1 / 25
1話 告白から始まる物語
しおりを挟む
「わたしと付き合ってください!」
夕陽が射す放課後の教室に二人きり。
わたし――御山美夢は、生まれて初めて告白している。
「えっ? つ、付き合ってって、恋愛的な意味で?」
彼女は初瀬つぐみさん。
見開かれた目が、驚きの度合いを如実に物語っていた。
うなじが隠れる程度に切りそろえられたダークブラウンの髪が軽く揺れ、小柄な体は少し強張っている。
フラれるかもしれないという不安はもちろんのこと、これほどの動揺を与えてしまった申し訳なさで心が痛む。
わたしは困惑するつぐみさんからの問いかけに、コクリとうなずいた。
「仲よくなってから日は浅いですけど、心から愛してます」
学年は同じだけど、わたしは一組で、つぐみさんは二組。部活や趣味が違うこともあり、11月の学校行事で偶然話す機会に恵まれていなければ、今頃は告白するどころか楽しく話すような関係にすらなっていなかっただろう。
12月に入って間もないうちに、自分が抱く感情が友情とは違う特別なものだと自覚した。
このまま本心を隠したまま友達として過ごしても、充実した高校生活は送れると思う。
でも、自分にもつぐみさんにも嘘をついたまま過ごしていたら、いつかきっと後悔する。
だから今日、事前に連絡して部活に行く前に少しだけ居残ってもらい、二人きりになったタイミングで想いを打ち明けた。
「うーん……」
困ったように眉をひそめている。
やっぱり、時期尚早だったのかもしれない。
あまり不安を感じる気性ではないと自負していたけど、いまばかりは様々な暗い考えが頭をよぎる。
フラれたらどうしよう。嫌われたらどうしよう。
疎遠になってしまったら? 連絡すら拒まれたら?
恐怖に近い緊張感が鼓動を速め、冷や汗が頬を伝う。
それでも、撤回だけは決してしない。
気の合う友人としての関係が崩れてしまうとしても、素直な気持ちを受け取ってほしい。
「うんっ、いいよ!」
つぐみさんは太陽のように眩しい笑顔を浮かべ、承諾の言葉を告げた。
理想とはいえ意外でもある返答に、わたしの脳内は真っ白になり、呼吸も忘れてしまう。
すぐさま我に返り、深呼吸をして息を整える。
わたしが慌てているのを見て、つぐみさんが続け様に口を開く。
「恋愛のことは全然分からないけど、興味がないわけじゃないからね。目をつむって『誰かと恋をするなら』って考えたら、美夢ちゃんのことが浮かんだの」
夢じゃない。嘘じゃない。同情や気遣いでもない。
告白が成就した感動はあまりに強く、さっきまでの不安や恐怖は跡形もなく霧散した。
「ありがとうございます! わたしも恋愛自体は初めてなので、一緒にいろいろ体験しながら学んでいきましょう!」
昔から女の子にしか興味がなくてセクハラ発言を繰り返したりもしているけど、恋という感情を初めて抱いたのはつい最近――つぐみさんと出会ってからだ。
初恋が見事に実った喜びを抑えきれず、思わず飛びついてしまう。
つぐみさんは小柄ながらも身体能力が高く瞬発力もあるので、驚いた様子を見せつつも難なく受け止めてくれた。
このまま日付が変わるまで抱擁していたいところだけど、お互い部活に行かなければならない。
時計を見て焦り気味にバレー部へ向かうつぐみさんを見送り、引き留めてしまったことを胸中で深く謝罪しておく。
さて、わたしも漫研の部室に向かうとしよう。
今後はいつでも抱き合えると自分に言い聞かせて名残惜しさを紛らわせ、いつもより軽い足取りで廊下に出るのだった。
夕陽が射す放課後の教室に二人きり。
わたし――御山美夢は、生まれて初めて告白している。
「えっ? つ、付き合ってって、恋愛的な意味で?」
彼女は初瀬つぐみさん。
見開かれた目が、驚きの度合いを如実に物語っていた。
うなじが隠れる程度に切りそろえられたダークブラウンの髪が軽く揺れ、小柄な体は少し強張っている。
フラれるかもしれないという不安はもちろんのこと、これほどの動揺を与えてしまった申し訳なさで心が痛む。
わたしは困惑するつぐみさんからの問いかけに、コクリとうなずいた。
「仲よくなってから日は浅いですけど、心から愛してます」
学年は同じだけど、わたしは一組で、つぐみさんは二組。部活や趣味が違うこともあり、11月の学校行事で偶然話す機会に恵まれていなければ、今頃は告白するどころか楽しく話すような関係にすらなっていなかっただろう。
12月に入って間もないうちに、自分が抱く感情が友情とは違う特別なものだと自覚した。
このまま本心を隠したまま友達として過ごしても、充実した高校生活は送れると思う。
でも、自分にもつぐみさんにも嘘をついたまま過ごしていたら、いつかきっと後悔する。
だから今日、事前に連絡して部活に行く前に少しだけ居残ってもらい、二人きりになったタイミングで想いを打ち明けた。
「うーん……」
困ったように眉をひそめている。
やっぱり、時期尚早だったのかもしれない。
あまり不安を感じる気性ではないと自負していたけど、いまばかりは様々な暗い考えが頭をよぎる。
フラれたらどうしよう。嫌われたらどうしよう。
疎遠になってしまったら? 連絡すら拒まれたら?
恐怖に近い緊張感が鼓動を速め、冷や汗が頬を伝う。
それでも、撤回だけは決してしない。
気の合う友人としての関係が崩れてしまうとしても、素直な気持ちを受け取ってほしい。
「うんっ、いいよ!」
つぐみさんは太陽のように眩しい笑顔を浮かべ、承諾の言葉を告げた。
理想とはいえ意外でもある返答に、わたしの脳内は真っ白になり、呼吸も忘れてしまう。
すぐさま我に返り、深呼吸をして息を整える。
わたしが慌てているのを見て、つぐみさんが続け様に口を開く。
「恋愛のことは全然分からないけど、興味がないわけじゃないからね。目をつむって『誰かと恋をするなら』って考えたら、美夢ちゃんのことが浮かんだの」
夢じゃない。嘘じゃない。同情や気遣いでもない。
告白が成就した感動はあまりに強く、さっきまでの不安や恐怖は跡形もなく霧散した。
「ありがとうございます! わたしも恋愛自体は初めてなので、一緒にいろいろ体験しながら学んでいきましょう!」
昔から女の子にしか興味がなくてセクハラ発言を繰り返したりもしているけど、恋という感情を初めて抱いたのはつい最近――つぐみさんと出会ってからだ。
初恋が見事に実った喜びを抑えきれず、思わず飛びついてしまう。
つぐみさんは小柄ながらも身体能力が高く瞬発力もあるので、驚いた様子を見せつつも難なく受け止めてくれた。
このまま日付が変わるまで抱擁していたいところだけど、お互い部活に行かなければならない。
時計を見て焦り気味にバレー部へ向かうつぐみさんを見送り、引き留めてしまったことを胸中で深く謝罪しておく。
さて、わたしも漫研の部室に向かうとしよう。
今後はいつでも抱き合えると自分に言い聞かせて名残惜しさを紛らわせ、いつもより軽い足取りで廊下に出るのだった。
0
お気に入りに追加
33
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。
スタジオ.T
青春
幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。
そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。
ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。
スケートリンクでバイトしてたら大惨事を目撃した件
フルーツパフェ
大衆娯楽
比較的気温の高い今年もようやく冬らしい気候になりました。
寒くなって本格的になるのがスケートリンク場。
プロもアマチュアも関係なしに氷上を滑る女の子達ですが、なぜかスカートを履いた女の子が多い?
そんな格好していたら転んだ時に大変・・・・・・ほら、言わんこっちゃない!
スケートリンクでアルバイトをする男性の些細な日常コメディです。
就職面接の感ドコロ!?
フルーツパフェ
大衆娯楽
今や十年前とは真逆の、売り手市場の就職活動。
学生達は賃金と休暇を貪欲に追い求め、いつ送られてくるかわからない採用辞退メールに怯えながら、それでも優秀な人材を発掘しようとしていた。
その業務ストレスのせいだろうか。
ある面接官は、女子学生達のリクルートスーツに興奮する性癖を備え、仕事のストレスから面接の現場を愉しむことに決めたのだった。
Dear my roommates
heil/黒鹿月
青春
ルームメイトだけど、あんまり話したことなくて―――
―――お互い、何を思ってるのかわかんなくて
でも、私たちはどこか似てて―――
―――いつかは言えるかな。
『お互いの 気持ち』。
星花女子プロジェクト参加作品です。
墨森 望乃夏(黒鹿月 木綿稀)×白峰 雪乃(しっちぃ)。どこか似たもの同士不器用な2人が、仲良くなるまでの日記。
なろうからの改稿になります。
※時たま話者が変わります。タイトルの所にどちら視点なのかを記載しています。
※星花女子プロジェクトは、登美司 つかさ様の合同企画です。
家のしきたりが兄妹でイチャつけなのでクーデレ義妹とイチャコラしている内に惚れられていた
ひゃみる
青春
橋本遼(はしもとりょう)は父親の再婚により妹が出来た。
妹になったのはクラスメイトである聖雪(いぶ)で完璧な美少女だ。
橋本家には兄妹(姉弟)は異性に慣れるためにイチャイチャするというしきたりがある。
一緒に暮らし始めてから一週間は家に馴染むためにしなかったが、翌週からしきたりに習って二人はイチャイチャを開始。
恥ずかしがってはいるが聖雪にとっては心地好い温もりだったようで、どんどんと兄妹のスキンシップが激しくなっていく。
そして聖雪は兄になった遼に恋したと実感してしまい……
オタクの我とあいつ
鴨乃マキヤ
青春
<我氏、ご報告させていただきます>
<恋人が出来ました>
高1のオタクである優の唯一の友人、零に春と同時に『春』がきたご様子。
3年間、親友として隣にいた優はかなりショックを受けてしまい?!
「なんで、こんなに胸が痛いんだよ」
美形な恋人さんに嫉妬したり、幼馴染に慰められたり、そっぽ向いたり、現実逃避したりながら優は零に対する自分の気持ちに気づいていく。
オタクな優・天然真面目な零・麻雀中毒な幼馴染・吹奏楽部マッスル(?)な妹などの癖強めな変人がお送りする、涙も笑顔も怒りも笑いも詰め込みました(?)な物語です。
「なんか、うっさいわ!」っていう話も
「なんか、シリアスすぎだろ!」っていう話も
「グダつきすぎだわ!」って話も色々ありますが、
そういう奴もいるんかもな(白目)で構わないのでね
許してちょというカンジです。
*優も零も性別は特に決めてないので色々妄想してください(意味深)*
人生の行き先
Hanakappa!
青春
どこにでもある普通高校にいる1人の少女がいた。しかし、全く人と話すことができない。周りからいじめにあっており、いろいろと彼女自身で考え込んでしまい、なかなか人に言うことができないことで、自分の殻に閉じこもってしまう日々を送っていた。
何もない日々を過ごしている少女にさまざまな出来事が襲いかかる。そこに見える少女の過去とは一体なんだろうか?
そしてそのことで新しい自分を見つけ出そうとする。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる