恋愛、はじめました

ありきた

文字の大きさ
上 下
19 / 25

19話 わたしたちの長い夜①

しおりを挟む
 激しい運動を終えた直後のように、心臓が早鐘を打っている。
 向かい合ってベッドに座っただけでこれなのだから、この後どうなってしまうのか想像もつかない。

「つぐみさん……触っても、いいですか?」

「う、うん、もちろんっ」

 噛まないように気を付けてゆっくり訊ねると、つぐみさんは若干の驚きを見せつつも拳をグッと握って元気よく答えてくれた。
 わたしは深呼吸で気持ちを落ち着けてから、右手をつぐみさんの胸に伸ばす。
 慎ましやかな膨らみは服越しにも分かるほど柔らかく、温かい。
 緊張で速まった鼓動の音が、手のひらに伝わってくる。
 続け様に、反対側の胸に左手を押し当てた。
 妄想では決して得られない確かな感触が、胸の高鳴りをさらに激化させる。

「わたしも、触っていい?」

「はっ、はい、ぜひお願いします」

 願ってもない嬉しい申し出に、思わず声が弾む。
 以前にわたしからお願いして胸を揉んでもらった時のことを思い出し、期待感が高まってゴクリとのどを鳴らしてしまう。
 つぐみさんの両手がわたしの胸を捉えた瞬間、自分で触るのとは桁違いの快感が走る。
 ちょっと触られただけなのに、早くも自分の息遣いが荒くなるのを感じた。
 つぐみさんにも、気持ちよくなってほしい。
 わたしは指を軽く広げて不規則に動かし、パジャマ越しに胸を刺激する。

「んぅっ」

 普段はまず聞くことのできない、つぐみさんの嬌声。
 かわいらしくも色っぽいその声に、わたしはいままでになく興奮してしまう。

「つぐみさん……っ」

 わたしは無意識のうちにつぐみさんの背中に手を回し、ギュッと抱きしめていた。
 吐息のかかる距離にまで顔が近付く。

「美夢ちゃん……」

 つぐみさんがわたしの名前をつぶやき、瞳をそっと閉じる。
 わたしも同じようにまぶたを下ろし、顔を少しだけ前に動かす。
 一瞬の後に唇が重なり、チュッと小さな音を立てた。
 夢中になってキスをしているうちに、気持ちの昂りに伴って体も火照る。
 肌にじんわりと汗が滲み始めていることに気付き、息継ぎも兼ねてキスを中断。
 汗だくになってパジャマが肌に貼り付くという事態を避けるには、どうするべきか。
 エアコンの設定温度を少し下げるか、いっそのこと服を脱ぐか。
 わたしたちが選んだのは、もちろん――
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

足を踏み出して

示彩 豊
青春
高校生活の終わりが見え始めた頃、円佳は進路を決められずにいた。友人の朱理は「卒業したい」と口にしながらも、自分を「人を傷つけるナイフ」と例え、操られることを望むような危うさを見せる。 一方で、カオルは地元での就職を決め、るんと舞は東京の大学を目指している。それぞれが未来に向かって進む中、円佳だけが立ち止まり、自分の進む道を見出せずにいた。 そんな中、文化祭の準備が始まる。るんは演劇に挑戦しようとしており、カオルも何かしらの役割を考えている。しかし、円佳はまだ決められずにいた。秋の陽射しが差し込む教室で、彼女は焦りと迷いを抱えながら、友人たちの言葉を受け止める。 それぞれの選択が、少しずつ未来を形作っていく。

身体だけの関係です‐原田巴について‐

みのりすい
恋愛
原田巴は高校一年生。(ボクっ子) 彼女には昔から尊敬している10歳年上の従姉がいた。 ある日巴は酒に酔ったお姉ちゃんに身体を奪われる。 その日から、仲の良かった二人の秒針は狂っていく。 毎日19時ごろ更新予定 「身体だけの関係です 三崎早月について」と同一世界観です。また、1~2話はそちらにも投稿しています。今回分けることにしましたため重複しています。ご迷惑をおかけします。 良ければそちらもお読みください。 身体だけの関係です‐三崎早月について‐ https://www.alphapolis.co.jp/novel/711270795/500699060

雪と桜のその間

楠富 つかさ
青春
 地方都市、空の宮市に位置する中高一貫の女子校『星花女子学園』で繰り広げられる恋模様。 主人公、佐伯雪絵は美術部の部長を務める高校3年生。恋をするにはもう遅い、そんなことを考えつつ来る文化祭や受験に向けて日々を過ごしていた。そんな彼女に、思いを寄せる後輩の姿が……?  真面目な先輩と無邪気な後輩が織りなす美術部ガールズラブストーリー、開幕です! 第12回恋愛小説大賞にエントリーしました。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

トキノクサリ

ぼを
青春
セカイ系の小説です。 「天気の子」や「君の名は。」が好きな方は、とても楽しめると思います。 高校生の少女と少年の試練と恋愛の物語です。 表現は少しきつめです。 プロローグ(約5,000字)に物語の世界観が表現されていますので、まずはプロローグだけ読めば、お気に入り登録して読み続けるべき小説なのか、読む価値のない小説なのか、判断いただけると思います。 ちなみに…物語を最後まで読んだあとに、2つの付記を読むと、物語に対する見方がいっきに変わると思いますよ…。

【完結】カワイイ子猫のつくり方

龍野ゆうき
青春
子猫を助けようとして樹から落下。それだけでも災難なのに、あれ?気が付いたら私…猫になってる!?そんな自分(猫)に手を差し伸べてくれたのは天敵のアイツだった。 無愛想毒舌眼鏡男と獣化主人公の間に生まれる恋?ちょっぴりファンタジーなラブコメ。

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

ダメな君のそばには私

蓮水千夜
恋愛
ダメ男より私と付き合えばいいじゃない! 友人はダメ男ばかり引き寄せるダメ男ホイホイだった!? 職場の同僚で友人の陽奈と一緒にカフェに来ていた雪乃は、恋愛経験ゼロなのに何故か恋愛相談を持ちかけられて──!?

処理中です...