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第1章

第65話《兄視点…メイドさん達の噂話を聞いてしまう兄》

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兄視点《終》~オメガコンテスト開幕!一方その頃兄は~



「大丈夫ですか…!?」
「あ、ああすみません。ちょっと身内の揉め事で…。」

俺達のテーブルの前に駆け寄ってきた先ほどのメイドさんが心配そうに声をかけてくる。
連れてこられたメイドさん達の方もこちらをそわそわと俺達のやり取りを見守っている様子だ。


「あ、でも一応今の所は大丈夫…って事でいいんだよな…?」
「そ、そうっすね…。大丈夫だと思うっす!」

これ以上は心配かけないようにと、謝罪と返事をしながら、相田君に視線をよこすと、彼も何回も頷いて同調する。
大丈夫かどうかなんて、相田君と鷹崎君の間にある確執が何なのか分からない以上、俺からははっきりとは言えないからな。


「メイドさん達にも心配をおかけして申し訳なかったっすね…」
「あ、いえいえ!何も無いならよかったです。相田さん、確か明日もミスターコン出るんですよね?俺、応援してますから…!!」
「ありがとっす!!」

相田君がさっきのメイドさんに頭を下げると、とんでもないといった風に破顔して逆にエールを送ってくる。
無事に事が治まって俺はほっと胸を撫でおろした。
(相田君は頼りになるし、メイドさん達も優しい人で良かったな。)


「さて、早い所オムライスを食っちまいましょう!実はさっきはメイドさんの手前、大丈夫って言ったっすけど、やっぱりつばめの事が心配で…。早い所お土産を買って帰りたいっす!」
「あぁ…そうだよな。よし、じゃぁ気合い入れて食おうぜ!」



俺達が目の前にあるオムライスにスプーンを入れてガツガツを平らげていくと、ふと微かにキッチンの方からメイドさん達の噂話っぽい声が聞こえる。


『最近怖いよね…。まさか昨日だけじゃ飽き足らず今日もトラブルがおこってしまうなんて…』
『昨日?昨日ってなんかあったっけ?』
『あったじゃん、ほら、例の性悪Ωがいかつい手下達を使って恋敵のΩ攻撃してたやつ。』
『あ~あれね…。被害に遭った方のΩって確か、シマ様が親友になったってはしゃいでる子だよね?』
『そうそう!可哀そうだよね。真っ赤な跡がつく位手首をギリギリ握られてさー…あんなんもうほぼ暴力じゃん。』
『しかも、後味悪いのがさ、その性悪Ωと被害者Ωの彼氏が良い雰囲気になってるみたいなんだよね。なんでもその彼氏がミスターコンの出場者らしくて、コンテストのパートナーに被害者Ωじゃなくて性悪Ωの方を選んだみたいで…。』
『は?最悪~…』


(なんだ?随分と不穏な話をしてるな…。なんだか治安が悪い話だ…。)

力が比較的弱いΩに対する一方的な暴力だなんて、普通にクズじゃないか。
というか、そのΩの恋人は一体なにやってるんだ?

ミスターコンテストのパートナーというからには第一審査の花嫁役の事だろうが、普通に感性をしていたら、そこで自分の恋人以外のΩを選ぶなんて不義理で最低な真似はしないはずだ。

おそらくというか、確実にその彼氏は性悪Ωと被害者のΩに二股をかけているに違いないし、なんなら被害者Ωの方は本命ですらないかもしれない。

ミスターコンの出場者といえば相田君以外は皆αだったから、必然的に被害者の彼氏もαという事になるんだろうな。



___もしもその被害者のΩがすずめだったらと思うとゾッとする。

愛しのαに二股をかけられたどころか、本命ですらなくて、浮気相手のΩに嫌がらせされるなんてあまりにも哀れすぎるからな…。

もし俺がその被害者のΩの兄だったら速攻そのクズ彼氏を容赦なくボコボコにぶん殴っている所だ。


(っとちょっと熱くなりすぎたか?)

色々と考えているうちに、いつのまにか目の前のオムライスを味わう間もなく平らげてしまっていたようだ。


「義兄さん?どうしたんすか?さっきから黙りこくってるっすけど…」
「ん?あぁいやいや。つばめの彼氏が相田君で本当に良かったなぁって思ってな。」

さっきのメイドさん達の話を聞いていると、相対的に相田君がこれ以上無いくらい良い彼氏に思えてくる。


「え?なんすかぁ突然、すごく照れるっすよ~!!でもそう思っていただけて感激っす!!!」
「あはは。言っとくけどガチで本心だからな…っとオムライス、二人とも食べ終わったみたいだから、さっそくお土産の方を買いに行こうか。」
「はいっす!!映える飴でしたっけ?これは探すのも最難関っすよ!」
「そうだな~、ちょっと駆け足で探して回ろうぜ。」

俺達はオムライスの皿をカウンターまで持っていき、会計を済ませるとメイド喫茶を出た。

(そういえば、今頃はもう既にオメガコンテストの第一次審査が始まってる時間だよな。すずめ達はコンテストに熱中しているんだろうか。)

先程のメイドの噂話で、散々な文化祭を送っていると思われる被害者Ωとすずめの姿を一瞬でも重ねてしまった俺は、せめてすずめにはせっかくの文化祭を心から楽しんでほしいと、切に願ったのだった。

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