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第1章
第54話《オメコンの審査内容について》
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「ありがとう…!助かったよ!」
扉の鍵を再度開け、こちらに戻ってきたシマちゃんに心からのお礼を述べる。
割と本当にさっきはピンチだったからな。
「ふふん~♪だって親友でしょ?これくらい当たり前だよ!」
「う、うん。シマちゃんが親友なら色々心強いなー。」
「でしょ?いっぱい頼ってくれて良いからね。あ、でもでも~親友なのに連絡先交換してないのって変だよね?」
相変わらず出会ったばかりの俺を親友だと言い張るシマちゃんが、スマホを自分のバッグから取り出してこちらをニコニコしながら眺めている。
(あれ、これは…連絡先を教えろって流れかな?)
なんだか笑顔の圧がすごい。
第一審査の時にコンテストの最前列の観客達がシマちゃんの事を様づけで呼んでたから、ただ者ではないとは思ってたけど少しだけ気持ちが分かるような気がする。
(まぁ、復讐の事さえバレなければ仲良くなっても問題ない、よな…?)
シマちゃんは敵に回したら怖そうだし、これ以上の親密な付き合いは諸刃の剣ではあるかもしれないけど、共通の敵がいる分にはさりげなく情報交換もできるし、WINWINな関係のはずだ。
それに、頼りになるし割と話しやすいから友達になってくれる分には普通にすごく嬉しい。
「そうだね。今からでも連絡先を交換しておこう!あ、でも今はスマホの電源切ってるんだった…。後で連絡するから電話番号とメッセージアプリのID教えて欲しいな。」
「はーい!すずめちゃんもヤバ…鷹崎くんに追い掛け回されて大変だねぇ…。それってGPSで追跡されないためでしょ?」
「え、スマホの電源切るとGPSって機能しないの?」
「あったりまえじゃーん。電源切ったら電波も通じないし、アプリも機能しないんだから。」
(なるほど、さっき巧斗さんがスマホの電源を切っておいてって言ってたのはそういう事だったのか…。)
俺の想像ではGPSというのはスマホに何らかのチップが埋め込まれていて、電波が届かなくても特殊な波動か何かを出して位置を知らせるものだと思ってたんだけど、意外と現実的だったんだな…。
「~とよしっ。はいこれ!僕の連絡先♪なくさないでね!」
「あ!書いてくれたんだ。ありがとう!」
シマちゃんは控室の机の上にあったコンテストのチラシの裏に自分の連絡先をささっと書き終えると、俺に手渡してくれた。
「それにしても総一郎君があんな状態だったらさ、ひなちゃんの第二次審査、波瀾が起こりそうだよねぇ?」
「ん?第二次審査?って何のこと?」
先ほど貰った紙を大事にカバンにしまっていると、シマちゃんが唐突に意味深な発言をし始める。
「すずめちゃん、知らないの?オメコンの第二次審査のテーマは………__。」
「て、テーマは_?」
まるでクイズ番組の司会者みたいにもったいぶるシマちゃんに、ドキドキしながら続きを待っていると、突然ガラガラ!と控室の扉が勢いよく開いた。
『よーし、一番乗りー!ってあれ?普通に先客いるじゃん!』
『はぁやだなぁ。今日化粧ノリ最悪だよ~あまりアップで写りませんように…』
『やばいやばい緊張でトイレ行きたくなってきた。』
『本番まであと10分あるから行ってきなよ~』
扉の外からウェディングドレスを身に纏った美人ぞろいの他のΩの出場者がぞろぞろと、しゃべくりながら控室に入ってくるのが見える。
(あっ!!今丁度いい所だったのに!…そういや、もう本番前か…。)
「あちゃー残念、人がきちゃった。この話はここまでだね。ま、見てれば分かるよ♪あ~今からゾクゾクしてきた♬」
「うぅ、そういわれると余計気になるなぁ。」
シマちゃんは波瀾が起こるという第二次審査の事を思い浮かべているのだろうか、恍惚とした笑みを浮かべていた。
(一体どんな内容なんだろう…。スマホで文化祭のサイトを確認したいけど電源を切っている状態だし、生殺しだ…。)
「ふふ、も~しょうがないなぁ♪ね、すずめちゃん、ちょっと耳貸して。」
「え、なに?」
続きが気になり過ぎて唸っている俺にシマちゃんはにやりと笑いながら手招きする。
そして俺の耳元に内緒話時のように両手を口元に添えて、至極小さな声で第二次審査について語り始めた。
『なんと、第二次審査の内容は《愛する彼に逆プロポーズ大作戦♡》!…なんだけど、これは他の審査と違って毎年恒例の名物審査で、出場者が観客の中に仕込んだエキストラをステージ上に呼び出して、その人にプロポーズをするというシチュエーションなのね。』
へえ、こっちもちゃんとミスターコンの出場者みたいにエキストラを用意しなきゃいけないんだな。ひなやシマちゃんが誰を選んだのか気になるところだ。
『それで、ここからが目玉なんだけど…なんと仕込みのエキストラじゃなくて、自分の晴れ舞台を見に来たであろう彼氏を突然サプライズで呼び出してプロポーズして、それが成功すると、一生幸せな番になれるっていうジンクスがあるんだよね~♪』
「え、なにそれ!?」
『しー!声が大きいよ~!それでね、今朝のリハでスタッフに一応誰を呼び出すつもりなのか申請をしなきゃだったんだけど、ひなちゃんは鷹崎くんを連れてくるって言ってたんだよねぇ。』
『…俺そんなの聞いてない…。』
『あ!もち、ひなちゃんが勝手に言ってるだけだよ。色々と勘違いちゃんだからあの子。でも、ヤバ崎くんも一応呼ばれた以上はステージには上がらなきゃいけないわけでしょ?なのに今頃彼はすずめちゃんの尻を追っかけてコンテストに来るかどうかも怪しいわけで…
__もしサプライズで呼びだした本命が自分の晴れ舞台を見にすら来なかったと知れたら、さぞ気持ちいい…じゃなかった可哀そうなことになりそうだなって思ってね…。』
可哀そうとか言いながら、シマちゃんが愉悦の混じった声をあげているのが分かる。
成程…、そうなったら、シマちゃんだけじゃなく、俺の気持ちもスカッとできそうだ。
いやでも、ひなは一応総一郎の本命なわけだし、なんだかんだで見に来そうなものだけど、どうなんだろう…。
「あれぇ、すずめちゃん!!ここは選ばれたオメガしかいないはずじゃないのぉ?」
噂をすれば、渦中の意地の悪そうな幼馴染のにやけ声が近づいてくる。
(やけにテンションが高いというか、機嫌が良いな…。)
多分さっき総一郎が止まりに来る等と言っていたのを真に受けて有頂天なのだろう。
扉の鍵を再度開け、こちらに戻ってきたシマちゃんに心からのお礼を述べる。
割と本当にさっきはピンチだったからな。
「ふふん~♪だって親友でしょ?これくらい当たり前だよ!」
「う、うん。シマちゃんが親友なら色々心強いなー。」
「でしょ?いっぱい頼ってくれて良いからね。あ、でもでも~親友なのに連絡先交換してないのって変だよね?」
相変わらず出会ったばかりの俺を親友だと言い張るシマちゃんが、スマホを自分のバッグから取り出してこちらをニコニコしながら眺めている。
(あれ、これは…連絡先を教えろって流れかな?)
なんだか笑顔の圧がすごい。
第一審査の時にコンテストの最前列の観客達がシマちゃんの事を様づけで呼んでたから、ただ者ではないとは思ってたけど少しだけ気持ちが分かるような気がする。
(まぁ、復讐の事さえバレなければ仲良くなっても問題ない、よな…?)
シマちゃんは敵に回したら怖そうだし、これ以上の親密な付き合いは諸刃の剣ではあるかもしれないけど、共通の敵がいる分にはさりげなく情報交換もできるし、WINWINな関係のはずだ。
それに、頼りになるし割と話しやすいから友達になってくれる分には普通にすごく嬉しい。
「そうだね。今からでも連絡先を交換しておこう!あ、でも今はスマホの電源切ってるんだった…。後で連絡するから電話番号とメッセージアプリのID教えて欲しいな。」
「はーい!すずめちゃんもヤバ…鷹崎くんに追い掛け回されて大変だねぇ…。それってGPSで追跡されないためでしょ?」
「え、スマホの電源切るとGPSって機能しないの?」
「あったりまえじゃーん。電源切ったら電波も通じないし、アプリも機能しないんだから。」
(なるほど、さっき巧斗さんがスマホの電源を切っておいてって言ってたのはそういう事だったのか…。)
俺の想像ではGPSというのはスマホに何らかのチップが埋め込まれていて、電波が届かなくても特殊な波動か何かを出して位置を知らせるものだと思ってたんだけど、意外と現実的だったんだな…。
「~とよしっ。はいこれ!僕の連絡先♪なくさないでね!」
「あ!書いてくれたんだ。ありがとう!」
シマちゃんは控室の机の上にあったコンテストのチラシの裏に自分の連絡先をささっと書き終えると、俺に手渡してくれた。
「それにしても総一郎君があんな状態だったらさ、ひなちゃんの第二次審査、波瀾が起こりそうだよねぇ?」
「ん?第二次審査?って何のこと?」
先ほど貰った紙を大事にカバンにしまっていると、シマちゃんが唐突に意味深な発言をし始める。
「すずめちゃん、知らないの?オメコンの第二次審査のテーマは………__。」
「て、テーマは_?」
まるでクイズ番組の司会者みたいにもったいぶるシマちゃんに、ドキドキしながら続きを待っていると、突然ガラガラ!と控室の扉が勢いよく開いた。
『よーし、一番乗りー!ってあれ?普通に先客いるじゃん!』
『はぁやだなぁ。今日化粧ノリ最悪だよ~あまりアップで写りませんように…』
『やばいやばい緊張でトイレ行きたくなってきた。』
『本番まであと10分あるから行ってきなよ~』
扉の外からウェディングドレスを身に纏った美人ぞろいの他のΩの出場者がぞろぞろと、しゃべくりながら控室に入ってくるのが見える。
(あっ!!今丁度いい所だったのに!…そういや、もう本番前か…。)
「あちゃー残念、人がきちゃった。この話はここまでだね。ま、見てれば分かるよ♪あ~今からゾクゾクしてきた♬」
「うぅ、そういわれると余計気になるなぁ。」
シマちゃんは波瀾が起こるという第二次審査の事を思い浮かべているのだろうか、恍惚とした笑みを浮かべていた。
(一体どんな内容なんだろう…。スマホで文化祭のサイトを確認したいけど電源を切っている状態だし、生殺しだ…。)
「ふふ、も~しょうがないなぁ♪ね、すずめちゃん、ちょっと耳貸して。」
「え、なに?」
続きが気になり過ぎて唸っている俺にシマちゃんはにやりと笑いながら手招きする。
そして俺の耳元に内緒話時のように両手を口元に添えて、至極小さな声で第二次審査について語り始めた。
『なんと、第二次審査の内容は《愛する彼に逆プロポーズ大作戦♡》!…なんだけど、これは他の審査と違って毎年恒例の名物審査で、出場者が観客の中に仕込んだエキストラをステージ上に呼び出して、その人にプロポーズをするというシチュエーションなのね。』
へえ、こっちもちゃんとミスターコンの出場者みたいにエキストラを用意しなきゃいけないんだな。ひなやシマちゃんが誰を選んだのか気になるところだ。
『それで、ここからが目玉なんだけど…なんと仕込みのエキストラじゃなくて、自分の晴れ舞台を見に来たであろう彼氏を突然サプライズで呼び出してプロポーズして、それが成功すると、一生幸せな番になれるっていうジンクスがあるんだよね~♪』
「え、なにそれ!?」
『しー!声が大きいよ~!それでね、今朝のリハでスタッフに一応誰を呼び出すつもりなのか申請をしなきゃだったんだけど、ひなちゃんは鷹崎くんを連れてくるって言ってたんだよねぇ。』
『…俺そんなの聞いてない…。』
『あ!もち、ひなちゃんが勝手に言ってるだけだよ。色々と勘違いちゃんだからあの子。でも、ヤバ崎くんも一応呼ばれた以上はステージには上がらなきゃいけないわけでしょ?なのに今頃彼はすずめちゃんの尻を追っかけてコンテストに来るかどうかも怪しいわけで…
__もしサプライズで呼びだした本命が自分の晴れ舞台を見にすら来なかったと知れたら、さぞ気持ちいい…じゃなかった可哀そうなことになりそうだなって思ってね…。』
可哀そうとか言いながら、シマちゃんが愉悦の混じった声をあげているのが分かる。
成程…、そうなったら、シマちゃんだけじゃなく、俺の気持ちもスカッとできそうだ。
いやでも、ひなは一応総一郎の本命なわけだし、なんだかんだで見に来そうなものだけど、どうなんだろう…。
「あれぇ、すずめちゃん!!ここは選ばれたオメガしかいないはずじゃないのぉ?」
噂をすれば、渦中の意地の悪そうな幼馴染のにやけ声が近づいてくる。
(やけにテンションが高いというか、機嫌が良いな…。)
多分さっき総一郎が止まりに来る等と言っていたのを真に受けて有頂天なのだろう。
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