7 / 25
7話 何気ない会話の裏側
しおりを挟む
「ホラー映画って、夜に見るものじゃないよね。頭から離れなくて、なかなか寝付けな――」
いつもより少し眠そうな声で話すつぐみさんが、途中で言葉を途切れさせた。
口元を手のひらで隠しつつ、「ふわぁ~」と大きなあくびをしている。
「呼んでくれれば、添い寝のために寮まで駆け付けますよ」
「あはは、ありがとっ。美夢ちゃんがいてくれれば、安心して眠れそう」
わたしの提案に、つぐみさんはクスッと笑いながら乗ってくれる。
と、傍目から見ればただ仲睦まじい二人の会話なんだけど。
実のところ、わたしの胸中は穏やかじゃない。
率直に言うと、無性にムラムラしている。
年頃なんだからエッチな気分になるのは普通だなんて、そういうレベルを軽く逸脱していると断言できるほどの劣情を催している。
一日経てば多少は穏やかに――とはいえ人並み以上ではあるけれど――落ち着くだろうから、今日のところはどうにか堪えなければ。
「いつか美夢ちゃんとお泊まりしたいな~」
「わたしもです。冬休みまでそう遠くないですし、計画を立てておくのもいいかもしれませんね」
なんて平然と返しながらも、頭の中ではつぐみさんとのお泊まりという素敵イベントに興奮を禁じ得ない。
一つ屋根の下で時間を気にせず話したり、お菓子を食べたり、遊んだり、ご飯やお風呂、寝るときも一緒で、二人の体温によって布団の中は冬の寒さをものともしないほど温かくなって、そして体を密着させながら言葉を交わすうちに気持ちも高まって、やがて二人はどちらからともなく唇を重ね、そのまま肌を――
「美夢ちゃん、どうしたの? もしかして美夢ちゃんも眠い?」
つぐみさんに声をかけられ、妄想から帰還する。
どうやら妄想に耽るあまり、ボーっとしていたらしい。つぐみさんとの貴重な時間だというのに、信じられない失態だ。
「ご、ごめんなさい、お泊まりについて考えてました」
そこからエッチな妄想に発展しました、という正直すぎる言葉をどうにか飲み込む。
危険な部分は省いたけど、決して嘘は言っていない。お泊まりについて思案していたのは事実だ。
「想像するだけで楽しみだよね。あ、でも、美夢ちゃんと一緒に寝ることになったら、ドキドキして眠れないかも」
屈託のない笑顔を浮かべながらも、ほんのりと頬を染めるつぐみさん。
うぅ、相変わらずかわいすぎる。
思いっきり抱きしめたい。酸欠になるまでキスをしたい。体の隅々まで愛し尽くしたい。
「そうなったら、寝落ちするまでずっと話しましょう」
「いいね! だけど、楽しすぎて気付いたら朝になってたりして」
「あー、それは確かに有り得ますね」
つぐみさんが冗談めかして発した言葉を真に受け、わたしは重々しくうなずく。
同調するかのようなタイミングでチャイムが鳴り、名残惜しくも一旦解散となる。
お泊まりともなれば休み時間と比べて遥かに長い時間を共にできるわけだけど、普段あんまり一緒にいられない分、際限なく会話が弾みそうだ。
いつもより少し眠そうな声で話すつぐみさんが、途中で言葉を途切れさせた。
口元を手のひらで隠しつつ、「ふわぁ~」と大きなあくびをしている。
「呼んでくれれば、添い寝のために寮まで駆け付けますよ」
「あはは、ありがとっ。美夢ちゃんがいてくれれば、安心して眠れそう」
わたしの提案に、つぐみさんはクスッと笑いながら乗ってくれる。
と、傍目から見ればただ仲睦まじい二人の会話なんだけど。
実のところ、わたしの胸中は穏やかじゃない。
率直に言うと、無性にムラムラしている。
年頃なんだからエッチな気分になるのは普通だなんて、そういうレベルを軽く逸脱していると断言できるほどの劣情を催している。
一日経てば多少は穏やかに――とはいえ人並み以上ではあるけれど――落ち着くだろうから、今日のところはどうにか堪えなければ。
「いつか美夢ちゃんとお泊まりしたいな~」
「わたしもです。冬休みまでそう遠くないですし、計画を立てておくのもいいかもしれませんね」
なんて平然と返しながらも、頭の中ではつぐみさんとのお泊まりという素敵イベントに興奮を禁じ得ない。
一つ屋根の下で時間を気にせず話したり、お菓子を食べたり、遊んだり、ご飯やお風呂、寝るときも一緒で、二人の体温によって布団の中は冬の寒さをものともしないほど温かくなって、そして体を密着させながら言葉を交わすうちに気持ちも高まって、やがて二人はどちらからともなく唇を重ね、そのまま肌を――
「美夢ちゃん、どうしたの? もしかして美夢ちゃんも眠い?」
つぐみさんに声をかけられ、妄想から帰還する。
どうやら妄想に耽るあまり、ボーっとしていたらしい。つぐみさんとの貴重な時間だというのに、信じられない失態だ。
「ご、ごめんなさい、お泊まりについて考えてました」
そこからエッチな妄想に発展しました、という正直すぎる言葉をどうにか飲み込む。
危険な部分は省いたけど、決して嘘は言っていない。お泊まりについて思案していたのは事実だ。
「想像するだけで楽しみだよね。あ、でも、美夢ちゃんと一緒に寝ることになったら、ドキドキして眠れないかも」
屈託のない笑顔を浮かべながらも、ほんのりと頬を染めるつぐみさん。
うぅ、相変わらずかわいすぎる。
思いっきり抱きしめたい。酸欠になるまでキスをしたい。体の隅々まで愛し尽くしたい。
「そうなったら、寝落ちするまでずっと話しましょう」
「いいね! だけど、楽しすぎて気付いたら朝になってたりして」
「あー、それは確かに有り得ますね」
つぐみさんが冗談めかして発した言葉を真に受け、わたしは重々しくうなずく。
同調するかのようなタイミングでチャイムが鳴り、名残惜しくも一旦解散となる。
お泊まりともなれば休み時間と比べて遥かに長い時間を共にできるわけだけど、普段あんまり一緒にいられない分、際限なく会話が弾みそうだ。
0
お気に入りに追加
33
あなたにおすすめの小説
足を踏み出して
示彩 豊
青春
高校生活の終わりが見え始めた頃、円佳は進路を決められずにいた。友人の朱理は「卒業したい」と口にしながらも、自分を「人を傷つけるナイフ」と例え、操られることを望むような危うさを見せる。
一方で、カオルは地元での就職を決め、るんと舞は東京の大学を目指している。それぞれが未来に向かって進む中、円佳だけが立ち止まり、自分の進む道を見出せずにいた。
そんな中、文化祭の準備が始まる。るんは演劇に挑戦しようとしており、カオルも何かしらの役割を考えている。しかし、円佳はまだ決められずにいた。秋の陽射しが差し込む教室で、彼女は焦りと迷いを抱えながら、友人たちの言葉を受け止める。
それぞれの選択が、少しずつ未来を形作っていく。
身体だけの関係です‐原田巴について‐
みのりすい
恋愛
原田巴は高校一年生。(ボクっ子)
彼女には昔から尊敬している10歳年上の従姉がいた。
ある日巴は酒に酔ったお姉ちゃんに身体を奪われる。
その日から、仲の良かった二人の秒針は狂っていく。
毎日19時ごろ更新予定
「身体だけの関係です 三崎早月について」と同一世界観です。また、1~2話はそちらにも投稿しています。今回分けることにしましたため重複しています。ご迷惑をおかけします。
良ければそちらもお読みください。
身体だけの関係です‐三崎早月について‐
https://www.alphapolis.co.jp/novel/711270795/500699060

雪と桜のその間
楠富 つかさ
青春
地方都市、空の宮市に位置する中高一貫の女子校『星花女子学園』で繰り広げられる恋模様。
主人公、佐伯雪絵は美術部の部長を務める高校3年生。恋をするにはもう遅い、そんなことを考えつつ来る文化祭や受験に向けて日々を過ごしていた。そんな彼女に、思いを寄せる後輩の姿が……?
真面目な先輩と無邪気な後輩が織りなす美術部ガールズラブストーリー、開幕です!
第12回恋愛小説大賞にエントリーしました。
百合系サキュバスにモテてしまっていると言う話
釧路太郎
キャラ文芸
名門零楼館高校はもともと女子高であったのだが、様々な要因で共学になって数年が経つ。
文武両道を掲げる零楼館高校はスポーツ分野だけではなく進学実績も全国レベルで見ても上位に食い込んでいるのであった。
そんな零楼館高校の歴史において今まで誰一人として選ばれたことのない“特別指名推薦”に選ばれたのが工藤珠希なのである。
工藤珠希は身長こそ平均を超えていたが、運動や学力はいたって平均クラスであり性格の良さはあるものの特筆すべき才能も無いように見られていた。
むしろ、彼女の幼馴染である工藤太郎は様々な部活の助っ人として活躍し、中学生でありながら様々な競技のプロ団体からスカウトが来るほどであった。更に、学力面においても優秀であり国内のみならず海外への進学も不可能ではないと言われるほどであった。
“特別指名推薦”の話が学校に来た時は誰もが相手を間違えているのではないかと疑ったほどであったが、零楼館高校関係者は工藤珠希で間違いないという。
工藤珠希と工藤太郎は血縁関係はなく、複雑な家庭環境であった工藤太郎が幼いころに両親を亡くしたこともあって彼は工藤家の養子として迎えられていた。
兄妹同然に育った二人ではあったが、お互いが相手の事を守ろうとする良き関係であり、恋人ではないがそれ以上に信頼しあっている。二人の関係性は苗字が同じという事もあって夫婦と揶揄されることも多々あったのだ。
工藤太郎は県外にあるスポーツ名門校からの推薦も来ていてほぼ内定していたのだが、工藤珠希が零楼館高校に入学することを決めたことを受けて彼も零楼館高校を受験することとなった。
スポーツ分野でも名をはせている零楼館高校に工藤太郎が入学すること自体は何の違和感もないのだが、本来入学する予定であった高校関係者は落胆の声をあげていたのだ。だが、彼の出自も相まって彼の意志を否定する者は誰もいなかったのである。
二人が入学する零楼館高校には外に出ていない秘密があるのだ。
零楼館高校に通う生徒のみならず、教員職員運営者の多くがサキュバスでありそのサキュバスも一般的に知られているサキュバスと違い女性を対象とした変異種なのである。
かつては“秘密の花園”と呼ばれた零楼館女子高等学校もそういった意味を持っていたのだった。
ちなみに、工藤珠希は工藤太郎の事を好きなのだが、それは誰にも言えない秘密なのである。
この作品は「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルアッププラス」「ノベルバ」「ノベルピア」にも掲載しております。
全力でおせっかいさせていただきます。―私はツンで美形な先輩の食事係―
入海月子
青春
佐伯優は高校1年生。カメラが趣味。ある日、高校の屋上で出会った超美形の先輩、久住遥斗にモデルになってもらうかわりに、彼の昼食を用意する約束をした。
遥斗はなぜか学校に住みついていて、衣食は女生徒からもらったものでまかなっていた。その報酬とは遥斗に抱いてもらえるというもの。
本当なの?遥斗が気になって仕方ない優は――。
優が薄幸の遥斗を笑顔にしようと頑張る話です。
何故か超絶美少女に嫌われる日常
やまたけ
青春
K市内一と言われる超絶美少女の高校三年生柊美久。そして同じ高校三年生の武智悠斗は、何故か彼女に絡まれ疎まれる。何をしたのか覚えがないが、とにかく何かと文句を言われる毎日。だが、それでも彼女に歯向かえない事情があるようで……。疋田美里という、主人公がバイト先で知り合った可愛い女子高生。彼女の存在がより一層、この物語を複雑化させていくようで。
しょっぱなヒロインから嫌われるという、ちょっとひねくれた恋愛小説。

乙女三年会わざれば恋すべし!
楠富 つかさ
青春
同じ小学校を卒業した幼馴染同士だけど、中学で離れ離れになってしまった。そして三年ぶりに再会する少女二人。
離れていた時間があるからこそ、二人の少女の恋心は春よりも熱く、強く、熱を帯びる。
【完結】カワイイ子猫のつくり方
龍野ゆうき
青春
子猫を助けようとして樹から落下。それだけでも災難なのに、あれ?気が付いたら私…猫になってる!?そんな自分(猫)に手を差し伸べてくれたのは天敵のアイツだった。
無愛想毒舌眼鏡男と獣化主人公の間に生まれる恋?ちょっぴりファンタジーなラブコメ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる