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第1章
第41話《すずめの変わりように驚く総一郎》
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「すずめ……?!なのか…?」
「あ、ごめん総一郎君、ぶつかっちゃった。」
タキシード姿の総一郎が少しよろけた俺の肩を後ろから支える。
(総一郎、流石にタキシードが嫌味なくらい似合ってるな。)
こうしてみると見た目だけはキリっと引き締まった美貌でまるで騎士みたいだ。中身はゴミカスだけど。
「あっ総君っ着替えてきたんだね!すずめちゃんと談笑してたから気づかなかったぁ。新郎姿すっごい似合ってる♡」
総一郎が現れた手前、少しでもいい子ぶりたいのか、ひなは俺のメイクを崩そうとしていた手を引っ込め、言い訳しながら総一郎の後ろへと隠れた。
そして、綺麗に着飾った総一郎を見てひたすらうっとりとしている。
「すずめ…その化粧は一体……。」
総一郎の方はというと、呆けた様子で俺の顔をずっと凝視していた。
「ああ、これ?すごいでしょ。さっき偶然プロのメイクさんに出会って、あまりに酷い化粧だからって直してもらったんだ。これで少しは見やすくなったでしょ?」
あんなに妖怪に見える位酷かった化粧があっという間に様変わりするなんて、匠の技だ。
本当はあの酷い化粧のままギャグ要因としてコンテストに出るのもアリだったのかもしれないけど、ウケるかどうかも分からないし、今思えば例えネタだとしてもただのエキストラが目立ちすぎるのはあまりよくないよな。
むしろ俺が普通の控えめな花嫁になる事によって、逆に相田君の迫力が際立つのかもしれない。
あくまでこれはミスターコンなのだから、ギャグ要因としてだけではなく、もっと相田君自身の魅力を押し出したいところだ。せっかく妹も見てるんだし。
◇◇◇
「そろそろお時間でーす。新郎新婦の方々~エントリーナンバーの順からランウェイを歩く準備をお願いしまーす!」
着替えのために与えられた準備時間が終わり、コンテストのスタッフさんが第一審査の段取りを始める。
「…すずめっ!待ってくれ…!」
俺も相田君の隣に立ってランウェイを歩く準備をしていると、総一郎に強く腕を掴まれた。
「っ!?いきなりどうしたの?」
突然大声で話しかけられてびっくりする。
何気に総一郎の大声は初めて聞いたかもしれない。
「どうしたのじゃないだろ…!そもそもすずめは僕の恋人なのに何でこんな…!!」
「鷹崎さーん?もう時間なので、早く持ち場についてください。相田さんとその花嫁さんは先頭付近でスタンバイなので、あなたもご自分の花嫁さんと最後尾に並んでいただかないと困りますよー!」
スタッフの人が自分の声かけを無視して一向にエントリー順に整列をしない総一郎にイラついたようで、強制的に最後尾まで連行していってひなと手を無理やり繋がせた。
多分ひなに手綱を握っておけという事だろう。
気を取り直して前を向くと、その数秒後に後ろからダンッと壁を叩く音が聞こえる。
思わず再度振り返ってみると、苦い顔をして体育館の入り口の壁に片手を置いている総一郎と、その背中に手を当てながらこちらを物凄い形相で睨むひなの姿があった。
(うわ、見なければよかった…。ひなの顔がまるで般若のようだ。)
というかこれ完全にひなとの幼馴染の関係は破綻してるよな?
俺がいくら下手に出てやっても、あちらの方が俺に対する敵意を隠さなくなっている気がする。
「なんだか彼氏さんめちゃくちゃイライラしてるっすね…。疑問に思ったんすけどあんなに怒るならなんで義兄さんと組まなかったんすか?俺とつばめのように他校の生徒同士って訳でもないのに、他の子と組んでる時点でおかしいと思うっすけど…」
「そうだよね…」
一連の流れをそばで眺めていた相田君が不思議そうに俺に問いかけてくる。
まぁ普通は疑問に思うよな。
ここで、ひなが本命だからに決まってるだろ?と大声で口に出してしまいたいが我慢だ。
「あ、ごめん総一郎君、ぶつかっちゃった。」
タキシード姿の総一郎が少しよろけた俺の肩を後ろから支える。
(総一郎、流石にタキシードが嫌味なくらい似合ってるな。)
こうしてみると見た目だけはキリっと引き締まった美貌でまるで騎士みたいだ。中身はゴミカスだけど。
「あっ総君っ着替えてきたんだね!すずめちゃんと談笑してたから気づかなかったぁ。新郎姿すっごい似合ってる♡」
総一郎が現れた手前、少しでもいい子ぶりたいのか、ひなは俺のメイクを崩そうとしていた手を引っ込め、言い訳しながら総一郎の後ろへと隠れた。
そして、綺麗に着飾った総一郎を見てひたすらうっとりとしている。
「すずめ…その化粧は一体……。」
総一郎の方はというと、呆けた様子で俺の顔をずっと凝視していた。
「ああ、これ?すごいでしょ。さっき偶然プロのメイクさんに出会って、あまりに酷い化粧だからって直してもらったんだ。これで少しは見やすくなったでしょ?」
あんなに妖怪に見える位酷かった化粧があっという間に様変わりするなんて、匠の技だ。
本当はあの酷い化粧のままギャグ要因としてコンテストに出るのもアリだったのかもしれないけど、ウケるかどうかも分からないし、今思えば例えネタだとしてもただのエキストラが目立ちすぎるのはあまりよくないよな。
むしろ俺が普通の控えめな花嫁になる事によって、逆に相田君の迫力が際立つのかもしれない。
あくまでこれはミスターコンなのだから、ギャグ要因としてだけではなく、もっと相田君自身の魅力を押し出したいところだ。せっかく妹も見てるんだし。
◇◇◇
「そろそろお時間でーす。新郎新婦の方々~エントリーナンバーの順からランウェイを歩く準備をお願いしまーす!」
着替えのために与えられた準備時間が終わり、コンテストのスタッフさんが第一審査の段取りを始める。
「…すずめっ!待ってくれ…!」
俺も相田君の隣に立ってランウェイを歩く準備をしていると、総一郎に強く腕を掴まれた。
「っ!?いきなりどうしたの?」
突然大声で話しかけられてびっくりする。
何気に総一郎の大声は初めて聞いたかもしれない。
「どうしたのじゃないだろ…!そもそもすずめは僕の恋人なのに何でこんな…!!」
「鷹崎さーん?もう時間なので、早く持ち場についてください。相田さんとその花嫁さんは先頭付近でスタンバイなので、あなたもご自分の花嫁さんと最後尾に並んでいただかないと困りますよー!」
スタッフの人が自分の声かけを無視して一向にエントリー順に整列をしない総一郎にイラついたようで、強制的に最後尾まで連行していってひなと手を無理やり繋がせた。
多分ひなに手綱を握っておけという事だろう。
気を取り直して前を向くと、その数秒後に後ろからダンッと壁を叩く音が聞こえる。
思わず再度振り返ってみると、苦い顔をして体育館の入り口の壁に片手を置いている総一郎と、その背中に手を当てながらこちらを物凄い形相で睨むひなの姿があった。
(うわ、見なければよかった…。ひなの顔がまるで般若のようだ。)
というかこれ完全にひなとの幼馴染の関係は破綻してるよな?
俺がいくら下手に出てやっても、あちらの方が俺に対する敵意を隠さなくなっている気がする。
「なんだか彼氏さんめちゃくちゃイライラしてるっすね…。疑問に思ったんすけどあんなに怒るならなんで義兄さんと組まなかったんすか?俺とつばめのように他校の生徒同士って訳でもないのに、他の子と組んでる時点でおかしいと思うっすけど…」
「そうだよね…」
一連の流れをそばで眺めていた相田君が不思議そうに俺に問いかけてくる。
まぁ普通は疑問に思うよな。
ここで、ひなが本命だからに決まってるだろ?と大声で口に出してしまいたいが我慢だ。
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