浮気αと絶許Ω~裏切りに激怒したオメガの復讐~

飴雨あめ

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第1章

第36話《ミスターコン直前》

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おそらく総一郎の好みのドレスを着たいという気持ちと、俺が総一郎との結婚式にこういうのをを着たいと言ったので、自分が着てやろうという意地汚い気持ちが沸いたのかもしれない。


何はともあれ、これでミスターコンで総一郎に低評価を入れる女性客も多くなりそうだな。

総一郎に選ばれた美しいΩへの嫉妬半分、ミスターコンなのに自分も目立とうとしてる花嫁へのヘイト半分といったところか。
ひなが総一郎を狙ってあくどい事をしているという噂も広まっているだろう時に、これは非常に悪手だ。
そして、その後にひなが同じドレスでオメコンに挑もうものなら、更に低評価が加速するだろう。



ひなが絢爛豪華なドレスを着てうっとりとしている間に、衣装保管室に設備されている化粧台で俺もぱっぱとメイクをすませる。

(化粧なんてしたことないけど、まぁ大体でいいよな。ここをこうして…うーん、もう少し口紅は赤い方が可愛いか…チークも濃ゆい方が感じが良くなりそうだ…あれ。なんかやばくなってきたかも…。)


折角のコンテストなので、どうせなら少しくらいは綺麗にしたいとは思うのだが、綺麗にしようとすればするほど変な顔になっていく。

(なんかもう逆に鏡を見ない方がいいのかもしれない…。)

俺は途中から敢えて鏡を見ずにメイクをすることにした。
まぁ会場が盛り上がると考えれば、多少ギャグっぽくなっても許されるだろ。


(よし!こんなもんかな。とりあえずこれで相田君と合流しよう。)

今自分の姿を見てしまうと大勢の前を歩くのが恥ずかしくなって足がすくみそうなので、出来上がりを確認せずにそのまま相田君が着替えている被服室に向かった。


「相田くーん!こっちは準備できたよ。どんな感じかな?」
「お!おおお!これは………!!!?」

まだ袴の試着途中だった相田君が俺の姿を見て大袈裟に驚いて見せる。
(え、予想外に反応が良い。もしかして奇跡的に可愛くなってたりする?)


「な、な……!」

「な?」


「懐かしいっすーー!!!昔お祖母ちゃんが大切にしていた日本人形にそっくりっす!!!この絶妙にへちゃむくれな愛らしさがまさに生き写しっす!!」

相田君は手を叩いて喜んだあとわっはっはと豪快に笑い転げた。


(へちゃむくれ…少なくとも美人とはかけ離れた言葉だな…。)


やはり世の中そう何でもかんでもうまくいくものではないな。
こういう時、少女漫画だったら《嘘、これが私…?》と、超絶美少女になったりするものだが、まさかへちゃむくれだと言われてしまうとは…。


(美人が多いとされているΩの端くれとしてはちょっと複雑だけど、まぁ俺が美しくある必要はないからな…。)
そう、俺の隣を歩く相田君さえ目立てばいいのだ。そして強面な新郎の横に日本人形がいる事でほんの少しでも場をほっこりさせられれば儲けものだろう。


「いやーでもこういうのいいっすね!笑いありおふざけありのコンテスト!!これぞ健全な文化祭!って感じで、いい思い出になりそうっす!!」
「あはは…俺は真剣なんだけどね。」


相田君はひとしきり笑ったあと、『自分も義兄さんに負けずに会場を笑わせたいっす!!』とせかせかと紋付き袴の試着を終えて、仕上げにいつものサングラスをかけた。


「え、紋付き袴にサングラス?」
「はい!これは自分のトレードマークっすから!いついかなる時もかかせないっす!!」


…日本人形花嫁にサングラス新郎…これはもう明らかにネタ枠判定されるな…。
まぁネタだろうが真剣だろうが関係ない。このコンテストはとにかく得点が多かった者が勝つ。

ミスターコンの出場者をスマホで改めてよく見てみると、相田君以外は皆正統派のイケメンα揃いだ。
花嫁役も自分の番か恋人の美人を連れてくるだろうし、どう転んでもギャグ要因は俺達以外に出てこないと思われる。

最初はβ男性受けのみを狙っていたけど、これなら普通に純粋な高得点票も入るかもしれない。



「とかなんとかやってる間に、そろそろ文化祭の出場者の集合時間っすね!」
「もうそんな時間か。じゃあ俺達も会場に向かおうか。」


時計を確認した相田君が試着した紋付き袴をサッと脱いで小脇に抱える。


(確か、集合場所は第二体育館のステージ裏の控室だったな。)


俺達は少し時間に余裕を持たせるように、早歩きしながら第二体育館に向かう。

途中で通りすがりのお客さん達に、俺が日本人形なばかりにお化け屋敷の場所を何度も聞かれてしまって時間をロスしてしまったが、何とか集合時間の5分前に到着した。





控室に着くと、豪華なドレスを身にまとい、美しすぎる花嫁となったひながこちらを見て案の定大笑いする。


「きゃはははは!なにそれ?流石にギャグだよねw??すずめちゃんってお笑いの才能もあったんだー!」

周りの出場者や、その花嫁役までもこちらを見てくすくすと笑っていて、ほんの少し羞恥心を覚えた。


「あ!もしかして、思い出作りに来たの?でも、お題にそってないし服に着られてる感あるよね…総君はどう思う~?」

ひなが控室の奥の方に座っている総一郎を呼びに行って、俺の白無垢姿への感想を求める。


「すずめ…?まさか君も花嫁役として出るのか…?なんで言わなかったの?相手は誰?」
「いや、知り合いにどうしてもって頼まれて。相田長介くんって言うんだけど…ほらこの人。」

俺がコンテストに出る事に気付いた総一郎は自分の事は棚に上げて、何も報告が無かった事に不機嫌な様子だ。

(なんだこいつ。言っておくが、ひなと組むことを俺に言わなかったお前が不機嫌になる資格は微塵もないからな!)


「こんちはっす!相田長介といいます!!今日と明日は良きライバルとしてよろしくお願いするっす!!!」
「ああ、なんだβか。…じゃぁいいや。」


総一郎は、自己紹介をしながら手を差し伸べる相田君を軽く無視し、相田君を頭から下まで見下ろして鼻で笑う。
多分自分の敵ではないと思ったのだろうが、あまりにも失礼だ。


(てかその仕草、さっきひなもやってたけど、やっぱりカップルってこういう所も似てしまうのかな…。)


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