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第1章
第50話《すずめ(の貞操)のピンチと思わぬ救世主》
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《仕方ないな。すずめがそこまで言うなら今から一緒に帰ろう。今回だけは許してあげる。家に帰ったら沢山仲直りHしようね。》
総一郎のあまりの手のひら返しメッセージに思わずスマホを取り落としそうになる。
(は?嘘だろ、なんでだよ!?ついさっきまでイチャイチャしながらひなの所に泊まりに行くって宣言したばかりだろ!)
これからオメコン観戦や明日に向けての準備とクソ忙しい時に、今から一緒に帰るだなんて冗談ではないので、即断りのメッセージを入れておく。
《気持ちは嬉しいけど、あまり俺を甘やかさないで…。総一郎君の言う通り今日は俺一人で反省するべきだと思うんだ…(;_:)》
《ん?もう許したからいいんだよ?本当はまだちょっと怒ってるんだけど、すずめも反省してるみたいだからね。》
なんでこいつこんなにいちいち上から目線なんだ。腹立つな。
こうなったら意地でも今日は総一郎と同じベッドになんて寝てやらないぞ。
《え、総一郎君、まだ怒ってるの…?やだこわい…。俺、怒ってる総一郎君と一緒にいるのやだ!それにまだ色々文化祭見てまわりたいから帰らないもん!(>_<)!》
《こーら、我儘言わないの。駄々こねちゃってかわいいな。大丈夫、もう怒ってないよ?僕が柄にもなく意地悪な事言っちゃったから拗ねちゃってるんだよね?今から電話できる?》
ピロリロリロリン♪
怯えているフリをしてやり過ごそうとするも全然引いてくれず、とうとう総一郎から電話が鳴る。
ああ…なんだか、面倒くさい流れになってしまった。
総一郎とひながお泊りの約束を目の前で交わしていたので、確実に今夜は俺の所には帰ってこないと高を括って少々煽りすぎたのかもしれない。
ピロリロリロリン♪
ピロリロリロリン♪
ピロリロリロリン♪
ピロリロリロリン♪
ピロリロリロリン♪
(いや、流石に電話かけすぎだろ。しつこいな…。)
面倒くさくて6回ほど電話を無視したところで、
《すずめ、一回でもいいから電話に出てくれないか?さっきは僕の言い方がきつくてびっくりさせちゃったね。早く震える君をよしよしして抱き締めにいきたい。GPS見たけど、すずめはまだコンテスト会場内にいるよね?僕の方から会いに行くからそこで待ってて。》
等と、俺にとってはちょっとホラーじみたメッセージを送ってこられて全身がぶるるっと戦慄した。
(ひっ!何でこうなるんだよ。普通本命にお泊りデートに誘われたらそっちを優先するだろ!)
まさか、あの本命のひなとの約束をあっさり破るつもりなのか?
それに今までこんなにしつこかったことなんてないのに、流石に様子がおかしい。
多分今日、人生で初めての恥と敗北を味わったせいで、本命が誰かも一旦忘れるほど頭が混乱しているのかもしれない。
仕方ない…。先ほどのメッセージが名案どころか、失策だったのは認めよう。
とりあえず、総一郎が俺たちのマンションに普通に帰ってきてしまうとして、俺が別の場所に泊まればいいのだ。
(今日のところはうちの実家に泊めてもらえるように電話しとこう…。)
ただでさえ、妹と兄に俺の彼氏がクズだとバレかけている時に実家に泊まらせてもらうなんて、十中八九家族全員に根掘り葉掘り聞かれるだろうが、今まで泊まらせてくれるような友達も作ってこなかったし、ホテル代も馬鹿にならないので苦肉の策だ。
ひとまず、毎日のようにひなを抱いている総一郎の性の捌け口にされるのだけは勘弁願いたい。
(お父さんは仕事だろうし、お母さんに電話しとこうかな。)
俺はスマホの電話帳を開き、さっそく母に電話をかけた。
プルルr…ピッ
(え…早い!あのお母さんがワンコールもしないうちに電話に出るなんて!)
母は機械に疎く、着信が来た時はいつもわたわたするので、毎回電話をかけた時には、出てくれるまで絶対6コール以上かかっていたはずだ。
(ちょっと連絡しないうちに機械音痴も大分治ったみたいだな。)
彼氏に夢中で以前電話をかけたのは数か月前なので、母の思わぬ進歩に感心する。
「あ、もしもし。すずめです…!本当に急で申し訳ないんだけど今日一日泊まりに行っていいっ…?ちょっと総一郎君とトラブルになってしまってマンションには帰りたくなくて…」
以前から母には、『家に泊まりに来る時は絶対数日前には連絡してね』と釘をさされていたので、怒らせないためにも素直に(浮気の件は除いて)事情を話しておこう。
(ああ…多分『もう!帰ってくるのならせめて3日前には連絡してほしかった…!事前に言ってくれたら、すずちゃんの好きなカニとか和菓子とか抹茶ケーキとか本場の讃岐うどんとか色々取り寄せられたのに…!!』なんて言ってプリプリ嘆いてくるんだろうな…。)
数か月前も実家に数分だけ私物を取りに行っただけでそう言って怒られたからな…。
『もしもし、すずめさん?早速連絡をくれて嬉しいです。俺としては大歓迎なのですが、トラブルとは…?大丈夫なのですか…?』
母の嘆き声をじっと構えていたら、何だか電話口からやたら活舌のいい男性の美声が聞こえてくる。
(あれ?お母さんにしては随分声が低いな……?)
おかしいな…。うちの母親は敬語なんて使わないし、同じ男性とはいえΩなのでもっと中性的な声をしていたはずだ。
電話帳に同じア行で登録してある父かとも思ったけど、それも違う。
お父さんは逆にとても声が低い。
(もしかして俺…間違い電話しちゃった……?)
おそるおそる通話画面を見ると、そこには『運命の番さん(仮)』と表記されていた。
(あっ…この人、今朝連絡先を渡されて登録しておいた黒帽子&サングラス&黒マスクの人だ…!)
この人もお母さんと同じア行に登録してたから誤タップしちゃったのか…。
「すみませんっ…!間違い電話でした、、、急に変な事を言ってごめんなさい…」
『待って。さっきの切羽詰まった声…ただごとではありませんよね?事情は存じ上げませんが、何か俺に協力できる事はありませんか?』
総一郎のあまりの手のひら返しメッセージに思わずスマホを取り落としそうになる。
(は?嘘だろ、なんでだよ!?ついさっきまでイチャイチャしながらひなの所に泊まりに行くって宣言したばかりだろ!)
これからオメコン観戦や明日に向けての準備とクソ忙しい時に、今から一緒に帰るだなんて冗談ではないので、即断りのメッセージを入れておく。
《気持ちは嬉しいけど、あまり俺を甘やかさないで…。総一郎君の言う通り今日は俺一人で反省するべきだと思うんだ…(;_:)》
《ん?もう許したからいいんだよ?本当はまだちょっと怒ってるんだけど、すずめも反省してるみたいだからね。》
なんでこいつこんなにいちいち上から目線なんだ。腹立つな。
こうなったら意地でも今日は総一郎と同じベッドになんて寝てやらないぞ。
《え、総一郎君、まだ怒ってるの…?やだこわい…。俺、怒ってる総一郎君と一緒にいるのやだ!それにまだ色々文化祭見てまわりたいから帰らないもん!(>_<)!》
《こーら、我儘言わないの。駄々こねちゃってかわいいな。大丈夫、もう怒ってないよ?僕が柄にもなく意地悪な事言っちゃったから拗ねちゃってるんだよね?今から電話できる?》
ピロリロリロリン♪
怯えているフリをしてやり過ごそうとするも全然引いてくれず、とうとう総一郎から電話が鳴る。
ああ…なんだか、面倒くさい流れになってしまった。
総一郎とひながお泊りの約束を目の前で交わしていたので、確実に今夜は俺の所には帰ってこないと高を括って少々煽りすぎたのかもしれない。
ピロリロリロリン♪
ピロリロリロリン♪
ピロリロリロリン♪
ピロリロリロリン♪
ピロリロリロリン♪
(いや、流石に電話かけすぎだろ。しつこいな…。)
面倒くさくて6回ほど電話を無視したところで、
《すずめ、一回でもいいから電話に出てくれないか?さっきは僕の言い方がきつくてびっくりさせちゃったね。早く震える君をよしよしして抱き締めにいきたい。GPS見たけど、すずめはまだコンテスト会場内にいるよね?僕の方から会いに行くからそこで待ってて。》
等と、俺にとってはちょっとホラーじみたメッセージを送ってこられて全身がぶるるっと戦慄した。
(ひっ!何でこうなるんだよ。普通本命にお泊りデートに誘われたらそっちを優先するだろ!)
まさか、あの本命のひなとの約束をあっさり破るつもりなのか?
それに今までこんなにしつこかったことなんてないのに、流石に様子がおかしい。
多分今日、人生で初めての恥と敗北を味わったせいで、本命が誰かも一旦忘れるほど頭が混乱しているのかもしれない。
仕方ない…。先ほどのメッセージが名案どころか、失策だったのは認めよう。
とりあえず、総一郎が俺たちのマンションに普通に帰ってきてしまうとして、俺が別の場所に泊まればいいのだ。
(今日のところはうちの実家に泊めてもらえるように電話しとこう…。)
ただでさえ、妹と兄に俺の彼氏がクズだとバレかけている時に実家に泊まらせてもらうなんて、十中八九家族全員に根掘り葉掘り聞かれるだろうが、今まで泊まらせてくれるような友達も作ってこなかったし、ホテル代も馬鹿にならないので苦肉の策だ。
ひとまず、毎日のようにひなを抱いている総一郎の性の捌け口にされるのだけは勘弁願いたい。
(お父さんは仕事だろうし、お母さんに電話しとこうかな。)
俺はスマホの電話帳を開き、さっそく母に電話をかけた。
プルルr…ピッ
(え…早い!あのお母さんがワンコールもしないうちに電話に出るなんて!)
母は機械に疎く、着信が来た時はいつもわたわたするので、毎回電話をかけた時には、出てくれるまで絶対6コール以上かかっていたはずだ。
(ちょっと連絡しないうちに機械音痴も大分治ったみたいだな。)
彼氏に夢中で以前電話をかけたのは数か月前なので、母の思わぬ進歩に感心する。
「あ、もしもし。すずめです…!本当に急で申し訳ないんだけど今日一日泊まりに行っていいっ…?ちょっと総一郎君とトラブルになってしまってマンションには帰りたくなくて…」
以前から母には、『家に泊まりに来る時は絶対数日前には連絡してね』と釘をさされていたので、怒らせないためにも素直に(浮気の件は除いて)事情を話しておこう。
(ああ…多分『もう!帰ってくるのならせめて3日前には連絡してほしかった…!事前に言ってくれたら、すずちゃんの好きなカニとか和菓子とか抹茶ケーキとか本場の讃岐うどんとか色々取り寄せられたのに…!!』なんて言ってプリプリ嘆いてくるんだろうな…。)
数か月前も実家に数分だけ私物を取りに行っただけでそう言って怒られたからな…。
『もしもし、すずめさん?早速連絡をくれて嬉しいです。俺としては大歓迎なのですが、トラブルとは…?大丈夫なのですか…?』
母の嘆き声をじっと構えていたら、何だか電話口からやたら活舌のいい男性の美声が聞こえてくる。
(あれ?お母さんにしては随分声が低いな……?)
おかしいな…。うちの母親は敬語なんて使わないし、同じ男性とはいえΩなのでもっと中性的な声をしていたはずだ。
電話帳に同じア行で登録してある父かとも思ったけど、それも違う。
お父さんは逆にとても声が低い。
(もしかして俺…間違い電話しちゃった……?)
おそるおそる通話画面を見ると、そこには『運命の番さん(仮)』と表記されていた。
(あっ…この人、今朝連絡先を渡されて登録しておいた黒帽子&サングラス&黒マスクの人だ…!)
この人もお母さんと同じア行に登録してたから誤タップしちゃったのか…。
「すみませんっ…!間違い電話でした、、、急に変な事を言ってごめんなさい…」
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