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第1章
第25話《自分の白無垢姿に衝撃を受けるすずめ》
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まぁ、人にはそれぞれ事情があるか…。
あのα以外は人間だと認識しているかどうかも怪しいひなの事だ。
フクロー君の事を鑑みても俺よりひどい目にあっている被害者も思ったよりいるのかもしれない。
そんなことよりもだ。
もしシマちゃんがコンテストに優勝するのなら、それは俺にとってもかなり都合が良い。
手助けしてあげたいところだけど、こっちはミスターコンの事で手一杯だし、シマちゃんはシマちゃんで既に優勝する自信があるということは、余程ひなの悪評の拡散がうまくいっているのだろう。
《総一郎に思いを寄せているひなが取り巻きを使って総一郎の恋人を攻撃していた。
他人の恋人を暴力と圧力で寝取ろうとするなんて最低だ。》
と、まぁ噂を流すとしたらこんなところだろうか。
そういった目撃者も少なからず存在する真実味のある噂の渦中で、明日のミスターコンで総一郎とひなが新郎新婦役で仲睦まじくランウェイを歩こうものなら、余計にヘイトが溜まって一部からはブーイングも起こるだろう。
そうなれば他の観客たちも何があったのか怪訝に思って、勝手に自ら噂を探りに行く側にまわってくれる。
皆有名人の炎上系ネタが大好きだからな。
こうやってあいつらがコンテストの準備も碌にせずに自分の美しさに胡坐をかいて浮気デートしている裏ではこんなに大きな波風が立っているのだ。
◇◇◇
「それで、すずめちゃんはどんな衣装を探してるの?」
いつのまにかウエディングドレスを脱いで私服に着替えたらしいシマちゃんが俺の隣で首を傾げる。
「ああ。白無垢だよ。ミスターコン第一審査のエキストラで着るんだ。」
「ミスターコン!やっぱりすずめちゃんもランウェイ歩くんだ!…ってあれ?ミスターコンのお題って確かタキシードじゃなかったっけ?タキシードに白無垢??」
シマちゃんは明らかに不可解といった表情を浮かべている。無理もない。
まさか、お題がタキシードなのに紋付き袴で挑もうとする出場者がいるなんて思いもしないよな。
「いや…俺、出場者の相田長介君っていう人と組むことになってるんだけど…彼、紋付き袴が着たいらしいんだ。だから俺も必然的に白無垢になるんだよね。」
「ん?相田君…?え…相手鷹崎君じゃないの!?恋人同士なのに…?」
「あはは、総一郎君にはどうしてか誘われなかったんだ。」
俺が苦笑いしながらそう呟くと、シマちゃんは色々察したのか同情した顔をして肩をポンポンと叩いてきた。
「大丈夫だよ!明日サプライズで誘われるかもしれないし。もしそうじゃなかったらランウェイを相田君って人と歩いていっぱいヤキモチ焼かせたらいいよ!」
「ありがとう…うん、そうする!」
シマちゃんは共通の敵を持つ味方ではあるけど、俺があいつらに復讐しようとしている事は家族にすら言うつもりはない。
誰も俺の復讐心を知らないまま、勝手にひなと総一郎が自滅していくように仕向けるのが理想なのだ。
◇◇◇
「あ!あった!白無垢!」
シマちゃんと雑談を交わしながらも衣装を探していると、お目当ての白無垢は割とすぐに見つかった。
(半ば見つからないって諦めてたのに…。〇×大学の文化祭ってすごいんだな…。)
「え。見つかった?ってわあ!綺麗な衣装!」
「……うん、すごいね。俺、こんなの似合うかな…」
「絶対似合うよ!試着してみよ!」
白い着物には、細かな模様が施されており、美しいオフホワイトで大人っぽい色合いだ。
(着るのちょっとわくわくするかも。)
シマちゃんに言われるがまま、軽く白無垢に袖を通して近くにあったスタンドミラーで自分の姿を見てみると、これまた見事に似合ってなかった。
「…………あれ?なんか俺、絶望的に似合ってないよね?なんで??」
「いやいや!そんな、七五三みたいでかわいいよ?」
うーん…男にしては華奢なはずなんだけど…いかり肩だからかな…。
衣装は完璧なのに全然大人っぽさも色っぽさもない。
(ショックだ。俺ってシンプルに女装似合わないんだな…。他のΩの人達はメイド服とか似合ってたのに。)
この様子じゃウエディングドレスなんかもっと悲惨だっただろう。
もしかしたら総一郎が俺を誘わなかったのはこれを見抜いていて、恥を掻きたくなかったからなのか…?
何はともあれ、白無垢で良かった。ありがとう相田君。
観客からはくすくす笑われそうだが、復讐のためなら手段を選ばないと決めたんだ。
そういう笑われ役も相田君だけに背負わせるのは未来の義兄としてダメだよな、うん。
実際ほんの少しがっかりしたけど、相田君のポジティブさを俺も見習わなければ。
あのα以外は人間だと認識しているかどうかも怪しいひなの事だ。
フクロー君の事を鑑みても俺よりひどい目にあっている被害者も思ったよりいるのかもしれない。
そんなことよりもだ。
もしシマちゃんがコンテストに優勝するのなら、それは俺にとってもかなり都合が良い。
手助けしてあげたいところだけど、こっちはミスターコンの事で手一杯だし、シマちゃんはシマちゃんで既に優勝する自信があるということは、余程ひなの悪評の拡散がうまくいっているのだろう。
《総一郎に思いを寄せているひなが取り巻きを使って総一郎の恋人を攻撃していた。
他人の恋人を暴力と圧力で寝取ろうとするなんて最低だ。》
と、まぁ噂を流すとしたらこんなところだろうか。
そういった目撃者も少なからず存在する真実味のある噂の渦中で、明日のミスターコンで総一郎とひなが新郎新婦役で仲睦まじくランウェイを歩こうものなら、余計にヘイトが溜まって一部からはブーイングも起こるだろう。
そうなれば他の観客たちも何があったのか怪訝に思って、勝手に自ら噂を探りに行く側にまわってくれる。
皆有名人の炎上系ネタが大好きだからな。
こうやってあいつらがコンテストの準備も碌にせずに自分の美しさに胡坐をかいて浮気デートしている裏ではこんなに大きな波風が立っているのだ。
◇◇◇
「それで、すずめちゃんはどんな衣装を探してるの?」
いつのまにかウエディングドレスを脱いで私服に着替えたらしいシマちゃんが俺の隣で首を傾げる。
「ああ。白無垢だよ。ミスターコン第一審査のエキストラで着るんだ。」
「ミスターコン!やっぱりすずめちゃんもランウェイ歩くんだ!…ってあれ?ミスターコンのお題って確かタキシードじゃなかったっけ?タキシードに白無垢??」
シマちゃんは明らかに不可解といった表情を浮かべている。無理もない。
まさか、お題がタキシードなのに紋付き袴で挑もうとする出場者がいるなんて思いもしないよな。
「いや…俺、出場者の相田長介君っていう人と組むことになってるんだけど…彼、紋付き袴が着たいらしいんだ。だから俺も必然的に白無垢になるんだよね。」
「ん?相田君…?え…相手鷹崎君じゃないの!?恋人同士なのに…?」
「あはは、総一郎君にはどうしてか誘われなかったんだ。」
俺が苦笑いしながらそう呟くと、シマちゃんは色々察したのか同情した顔をして肩をポンポンと叩いてきた。
「大丈夫だよ!明日サプライズで誘われるかもしれないし。もしそうじゃなかったらランウェイを相田君って人と歩いていっぱいヤキモチ焼かせたらいいよ!」
「ありがとう…うん、そうする!」
シマちゃんは共通の敵を持つ味方ではあるけど、俺があいつらに復讐しようとしている事は家族にすら言うつもりはない。
誰も俺の復讐心を知らないまま、勝手にひなと総一郎が自滅していくように仕向けるのが理想なのだ。
◇◇◇
「あ!あった!白無垢!」
シマちゃんと雑談を交わしながらも衣装を探していると、お目当ての白無垢は割とすぐに見つかった。
(半ば見つからないって諦めてたのに…。〇×大学の文化祭ってすごいんだな…。)
「え。見つかった?ってわあ!綺麗な衣装!」
「……うん、すごいね。俺、こんなの似合うかな…」
「絶対似合うよ!試着してみよ!」
白い着物には、細かな模様が施されており、美しいオフホワイトで大人っぽい色合いだ。
(着るのちょっとわくわくするかも。)
シマちゃんに言われるがまま、軽く白無垢に袖を通して近くにあったスタンドミラーで自分の姿を見てみると、これまた見事に似合ってなかった。
「…………あれ?なんか俺、絶望的に似合ってないよね?なんで??」
「いやいや!そんな、七五三みたいでかわいいよ?」
うーん…男にしては華奢なはずなんだけど…いかり肩だからかな…。
衣装は完璧なのに全然大人っぽさも色っぽさもない。
(ショックだ。俺ってシンプルに女装似合わないんだな…。他のΩの人達はメイド服とか似合ってたのに。)
この様子じゃウエディングドレスなんかもっと悲惨だっただろう。
もしかしたら総一郎が俺を誘わなかったのはこれを見抜いていて、恥を掻きたくなかったからなのか…?
何はともあれ、白無垢で良かった。ありがとう相田君。
観客からはくすくす笑われそうだが、復讐のためなら手段を選ばないと決めたんだ。
そういう笑われ役も相田君だけに背負わせるのは未来の義兄としてダメだよな、うん。
実際ほんの少しがっかりしたけど、相田君のポジティブさを俺も見習わなければ。
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