甘美な百合には裏がある

ありきた

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107話 隠れた特技②

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「こ、これでいいんですよね?」

 私はスカートを抑えながら、要求された品物をアリス先輩に差し出した。
 うぅ……お股がスースーする。

「う、うん、あ、ありがとう」

 アリス先輩は私から生温かい布――脱いだかばかりのパンツを受け取ると、クロッチ部分を鼻に押し付け、数十秒近く息を吸い込み続ける。
 そして瞳を爛々と輝かせ、満を持して口を開いた。

「この竹垣に竹立てかけたのは竹立てかけたかったから竹立てかけた、この竹垣に竹立てかけたのは竹立てかけたかったから竹立てかけた、この竹垣に竹立てかけたのは竹立てかけたかったから竹立てかけた。新人シャンソン歌手新春シャンソンショー、新人シャンソン歌手新春シャンソンショー、新人シャンソン歌手新春シャンソンショー。坊主が屏風に上手に坊主の絵を描いた、坊主が屏風に上手に坊主の絵を描いた、坊主が屏風に上手に坊主の絵を描いた」

 噛まず、詰まらず、スラスラと紡がれる早口言葉に、聞き手一同は思わず絶句する。
 一回きちんと言い終わるのも難しいのに、アリス先輩は三回ずつ、しかも立て続けに数種類を言ってのけた。
 ただ、さすがに息継ぎなしでの早口言葉はキツかったらしく、ハァハァと息を荒げている。

「ハァ、ハァ、悠理の脱ぎたてパンツ、ほんとにすごいよぉ。すっごくいい匂いで、まだほんのり温かくて、ハァハァ、食べちゃいたいぐらい愛おしい……っ」

 さすが尋常ならざる肺活量の持ち主。早口言葉で息を切らしたわけじゃなかったらしい。

「食べちゃダメですからね」

「分かった、嗅いで舐めるだけにするっ」

 聞き分けがよくて助かる。
 嗅いだり舐めたりされるのも、半端なく恥ずかしいけど。

「みんなすごいわね。あたしは料理関係を除いたら、せいぜい手汗をある程度自在に調整できるぐらいよ」

「いや、充分すごいですよ! なにかと便利じゃないですか」

「そうだよ~! 固い蓋を開ける時とか、ちょっと手が湿ってる方が楽だもん!」

「ビニール袋を開ける時も、指が乾燥してると上手くいかないのよねぇ❤」

 葵先輩と姫歌先輩が挙げた例には、非常に共感できる。
 本人は謙遜しているけど、真里亜先輩の特技は素直に羨ましい。
 アリス先輩もパンツを顔に押し付けながら、コクコクとうなずいている。
 さて、残るは私だ。
 隠れた特技、なにかあったかな。
 うーん……。

「特技って言えるか分からないですけど、実は舌が少し長くて、鼻に届くんです」

 恋人たちの前で実演するのはさすがに抵抗があるので、んべーっと舌を出すだけに留めておく。
 先輩たちに比べたら地味だけど、四人とも興味深そうに視線を注いでくれた。

「きれいなピンクね❤ 思わず見惚れてしまうわ❤」

 うっとりした口調でそう言われ、恥ずかしくなって舌を仕舞う。
 その後、舌の長さを直接確かめたいと言われ、激しく舌を絡める濃厚なキスを全員と交わした。
 エッチなキスをする口実になると考えれば、自慢の特技だと胸を張っていいかもしれない。
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