまとめだす観客も出始める始末に焦燥感が生まれる。
(!これはちょっとヤバいか…?)
おそらくひなは、このまま審査の時間を引き延ばしに引き延ばして、総一郎が戻ってくるまでずっと待ち続ける作戦に出たのかもしれない。
ひなの行為に、観客の好感度が順調に下がり続けているのはよしとしても、このままだとシマちゃんの出番が来る前に観客達が帰ってしまう。
それに、先程からずっと遅延続きで時間を押しているせいで、あと数分でオメコンが終わる時間帯になるので、今頃総一郎を攪乱していると思われる兄達もGPSもろとも帰ってきそうだ。
(くっ…せめて兄達の方だけでもなんとか出来ないかな…。)
どうしたものかと唸りながらふと、隣にいる妹に目を向けると、つばめもひなの遅延行為に飽きたらしくスマホをいじっていた。
なんとはなしに画面に目が行くと、妹は丁度兄とメッセージのやり取りをしていて、思わずそのまま凝視してしまう。
兄のメッセージをよく見てみると、
『つばめよ…。お前たちの頼んでいたお土産の映える飴なんだが、全然見つかる気配がしねぇよ~。もうコンテストも終わるころだろうし、いっそリンゴ飴でよくね?うまいぞぉ。知らんけど。』
と、既に購入したらしいりんご飴の写真つきのメッセージが送ってあった。
(まずい…!!!)
この様子じゃもしかしなくても、兄達が今にもここに帰ってきてしまう…。
なんとか『まだ帰ってこないで欲しい!』と言い返したい所だが、それを妹に返信してくれと頼むのも憚られて、ごくりと生唾を飲み込みながら、妹の返信を見守る。
すると妹が俺の視線に気づき、ちらりとこちらを一瞥したかと思うと、またフリックして兄に返信しはじめた。
『えー。やだやだぁ(≧◇≦)!もっと映えて可愛くて美味しそうな大きい飴がいい~!』
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