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第1章
第55話《再びすずめになり代わろうとするひな》
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声がした方を見ると、案の定これまた見覚え…というか、着覚えのある衣装を身に纏ったひながそこに悠然と自身たっぷりな様子で立っていた。
(あれ…?その白無垢は…まさか…!?流石にあの観客達にあそこまで鼻で笑われた花嫁ドレスは着てこなられなかったんだろうけど、普通のウェディングドレスっていう選択肢もあっただろうに…。)
なんとひなはミスターコンで俺が着ていた白無垢を着ていたのだ。
コンテストで着用した借物衣装は、控室に置いてあるラックにかけておけば、後で文化祭スタッフさんが文化祭の経費でクリーニングに出して、そのまま衣装保管室に返却しておいてくれるらしいので俺もそれに倣ってラックに返却しておいたのだが、いつのまにかひながそれを奪って着替えていたようだ。
「あの…ひなちゃん、その白無垢…俺がさっき着てたやつじゃ…?」
「え、なぁに?もしかして僕にこの衣装を着るなっていいたいの?これ大学の持ち物でしょ?すずめちゃんのじゃないんだから当然僕が着る権利があるよねぇ?」
俺が白無垢について指摘をすると、上機嫌の表情を更にニッコリとさせて俺に早口で言い返してきた。
(やれやれ、また俺のなり代わり、か…。)
まさか、普段着や髪型だけじゃなく、白無垢まで真似してくるとは…。
ひなはどうやら例のド派手なドレスや、無難な普通のウェディングドレスでは無く、観客に可愛いだの透明感があるだのと、高評価だった白無垢衣装を自分も着る事で勝ちに行くつもりらしい。
まぁあの衣装は平凡の俺が着てもあそこまで褒められるくらいだから、そりゃ美人のひなが着たら大盛り上がりだろうな…。
実際こうしてみても、ひなの白無垢姿は俺なんかより全然似合っていると思う。
よくテレビとか雑誌などで見る美人な花嫁よりも圧倒的な華やかさで、さらになで肩なので着物も似合っており、観客達はこれを見てさぞかし感嘆の声をあげるだろう。
だが、残念だったな。ひなが俺に対して取り巻きを使って嫌がらせを仕掛けていたと噂が出回っている状況でそれは悪手だ。
むしろ恋敵とされている俺とまったく同じ衣装を着て『どう?すずめちゃんなんかより僕の方が似合っているでしょ?』と言わんばかりのマウントを取る事で、ひなの性格の悪さがさらに露呈する事になる。
アンチをムカつかせればムカつかせるだけ噂の広まりも加速するので、この展開は俺にとっても願ったりかなったりだ。
心代わりをされても困るし、適当に嘘泣きして追いつめられた風を装っておだてとくか。
「うう、ぐす、酷いよ…ひなちゃん。同じ白無垢をそんな完璧に着こなしてステージに出られたら俺、立つ瀬が無くなっちゃう……。」
「えー?そんなこと言われてもwwこれはもう僕の衣装だから絶――っ対着替えないよー?」
よしよしいいぞ、それでこそひなだ。
こいつの、いっそ気持ちいいくらいの底意地の悪さには本当に助けられる。
「ふんふんふふーん♪あ!そうだ、総k…カレにも自撮り写真送っちゃお♪」
総一郎の宿泊に関しても花嫁衣裳に関しても、あるゆる面で俺を負かしたと思って更に調子づいたひなは、控室の奥に設置してある全身の姿見の前に立ち、鼻歌を歌いながらスマホで自撮りをし始めた。
(_さて、俺もそろそろここを出て、つばめたちと合流する事にするか。)
良い感じにひなを調子づかせたところで、一旦別れをつげるためにシマちゃんの方へ目線を送ると、彼は何故かこちらに親指を立てて満足気な表情でグッジョブのポーズを作っていた。
(え、なんでシマちゃんが喜んでいるんだ…?普通あんな綺麗なライバルが現れたら焦燥感に駆られるもんじゃないのか…?)
俺が頭の上に?マークを放出しながら首をひねっていると、シマちゃんが俺に近づいてひそひそ声でとんちんかんな事を言い出した。
「さっすが、すずめちゃんナイス~♪あの例のミスターコンで最高級の白無垢を見せつけた直後に劣悪な劣化コピーを晒し上げる事で、観客を萎えさせる作戦なんだね??残酷だけどそこがまた痺れる~♬」
「え、いや、ちょっと待って、一体なんのこと…?」
「もうっ、このこの♪隠さなくてもいいよ?すずめちゃん、さっき嘘泣きしてたでしょ♬誰だってあそこまで彼氏にちょっかい出されたら良い気しないもん。これくらいの仕返しはぜーんぜん許容範囲だよ♡」
すっとぼけ半分と本当に心当たりがないの半分で困惑してみせる俺に、シマちゃんは自分の肘で腕をつんつんと上機嫌で軽くこずいてくる。
どうやら、シマちゃんには俺の嘘泣きが原因でひなに対するちょっとした悪意がバレてしまったらしい。
演技力には人一倍自信があったんだけど、シマちゃんって本当に鋭くて侮れない人だな…。
まぁ、最高級だの劣化コピーだののくだりは本当によく分からないけど…。
(あれ…?その白無垢は…まさか…!?流石にあの観客達にあそこまで鼻で笑われた花嫁ドレスは着てこなられなかったんだろうけど、普通のウェディングドレスっていう選択肢もあっただろうに…。)
なんとひなはミスターコンで俺が着ていた白無垢を着ていたのだ。
コンテストで着用した借物衣装は、控室に置いてあるラックにかけておけば、後で文化祭スタッフさんが文化祭の経費でクリーニングに出して、そのまま衣装保管室に返却しておいてくれるらしいので俺もそれに倣ってラックに返却しておいたのだが、いつのまにかひながそれを奪って着替えていたようだ。
「あの…ひなちゃん、その白無垢…俺がさっき着てたやつじゃ…?」
「え、なぁに?もしかして僕にこの衣装を着るなっていいたいの?これ大学の持ち物でしょ?すずめちゃんのじゃないんだから当然僕が着る権利があるよねぇ?」
俺が白無垢について指摘をすると、上機嫌の表情を更にニッコリとさせて俺に早口で言い返してきた。
(やれやれ、また俺のなり代わり、か…。)
まさか、普段着や髪型だけじゃなく、白無垢まで真似してくるとは…。
ひなはどうやら例のド派手なドレスや、無難な普通のウェディングドレスでは無く、観客に可愛いだの透明感があるだのと、高評価だった白無垢衣装を自分も着る事で勝ちに行くつもりらしい。
まぁあの衣装は平凡の俺が着てもあそこまで褒められるくらいだから、そりゃ美人のひなが着たら大盛り上がりだろうな…。
実際こうしてみても、ひなの白無垢姿は俺なんかより全然似合っていると思う。
よくテレビとか雑誌などで見る美人な花嫁よりも圧倒的な華やかさで、さらになで肩なので着物も似合っており、観客達はこれを見てさぞかし感嘆の声をあげるだろう。
だが、残念だったな。ひなが俺に対して取り巻きを使って嫌がらせを仕掛けていたと噂が出回っている状況でそれは悪手だ。
むしろ恋敵とされている俺とまったく同じ衣装を着て『どう?すずめちゃんなんかより僕の方が似合っているでしょ?』と言わんばかりのマウントを取る事で、ひなの性格の悪さがさらに露呈する事になる。
アンチをムカつかせればムカつかせるだけ噂の広まりも加速するので、この展開は俺にとっても願ったりかなったりだ。
心代わりをされても困るし、適当に嘘泣きして追いつめられた風を装っておだてとくか。
「うう、ぐす、酷いよ…ひなちゃん。同じ白無垢をそんな完璧に着こなしてステージに出られたら俺、立つ瀬が無くなっちゃう……。」
「えー?そんなこと言われてもwwこれはもう僕の衣装だから絶――っ対着替えないよー?」
よしよしいいぞ、それでこそひなだ。
こいつの、いっそ気持ちいいくらいの底意地の悪さには本当に助けられる。
「ふんふんふふーん♪あ!そうだ、総k…カレにも自撮り写真送っちゃお♪」
総一郎の宿泊に関しても花嫁衣裳に関しても、あるゆる面で俺を負かしたと思って更に調子づいたひなは、控室の奥に設置してある全身の姿見の前に立ち、鼻歌を歌いながらスマホで自撮りをし始めた。
(_さて、俺もそろそろここを出て、つばめたちと合流する事にするか。)
良い感じにひなを調子づかせたところで、一旦別れをつげるためにシマちゃんの方へ目線を送ると、彼は何故かこちらに親指を立てて満足気な表情でグッジョブのポーズを作っていた。
(え、なんでシマちゃんが喜んでいるんだ…?普通あんな綺麗なライバルが現れたら焦燥感に駆られるもんじゃないのか…?)
俺が頭の上に?マークを放出しながら首をひねっていると、シマちゃんが俺に近づいてひそひそ声でとんちんかんな事を言い出した。
「さっすが、すずめちゃんナイス~♪あの例のミスターコンで最高級の白無垢を見せつけた直後に劣悪な劣化コピーを晒し上げる事で、観客を萎えさせる作戦なんだね??残酷だけどそこがまた痺れる~♬」
「え、いや、ちょっと待って、一体なんのこと…?」
「もうっ、このこの♪隠さなくてもいいよ?すずめちゃん、さっき嘘泣きしてたでしょ♬誰だってあそこまで彼氏にちょっかい出されたら良い気しないもん。これくらいの仕返しはぜーんぜん許容範囲だよ♡」
すっとぼけ半分と本当に心当たりがないの半分で困惑してみせる俺に、シマちゃんは自分の肘で腕をつんつんと上機嫌で軽くこずいてくる。
どうやら、シマちゃんには俺の嘘泣きが原因でひなに対するちょっとした悪意がバレてしまったらしい。
演技力には人一倍自信があったんだけど、シマちゃんって本当に鋭くて侮れない人だな…。
まぁ、最高級だの劣化コピーだののくだりは本当によく分からないけど…。
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