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第1章

第63話《兄視点…メイド喫茶おめが》

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兄視点《4》~オメガコンテスト開幕!一方その頃兄は~



「お、おい!相田君!ここってまさか!?」
「どうやら、メイド喫茶みたいっすね!!俺も初めて来たっす!」

どうやら相田君もこのお店がメイド喫茶だと分かっていなかったみたいで、今初めて気が付いたといったような顔をしている。

「ふふ、ご主人様ってばウブでかわいい~♪それで、ご注文の方はどうする~?」
「あ、えぇっと…どうしようかな…。」

なんだかやけに接客に慣れた様子で注文を聞いてくるメイドさんにどうしたらいいか分からずタジタジになる。
俺、思い返してみたらすずめ以外のΩと話した事が無いから、こういう時、どういう会話をすればいいのか分からないんだよなぁ…。

(ってか、よく見たらメニューの名前が恥ずかしいものばかりなんだが…どうしよう、絶対に言いたくねぇ…)

渡されたメニュ表ーの中には《猫耳メイドのにゃんにゃんお絵描きおむらいちゅ》を筆頭に《ちゅきちゅきチェキ付きケェキ》や《おめがの愛情たっぷりカレー》等、なんとなく口にするには俺のプライドが許さないものばかりで顔が真っ赤になってしまう。


「お、どれも美味しそうっす!!俺としてはここはやっぱりドーンと定番のオムライスが食べたいっすね!!義兄さんもどうっすか?」
「あ、じゃぁ俺も同じやつを頼もうかな…。」
「決まりっすね!メイドさん!!この《猫耳メイドのにゃんにゃんお絵描きおむらいちゅ》を2個くださいっす!!!」

俺がもたもたしている間に相田君が口にするのも憚られるメニューを堂々と注文してくれて、なんだか俺だけが動揺しているみたいで逆に恥ずかしくなってしまった。

(くそぅ……これが、童貞と非童貞の差か……!)

またちょっと自信を無くしてしまったが、とりあえず助かった。
マジでありがとう相田君…。

「かしこまりました♪♪《猫耳メイドのにゃんにゃんお絵描きおむらいちゅ》お二つだね!それではオムライスが完成したら当店自慢の猫耳メイドがご主人様の所まで持ってくるから、良いご主人様で待っててねぇ♪」


メイドさんが猫の手の真似をしながら、注文を復唱してキッチンの方へ戻っていく。

「いや~オムライス楽しみっすね!!」
「そうだな…。」

相田君が楽しそうに話しかけてくるが、俺はさっきから動揺しっぱなしで情けない気持ちになったのだった。


それから数分程度、相田君と軽く雑談でもかわしながら時間を潰していると、
先ほどのメイドさんが猫耳カチューシャを頭に乗っけてオムライスを運んできた。

「お待たせにゃん~♪こちら、おめがメイド達の愛情が詰まった特製おむらいちゅだよぉ~♪にゃんにゃん♡」
「おお、おいしそうっすね!!」


(…当店自慢の猫耳メイドって自分の事かよ!)

いや…即席にしては似合っているし、役にもなり切っててすごいけど、人手不足なのか…?

「えへへ、またボクが来ちゃってびっくりしたにゃん?ごめんねぇ本当はシマちゃんって言う子がテーブル担当なんだけど、丁度今ねこねこ王国に帰っちゃっててぇ~…。あ、ちなみにぃ~おむらいちゅに描いてあるネコちゃんはボクが描いたんだにゃん♡ねーねー、可愛いってゆって~♡」

「と、とても可愛いよ…。」

(勢いに押されて、つい適当に可愛いと言ってしまった。)
オムライスの上には猫というか、アメーバみたいな不定形なイラストとも言えないケチャップが乗っかっているだけで、お世辞にも可愛いとは言えない。

まぁメイドさんは普通に可愛いので、一応本心という事にしとこう。



「うふふ♡ありがとにゃん♪あっ、それでねぇ~…ちょっとお聞きしたいんですけどもしかしてそちらのお客さん、先程ミスターコンに出場しておられた相田長介さんだったりします?」
「……えっ?」

先ほどまでの高い猫撫で声はどこに行ったのか、低音でカスタマーセンターの男性みたいな敬語になって相田君に向かって話しかけ始めたので驚いて思わずメイドさんを凝視してしまった。

「え、そ、そうっすけど俺の事を知ってるっすか?」
「やはり本物なんですね…!いや~コンテスト見てましたよ~!俺、相田さんの男らしさのファンになってしまって!良かったら握手してください…!!」


(いや、切り替えすご…!)

つい数秒前まで萌え声でかわいらしく接客していたはずのメイドさんが、相田君に向かって頭を下げて握手を求めている様子に頭がついていかない。

(全然キャラちげーし、地声低いし一人称も俺なのか…。)

色々夢が崩れたような気もするが、好きな有名人を見かけたら誰しもこうなるのかもしれない。…相田君ばかりモテてずるいけどな。
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