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第1章
第57話《オメコン開催直前の観客の声》
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「それで、すずめは結局お土産はなにがいいんだ?兄ちゃん今手持ちいっぱいあるから遠慮しなくていいんだぞ?」
先ほど協力を快く引き受けてくれた兄がバッグをからい直しながらお土産に話を戻してくる。
あ、そういえばそんな話してたな。
復讐とGPSの事で頭がいっぱいですっかり頭から抜けていた。
(…お土産かぁ。俺はまだお腹空いてないんだよなぁ。)
今は抑制剤で嗅覚を完全に失っている状態だから、今朝から何気に全然食欲がわかない。
(あ、そういえば飴なんかは鼻が詰まっててもちゃんと美味しいって聞くから、それにしようかな…。)
「ありがと。お土産は俺もつばめと一緒でお菓子がいいかなぁ。できれば飴系のお菓子だったら嬉しいかも。」
「おし、じゃぁ二人の意見を足して映えそうな飴を買ってくるわ。ま、あったらの話だけどな!兄ちゃん達は外の祭りを楽しんでくっから、お前たちもいい子で待ってろよ。特につばめはすぐに迷子になるからな。」
お土産の方向性が決まった兄がちょっとウキウキとした様子で席を立つ。
妹にお土産をおねだりされて嬉しいのと、単純に出店が楽しみなのとで機嫌が良いようだ。
「はーい!いってらっしゃい♪迷子になんてならないもーん!だちょ君もおいしいもの沢山食べてくるんだよ!」
「おう!!つばめもコンテスト楽しめよ!!」
相田君がつばめの頭をさら、と撫でて席を外し、兄に続く。
「はぁー!良かったー…!あの二人中々相性いいんじゃない?これだったらうちとだちょ君の仲も公認同然だし結婚も秒読みってかんじ♬」
「良かったねつばめ。彼氏を家族に紹介するにはお兄ちゃんは何気に一番の難関だからなぁ。」
「えへへ、そうだね♪」
彼らの後ろ姿を見て、つばめが幸せそうに微笑んでいるのを見て俺も自然と笑顔になる。
本日久々にリラックスした気持ちになり、オメコンまで少し休もうとゆっくりと目を閉じると、ふと、周りの観客の声が鮮明に聞こえてきてしまう。
『なぁなぁ!愛野ひなちゃんってすっげえ可愛いんだろ?俺見た事無いんだよなぁ。』
『なんでもこの大学1の美人ちゃんらしいぜ。楽しみだよなぁ。』
『俺、何気にファンなんだよなぁ。絶対ひなちに満点入れると思うわ。』
『他の出場者には誰か可愛い子いないのか?』
『うーん、俺的にはひなちとそれ以外って感じだな。強いて言うなら江永シマって子がかわいいかな。』
俺の後ろの席からはひなに好意的な男性客達の声が聞こえる。
ひなの顔を知らない人がいるという事は、この人達はさっきまでに開催されていたミスターコンを見ていなかったのだろう。
『ねぇ、ちょ、見てこの出場者一覧。出場者に愛野ひないるよ。』
『マジじゃん。この子激ヤバ地雷なんでしょ。』
『確か鷹崎先輩を略奪するために、手下を使って鷹崎先輩の番を殴ったとかなんとか?』
『殴ったかどうかは知らんけど、暴力はあったらしいよ。メイド喫茶のΩの子が言ってた。怖すぎなんですけど。』
『ちょっと何それ…やっば。』
『あ、それ私も知ってる!目撃者結構いるんだってね。』
対して俺の前の席のスマホをいじっている女性陣達にはシマちゃんが流したであろうひなの悪評が伝わっているようで、順調に噂を拡散させている。
ミスターコンの時も結構ひなの噂が聞こえてきたけれど、こうしてまた別のコンテストで別の観客からも噂が聞こえてくるという事はシマちゃんの拡散もすこぶる順調なんだろう。
総一郎の番だの手下(多分テニスサークルの連中)による暴力だのちょっと尾ひれがついてる気がするけど。
「ねぇ、すずめちゃん…、愛野ひなちゃんって確か、今朝すずめちゃんの彼氏と一緒にお祭りデートしてて、おんぶまでせがんでいたあのΩの人だよね?」
「え。」
復讐の計画が順調に進んでいる事にほっと胸をなでおろしていると、いつのまにか隣に座っていた妹が、先ほどまで幸せそうに浮かべていた笑顔を潜ませ、心配そうにじっとこちらを見据えていたのでギクっとした。
「それで、暴力を振るわれた鷹崎さんの番ってすずめちゃんの事だよね…?まさか…やっぱりすずめちゃんは…」
(やばいな、つばめも前の席の女性客達の話を聞いてたのか…。)
うう、まずいぞ。浮気の事バレると、総一郎の所に兄が突撃して修羅場になって復讐がおじゃんになる…。
「い、いや、どうだろう。でも、総一郎君に限って浮気とかはしてn…」
「ひなちゃんにNTRされようとしてるんだね!?鷹崎さんとすずめちゃんの超絶ラブラブな関係の間に割って入ろうとするなんて許せない…!あ、でもでも~浮気は何とか未遂で良かったね!すずめちゃんと鷹崎さんの絆は誰にも崩せないんだから当然だけど♬」
「あ、うんそうだね…。」
(未遂どころかもう既に常習犯だけどな…。)
とりあえず、鋭いんだか鈍いんだか分からない妹には総一郎の浮気バレはせずに済んだが、口に出して
俺と総一郎が超絶ラブラブだと言われるとそれはそれでモヤっとするな…。
「さーて始まりました!オメガコンテスト開幕です!司会を務めさせていただきますのはミスターコン同様、このわたくしめでございます!なにとぞ、よろしくお願いいたします!」
そして妹にはこれ以上は追及されたくないという、丁度いいタイミングでオメガコンテスト開催のナレーションが会場に響いたのだった。
先ほど協力を快く引き受けてくれた兄がバッグをからい直しながらお土産に話を戻してくる。
あ、そういえばそんな話してたな。
復讐とGPSの事で頭がいっぱいですっかり頭から抜けていた。
(…お土産かぁ。俺はまだお腹空いてないんだよなぁ。)
今は抑制剤で嗅覚を完全に失っている状態だから、今朝から何気に全然食欲がわかない。
(あ、そういえば飴なんかは鼻が詰まっててもちゃんと美味しいって聞くから、それにしようかな…。)
「ありがと。お土産は俺もつばめと一緒でお菓子がいいかなぁ。できれば飴系のお菓子だったら嬉しいかも。」
「おし、じゃぁ二人の意見を足して映えそうな飴を買ってくるわ。ま、あったらの話だけどな!兄ちゃん達は外の祭りを楽しんでくっから、お前たちもいい子で待ってろよ。特につばめはすぐに迷子になるからな。」
お土産の方向性が決まった兄がちょっとウキウキとした様子で席を立つ。
妹にお土産をおねだりされて嬉しいのと、単純に出店が楽しみなのとで機嫌が良いようだ。
「はーい!いってらっしゃい♪迷子になんてならないもーん!だちょ君もおいしいもの沢山食べてくるんだよ!」
「おう!!つばめもコンテスト楽しめよ!!」
相田君がつばめの頭をさら、と撫でて席を外し、兄に続く。
「はぁー!良かったー…!あの二人中々相性いいんじゃない?これだったらうちとだちょ君の仲も公認同然だし結婚も秒読みってかんじ♬」
「良かったねつばめ。彼氏を家族に紹介するにはお兄ちゃんは何気に一番の難関だからなぁ。」
「えへへ、そうだね♪」
彼らの後ろ姿を見て、つばめが幸せそうに微笑んでいるのを見て俺も自然と笑顔になる。
本日久々にリラックスした気持ちになり、オメコンまで少し休もうとゆっくりと目を閉じると、ふと、周りの観客の声が鮮明に聞こえてきてしまう。
『なぁなぁ!愛野ひなちゃんってすっげえ可愛いんだろ?俺見た事無いんだよなぁ。』
『なんでもこの大学1の美人ちゃんらしいぜ。楽しみだよなぁ。』
『俺、何気にファンなんだよなぁ。絶対ひなちに満点入れると思うわ。』
『他の出場者には誰か可愛い子いないのか?』
『うーん、俺的にはひなちとそれ以外って感じだな。強いて言うなら江永シマって子がかわいいかな。』
俺の後ろの席からはひなに好意的な男性客達の声が聞こえる。
ひなの顔を知らない人がいるという事は、この人達はさっきまでに開催されていたミスターコンを見ていなかったのだろう。
『ねぇ、ちょ、見てこの出場者一覧。出場者に愛野ひないるよ。』
『マジじゃん。この子激ヤバ地雷なんでしょ。』
『確か鷹崎先輩を略奪するために、手下を使って鷹崎先輩の番を殴ったとかなんとか?』
『殴ったかどうかは知らんけど、暴力はあったらしいよ。メイド喫茶のΩの子が言ってた。怖すぎなんですけど。』
『ちょっと何それ…やっば。』
『あ、それ私も知ってる!目撃者結構いるんだってね。』
対して俺の前の席のスマホをいじっている女性陣達にはシマちゃんが流したであろうひなの悪評が伝わっているようで、順調に噂を拡散させている。
ミスターコンの時も結構ひなの噂が聞こえてきたけれど、こうしてまた別のコンテストで別の観客からも噂が聞こえてくるという事はシマちゃんの拡散もすこぶる順調なんだろう。
総一郎の番だの手下(多分テニスサークルの連中)による暴力だのちょっと尾ひれがついてる気がするけど。
「ねぇ、すずめちゃん…、愛野ひなちゃんって確か、今朝すずめちゃんの彼氏と一緒にお祭りデートしてて、おんぶまでせがんでいたあのΩの人だよね?」
「え。」
復讐の計画が順調に進んでいる事にほっと胸をなでおろしていると、いつのまにか隣に座っていた妹が、先ほどまで幸せそうに浮かべていた笑顔を潜ませ、心配そうにじっとこちらを見据えていたのでギクっとした。
「それで、暴力を振るわれた鷹崎さんの番ってすずめちゃんの事だよね…?まさか…やっぱりすずめちゃんは…」
(やばいな、つばめも前の席の女性客達の話を聞いてたのか…。)
うう、まずいぞ。浮気の事バレると、総一郎の所に兄が突撃して修羅場になって復讐がおじゃんになる…。
「い、いや、どうだろう。でも、総一郎君に限って浮気とかはしてn…」
「ひなちゃんにNTRされようとしてるんだね!?鷹崎さんとすずめちゃんの超絶ラブラブな関係の間に割って入ろうとするなんて許せない…!あ、でもでも~浮気は何とか未遂で良かったね!すずめちゃんと鷹崎さんの絆は誰にも崩せないんだから当然だけど♬」
「あ、うんそうだね…。」
(未遂どころかもう既に常習犯だけどな…。)
とりあえず、鋭いんだか鈍いんだか分からない妹には総一郎の浮気バレはせずに済んだが、口に出して
俺と総一郎が超絶ラブラブだと言われるとそれはそれでモヤっとするな…。
「さーて始まりました!オメガコンテスト開幕です!司会を務めさせていただきますのはミスターコン同様、このわたくしめでございます!なにとぞ、よろしくお願いいたします!」
そして妹にはこれ以上は追及されたくないという、丁度いいタイミングでオメガコンテスト開催のナレーションが会場に響いたのだった。
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