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第1章
第22話《彼氏と幼馴染からの未読メッセージ》
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俺は一旦相田君と離れた後、晴れやかな気持ちで体育館に戻った。
(午後の作業開始にはどうにか間に合ったみたいだな。)
「霧下さん?福田くんに具合悪いって聞いたけど休まなくて大丈夫!?」
「大丈夫です。ちょっと休んだら元気になりました!」
フクロー君は文化祭準備の係員に、もしかしたら午後からは俺が体調不良で来ないかもしれない旨を伝えておいてくれたらしく、時間通りに手伝いに向かうと係員に却って心配されてしまった。
これから文化祭の後も、時間をかけてひなや総一郎が全て悪いという空気を作っていく布石として、俺自身はちゃんとやるべきことをやって、不要に周りの好感度を下げない様にしないとな。
◇◇◇
「みなさーん!本日はお手伝いいただきありがとうございました!おかげで予定よりも早く作業が終わりました!ジュースを用意しましたので各自一本持っていってくださーい!」
館内の椅子が綺麗に並べられ、係員が終了の挨拶をする。
(やった!ジュースゲット♪昼はオレンジ飲んだからレモンスカッシュ味にしよ。)
ジュースを貰いながらなんとなくステージ横にある時計を見るともう15時を回っていた。
あまり遅く帰るのもあれだし、さっさと衣装保管室に白無垢があるか確認して帰ろう。
(あ!その前に相田君に貰ったメッセージアプリのID登録しておかないと。)
午後からの作業に間に合わせるために、後回しになっていたID登録を行おうとメッセージアプリを開くと、2件の未読メッセージが届いていた。
(あれ、なんかきてる。そういえばここまでスマホの画面を開かないのも久々かも。)
今まで総一郎と離れている際は、四六時中スマホで総一郎とやり取りしていたから、とても新鮮だ。
まず一つ目の未読メッセージはひなからだった。
『ねぇ聞いてよ~!今日ねぇ本命のカレと出かけてたら、αの知らないおじさんにしつこくナンパされちゃった…カレが守ってくれたからよかったけど、この指紋認証つき高級チョーカーが無かったら無理やり番にされてるよね…』
(…たかが一個のメッセージで、ここまでマウント的要素を凝縮させられるって一種の才能だと思うんだよな。)
まず、俺の彼氏(自分のカレだと匂わせ済み)と出かけた自慢、さらにαにナンパされる僕すごいでしょ自慢、加えて彼に守ってもらえて大切にされている自慢に、極めつけは昨日貰った高級チョーカーの性能自慢だ。
(ああ、俺が貰ったチョーカーには指紋認証ついてないもんな。)
微塵の無駄も無いメッセージにむしろ感心してしまう。
とりあえずひなには、
『それはつらいね…。大丈夫?トラウマになってない…?俺でよかったらいつでも相談に乗るからね!』
と、泣いてる動物キャラのスタンプつきで送っておいた。
(散々マウント自慢した相手から「いいな~」の一言もなく、心配だけされるのはさぞイライラするだろうな。)
友達だと思っていた頃も相談に乗る的なことは何度も言ってきたので、これで特段怪しまれることもないし、今日はこの程度で済ませておいてあげよう。
続いて二つ目のメッセージは総一郎からで、
『すずめ、今日何時位に帰れそう?早く君に会いたいな。すずめが大好きな『ちゅんちゅんマン』の映画がサブスクでレンタル配信開始になったから買っといたよ。ポップコーンの種とコーラも買ってきたし、すずめが帰ってきたら二人でゆっくり見ようね♡』
というメッセージだった。
ちゅんちゅんマンは俺が大好きな、かわいい鳥たちがほのぼのな日常を繰り広げるアニメ映画だ。
俺達が付き合いたての頃、この映画を見に連れてってと抱き着きながらお願いして、初めてのデートで一緒に見に行った思い出の映画…。
さらに映画のレンタルだけでなく、その時を思い出させるポップコーンとコーラを用意しているのもポイントが高い。
…このメッセージだけ見ると誰がどう見ても俺の事が大好きな甲斐甲斐しいスパダリ彼氏に見えるだろ?
だがこれを現実的に要約するとこうだ。
『セックスしたいから早く帰ってきて』
なんせ、今まで二人で家で映画を見る際、最後までH無しに見れたことなど一度たりともないからな。
映画に夢中になってたら、途中からいつの間にか手を出されていて、終盤は映画を見ていたことすら忘れさせられている。
こいつは映画や俺の事なんか微塵も興味はない。ただただHがしたいだけなのだ。
まぁ、既読スルーするのも不自然なので一応返信はしておいてやろう。
『総一郎君優しい…きっと俺が今日、お父さんに酷く怒られてすごく落ち込んでると思って元気づけようと思ってくれたんだよね…。ありがとう…。大好き。』
今日の俺は厳格な父に呼び出されている、という設定になっているので、暗に辛くて今日はそういう気分じゃないですよ、と釘をさしておく。
あいつにはあんまり意味ないだろうけど。
(午後の作業開始にはどうにか間に合ったみたいだな。)
「霧下さん?福田くんに具合悪いって聞いたけど休まなくて大丈夫!?」
「大丈夫です。ちょっと休んだら元気になりました!」
フクロー君は文化祭準備の係員に、もしかしたら午後からは俺が体調不良で来ないかもしれない旨を伝えておいてくれたらしく、時間通りに手伝いに向かうと係員に却って心配されてしまった。
これから文化祭の後も、時間をかけてひなや総一郎が全て悪いという空気を作っていく布石として、俺自身はちゃんとやるべきことをやって、不要に周りの好感度を下げない様にしないとな。
◇◇◇
「みなさーん!本日はお手伝いいただきありがとうございました!おかげで予定よりも早く作業が終わりました!ジュースを用意しましたので各自一本持っていってくださーい!」
館内の椅子が綺麗に並べられ、係員が終了の挨拶をする。
(やった!ジュースゲット♪昼はオレンジ飲んだからレモンスカッシュ味にしよ。)
ジュースを貰いながらなんとなくステージ横にある時計を見るともう15時を回っていた。
あまり遅く帰るのもあれだし、さっさと衣装保管室に白無垢があるか確認して帰ろう。
(あ!その前に相田君に貰ったメッセージアプリのID登録しておかないと。)
午後からの作業に間に合わせるために、後回しになっていたID登録を行おうとメッセージアプリを開くと、2件の未読メッセージが届いていた。
(あれ、なんかきてる。そういえばここまでスマホの画面を開かないのも久々かも。)
今まで総一郎と離れている際は、四六時中スマホで総一郎とやり取りしていたから、とても新鮮だ。
まず一つ目の未読メッセージはひなからだった。
『ねぇ聞いてよ~!今日ねぇ本命のカレと出かけてたら、αの知らないおじさんにしつこくナンパされちゃった…カレが守ってくれたからよかったけど、この指紋認証つき高級チョーカーが無かったら無理やり番にされてるよね…』
(…たかが一個のメッセージで、ここまでマウント的要素を凝縮させられるって一種の才能だと思うんだよな。)
まず、俺の彼氏(自分のカレだと匂わせ済み)と出かけた自慢、さらにαにナンパされる僕すごいでしょ自慢、加えて彼に守ってもらえて大切にされている自慢に、極めつけは昨日貰った高級チョーカーの性能自慢だ。
(ああ、俺が貰ったチョーカーには指紋認証ついてないもんな。)
微塵の無駄も無いメッセージにむしろ感心してしまう。
とりあえずひなには、
『それはつらいね…。大丈夫?トラウマになってない…?俺でよかったらいつでも相談に乗るからね!』
と、泣いてる動物キャラのスタンプつきで送っておいた。
(散々マウント自慢した相手から「いいな~」の一言もなく、心配だけされるのはさぞイライラするだろうな。)
友達だと思っていた頃も相談に乗る的なことは何度も言ってきたので、これで特段怪しまれることもないし、今日はこの程度で済ませておいてあげよう。
続いて二つ目のメッセージは総一郎からで、
『すずめ、今日何時位に帰れそう?早く君に会いたいな。すずめが大好きな『ちゅんちゅんマン』の映画がサブスクでレンタル配信開始になったから買っといたよ。ポップコーンの種とコーラも買ってきたし、すずめが帰ってきたら二人でゆっくり見ようね♡』
というメッセージだった。
ちゅんちゅんマンは俺が大好きな、かわいい鳥たちがほのぼのな日常を繰り広げるアニメ映画だ。
俺達が付き合いたての頃、この映画を見に連れてってと抱き着きながらお願いして、初めてのデートで一緒に見に行った思い出の映画…。
さらに映画のレンタルだけでなく、その時を思い出させるポップコーンとコーラを用意しているのもポイントが高い。
…このメッセージだけ見ると誰がどう見ても俺の事が大好きな甲斐甲斐しいスパダリ彼氏に見えるだろ?
だがこれを現実的に要約するとこうだ。
『セックスしたいから早く帰ってきて』
なんせ、今まで二人で家で映画を見る際、最後までH無しに見れたことなど一度たりともないからな。
映画に夢中になってたら、途中からいつの間にか手を出されていて、終盤は映画を見ていたことすら忘れさせられている。
こいつは映画や俺の事なんか微塵も興味はない。ただただHがしたいだけなのだ。
まぁ、既読スルーするのも不自然なので一応返信はしておいてやろう。
『総一郎君優しい…きっと俺が今日、お父さんに酷く怒られてすごく落ち込んでると思って元気づけようと思ってくれたんだよね…。ありがとう…。大好き。』
今日の俺は厳格な父に呼び出されている、という設定になっているので、暗に辛くて今日はそういう気分じゃないですよ、と釘をさしておく。
あいつにはあんまり意味ないだろうけど。
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