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122話 極度の緊張を乗り越えて
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今日一日で、人生数十回分の緊張感を味わった気がする。
大げさだと言われてしまうかもしれないけど、体感的には決して誇張表現なんかじゃない。
「き、緊張しました……っ」
住宅街のきれいに舗装された道を歩きながら、肺の中が空っぽになるんじゃないかというぐらい盛大に息を吐く。
朝から行動を始めたのに、もう間もなく陽が沈む。
肺の求めに応じて深く息を吸い込むと、辺りの家から漂う夕食の香りに食欲を刺激される。
極度の緊張から解放されたことにより、空腹感が一気に押し寄せてきた。
「さすがに今日ばかりは、片時も気が抜けなかったわねぇ❤」
「手に汗握るっていうか、手汗が止まらなすぎて焦ったよ~!」
「で、でも、緊張感に耐えた甲斐が、あ、あったよね」
「そうね、報われたというか、達成感が半端ないわ」
先輩たちは一見すると普段とあまり変わらない様子だけど、声音や表情からは明らかに心から安堵していることがうかがえる。
裏を返せば、それほどまでのプレッシャーにのしかかられていたということだ。
春名家、夏見家、秋川家、冬木家、そして露原家。私たちそれぞれの実家を、朝から全員で訪問して回った。
目的はもちろん、一つしかない。
――御両親への、御挨拶。
娘さんと交際させてもらっている旨と、一対一ではなく一対四での付き合いであること。
そして、今後もずっと、卒業して大人になって、何歳になってもこの関係を続けていきたいという意思を告げた。
当然ながら不安で押し潰されそうになったし、もし先輩たちと同居中じゃなかったら、本番前に何度も嘔吐していたかもしれない。
だけど、私が決して生半可な気持ちじゃないということは知ってほしかった。
結果としては、上々というか、もはや最高という言葉ですら足りない。
内容が内容なだけに打ち明けて早々に受け入れられるなんてことはなかったけど、最終的に先輩たちの御両親も私の両親も、快く認めてくれた。
ただ、私なりに失礼のないよう接していたものの……実を言うと緊張の余波で、記憶が朧気になっている。
もしかしたら、なにか粗相をしてしまったかもしれない。
「うふふ❤ 悠理ったら、自分がなにか粗相したんじゃないかって思ってるのね❤」
「え? こ、声に出てました?」
「声には出てないけど、顔にハッキリと書いてあるよ~」
「すみません。冷静になったら、急にいろいろ心配になってきちゃって……」
「だ、大丈夫、だよ。むしろ、悠理が思ってるより、こ、好印象、だったはず」
「本当ですか!?」
「本当に決まってるじゃない。というか、親のあそこまで嬉しそうな姿は初めて見たわ」
真里亜先輩が苦笑交じりに言うと、他の先輩たちも同じように、自分のところもそうだったと漏らす。
思い返してみれば、私の両親もすごく嬉しそうだった。
「悠理が優しくてかわいくて素敵で誠実な人だから、きっと安心したのね❤」
「ほ、褒めすぎですよ」
でも、そうだとしたらありがたい。
「晴れて親公認の仲になったわけだし、今日はパーッと焼肉でも食べようよ!」
「あらあら❤ いいわねぇ❤」
「だ、だけど、近所に焼肉屋さん、な、ないよね」
「混み合う時間だし、食材を買って家で焼肉する方がいいんじゃないかしら」
「そう言えば、いつも行くショッピングモールの空きスペースに、精肉店が入ったらしいですよ」
チラシから得た情報をさりげなく述べると、先輩たちが感心してくれた。
私たちが暮らす家は現在地からショッピングモールまでの道中にあるので、エコバッグを取りに寄ってから買い物に出かける。
たくさん歩いた後だけど、みんなの足取りはいつになく軽かった。
大げさだと言われてしまうかもしれないけど、体感的には決して誇張表現なんかじゃない。
「き、緊張しました……っ」
住宅街のきれいに舗装された道を歩きながら、肺の中が空っぽになるんじゃないかというぐらい盛大に息を吐く。
朝から行動を始めたのに、もう間もなく陽が沈む。
肺の求めに応じて深く息を吸い込むと、辺りの家から漂う夕食の香りに食欲を刺激される。
極度の緊張から解放されたことにより、空腹感が一気に押し寄せてきた。
「さすがに今日ばかりは、片時も気が抜けなかったわねぇ❤」
「手に汗握るっていうか、手汗が止まらなすぎて焦ったよ~!」
「で、でも、緊張感に耐えた甲斐が、あ、あったよね」
「そうね、報われたというか、達成感が半端ないわ」
先輩たちは一見すると普段とあまり変わらない様子だけど、声音や表情からは明らかに心から安堵していることがうかがえる。
裏を返せば、それほどまでのプレッシャーにのしかかられていたということだ。
春名家、夏見家、秋川家、冬木家、そして露原家。私たちそれぞれの実家を、朝から全員で訪問して回った。
目的はもちろん、一つしかない。
――御両親への、御挨拶。
娘さんと交際させてもらっている旨と、一対一ではなく一対四での付き合いであること。
そして、今後もずっと、卒業して大人になって、何歳になってもこの関係を続けていきたいという意思を告げた。
当然ながら不安で押し潰されそうになったし、もし先輩たちと同居中じゃなかったら、本番前に何度も嘔吐していたかもしれない。
だけど、私が決して生半可な気持ちじゃないということは知ってほしかった。
結果としては、上々というか、もはや最高という言葉ですら足りない。
内容が内容なだけに打ち明けて早々に受け入れられるなんてことはなかったけど、最終的に先輩たちの御両親も私の両親も、快く認めてくれた。
ただ、私なりに失礼のないよう接していたものの……実を言うと緊張の余波で、記憶が朧気になっている。
もしかしたら、なにか粗相をしてしまったかもしれない。
「うふふ❤ 悠理ったら、自分がなにか粗相したんじゃないかって思ってるのね❤」
「え? こ、声に出てました?」
「声には出てないけど、顔にハッキリと書いてあるよ~」
「すみません。冷静になったら、急にいろいろ心配になってきちゃって……」
「だ、大丈夫、だよ。むしろ、悠理が思ってるより、こ、好印象、だったはず」
「本当ですか!?」
「本当に決まってるじゃない。というか、親のあそこまで嬉しそうな姿は初めて見たわ」
真里亜先輩が苦笑交じりに言うと、他の先輩たちも同じように、自分のところもそうだったと漏らす。
思い返してみれば、私の両親もすごく嬉しそうだった。
「悠理が優しくてかわいくて素敵で誠実な人だから、きっと安心したのね❤」
「ほ、褒めすぎですよ」
でも、そうだとしたらありがたい。
「晴れて親公認の仲になったわけだし、今日はパーッと焼肉でも食べようよ!」
「あらあら❤ いいわねぇ❤」
「だ、だけど、近所に焼肉屋さん、な、ないよね」
「混み合う時間だし、食材を買って家で焼肉する方がいいんじゃないかしら」
「そう言えば、いつも行くショッピングモールの空きスペースに、精肉店が入ったらしいですよ」
チラシから得た情報をさりげなく述べると、先輩たちが感心してくれた。
私たちが暮らす家は現在地からショッピングモールまでの道中にあるので、エコバッグを取りに寄ってから買い物に出かける。
たくさん歩いた後だけど、みんなの足取りはいつになく軽かった。
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