甘美な百合には裏がある

ありきた

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114話 初めてのスーパー銭湯③

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 サウナを出た後は、備え付けの給水器で水分補給をして、再び洗い場へ足を運んでシャワーを浴びる。
 水風呂を少々嗜んでから炭酸泉とジャグジーバスを堪能し、すっかり火照った体で露天風呂へと向かう。
 気温は決して低くないものの、すでに陽は沈み、体温が上昇していることもあり、体を撫でるそよ風がなんとも心地いい。
 岩に囲まれたお風呂に浸かってみると、室内と比べてお湯の温度はやや低め。湯質も薬湯ほどではないけど見て分かる程度には濁っていて、近くにある案内板によれば天然温泉とのこと。

***

 お風呂をとことん楽しんで体の芯まで温まった私たちは、脱衣所のロッカーを前にして痛恨のミスに気付く。
 替えの服を用意していないというつらい事実を受け入れるまでに、一分以上かかった。
 とはいえ裸で帰るわけにもいかず、汗まみれの服に身を包む。
 休憩所で腰を落ち着けて牛乳を飲み、バスが来るまであと数分というところで退館する。
 スーパー銭湯は高校生が来るような場所じゃないと勝手に思い込んでいたけど、少なくとも私たちは大いに満足できた。

「いいところでしたね」

「うふふ❤ そうね、また行きたいわ❤」

「今度は電気風呂に挑戦してみようかしら」

「次は着替えを忘れないようにしないとね~」

「あ、あと、ゴムも、いると思う」

 バスの中はもちろん、家に着いて着替えた後も会話が止まらない。
 一区切りついたところで今日撮った写真をみんなで眺め、再度盛り上がる。
 お風呂で癒されたとはいえ、夕方まで動き回った疲れを微塵も感じさせない。

***

 その日の夜、布団を敷いている最中のこと。
 温泉に浸かったおかげか、それとも、さっきまでのテンションが残っているのか。
 ――先輩たちと、一線を越えたい。
 脳内を埋め尽くす強い想いに身を任せ、わずかに緊張を孕んだ声で先輩たちに話しかける。

「あ、あの……今夜は、その……ね、寝かせません!」

 自分なりに勇気を振り絞ったものの、どうにも締まらない感じになってしまった。
 それでも、先輩たちは私の気持ちをしっかりと受け取ってくれたようだ。

「うふふ❤ 悠理ったら、ここぞという時は本当に大胆なんだから❤」

「わ~っ、なんか急に緊張してきた!」

「うぅ、は、恥ずかしいけど、すごく、嬉しい」

「待ちに待った初体験、心が躍るわね!」

 私はもちろん先輩たちも、声や表情に緊張が滲む。
 意識すればするほどに緊張感が強まり、それに比例して期待と興奮が高まっていく。
 今宵、私たちはまた一つ、大人の階段を昇ろうとしている。
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